パネル・ディスカッション:キーノート・スピーチ 「イノベーション推進のための社会的仕組み」 東京大学先端科学技術研究センター 馬場靖憲

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パネル・ディスカッション:キーノート・スピーチ 「イノベーション推進のための社会的仕組み」 東京大学先端科学技術研究センター 馬場靖憲 第4回感覚器研究会「産学官+患」 連携九州会議 (平成19年3月16日) 感覚器(視覚分野)研究の新たな潮流とイノベーション -融合領域研究の課題解決のために- パネル・ディスカッション:キーノート・スピーチ 「イノベーション推進のための社会的仕組み」 東京大学先端科学技術研究センター 馬場靖憲

医療技術分野のイノベーション研究:既存研究 医療における産学連携によるイノベーションの研究:CT,MRI,内視鏡等の診断技術と人工内耳等の治療技術の開発プロセスと市場形成に関する分析 Rosenberg. N, Gelijns, A.C and Dawkins, H (eds.), Sources of Medical Technology: Universities and Industry, National Academy Press, 1995 白内障治療における眼内レンズ(イントラオキュラー・レンズ)の開発と導入に関する分析 Metcalfe, J. Stan, James Andrew and Andrea Mina,“ Emergent Innovation Systems and the Delivery of Clinical Services: The Case of Intra-ocular Lenses”, Research Policy, 34, 1283-1304, 2005

福祉工学の現状と問題点の紹介:伊福部達、「福祉工学の挑戦」(中公新書、2004) 高リスクを伴う創薬分野でのイノベーションの問題点とその社会的解決法 馬場靖憲、ジョン・P・ワルシュ、“ハイリスク・イノベーションにおける研究者ネットワークの役割:創薬における日米比較” 研究技術計画 (forthcoming) バイオ分野における産学連携の質問票調査と計量文献学による実証分析 馬場靖憲、後藤晃(共編)、「産学連携の実証研究」(東京大学出版会、2007)

医療イノベーションの難しさ(1): リスクの社会的負担の必要性 開発した新技術から予期できない副作用が発生する危険 付随するリスクをどのように社会的に負担するか 医療技術に関与する産学官は開発に付随するリスクを正しく認識し,将来に渡って副作用を顕在させないという条件の下,社会から期待される機能を持つ技術を製品化するハイリスク・イノベーションに固有の問題に直面。

医療イノベーションの難しさ(2): 魅力ある市場は始めからは存在していない 抽象レベルの必要性と経済的観点からの製品への需要には大きなギャップ 福祉機器が障害者支援にとって必要であっても、企業が採算性の観点から開発を中止し、製品が市場に出てこないで終わるケース 技術の持つポテンシャルを最大限に引き出すためには、製品開発によって利益を獲得しようとする企業の存在が不可欠

成功への可能性(1): 新技術に対する社会的認知の形成 市場を形成するためには一筋縄でない複雑な社会プロセスが必要 学界内、また、患者団体を巻き込んだ本音の議論の進展と規制当局の対応 だれが新技術による製品/診療サービス市場を生み出すか:企業はもとより、治療に携わる医学界、医療サービスの享受者としての患者(団体)、また、サービスの認可と規制に当たる公的機関の間の一連の相互作用の重要性 政策提言は可能か?

成功への可能性(2):医療/産業コンプレックスの形成 医療技術を開発する産業組織と医療サービスを患者に提供する医療組織の円滑な相互交流 イノベーションに基づいた知識集約型の医療サービスの誕生 治療に関する医療規模の急速な拡大 企業に対する技術クラスターへの投資という経済インセンティブの提供 製造業中心のイノベーター企業は医療サービスの高度化を目指すイノベーター企業と融合・連携し医療/産業コンプレックスを形成

取り組むべき課題 1.産学官、そして、患者組織がどのように連携して望ましい新技術に関する社会的認知をすみやかに形成し、新技術に対する市場を作り出すか?そのための施策に関する政策提言は可能か? 2.どのように産業界と医療界が連携して、医療に関する新しい技術とサービスを融合して提供できる体制をつくれるか?どのように当該医療分野において、イノベーションに基づいた知識集約型の医療サービスを立ち上げることができるか