Intensive Care Med (2014) 40:320–331

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Presentation transcript:

Intensive Care Med (2014) 40:320–331 ICU Journal club  PGY4 Yuri Nakayama Adviser : Jun Kataoka

論文の背景 the European Society of Intensive Care Medicine (ESICM) the European Society of Endocrinology (ESE) the European Renal Association–European Dialysis and Transplant Association (ERA–EDTA) 上記三学会が協力してガイドラインを作成

ガイドラインの作成方法 低Na血症の診断と治療に関する Clinical Questionについて、 下記databaseを検索し論文を抽出 the Cochrane Database of Systematic Reviews (May 2011), DARE (May 2011), CENTRAL (May 2011) , MEDLINE (1946 to May, week 4, 2011) ⇒GRADE法を用いて評価

GRADE system

mild 130-135mmol/L moderate 125-129mmol/L profound <125mmol/L 低Na血症の重症度 mild 130-135mmol/L moderate 125-129mmol/L profound <125mmol/L

急性:48時間以内 慢性:48時間以上 よくわからないときは慢性と扱う 急性:48時間以内 慢性:48時間以上 よくわからないときは慢性と扱う

低Na血症の重症度と症状

Acute(<48h) hyponatremiaの例

低Na血症 原因  考え方の手順 低Na血症をみたらその原因・病態を考える 原因に合った治療方針を立てる

低張性低Na血症と非低張性を 区別する 高血糖での低Na血症では補正Na値を計算する (grade1D) 血漿浸透圧<275mOsm/kg での低Na血症なら、低張性低Na血症と判断する(not graded)

 高血糖時 補正Naの公式 血糖値が100mg/dl上昇するごとにNa値は2.4Eq/L低下して見える

Non-hypotonic hyponatremiaの原因

重症or急性かを見極める Yesなら後のスライド参照 Noなら次スライドへ

Hypotonic hyponatremia (Not Acute, Not Severe ) 1st stepとしてspot尿での尿浸透圧を測定(grade1D) 尿浸透圧≦100mOsm/kgなら、過剰な水摂取による低張性低Na血症と推測する(grade1D) 尿浸透圧>100mOsm/kgなら、次ページ

Hypotonic hyponatremia (Not Acute, Not Severe ) 尿浸透圧>100mOsm/kgなら spot尿での尿中Na濃度を測定(grade1D) 尿中Na濃度≦30mmol/L    low effective arterial volume (grade2D) 尿中Na濃度>30mmol/L      細胞外液の状態と利尿剤使用歴を調べる (grade2D) SIADHの診断目的にvasopressinを測定することは否定的(grade2D)

SIADHの診断基準

SIADHとCSWの相違

重症or急性経過のとき

Hyponatremia with severe symptoms

Hyponatremia with severe symptoms 急性・慢性に関わらずとにかく補正 補正方法 3%高張食塩水150mlを20分かけて投与(1D) その後採血を行うNa値をチェックする(2D) Naが5mmol/L上昇するまで上記繰り返す(2D)

血漿Na 5mmol/L上昇後 1時間以内に症状改善した場合 高張食塩水の点滴を中止する(grade1D) 原因に特化した治療が開始されるまでの間は、0.9%生食を可能な限り最小流量で投与(grade1D) 可能なら、最低でも血漿Na値が安定化することを狙って、診断に特化した治療を開始(grade1D) 血漿Na130mmol/L目標に、血漿Naの上昇値を最初の24時間で10mmol/L以内、次の24時間で8mmol/L以内に限定する(grade1D) 6,12時間後に採血し、Na値をフォローする(grade2D)

血漿Na 5mmol/L上昇後 1時間以内に症状改善しなかった場合 3%高張食塩水点滴またはそれと同等の溶液を、血漿Na値1mmol/L/h上昇を目安に継続する(grade1D) 点滴終了のタイミング:症状改善、血漿Na値上昇が合計10mmol/Lに到達、血漿Na値130mmol/Lに到達のいづれか(grade1D) 症状改善ない理由として高Na血症以外の原因の検索(grade1D) 上記点滴継続中は血中Na値を4時間ごとに確認(grade2D)

Hyponatremia with moderately severe symptoms 急速な診断的アセスメントを開始(grade1D) 可能な範囲で低Na血症を誘発する薬剤や因子を中止する(not graded) 原因に特化した治療を行う(grade1D) 3%高張食塩水またはそれと同等の溶液150ml 20分かけて投与することを考慮(grade2D) 血漿Na値5mmol/L/24hの上昇速度を目標(grade2D)

Hyponatremia with moderately severe symptoms 血漿Na上昇値:130mmol/Lに達するまでは 初めの24hで10mmol/L以内、その後は24hで8mmol/L以内の上昇に留める(grade2D) 6,12時間後に採血し、Na値をフォローを考慮(grade2D) もし、血漿Na値の改善に伴い症状が改善しないのであれば、症状改善ない理由として高Na血症以外の原因の検索を考慮(grade2D) もし、原因治療中にも関わらず血漿Na値が低下するなら、重症の低Na血症のマネジメントへ変更することを考慮(grade2D)

Acute hyponatremia without severe or moderately severe symptoms 血漿Na濃度が前回と同様の手法で検査されたかを見直す(not graded) 急速な診断的アセスメントを開始(grade1D) 可能な範囲で低Na血症を誘発する薬剤や因子を中止する(not graded) 原因に特化した治療を行う(grade1D) もし急性に血漿Na値>10mmol/Lの低下がみられたら、3%高張食塩水またはそれと同等の溶液150ml 20分かけて投与することを考慮(grade2D) 4時間後に血漿Na値を前回と同様の方法で再検する(grade2D)

Chronic hyponatremia without severe or moderately severe symptoms 不要な点滴や低Na血症を誘発する薬剤や因子を中止する(not graded) 原因に特化した治療を開始(grade1D) 軽度の低Na血症では、単にNa値上昇させる目的のみでの治療はすべきでない(grade2C)

Chronic hyponatremia without severe or moderately severe symptoms 中等度、重度の低Na血症では血漿Naの上昇値を最初の24時間で10mmol/L以内、次の24時間で8mmol/L以内に限定する(grade1D) 適切な治療下で、血漿Na値が改善するまで6時間ごとに採血フォローする(grade2D) 改善がみられなければ、診断アルゴリスムを見直し、専門家へアドバイスを求める(not graded)

Patient with expanded extracelluler fluid 軽度~中等度の低Na血症では、単にNa値上昇させる目的のみでの治療はすべきでない(grade1C) 体液貯留のさらなる増悪を防ぐために、補液を制限する(grade2D) バソプレシン受容体拮抗薬はすすめない(grade1C) デメクロサイクロンはすすめない(grade1D)

SIADHの患者 中等度~重症の低Na血症 まず最初に水分制限を行う(grade2D) 次に下記;   -塩分摂取(尿量:0.25-0.5g/kg/dayを保つ)    -ループ利尿薬を追加   (grade2D) リチウム、デメクロサイクロンは使用しない方がいい(grade1D) バソプレシン受容体拮抗薬は使用しない(grade1C)

循環血液量が低下している患者 0.9%生食や同等の晶質液を0.5-1.0ml/kg/hrで投与する(grade1B) 頻回な臨床的・検査的モニタリングを行い、血行動態的に安定させる(not graded) 血行動態的に不安定な例では、急速な補液蘇生の必要性が急速な血漿Na値上昇のリスクを上回る(not graded)

低Na血症を急速に補正しすぎたら どうするか? 血漿Naの上昇値が最初の24時間で10mmol/L以上、次の24時間で8mmol/L以上となった場合は、Na値を再度低下させるように補正するように早期介入が必要(grade1D) 今行っている治療を中止する(grade1D) もし、desmopressin2μg の静脈投与の追加が適切かどうか、8時間ごと以上の頻回な使用をすべきでないことを理解した上で、専門家にコンサルトする(grade1D)

Take home message 急速な補正をしすぎない(血漿Naの上昇値が最初の24時間で10mmol/L以内、次の24時間で8mmol/L以内に留める) 重症度、急性or慢性経過の2つの軸に分けて分類し、治療・原因検索を行うことが必要