Atrial fibrillation and digoxin

Slides:



Advertisements
Similar presentations
18 班 Insulin による CCB 中毒の治 療 Ca channel blockers, Ca 拮抗薬 鹿島和孝 下地直紀 土山健一郎 村上圭吾 中村 靖.
Advertisements

循環器系の疾患 ー高齢者を中心にしてー これが・・・・ “ 恋する心臓 ” です 循環器系の疾患 ー高齢者を中心とし てー ①虚血性心疾患 1.狭心症 2.心筋 梗塞 ②心不全 ③不整脈 ④高血圧症 ⑤動脈硬化症.
三環系抗うつ薬の OVER DOSE による 中毒症状 12 班: 永川敦士 佐々木結実 黒木悟郎 田邊隆哉 細木敬祐 指導: 倉増敦朗 先生.
1. ご高齢の糖尿病患者さんと 若い人との違いはなに? 2. ご高齢の糖尿病患者さんの 治療上の注意点 3.
三例の糖尿病性腎症導入例 仁和寺診療所 田中 貫一 仁和寺診療所.
1. 動脈硬化とは? 2. 動脈硬化のさまざまな 危険因子 3. さまざまな危険因子の 源流は「内臓脂肪」 4. 動脈硬化を防ぐには
A case of pneumatosis cystoides intestinalis attributed
今 日 の ポ イ ン ト 骨粗鬆症とは 1. 糖尿病と 骨粗鬆症・骨折の関係 2. 治療の目的は骨折を 防ぐこと 3
3班 心房細動・心室頻拍.
御薬辞典2.
息苦しくてつらい 4年 佐野智子.
全身倦怠感 全身倦怠感はさまざまな病気にみられます 疲れやすい… だるい…
失神.
動悸にはこんな種類があります 心臓の動きが 考えられる病気 動悸とは、心臓の動き(心拍)がいつもと違って不快に感じることをいいます。
I gA腎症と診断された患者さんおよびご家族の皆様へ
無機質 (2)-イ-aーH.
胸痛をもたらす疾患の頻度と重大性.
糖尿病とは インスリン作用不足による 慢性の高血糖状態を主徴とする 代謝疾患群 まず糖尿病とはどんな病気か知ってしますか?
2型糖尿病患者におけるナテグリニドと メトホルミン併用療法の有効性と安全性の検討
1. 病気になると血糖値が 高くなりやすくなります 2. 最も注意が必要なのは 糖尿病の「急性合併症」 3. シックデイの対応
1. 経口薬(飲み薬)による治療が 必要なのは、どんなとき? 2. 糖尿病の飲み薬の種類と特徴 3. 飲み薬による治療を正しく
【問題症例1.】 44歳、女性。4年前より頻脈発作があった。図は頻脈発作時の心電図である。診断は?
運動と呼吸 および 心機能.
今回のテーマは、「梅雨時の体調管理」です。
老人の薬物                  16班: 奥薗                       重田                      松田                     突田                      高野                        指導:村上先生.
自律神経の研究成果 神経生理 平山正昭.
高血圧 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 二次性高血圧を除外 合併症 臓器障害 を評価 危険因子 生活習慣の改善
第1章:ATIS(アテローム血栓症)とは? atherothrombosis
1. 糖尿病による腎臓の病気 =糖尿病腎症 2. 腎症が進むと、生命維持のために 透析療法が必要になります 3. 糖尿病腎症の予防法・治療法
虫垂炎 研修医.com       
輸血の生理学 大阪大学輸血部 倉田義之.
PEACE Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education.
一 / 二次救命:BLS / ACLS BLS / ACLS概説 2012 / 06 / 04 名寄市立総合病院  循環器内科 八巻 多.
血管と理学療法 担当:萩原 悠太  勉強会.
生命科学基礎C 第5回 早い神経伝達と遅い神経伝達 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
脳血管 MR診断に必要な脳動脈の解剖 荏原病院放射線科 井田正博
1. 糖尿病の患者さんは、脳梗塞や 心筋梗塞に注意が必要です 2. 脳梗塞と心筋梗塞の原因は どちらも動脈硬化です 3.
裏面に新たな認定基準の一覧を掲載していますので、ご参照ください。
裏面に新たな認定基準の一覧を掲載していますので、ご参照ください。
裏面に新たな認定基準の一覧を掲載していますので、ご参照ください。
肥満の人の割合が増えています 肥満者(BMI≧25)の割合 20~60歳代男性 40~60歳代女性 (%)
メタボリックシンドロームはなぜ重要か A-5 不健康な生活習慣 内臓脂肪の蓄積 高血糖 脂質異常 高血圧 血管変化の進行 動脈硬化
メタボリック シンドローム.
1. 神経は全身に 張り巡らされている 2. 神経障害の主な症状 3. 神経障害の治療法 4. 症状をやわらげるアイデアと
脂質異常症.
Torsade de pointes arrhythmias
「糖尿病」ってどんな病気?? ★キーワードは・・・「インスリン」!!!
4.生活習慣病と日常の生活行動 PET/CT検査の画像 素材集-生活習慣病 「がん治療の総合情報センターAMIY」 PET/CT検査の画像
小児に特異的な疾患における 一酸化窒素代謝産物の測定 東京慈恵会医科大学小児科学講座 浦島 崇 埼玉県立小児医療センター 小川 潔、鬼本博文.
CHAPTER 37 Antiarrhythmic Drugs
●●●●により救命できた ●●●●を呈した ●●●●の一例
福島県立医科大学 医学部4年 実習●班 〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇
学習目標 【1.ショック】 1.ショックとは何かを説明できる. 2.ショックの原因を分類できる. 3.ショックの段階を説明できる. 4.ショック時の観察ポイントを説明できる. 5.ショックへの対応の流れと治療の原則が説明できる. 【2.意識障害】 1.意識障害とは何かを説明できる. 2.意識障害の原因を分類できる.
高脂血症.
強皮症に伴う腎障害 リウマチ・アレルギー疾患を探る p142. 永井書店 強皮症に伴う腎病変には次の3パターンがある。
1.
緊急輸血・大量輸血 山形大学輸血部 田嶋克史.
A-2 男性用 健診結果から今の自分の体を知る 内臓脂肪の蓄積 ~今の段階と将来の見通し~ 氏名 ( )歳 摂取エネルギーの収支
UFT服薬に関しての注意事項 ☆ 患者さんには「UFT服用のてびき」をお渡し下さい。.
高槻市医師会地域連携クリティカルパス(患者様用)
異所性妊娠卵管破裂に対する緊急手術中の輸血により輸血関連急性肺障害(TRALI)を発症した1例
裏面に新たな認定基準の一覧を掲載していますので、ご参照ください。
心電図 二次チェック 非ST上昇心筋梗塞 ST上昇心筋梗塞 ー不安定狭心症 予防的治療: (禁忌でなければ): βブロッカー、ACE阻害薬
A-3 女性用 健診結果から今の自分の体を知る 内臓脂肪の蓄積 ~今の段階と将来の見通し~ 氏名 ( )歳 摂取エネルギーの収支
1. 糖尿病による腎臓の病気 =糖尿病腎症 2. 腎症が進むと、生命維持のために 透析療法が必要になります 3. 糖尿病腎症の予防法・治療法
脱水・ 循環血液量低下.
1. 糖尿病の患者さんは 血圧が高くなりやすい 2. 糖尿病に高血圧が併発して 合併症が早く進行する 3. 血圧コントロールの 目標と方法
食物アレルギー発作時 に使用する 自己注射について
1. ご高齢の糖尿病患者さんと 若い人との違いはなに? 2. ご高齢の糖尿病患者さんの 治療上の注意点 3. ご高齢の糖尿病患者さんの
九州保健福祉大学薬学部 徳永仁,原口直也,髙村徳人(作成) 佐藤 圭創(監修)
Presentation transcript:

Atrial fibrillation and digoxin 2班 浅香裕之  中山郁恵 菅野良秀  吉田健一 鈴木淳    小原朋子

患者 85歳男性 体重55kg 安定労作性狭心症の既往歴あり

経過 1日目 胸痛と息切れ(救急治療室へ運ばれた) 不規則な不整脈(絶対性不整脈) 心尖の拍動126拍/分以上 経過 1日目 胸痛と息切れ(救急治療室へ運ばれた) 不規則な不整脈(絶対性不整脈) 心尖の拍動126拍/分以上 血圧収縮期120mmHg拡張期84mmHg ECGで心房細動 (急性虚血の所見なし) 軽度の低酸素血症 BUN24mg/dL ; Creatinine 1.1 mg/dL

心房細動の心電図(ECG)

治療 1日目  ジゴキシンの急速飽和療法(24時間をかけて総量1mg投与) 2日目~  経口投与量0.25mg/dayの維持療法を行った

経過 2日目以降 退院(退院後も経口による維持療法続ける) 2日目 脈拍は90拍/分にまで減少 3日目 経過 2日目以降 2日目 脈拍は90拍/分にまで減少 3日目 ・100フィートをきびきびと歩いた後も脈拍82拍/分で調子よく歩いていた ・心電図を見ると、正常の洞調律に戻っていた 退院(退院後も経口による維持療法続ける)

経過 6日目(再入院) ジゴキシン中毒 4日目から悪心と嘔吐 傾眠 失見当識 腹部に反跳圧痛の無いびまん性の圧痛 経過 6日目(再入院) 4日目から悪心と嘔吐 傾眠 失見当識 腹部に反跳圧痛の無いびまん性の圧痛 血清ジゴキシン濃度は2.7ng/mL ジゴキシン中毒

Stable exertional angina 安定労作性狭心症 労作によって発作が生じ、安静にすると寛解 冠動脈硬化症を基盤としておこる。  冠血流増加抑制  心筋酸素需要増加時に心筋虚血  狭心痛

Apical pulse rate 心尖拍動数 実際の心室の拍動数がわかる  「末梢動脈での脈拍=心室の拍動数」                       ではない  正常値  60~100拍/分  ここでは 126拍/分 以上

Blood pressure 血圧 正常値 収縮期 140mmHg未満 拡張期 90mmHg未満 ここでは 収縮期 120mmHg

BUNとCreatinine 腎機能、特に糸球体濾過量の指標 正常基準値 BUN・・・・・・・・・・9~20mg/dl creatinine ・・・・男0.8~1.2mg/day           ・・・・女0.5~0.9mg/day 血中に排出される含窒素物質の最終代謝物   糸球体濾過量が低下すると上昇する

Atrial fibrillation 心房細動 概念   心房の無秩序な調律であり、そのレートは  350~600/minに達する。   興奮の一部は不規則に心室に伝導され、未治療時の心室レートは約160/minにたっすることも。

Atrial fibrillation 心房細動 機序            心房内多源性微小リエントリー回路         を興奮がランダムに旋回するため。         多くは心房の拡大をおこす症例            (僧帽弁狭窄など)におこる。 危険性   心拍出量低下により血圧低下・肺鬱血   心房内の血液うっ滞により血栓の形成

Atrial fibrillation 心房細動 治療  ①digitalis (cardiac glycoside) ②β-blockers  ③Ca antagonist 以上房室伝導抑制・心室レート調整  ④K+channel blockers (amiodarone) 心筋細胞の活動電位持続時間・不応期延長

この症例のポイント1   ジゴキシンの抗不整脈作用

ジギタリスの作用機序 心臓に対する効果   1)直接作用   2)自律神経を介する間接作用

直接作用 細胞内Ca濃度を上げることによりアクチンとミオシンの相互作用を高める

Ca濃度を上げるメカニズムとは ジギタリスがNa+/K+ATPase抑制 細胞内Na濃度上昇 Na+-Ca2+交換機構抑制

間接作用 ジギタリス治療範囲レベルでは副交感神経興奮作用が表に出る。 徐拍、洞房伝導遅延、房室伝導遅延など

この症例においては 副交感神経を強めることで房室伝導を抑制 心房細動による心室への過剰な興奮をブロック 心室性頻拍・心室細動の発生の危険性を下げる

心房細動での  “回旋興奮” ジギタリス 心房細動による心室への過剰な興奮をブロック

再入院 diffusely tenderness (びまん性圧痛) lethargic(傾眠)、disoriented(失見当識) 主訴  2日にわたるnausea(悪心)、vormiting(嘔吐) lethargic(傾眠)、disoriented(失見当識) 中程度の意識のくもり、軽い刺激で覚醒、注意散漫、応答や 行動緩慢 時、場所、周囲の状況を正しく理解する能力 diffusely tenderness (びまん性圧痛)

diffusely tenderと rebound tenderness (反跳圧痛) 迷走神経の過剰興奮による消化器平滑筋の過度の緊張による rebound tenderness 腹壁を手指でゆっくり圧迫し、急に離したときに疼痛を訴える。腹壁に炎症が及んでいる事を示す徴候;外科的処置が必要

この症例のポイント2 ジギタリスの副作用ージギタリス中毒

ジギタリス中毒の症状(1) 消化器症状が最もよく見られ、 食欲不振、悪心、嘔吐、下痢などがある 中枢神経症状  食欲不振、悪心、嘔吐、下痢などがある  中枢神経症状  失見当識、幻覚(特に高齢者)。視覚障害など

ジギタリスのCNS作用

ジギタリス中毒の症状(2) 心臓 ・軽度 APDの短縮・静止膜電位脱分極 ・中程度 DAD(遅延後脱分極)出現、二段脈  ・重度    頻拍性不整脈、トリガー活動、          心室細動      死

この症例のポイント3 ジゴキシンの薬力学・薬物動態学

ジゴキシンの薬物動態 吸収・分布 経口投与でよく吸収される(75%) 分布容積Vdが6.3L/kgと大きく つまり、全身の組織に結合する    経口投与でよく吸収される(75%) 分布容積Vdが6.3L/kgと大きく    つまり、全身の組織に結合する    安全域がとても狭い    半減期40時間

ジゴキシンの薬物動態 代謝・排泄 2/3以上が未変化で腎臓から排泄 1日あたり体内存在量の約30%が排泄 腎不全患者ではクリアランスが低下  1日あたり体内存在量の約30%が排泄  腎不全患者ではクリアランスが低下  血中濃度が上昇  2.0ng/ml以上で中毒

この例についての問題点 ~なぜ、ジギタリス中毒に陥ったのか~  患者さんの既往歴から心不全をおこす可能性があったので、心臓機能を抑制しないdigoxinの投与は適当。しかし、腎臓機能が低下している人に対して、腎機能の正常な人に対する量(0.25mg/day)で維持療法を行ったため、体内に蓄積し、中毒域に達してしまった。

では、どうすればよかったのか? 腎機能の低下を考慮し、補正した量を投与すべきであった 血中濃度のモニタリングを行えばよかった 退院を少し待てばよかった 副作用があればすぐに病院にくるように言えばよかった

ジギタリス中毒の治療 この患者の場合・・・・軽症のジギタリス中毒 ジキタリスの投与を中止 血漿中のジキタリス、K値、Mg値、Ca値測定 心電図測定

ジギタリス中毒の治療 軽度   経口カリウム補給 中程度  点滴でカリウム補給・         抗不整脈薬 重度   ジギタリス抗体投与

問題1 ジギタリスは心房細動の他に何に使われますか。3つ選んでください。 a.うっ血性心不全 b.高血圧 c.低カリウム血症 d.心房粗動  a.うっ血性心不全  b.高血圧  c.低カリウム血症   d.心房粗動   e.上室性頻拍

解答と解説 問題1 答え)a, d, e 考え方)直接作用;陽性変力作用によりうっ血性心不全に使われます。      間接作用;迷走神経刺激により徐拍と洞房伝導遅延や房室伝導遅延により心房粗動と上室性の頻拍に用いられます。

問題2 ジギタリスの薬物動態、作用機序、治療に関する以下の文で間違っているものを1つ選んでください。  a.急速飽和療法を用いるのはジゴキシンの排泄の分を補うためである。  b.ジゴキシンは主に腎臓で排泄されるので腎臓の悪い人は量を抑えるべきである。  c.ジギタリスはNaポンプに結合してこれを抑制する。  d.ジギタリスは治療用量の上限で中毒をおこす。  e.ジギタリスは心筋細胞内のカルシウム濃度を上げることで心筋の収縮力を増強する。

解答と解説 問題2 答え)a 考え方)a;ジゴキシンは分布用量が大きいから、体内の結合部位を飽和するために急速飽和療法を行います。     b、c、d、e;すべて正しいです。

問題3 ジギタリス中毒で気をつけるべき状態はどれですか。 a.低カリウム血症 b.高カリウム血症 c.低カルシウム血症 d.高カルシウム血症  b.高カリウム血症   c.低カルシウム血症  d.高カルシウム血症   e.高マグネシウム血症   f.低マグネシウム血症

解答と解説 問題3 答え)a, d, f 考え方)低カリウム血症;Naポンプの活性は低下し、Naポンプのジギタリス結合が高まるので、ジギタリスの作用増強と中毒が生じやすいです。  高カルシウム血症;Ca過負荷の状態を生じやすいので中毒になりやすいです。     低マグネシウム血症;Mgは生理的なCa拮抗薬なので中毒になりやすいです。