行動分析実習(7) もろもろ問題集 http://d.hatena.ne.jp/marumo50/ 関連ブログ「行動福祉心理学 行動分析実習(7) もろもろ問題集 関連ブログ「行動福祉心理学 http://d.hatena.ne.jp/marumo50/ 望月昭 mochi@lt.ritsumei.ac.jp
Question: ●赤ん坊の「抱き癖」を停止するには? 1)赤ん坊の行動への操作(母親の対応): 2)母親の行動への操作(母親への対応):
赤ん坊の「泣く」行動 先行状況 抱かれていない 行動 泣く 後続状況 抱かれる 即時的強化 ●この効果をなくすには? ・消去? 罰? ・「随伴性」の関係をなくす?
母親の「抱く」行動 先行状況 泣声あり 行動 抱く 後続状況 泣き声なし 一時的だが即時的環境変化 ●この効果をなくすには? ・消去? ・罰? ・「確立操作」:「嫌悪刺激」をなくす 嫌悪的でないようにする
討論用事例1:トイレに異物を 流してしまうケース 討論用事例1:トイレに異物を 流してしまうケース 対象者: 施設居住歴10年. 27歳男性. 社会での職歴あり. 「盗癖」あり(賽銭泥棒、日常的会話可能.日中作業は「箱づくり」. 問題となった行動: 恒常的な問題行動:トイレに異物を流す、 時折みられる行動:異食(くぎ)、盗癖、
トイレに異物を流す 1)何が強化になるのだろうか? 2)対応方法は?
トイレに異物を流す 先行状況 行動 後続状況 トイレ正常 トイレ洪水 異物を流す 注目なし 注目あり ・職員の叱責 ・体罰 ・他の利用者 からの非難 「叱責」が行動的に罰とは限らない. 思い込みより事実
職員の叱責行動を維持する随伴性の法則 先行状況 行動 叱責する 後続状況 その時は 「反省する」 下水つまる (あふれる) 即時的に強化される 負の強化であれ即時的に強化される行動は影響を受けやすい. 人は自分が何によって強化されているか気づかないことが多い
対処の方法 ・本人の行動随伴性の操作 消去? 罰? ・職員の行動随伴性の操作 消去? 罰? ・正の強化を用いる方法
正の強化による対処 1)問題行動への直接の対処 2)より全般的な生活改善(行動の改善)
討論用事例2 「自傷」のケース ●対象者: 19歳男性、自閉性障害、重度の知的障害、発話なし。自宅居住、入退院を繰り返す、 問題行動:側頭部を拳で叩く、首筋をつまむ、 両側頭部に腫れあり、首筋には傷あり。 ●これまでの対処 投薬/入院(入院時しばらくして自傷は低くなるが、 時間経過の中で増大、「拘束」(ひもで身体を縛る)あるいは手袋で緩解し退院)/ 退院時にも同じ(暫くは良いが時間経過の中で増大) これを繰り返している状態。
側頭部を拳で叩く 先行状況 行動 後続状況 刺激あり 刺激なし 叩く 看護師の対応 ・身体的制止 ・ことばによる制止 +「約束」
病棟の看護師の対応 先行状況 行動 後続状況 瞬間やまる 自傷あり 制止・拘束 先行状況 行動 後続状況 拘束で自傷なし 「もう叩かないと約束して」 うなずく
対応中の本人の行動 先行状況 行動 後続状況 約束+拘束 うなずく 解放される 先行状況 行動 後続状況 解放状態 自傷 強い制止 「約束したのに!」
自傷行動と痛み(刺激)刺激の関係の解除(消去) →「手袋着用」 社会的強化の随伴性の解除 →自傷行動への消去? →対処行動に対する確立操作 ? 正の強化の使用 → ?
紹介した事例に(異物ながし/自傷)に 共通する点 →行動をやめさせる操作が強化になっている。 →一時的・即時的な強化が周囲の行動を維持してしまっている
効果という点だけで「罰」の操作を考えるなら(中島、2000「学習の心理」参照) 1.効果のある罰を使わなくてはならない。 (自傷:「やめなさい」は効果のある時のみ) 2.遅延の罰は効果がない 3.罰がくるかを知らせる信号を与えてはいけない(罰がこない場面では一層その行動が増大する) 猫への「天罰」の例を想起 4.嫌悪刺激と正の強化子が混在していると、嫌悪刺激だけでも反応が増加する場合がある
行動分析的な対処の基本は、行動をなくすことではなく、行動を増やすこと (成立させること)である。 →歴史的にもそのような対処の方法がまず考えられた。(トイレットトレイニングの例など) →自傷に関しても、基本的には(別の)行動を増やすという方法が中心であった。 →「罰」(嫌悪的刺激)の使用は、深刻な自傷への対処に使用された。