日本の公務員制度改革の動向と職員採用制度の改革 東京大学法学部/公共政策大学院 金井利之
公務員制度改革論議の経緯 1999年3月、公務員制度調査会「基本答申」 2001年12月、閣議決定「公務員制度改革大綱」(行革事務局) 2002年8月、人事院「意見書」 2003年7月、国公法改正案・能力等級法案 2004年8月6日、「国家公務員制度改革関連法案の骨子(案)」
公制調「基本答申」の内容 長期継続雇用を前提とした新規学卒者等の定期採用が今後も大宗→試験・採用段階 採用時の幹部候補確保、但し、随時適切にスクリーニング、能力・実績に基づく登用 中途採用の拡大(開放的システムへ)
閣議決定「公務員制度改革大綱」の内容 採用試験制度の見直し 採用制度の企画立案は内閣 試験合格者の大幅増加 民間からの人材の確保 採用制度の企画立案は内閣 試験合格者の大幅増加 民間からの人材の確保 民間企業の身分併有のままの人事交流 人事院の事前承認制から届出制へ 公募制の積極的活用
連合研究会中間報告 新卒長期雇用を中核として維持しつつ多様な勤務形態(中途採用、任期付採用など) Ⅰ種Ⅱ種試験区分の廃止、学歴区分(高卒・大卒・大学院卒) 自由任用 政治任用 非常勤職員問題の解決
行革事務局「骨子(案)」 政府が採用に関する基本的な方針を定め、人事院が採用試験内容を決定・実施 官民交流促進(企業を退職せずに交流採用できるようにする)
改革経過の特徴 公制調(総務庁・人事院)の論議と行革事務局の論議とに断絶が発生 主として人事権限の所在を巡る官官対立 政官対立も絡む 主として人事権限の所在を巡る官官対立 政官対立も絡む 政府部内では、それ以外の方向性の指摘には大差なはい 関心の比重の差異はある 労働組合は基本権問題に関心(採用への関心は乏しい)
採用試験の改革 Ⅰ種(行政、法律、経済区分)試験合格者数増(2.5倍程度) 試験日程繰り上げ 最終合格者について内内定をできるように
開放型採用の拡大 任期制研究公務員 民間人材の中途採用(1998年4月導入) 官民人事交流制度(2000年3月施行) 交流派遣と交流採用 交流派遣と交流採用 任期付職員制度(2000年11月施行) 高度の専門的な知識経験・識見 専門的な知識経験 女性公務員採用・登用拡大
国との相違 官官/政官権限争議の不在 理由① 首長優位 人事委員会は人事院ほど自律していない 政治家としての首長の影響力 事実上の一括管理 理由① 首長優位 人事委員会は人事院ほど自律していない 政治家としての首長の影響力 事実上の一括管理 理由② 制度官庁=旧自治省 /運用主体=自治体という棲み分け
国との類似性 公制調型 派遣法(2000年4月) 公益法人・地方六団体など派遣 三セク(営利法人)派遣 地方任期付職員法(2002年5月) 派遣法(2000年4月) 公益法人・地方六団体など派遣 三セク(営利法人)派遣 地方任期付職員法(2002年5月) 大綱型 大綱型の公務員像は、一定部分は、自治体で現実化している
自治体の固有問題:協働性 実質的な公務労働を担うのは、いわゆる終身雇用公務員(常勤、終身=任期なし、フルタイム、一般職)だけではなくなる 多様な形態で公務員として採用される者 →制度的に可能性はますます拡大 採用されない事実上の公務従事者 (公務住民・公務事業者) 曖昧・多様化 公務員・住民の地域人材化
処遇・勤務条件の部外均衡 これまでも、処遇の差異あり 高い垣根による公務員部内での勤務条件の硬直的維持は困難 終身雇用公務員と類似業務であれば、処遇の不均衡は問題になりうる 終身雇用公務員と労働に関する考え方が違えば、処遇の不均衡が是認されうる =ボランティア、フリーター、老後など
公務従事形態の差異の必要性 公務員でなければできない特殊性の確定 例)公権力の行使、秘密保持、政治的中立、私的利益からの中立 例)公権力の行使、秘密保持、政治的中立、私的利益からの中立 多様な任用・公務従事形態の最適混合 形態の差異による長所の組み合わせ 形態の差異によるグループ別格差 協働できる技能を育成する必要
開放的「管理運営」能力 自治体人事当局の随時的個別的採用能力 広義の地域人材の管理は、自治体人事当局はできないし、望ましくもない 地域人材は、人事管理に馴染まない? →調整メカニズムの設定と運営は必要に 地域人材に関する広範な労使関係の発生 対等性・自発性 労使関係ではなく人間関係