地政学2 「新しい地政学」の登場 政治地理学の理論と方法論 第3週
戦後の政治地理学(日本の場合) 地政学に対する「反省」 沈黙、タブー視、批判 応用科学への指向性 否定的/無批判? 地理教育での復活の試み ↓ 学術的研究では国家と国際関係が対象外
戦後の政治地理学(英語圏の場合) 戦後の停滞期 1960年代:ベトナム反戦運動、都市暴動、学生運動 1970年代:政治地理学の復興 地理学外での古典地政学の継承 →冷戦地政学
冷戦地政学 冷戦期のアメリカ外交(戦略論)における地政学的概念 封じ込め理論(1947:~1980年代) ドミノ理論(1947) 第二次大戦後の基本的対ソ戦略 ソ連の「他者」化 対立の永続化と米軍の世界展開、第三世界介入 ドミノ理論(1947) 共産主義の拡散形容(地政学的イメージ) 実際の体制変革を歪曲
第二次冷戦の特徴 1979~1985年(←1946~1953年) ソ連アフガン侵攻、イラン革命、ニカラグア共産ゲリラ勝利 世界政治の軍事指向化、米ソ対立の激化 アメリカの覇権低下 レーガン政権の対ソ戦略 古典的冷戦地政学概念(ドミノ理論等)の復活 反共単独行動主義、核戦争遂行戦略
政治地理学の復活(英語圏の場合) Progress in Human Geography創刊号(1977年)からProgress Report 1982年Political Geography Quarterly創刊 1985年Taylor著”Political Geography”刊行 ウォーラーステインの世界システム論をもとに政治地理学を体系化 世界経済(中心周縁関係)から国際・国内政治の歴史的動態を説明 遺産(古典地政学)評価から「新しい地政学」へ
新しい地政学(new geopolitics) 研究スケールの拡大 国際関係に対する世界経済の構造規定性 古典地政学と同様の視線と視野 古典地政学の「相対化」 古典地政学の見直し 外交・軍事への応用ではなくその実証分析(脱ゲオポリティーク化) 覇権国家への批判的視角(広義の批判地政学)
理論的・方法論的展開 世界システム論導入 従属論 資本主義世界経済の波動・不均等発展と世界政治秩序 構造主義的「決定論」 実証的検証が可能
批判社会理論導入 国際関係論における第三の論争 実証主義的vs.批判的アプローチ 国際関係における「自明」論理の批判的相対化 国際関係の「現実」を構成する言説を分析 反体制的 狭義の批判地政学
批判地政学(critical geopolitics) Gearóid Ó Tuathail(Gerard Toal)の場合 地理学と権力の系譜論 フェミニズム論、ポスト構造主義、脱構築に立脚←批判国際関係論 政治家・知識人による地政学的言説の批判的解釈(山崎1998参照)→権力批判 日本では学史的紹介のみ、和文の応用例は皆無か(cf. Yamazaki 2003)
政治家の世界観 危機/恐怖の言説 状況の単純化 政策の正当化
911、米国、新しい地政学 AAGによる米本土安全保障への貢献 アメリカの政治地理学者による研究 日本の場合 対テロ戦争へのGIS活用 テロ発生の政治経済的要因分析 アメリカの政治地理学者による研究 リベラル・左派のポジション(cf. Cohen) 軍事地理学(military geography)の存在 日本の場合 右派的観点からの地政学待望論? 政治地理学=応用地理学?