情報処理Ⅱ 2006年1月13日(金)
本日学ぶこと 前処理指令 マクロ ライブラリ関数の活用 問題 サイコロを何度も振って,全ての目が最低1回出るまで,何回振らなければならないか? 最小6回,上限なし(∞回?) 欲しいのは現実的な値 20面のサイコロだったら? 5000だったら?
前処理とコンパイル(1) 前処理・コンパイル・アセンブル・リンクの各処理は通常,コンパイラ(ccなど)が一手に引き受ける. ソースファイル (前処理前) ソースファイル (前処理後) 前処理 コンパイル アセンブル オブジェクト ファイル 実行ファイル リンク 前処理・コンパイル・アセンブル・リンクの各処理は通常,コンパイラ(ccなど)が一手に引き受ける.
前処理とコンパイル(2) 前処理は, 前処理のコマンド(プリプロセッサ)は,cpp 狭義には,「コンパイルに先立って行われる処理」であり,したがってコンパイルとは別 広義には,ccでコンパイルすれば自動的に処理してくれる,という意味でコンパイル作業の一部 前処理のコマンド(プリプロセッサ)は,cpp Cの前処理以外にも使用可能
前処理指令 (Preprocessing directive) 「プリプロセッサ 指令」ともいう マクロ定義(#define) オブジェクト形式マクロ ⇒「定数」の定義 関数形式マクロ ⇒「関数もどき」の定義 ソースファイルの取り込み(#include) 条件付きコンパイル(#if ... #endif など)
オブジェクト形式マクロ(1) 語の置き換えを行う. プログラム修正により変わり得る定数値があるときに,よく用いられる. #define 置換対象 置換内容 #define WORD_SIZE 6 と記述すると,それ以降 int a[WORD_SIZE]; は int a[6]; と同じ意味になる. プログラム修正により変わり得る定数値があるときに,よく用いられる. 配列の上限値,他と区別する値など. うまく使うことで,定数値を変えるときのプログラム修正箇所を少なくできる. 列挙型のほうがいいかも
オブジェクト形式マクロ(2) 注意点 前提: #define WORD_SIZE 6+1 単純に置き換える. int a[WORD_SIZE * 2]; は,int a[6+1 * 2]; に置き換えられる(意図した動作ではない). ⇒ #define WORD_SIZE (6+1) とすればよい. 語のみを置き換える. print_WORD_SIZE( ) のような「語の一部」や,printf("WORD_SIZE"); のような「文字列中の語」は,置き換えない.
オブジェクト形式マクロ(3) 注意点(続き) 予約語も置換可能. #define char signed char は文法上問題ないが,よい書き方ではない.現在では, typedef signed char schar; とすべきである. 置換内容のない名前も定義できる. #define DEBUG 末尾にセミコロンをつけない. #define WORD_SIZE 6; は(たいていの場合)間違い.
関数形式マクロ(1) オブジェクト形式マクロとほぼ同じ書式. 置換対象に「(…)」をつける. #define pint(x) printf("%d\n",x) に対して,pint(a+1); は printf("%d\n", a+1); に置き換えられる. 複数の引数をとることもできる.そのときは,置換対象の各引数の間にカンマを入れる. カッコ内に何も書かなければ,引数なしの関数形式マクロが定義される.
関数形式マクロ(2) 注意点 単純に置き換える. #define mul(x, y) x*y に対して, z=mul(6+1,2); としたとき,z=14ではなくz=8となる. ⇒ #define mul(x, y) ((x)*(y)) のように, 置換対象の引数と,評価式全体にカッコをつける. 置換対象に引数を2箇所以上書くことができる.このとき,その回数だけ置換される. #define triple(x) ((x)+(x)+(x)) に対してb=triple(++a); と書くと,b=((++a)+(++a)+(++a)); となる.
関数形式マクロ(3) 置換内容の中で「#引数」と書くと,引数を文字列にできる. #define pint(x) printf(#x " = %d\n", x) に対して,pint(a+1); は printf("a+1" " = %d\n", a+1); に置き換えられる. 通常の関数定義では,変数名を 引数にとってその文字列を得る ことはできない. 「文字列リテラルの連結」により,これは printf("a+1 = %d\n", a+1); と同じとなる.
関数か関数形式マクロか 関数…「機能」を正確に表現したいとき マクロ…「機能」を簡便に表現したいとき 例:int square_int(int x) { return x * x; } 引数や戻り値の型に制約される. 関数呼び出しのオーバーヘッドがある. ローカル変数や制御文を活用できる. 実引数が++aなどのときも,その評価は一度だけ. マクロ…「機能」を簡便に表現したいとき 例:#define square_int(x) ((x) * (x)) 引数や評価式に型はない. (狭義の)コンパイル前に展開され,オーバーヘッドは少ない. ローカル変数や制御文は使用しにくい. (マクロ利用側の)引数は,置換内容の回数だけ評価される.
# define pint( x ) printf ( #x " = %d\n" , x ) 前処理指令と空白・コメント ...不可 ...必須 # define pint( x ) printf ( #x " = %d\n" , x ) ...任意 一つの前処理指令は,1行で書かなければならない.ただし, 行末に「\」を置くことで,複数行で書ける. 関数形式マクロの場合,括弧の途中で改行できる. 前処理指令の中でコメント(/* */ もしくは //)を書くと,前処理時に空白文字に置き換えられる.
条件付きコンパイル(1) #if 定数式 … #endif 定数式が真のときに「…」を残し,そうでなければ「…」を捨てる. 定数式の評価や「…」の取捨は,前処理時に行われる.
条件付きコンパイル(2) 「#if 定数式」に代えて,「#ifdef 名前」や 「#ifndef 名前」も利用可能. 「#else」や「#elif 定数式」も記述可能. 条件付きコンパイルは入れ子にできる. 条件付きコンパイル 参考: Cのif文 #if 条件式1 … #elif 条件式2 #else #endif if (条件式1) { … } else if (条件式2) { } else { }
他のファイルの取り込み #include <ファイル名> #include "ファイル名" ライブラリ関数などが宣言されているファイルを取り込む(インクルードする). #include "ファイル名" 自作のファイルを取り込む.
ヘッダファイル 定数,構造体や特殊な型,関数プロトタイプや関数形式マクロなどが宣言・定義されているファイル. 慣例として #include <stdlib.h> とすると,/usr/include/stdlib.h を取り込む(ヘッダファイルの所在は処理系依存). ヘッダファイルの中で,他のヘッダファイルをインクルードすることもよく行われる. 慣例として ファイル名を「.h」で終わらせる. 関数は,「宣言」のみして「定義」はしない. 同一ファイルに対する複数回のインクルードがあっても,2回目以降は処理しないようにする.
ヘッダファイルとライブラリ関数 既に定義されている関数や定数を利用するには,あらかじめ,適切なヘッダファイルをインクルードしなければならない. printf なら #include <stdio.h> NULL なら #include <stdlib.h> が一般的. インクルードすべきヘッダファイル名は,manpage で知ることができる. man 3 printf jman 3 printf JM Project (http://www.linux.or.jp/JM/)
サイコロ問題 仕様 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ 目の数は6つ.ただし変更の可能性あり. サイコロの目は1~6のいずれかとする. 出た目はその都度出力する. 全ての目が出たら,何回振ったかを出力し,終了する. ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪
サイコロ問題の考え方(1) サイコロの振り方 ライブラリ関数のrandを用いる あらかじめ #include <stdlib.h> int a = rand(); により,aにはint型の値が一つ代入される.この値は,ある範囲の中でどの値も等しい確率で選ばれる(一様乱数). int spot = rand() % 6; で,spot には 0~5 のいずれかが代入される. int spot = rand() % 6 + 1; とすればいい! 擬似乱数のため,何度実行しても同じ目が出る.これを変えるには,適切な値の種を与えればよい.
サイコロ問題の考え方(2) 「全ての目が出る」とは? int spot_counter[SPOT_MAX + 1]; 目ごとに出た回数 特定の目がまだ出ていないかの判定は, if (spot_counter[spot] == 0) 全ての目が出たかを,この配列変数だけで判定することはできるが,非効率 int counter_unfound = SPOT_MAX; まだ出ていない目がいくつあるか 一つずつ減らしていき,0になればループから抜ける
サイコロ問題で定義したマクロ #define SPOT_MAX 6 目の数を表す,オブジェクト形式マクロ ここ以外で「6」と書かない.これにより,目の数が変わるようなプログラムにも対処しやすい. #define cast_dice(spot_max) (rand() % (spot_max) + 1) サイコロを1回振って,出た目を返す,関数形式マクロ 呼び出し元では int spot = cast_dice(SPOT_MAX); であり,これは int spot = (rand() % (SPOT_MAX) + 1); になる. 「cast_dice(1000*5)」のように使うことも可能
有用なライブラリ関数(1) #include <stdio.h> を必要とするもの int putchar(int c); … 1文字出力 #include <stdlib.h> を必要とするもの int atoi(char *s); … 文字列から整数値への変換 void exit(int status); … プログラムの終了 int rand(void); … 乱数生成 #include <string.h>を必要とするもの size_t strlen(char *s); … 文字列の長さ int strcmp(char *s1, char *s2); … 文字列比較 char *strstr(char *s1, char *s2); … 文字列検索
有用なライブラリ関数(2) #include <ctype.h> を必要とするもの int isdigit(int c); … 文字が数字であるか判定 int tolower(int c); … 大文字を小文字に変換 int toupper(int c); … 小文字を大文字に変換 #include <math.h> を必要とするもの double exp(double x); … eのx乗 double floor(double x); … x以下で最大の整数
まとめ 前処理指令をうまく使えば,読みやすく保守しやすいプログラムを書くことができる. 前処理は,コンパイルの前に行われる.そのため,前処理指令の書式はCの文法と異なる. ライブラリ関数を使うには,#includeを用いて適切なヘッダファイルをインクルードするとともに,その使い方(引数,出力も)をよく理解しておく.
スケジュール 第13回:1月20日(金) 13:10~14:40 第14回:1月23日(月) 14:50~16:20 A104 第13回:1月20日(金) 13:10~14:40 ファイル入出力,標準入出力,mallocなど 第14回:1月23日(月) 14:50~16:20 A104 おさらい問題を実施 再履修で他の授業と重なっている人は,そちらを優先し, 授業後に来てください. (1月27日(金)は出張のため休講) 試験:2月3日(金) 13:10~14:40 Cの書籍1冊および自筆ノート1冊の持込可