環日本海経済研究所名誉研究員、 元理事長 吉 田 進 2016年5月23日 安倍首相訪ロ後の日ロ関係 環日本海経済研究所名誉研究員、 元理事長 吉 田 進 2016年5月23日
1.安倍首相の訪ロ 安倍首相は2016年5月6日ソチにてプーチン大統領との会談を行った。 北方領土問題や平和締結問題をめぐり「新たな発想に基づくアプロー チで交渉を進める」ことを確認 6月に外務次官級による平和条約交渉を開催 9月2日に安倍首相がウラジオストクを訪問し、日ロ首脳会談を開くこ とで合意 9月のG20首脳会談、11月のAPEC 首脳会議でも二国間の首脳会談を重 ねていく 日本がエネルギー開発や極東地方振興策など8項目の協力プランを提 案 プーチン大統領の訪日は引き続き調整
2.北方領土問題と平和条約締結問題 ・会談は少人数会合と夕食会を合わせ3時間10分。 そのうち35分は安倍首相とプーチン大統領のみで話し合われた。そこ で「グローバルな視点も考慮に入れ交渉を行う新しいアプローチが必 要」ということで一致した。6月には外務次官級による平和条約交渉 を開催することが決まった。 グローバルな視点とは? 新しいアプローチとは? ・ロシアの日本への期待は、ドイツと並行してG7 とロシアをつなぐ 「要」になってほしい。伊勢志摩サミットはその一つの機会である。 この視点は重要である。
3.日本がエネルギー開発や極東地方振興策など8項目の協力プランを提案 (1) 日本式最先端病院の建設など医療・健康分野 (2) 都市交通網整備など都市づくり (3) 中小企業同士の交流や協力の拡大 (4) 油・ガスなどエネルギー開発 (5) 産業の多様化と生産性向上の取り組み (6) 極東地域での産業振興やインフラ整備 (7) 原子力やITなど先端技術分野 (8) 若者やスポーツ・文化交流分野の人的交流
4.北方領土・平和条約締結の交渉 ・交渉の方法:「8項目を今後どう具体化するかは、領土問題でのロ シアの出方次第だ」と日本の高官が指摘(日本経済新聞 16.5.8) 経済協力を領土問題交渉と並行させる。政経分離→政経一体 ・返還方法の腹案は? 川奈提案:1998年に橋本首相がエリツィン大統領へ提案(択捉の北 に国境線を引き、施政権を当面ロシアに残し、交渉を継続する) 二島先行返還論:1956年の日ソ共同宣言に基づき歯舞・色丹の2島 を日本に先行返還。残る2島は継続審議 面積等分論:北方4島を面積で等分。歯舞、色丹、国後、択捉の一 部を日本に返還
5.北方領土・平和条約締結の交渉(2) 今後討議されると予想されるテーマ:経済特区を設定して一定期間共 同管理する方式 例:まず歯舞・色丹を日本に返還し、一定の期間(30―50年)国 後・択捉を経済特区とし、歯舞・色丹も経済特区とする。主権はそれ ぞれ異なるが共同経営を行う。その後ロシアは、国後と択捉(全部あ るいは一部)を日本に返還する。 この案の利点:①ロシア島民が島から撤去する必要がなく(1945年 の日本島民の苦しみをロシア島民に味あわせることがない)、島民の 抵抗が減少する。 ②経済力は日本が強いので、この地域は日本の経済圏に入る。 ③北海道に北方4島管理・協力局を設立し、日本政策投資銀行からの 投資・融資をする。北海道には、ロシアブームが起こり、日本の経済 復興に大きな役割を果たす。
6.その後の動き (1)トルトネフ副首相の来日 5月16日 世耕弘成官房副長官との会談、日ロ経済委員会 との会談 17日シポルト・ハバロフスク州知事は双日と空港案件で会 談 コジエミャク・サハリン州知事はJGCと植物工場、ガス化 学工場などについて意見交換。三菱商事、三井物産ともガ ス開発について意見交換を行った。 (2)ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)は、5月17日安 倍首相の招待によるプーチン大統領の訪日が年内に実現す る可能性があるという見方を示した。