山羊関節炎・脳脊髄炎(届出) 山羊関節炎・脳脊髄炎ウイルスによって起きる成山羊の関節炎や乳房炎、幼山羊の脳脊髄炎や肺炎を主徴とする疾病 米国、欧州、豪州で発生が報告されており、広く世界各国に浸潤していると思われる 我が国では2002年8月に初めて発生した
山羊関節炎・脳脊髄炎の発生状況(2005年現在) 発生の認められる地域 発生の疑いのある地域 感染の確認地域 発生が限定的に認められる地域 報告のない地域 現在発生の無い地域 発生の無い地域
山羊関節炎・脳脊髄炎の発生状況(2014年12月現在) 発生の認められる地域 発生の疑いのある地域 感染の確認地域 現在発生の無い地域 発生の無い地域 報告のない地域
山羊関節炎・脳脊髄炎の原因ウイルス 山羊関節炎・脳脊髄炎ウイルス(CAEV)はRetroviridae, Lentivirusに属する逆転写酵素を有するRNAウイルスである 標的細胞はマクロファージであり、短期間に抗原変異を繰り返し、宿主の免疫機構から逃れるため、感染した動物は生涯ウイルスを持ち続ける
山羊関節炎・脳脊髄炎ウイルス(CAEV)の性状 CAEVは羊胎児肺(FLL)細胞に接種すると多核巨細胞(シンシチウム)を形成する 間接蛍光抗体法(IFA)によりシンシチウムの細胞質内にCAEVの抗原が確認される
山羊関節炎・脳脊髄炎の症状 成山羊に認められる慢性関節炎が最も一般的な症状であるが、発病は潜行性で病状の進行は緩慢である 初期は主に手根関節の腫脹や歩行異常で、患部の腫脹や関節痛が徐々に進行し、最終的には歩行困難および起立不能となる 新生子や4ヶ月齢以下の幼若山羊では脳脊髄炎や肺炎を発症し、この場合の経過は早い 発病率は低く、成山羊の関節炎発症率は10%以下である
山羊関節炎の病変 罹患畜の関節腫脹部の皮下は嚢水腫を形成し、フィブリンまたはゼラチン様の集塊を含む液体の貯留が認められる 病変部には非化膿性関節滑膜炎および関節周囲炎がみられ、関節滑膜における顕著なリンパ球および形質細胞の浸潤、および絨毛状増生が観察される(HE染色)
関節炎以外の病変 肺炎を起こし腫大した肺葉(左端)および間質におけるリンパ球の顕著な浸潤、肺胞上皮の肥厚、肺胞腔内の液体貯留を示す、非化膿性肺炎像(右端) 乳腺間質に顕著なリンパ球の浸潤を示す、非化膿性乳房炎像
脳脊髄炎の病変 山羊関節炎・脳脊髄炎の子ヤギの脳の割面:凝固性の壊死層が認められる 血管周囲に単核細胞の集積を認める(囲管性細胞浸潤)非化膿性脳炎像を示す
山羊関節炎・脳脊髄炎の診断、予防 本病は山羊の疾病であること、慢性関節炎を主徴とする疾病であることからある程度推察できるが確定診断は、PCR法による遺伝子検出、シンシチウム形成を確認するウイルス分離等により行う。 FLL細胞に接種したCAEVもしくはMaedi virus, Visna virusの感染上清を硫安沈殿法により濃縮・精製したものを抗原として寒天ゲル内沈降反応を行う。 予防法は本病が乳汁を介して感染率が高いので、出産後子山羊を親から離し、非感染の山羊の乳か人工乳で育てる。