裁判所からの 「原告に説明を求める事項」 についての説明

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裁判所からの 「原告に説明を求める事項」 についての説明 辰巳ダム貯水池周辺の地すべり (地すべり面の想定、安全率) 2012年12月12日 進行協議形式勉強会 原告説明者: 奥西一夫 1 1

地すべり関係 (1)地すべり面の想定 ・想定地すべり面の有無や場所を判断する基準 ・L3ブロックに係る想定地すべり面の判断及びその過程 (2)安全率(R/D比) ・対策工を必要とする地すべりの危険(の存否)を判断する方法 ・マニュアル(貯水池の周辺の地すべり調査と対策)に規定された判断方法の妥当性 ・被告の安全率(R/D比)計算の妥当性

(1)地すべり面の想定 ・想定地すべり面の有無や場所を判断する基準 ・L3ブロックに係る想定地すべり面の判断及びその過程

地すべりの定義の再確認 地すべりと崩壊 ○地すべり ・・・すべり面が明瞭 ○地すべり性崩壊・・・すべり面が不明瞭だが、これも地すべり   ○地すべり ・・・すべり面が明瞭   ○地すべり性崩壊・・・すべり面が不明瞭だが、これも地すべり   ×崩壊・・・すべり面がない

地すべりと崩壊の特徴

想定地すべり面の有無や場所を判断する基準 被告の想定地すべり面の有無や場所を判断する基準 「概査」では、地すべり地形予察図→地すべり分布図→精査が必要な地すべり地を抽出 「精査」では、ボーリング調査や孔内傾斜計の設置で地すべり面を把握 どこが問題か 動いていないと判断が難しい。 分からないときの判断がマニュアルに記載なし。

地形図による地すべり地形の判読 (被告説明スライド9)

空中写真による地すべり地形の判読 (被告説明スライド10)

L3ブロックに係る想定地すべり面の判断及びその過程 ①外形的地形 ②ボーリング調査で調べた旧河床堆積物 ③ボーリング調査で確認した基盤岩 ④ボーリング調査のコア性状で確認された粘土状と破砕化等乱れた層 ⑤ボーリング調査による泥岩層

外形的地形 ブロックの上端 滑落崖 ブロックの下端 隆起した形状

ボーリング調査による (被告説明スライド18) ボーリング調査による (被告説明スライド18)

地すべり土塊と基盤岩 (被告説明スライド13) 地すべり土塊と基盤岩 (被告説明スライド13)

ボーリングコアの観察 (被告説明スライド14) ボーリングコアの観察 (被告説明スライド14)

原告のすべり面の判断と過程についての指摘 ① 土塊の下の旧河床堆積物についてー1 原告のすべり面の判断と過程についての指摘 ① 土塊の下の旧河床堆積物についてー1 1測線 旧河床堆積物の上面にすべり面 rdo(旧河床堆積物) 6測線 旧河床堆積物の下面にすべり面 rdo(旧河床堆積物) 19 断面図の出典:平成18年度犀川治水ダム建設事業基本設計会議資料作成業務委託報告書、7-20ページ

原告のすべり面の判断と過程についての指摘 ① 土塊の下の旧河床堆積物についてー2 原告のすべり面の判断と過程についての指摘 ① 土塊の下の旧河床堆積物についてー2 すべり面が旧河床堆積物の上から下へ変化している理由が不明 6測線 1測線 rdo(旧河床堆積物) rdo(旧河床堆積物) すべり面は、 旧河床堆積物の下 すべり面は、 旧河床堆積物の上 断面図の出典:平成18年度犀川治水ダム建設事業基本設計会議資料作成業務委託報告書、7-24-7ページ

② ボーリングで確認した基盤岩 あらたな解析手法の矛盾 ② ボーリングで確認した基盤岩 あらたな解析手法の矛盾 細粒土塊が厚く堆積するはず?

③ ボーリング調査のコア性状で確認された粘土状と破砕化等乱れた層 泥岩層のすべり面の疑問 ③ ボーリング調査のコア性状で確認された粘土状と破砕化等乱れた層 泥岩層のすべり面の疑問 1測線 Ims(泥岩層) 泥岩層の下面にすべり面 Ims(泥岩層) 6測線 泥岩層の上面にすべり面 6測線 1測線 泥岩層 すべり面が泥岩層でない 17 断面図の出典:平成18年度犀川治水ダム建設事業基本設計会議資料作成業務委託報告書、7-20ページ

④ 想定すべり面は複数 L3ブロック全体① ②’ L3の末端ブロック③ ② ① ③ L3ブロック全体②、②’ ダム湖湛水

(2)安全率(R/D比) ・対策工を必要とする地すべりの危険(の存否)を判断する方法 ・マニュアル(貯水池の周辺の地すべり調査と対策)に規定された判断方法の妥当性 ・被告の安全率(R/D比)計算の妥当性

対策工を必要とする地すべりの危険(の存否)を判断する方法 安定性の評価:  「安定」 →外力等を加えても「安定」  「安定」 →外力等を加えると「不安定」  「不安定」→外力等を加えるとさらに「不安定」 現状評価: 動いているか動いていないか 湛水などによる外力等が加えた評価: スライス法(簡便法) で安定解析

マニュアル(貯水池の周辺の地すべり調査と対策)に規定された判断方法の妥当性  現状の安定性を評価できない   現状からの低下量は計算できる  スライス法(簡便法)による評価   R/D比の計算(R:抵抗力,D:滑動力)

R/D比算定式 摩擦による抵抗力 抵抗力 粘着力による抵抗力 滑動力 分割片の滑動力の総計

R(抵抗力)とD(滑動力)

抵抗力R=摩擦力+粘着力

「対策工実施の有無の判別の流れ」

粘着力の決め方

? 湛水の水位条件の決め方が不明 地すべりの安全性確保の想定水位 ダム堤体の安全性確保の想定水位 設計洪水位135.5m サーチャージ水位132m 乙第96号証 40

マニュアルは必要条件であり、十分条件でない  大規模の地すべりに対する対応   記載無し、事後に対応  初生地すべりは   今後の課題として扱い

被告の安全率(R/D比)計算の妥当性 (その1):すべり面が平坦 0.009低下 0.019低下 φ’=9.50°,tanφ’=0.17 0.04低下 0.03低下 φ’=8.74°,tanφ’=0.15 0.019低下 0.027低下 φ’=7.30°,tanφ’=0.13

すべり面が平坦→R/D比低下の変化が小さい 抵抗力R/滑動力D=1.0→ 抵抗力R=滑動力D 抵抗力R=摩擦による抵抗力Rf+粘着力による抵抗力Rc  であるので、 摩擦による抵抗力Rf=滑動力D-粘着力による抵抗力Rc  となる。 すべり面が平坦→逆算のtanφ’が小さくなる→湛水で土塊に浮力→摩擦による抵抗力が少し低下→Rがすこし小さく→R/D比低下の変化がすこし小さく 土塊の重さ×tanφ’

被告らのR/D比計算の妥当性 (その2):末端地すべりの評価がない 地すべり土塊の末端で崩壊したケース 「平成18年度犀川辰巳治水ダム建設事業貯水池地質解析業務委託報告書」による

被告らのR/D比計算の妥当性 (その3):設計水位で検討していない 湛水によるR/D比低下 a: (サーチャージ水位時)<(水位下降時) b:(サーチャージ水位時)>(水位下降時)

被告らのR/D比計算の妥当性 (その3):設計水位で検討していない サーチャージ水位時 0.019低下 水位下降時 0.027低下

(その4):粘着力による抵抗力の項が過大に評価 被告らのR/D比計算の妥当性 (その4):粘着力による抵抗力の項が過大に評価 辰巳L3(6測線)すべり(H18) 水位低下132m→97m (L3-1ブロック) L3ブロック全体の安全率0.979 起動力 0.006アップ (L3-2ブロックの安全率0.973) 抵抗力 湛水水位 粘着力25kN/m2 31

R/D比一覧の比較 R/D比一覧 一体 L3 1測線 ? 6測線 ⑤ ⑥ 分割 L3-2 ① ② ③ ④ 132 0.991 0.979 ブロック分割 測線 水位 安全率 番号 一体 L3 1測線 132 ? 132→97 6測線 0.991 ⑤ 0.979 ⑥ 分割 L3-2 ① 0.981 ② ③ 0.973 ④ 平成18年 すべり面 断層線なし 平成16年 すべり面 断層線あり ブロック分割 測線 水位 安全率 番号 L3-2 6測線 132 0.96 ⑦

R/D比一覧の比較 R/D比低下量 水位の影響分 ー0.010 測線の影響分 ー0.009 すべり面の違い ー0.021 合計 -0.040 合計 -0.040 番号①の場合 0.991 → 水位、側線、すべり面の違い分-0.040を引き算 → 0.951 番号⑦の場合 0.96 → 水位の影響分-0.010を引き算 → 0.95

おわり