叙述が作る空所
空所を埋める 1 5W1Hのどれかが欠けていて、それが重要な情報だと判断した場合、理解主体は自分自身でそれを推測して埋めようとする。 空所を埋める 1 5W1Hのどれかが欠けていて、それが重要な情報だと判断した場合、理解主体は自分自身でそれを推測して埋めようとする。 When Where Who What Why How いつ どこで 誰が 何を なぜ どのように した
空所を埋める 2 叙述が描写だけである場合、それらの事象を関係づける情報が欠けるので、理解主体は、自分自身でそれを推測して埋めようとする。
空所を埋める 2 の例1 「午後」
歓声が沸き上がる 鳩と風船が青空を隠す 病人はベッドの上 寝返りを打って ボリュームを絞る スイッチを切る 回診です 微熱が続いているんです 回復期にさしかかったようですね
病人はベッドの上 起き上がって スイッチをいれる ボリュームを上げる ゲートから ランナーが走り込んでくる 歓声が沸き上がる 赤土のトラックを一人で走る
「午後」 歓声が沸き上がる 鳩と風船が青空を隠す 病人はベッドの上 寝返りを打って ボリュームを絞る スイッチを切る 回診です スイッチを切る 回診です 微熱が続いているんです 回復期にさしかかったようですね 病人はベッドの上 起き上がって スイッチをいれる ボリュームを上げる ゲートから ランナーが走り込んでくる 歓声が沸き上がる 赤土のトラックを一人で走る
空所を埋める 2 の例2 その日の早いうちに天候ががらっと変わって、雪は溶けて泥水になった。裏庭に面した、肩くらいの高さの小さな窓を、そんな雪溶け水が幾筋もつたって落ちた。暮れなずんでいく外の道路を車が次から次へと泥をはねかえして走っていった。でも暗くなっていくのは家の中も同じだった。 (そして、男が家を出る準備をする場面、赤ん坊を男と女とが取り合う場面があって、次のように終わる。)
やめて! 両手がはずされてしまったとき、彼女はそう叫んだ。 この子は放すもんか、と彼女は思った。彼女は赤ん坊の一方の手を掴んだ。彼女は赤ん坊の手首を握ってうしろに身を反らせた。 でも彼は赤ん坊を放そうとしなかった。 彼は赤ん坊が自分の手からするりと抜け出ていくのを感じて、力まかせに引っ張り返した。 このようにして、問題は解決された。
読み手は、いきなり終わったこの文章のかたをつけるために、次のように様々に推測する。 赤ん坊の肩が脱臼し、大きな声で泣き喚いたが、男と女は引っ張ることを止めようとせず、その結果赤ん坊は死んでしまった。男は死んだ赤ん坊を女に押し付け、家を出ていった。 赤ん坊の手が引きちぎれ、あたりが血まみれになって、男と女は我に帰り、男は不良品になってしまった赤ん坊を女に押し付け、家を出ていった。 赤ん坊のひときわ大きな泣き声で、男と女は自分達の愚かさに気がつき、話し合うことになった。