IUGONETデータ解析講習会@極地研 2011年7月27日(水) RISHデータ解析講習 担当:新堀淳樹(京大RISH)
1. 講習内容 地球大気の鉛直構造とその観測測器 (2) 京大生存研の保有する観測測器とそのデータについて (2) 京大生存研の保有する観測測器とそのデータについて 赤道大気レーダー、信楽MUレーダー、 インドネシアの流星・MFレーダー (3) 赤道大気レーダーのデータ解析演習 基礎編:各種論文に記載されている図の再現 応用編:他のデータセットとの統合解析
2. 地球大気の鉛直構造 熱圏 中間圏 成層圏 対流圏
3. 赤道大気の上下間結合 <赤道大気現象を観測する意義> 赤道大気現象とその上下間結合 これらの中性大気の振動と電離圏プラズマとの相互作用によって、電離圏不規則構造や赤道ジェット電流の変化が発生 ↑ 波動-波動、波動-平均流相互作用を介して、半年(SAO)・準2年周期振動(QBO)などを駆動する ↑ 波動の上方伝搬によって、力学エネルギーと運動量が上層に輸送される。 広い周波数帯の多種の大気波動(ケルビン波、混合ロスビー波、潮汐、重力波)が生成する 強い太陽放射により積雲対流が活発に励起される 赤道大気現象とその上下間結合
3. 赤道大気の上下間結合 <赤道大気に関する重要研究テーマ> 赤道大気・流星レーダー等を用いた研究内容 1.高精度の風速ベクトル測定 赤道大気・流星レーダー等を用いた研究内容 1.高精度の風速ベクトル測定 ⇒積乱雲の生成と消滅による風速変動の微細構造の解明 2.赤道大気の長期連続観測 ⇒大気波動と大気循環の関連を 明らかにする 3.地表付近から電離層にわたる観測 ⇒赤道大気の力学的 上下結合の解明 (CPEA特定領域研究:2001-2007) 以上の観測を総合することで、オゾンや二酸化炭素など大気微量成分の 全球輸送の様子やエルニーニョ現象などの気候変動につながる地球大気 の変動を 明らかにできる
4. 地球大気の観測測器
5.京大生存研の保有する観測測器 <赤道大気レーダー(EAR)> 赤道大気レーダーの諸元 赤道大気レーダーの諸元 位置: 東経100.320度、南緯0.204度、 海抜865m 中心周波数: 47.0 MHz 送信出力: 100 kW アンテナ形式: 略円形アクティブ・フェーズド・アレイ (直径約110m, 3素 子八木アンテナ560本) アンテナビーム幅、方向: 3.4度 (-3 dB, 片道)、任意 (天頂角30度以内) 観測高度: 1.5km-20km (大気乱流)、 90km以上 (電離圏イレギュラリティ)
5.京大生存研の保有する観測測器 <インドネシアのMF、流星レーダー群> ★ ★ ★ ★ Meteor radar Kototabang (2002-) MF radar Pontianak (1995- ) Regional network in Indonesia (1992- ) 流星レーダー (Jakarta, Koto Tabang) MFレーダー (Pontianak, Pameungpeuk) ★ ★ ★ ★ Meteor radar Jakarta (1992-1999) MF radar Pameungpeuk (2004-) MF radar
5.京大生存研の保有する観測測器 <コトタバン流星レーダーについて> コトタバン流星レーダーの諸元 Meteor radar Kototabang (2002-) コトタバン流星レーダーの諸元 位置: 東経100.320度、南緯0.204度、 海抜865m 中心周波数: 37.7 MHz 送信出力: 12 kW 観測高度: 70km-110km (中間圏・ 下部熱圏風速) 5本のアンテナの干渉計で全天の 流星飛跡の方向を計測 レーダーの原理図
6.京大生存研の保有する観測測器 <赤道大気レーダー(EAR)のデータベース> 1.対流圏・成層圏標準観測 http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/ear/data/index.html 実データ:CSV、NetCDF形式、時間分解能:10分 風速3成分、エコー強度、スペクトル幅 画像データ:高度-時間プロット(1日、1月) 2. 電離圏FAI観測(E領域、E/F領域、V領域、F領域) http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/ear/data-fai/index.html 実データ:CSV、NetCDF形式、時間分解能:観測モードに依存 Doppler速度、エコー強度、スペクトル幅、ノイズレベル エコー強度
7. EARデータ解析演習 <対流圏・成層圏標準観測データ解析> [基礎課題1] 赤道大気レーダーの対流圏・成層圏標準観測モードでとらえられた熱帯域の成層圏下部から対流圏の風速の高度時間プロットの作成 日時:2001/11/01-2001/12/31 観測高度範囲:2-20 km 時間分解能:10分 上段:東西風 中段:南北風 下段:鉛直上向き風 下部成層圏(15-20 km)で赤道ケルビン波に伴う周期10日程度の東西風変動が観測されている Fukao et al., 2002; Hashiguchi et al., 2002
7. EARデータ解析演習 <対流圏・成層圏標準観測データ解析> [基礎課題1] (1) 対流圏・成層圏観測データ解析-1 ●日時を指定して高度-時間プロットを作成する > timespan, ‘2001-11-01’, 61 ,/day (2001/11/01から61日分のデータの日時指定) > iug_load_ear, datatype = ‘troposphere’, $ > tplot_names (tplot変数名の確認) 風速3成分、各ビーム毎のスペクトル幅等のtplot変数がロードされる > tplot, ‘tplot変数名’ ⇒プロットが出力される ※複数のプロットをしたい場合: > tplot, [‘tplot1’, ‘tplot2’,…]
7. EARデータ解析演習 <対流圏・成層圏標準観測データ解析> [基礎課題1] (1) 対流圏・成層圏観測データ解析-2 ●簡単な解析の演習 > zlim, ‘tplot変数名’, 最小値、最大値 (カラーバー範囲変更) (ex. > zlim, 1, -20,20) > tsmooth_in_time, ‘tplot変数名’, 時間(秒) 例えば、東西風速の1日の移動平均をかけたい場合、tplot変数名のところに東西風速を表すtplot変数名を、時間のところに86400秒をいれればよい。 > ylim, ‘tplot変数名’, 最小値、最大値(y軸の範囲変更) 例えば、東西風速の高度10-20kmの対流圏界面、成層圏下部の部分を拡大したい場合は、 tplot変数名のところに東西風速を表すtplot変数名を、最小、最大のところに、10, 20をそれぞれいれればよい。(他も同様)
7. EARデータ解析演習 <対流圏・成層圏標準観測データ解析> [基礎課題1] (1) 対流圏・成層圏観測データ解析-3 ●簡単な解析の演習 > tlimit, ‘tplot変数名’, 開始日時、終了日時 (時刻範囲変更) (ex. > tlimit, ‘2001-11-24’, ‘2001-12-06’) 例えば、得られているプロットの図に対して、横軸の時刻範囲を2001年11月24日から2001年12月6日に拡大したい場合、このコマンドを用いる。 自分の好きな箇所を拡大したい場合は、tlimitだけを打つと、プロットにカーソルを持ってくると、十字の線が現れるので、各々のところで、右クリックをすれば、そこの時刻の拡大図が出来上がる。 zlim等でカラーバーの範囲をあらかじめ設定しておくと、時刻を拡大した時に、その範囲が自動で設定されなくなる。
7. EARデータ解析演習 <電離圏FAI観測データ解析>[基礎課題2 +応用課題] (3) 解析後のプロット等の保存 (3) 解析後のプロット等の保存 ●作成したプロットをpsやpngファイル等へ保存 [psファイルへの保存] > popen, ‘ 保存するファイル名’ ex. popen, ‘test.ps’ > tplot > pclose [pngファイルへの保存] > makepng, ‘保存するファイル名’ ex. makepng, ‘test’
7. EARデータ解析演習 <対流圏・成層圏標準観測データ解析> [基礎課題1] 2001年11月1日から12月31 日までの時系列プロット 2001年11月24日から12月6 日までの拡大プロット
7. EARデータ解析演習 <電離圏FAI観測データ解析>[基礎課題2 +応用課題] 演習の流れ: (1) FAI観測データ解析 2007年8月25・26日10:00-15:00 (LT)のFAI観測モードデータ 視線速度、スペクトル幅、エコー強度の高度-時間プロットの作成 平均値の計算、平均場の除去、移動平均 (2) 他のデータとの比較解析 京大・名大・九大の地磁気データとの比較 赤道ジェット電流の変化と電離圏不規則構造の出現との関係 (3) 解析後のプロット等の保存 作成したプロットをpsやpngファイル等へ保存
7. EARデータ解析演習 <電離圏FAI観測データ解析>[基礎課題2] 課題: 赤道大気レーダー(EAR)の電離圏FAI観測で捉えられた昼間側赤道電離圏150kmの電離圏不規則構造の解析 ●演習に用いるEAR観測データ 2007年8月25・26日10:00-15:00 (LT)のFAI観測モードデータ ●EARの観測モード V-regionモード(fai150p8c8b 、fai150p8c8d、fai150p8c8e) fai150p8c8b (Az: 180.0, Ze:21.2) fai150p8c8d (Az: 225.0, Ze:29.23) fai150p8c8e (Az: 150.1, Ze:24.03)
7. EARデータ解析演習 <電離圏FAI観測データ解析>[基礎課題2] 日時:2007/08/25 03:00-08:00 観測高度範囲:130-170 km 時間分解能:10分程度 上段:エコー強度 中段:スペクトル幅 下段:視線方向のドップラー速度 観測ビーム方向: fai150p8c8d (Az, Ze) = (165.0, 21.84) Patra et al., 2008
7. EARデータ解析演習 <電離圏FAI観測データ解析>[基礎課題2] (1) FAI観測データ解析 ●日時を指定して高度-時間プロットを作成する > timespan, ‘2007-08-24’, 3 ,/day (2007/08/24から3日分のデータの日時指定) > iug_load_ear, datatype = ‘v_region’, $ parameter1 = ‘150p8c8b’ > tplot_names (tplot変数名の確認) > tplot, ‘tplot変数名’ ⇒プロットが出力される ※複数のプロットをしたい場合: > tplot, [‘tplot1’, ‘tplot2’,…]
7. EARデータ解析演習 <電離圏FAI観測データ解析>[基礎課題2] (1) FAI観測データ解析 ●高度と時間範囲の変更 [高度範囲の指定] > ylim, ‘ tplot変数名’, (下限値), (上限値) 下限=130、上限=170 [時刻範囲の指定] > tlimit, ‘2007-08-25 03:00’, ‘2007-08-25 08:00’
7. EARデータ解析演習 <電離圏FAI観測データ解析>[基礎課題2] (1) FAI観測データ解析 ●平均処理、平均場の差し引き、移動平均 [平均処理] > avg_data, ‘ tplot変数名’, (平均する時間幅、単位は秒) ex. 平均する時間幅=600 [平均場の差し引き] > tsub_average, ‘tplot変数名’ [移動平均] > tsmooth_in_time, ‘tplot変数名’, (平均する時間幅、単位は秒) ex.移動平均する時間幅=3600
7. EARデータ解析演習 <電離圏FAI観測データ解析>[基礎課題2] parameter1 = ‘150p8c8d’ (Az, Ze) = (225.0, 29.23) parameter1 = ‘150p8c8e’ (Az, Ze) = (150.1, 24.03)
7. EARデータ解析演習 <電離圏FAI観測データ解析>[応用課題] (2) サブストーム時の夜側の赤道電離圏変動解析 (2) サブストーム時の夜側の赤道電離圏変動解析 ●京大・名大の地磁気データ、地磁気指数との比較 [ダウンロード時刻範囲の指定] > timespan, ‘2007-08-24’, 3 ,/day [210度地磁気データのロード:コトタバン] > erg_load_gmag_mm210, site = ‘ktb’, datatype = ‘1min’ [京大WDC地磁気指数(AE)のロード] > iug_load_gmag_wdc, site = ‘ae’ [プロットの作成] > tplot, ‘tplot変数名’, [‘tplot1’, ‘tplot2’,…]
7. EARデータ解析演習 <電離圏FAI観測データ解析>[応用課題] 2007年8月24日から8月27 日までの時系列プロット 左図に示されるような、地磁気指数(AE)、コトタバンの地磁気データ、及びEAR電離圏FAI観測モードで得られた電離圏プラズマの視線方向速度の高度-時間プロットを作成する 日時:2007/08/24-27 観測高度範囲:80-200 km 時間分解能:10分程度 上段:エコー強度 中段:スペクトル幅 下段:視線方向のドップラー速度 観測ビーム方向: fai150p8c8e (Az, Ze) = (150.1, 24.03)
7. EARデータ解析演習 <電離圏FAI観測データ解析>[応用課題] 〇地磁気指数(AE)の変化 2007年8月25日から8月26 日までの時系列プロット 〇地磁気指数(AE)の変化 11:40過ぎに、AEの急激な増加と ALの急激な減少を示す →サブストームの発生 〇コトタバン地磁気の変化 上記の時刻に対応して、H成分の 急激な減少が現れ、これは、内部 磁気圏で形成された環電流による ものである。 〇夜側電離圏プラズマの変化 高度100-120kmの範囲における電 離圏プラズマの視線速度が上記の サブストームに対応して増加して いる →東向き電場によるExBドリフト
8. まとめ ●今回の解析講習会で、京大生存圏のデータ(赤道大気レーダー:対流圏・成層圏標準観測、電離圏FAI観測)、地磁気指数(AE)、及びコトタバンの地磁気データの統合解析演習を行った。 ●この解析講習会を通じて、各種の分野の異なるデータの統合解析の手法とUDASの使用法を学んだわけであるが、これ以外にもIUGONETプロジェクトでは、多くの超高層観測データ(MLT領域の風速場など)の検索、解析ソフトを公開しているので、皆さんは、ドシドシ使い倒してほしい。 ●今後も解析ツールの修正や公開データの種類の増加に伴うアップデートがなされるので、IUGONETのホームページを見てほしい