ジェノサイドとメディア 上まどか・木村恒輝
ジェノサイドは民族対立だけが原因ではない 植民地統治時代の体制に加え… ヘイトメディアの果たした役割は大きい
当時のメディア ミルコリンヌ自由ラジオ・テレビジョン(RTLM) →民主化の成果として1993年に設立され、国民の間で 大変な人気があった。 →民主化の成果として1993年に設立され、国民の間で 大変な人気があった。 カングラ誌 →キガリで発行されていた反ツチ系の新聞 ・当時のルワンダ国民の識字率は約47%(ユネスコ) ・経済的な理由からテレビを持っている人がすくない ラジオとしてRTLMは大きな影響力を持っていた
カングラ誌 〜フツの十戒〜 1,すべてのフツは、ツチの女性であれば誰しもが、ツチの利益のために働く ことを知るべきである。その結果として、我々は以下のようなフツを裏切り者として考慮しなければならない。 ・ツチ女性と結婚する者 ・ツチ女性の味方となる者 ・秘書や愛人としてツチ女性を雇用する者 8,フツはツチに情けをかけるのを止めるべきである 10、1959年の社会革命と1961年の国民投票、そしてフツ族のイデオロギーを、あらゆるレベルのフツ族全てに、教育しなければならない。全てのフツ族はこのイデオロギーを広く普及させねばならない。このイデオロギーを読み、広め、教える行為を迫害する全てのフツ族は裏切り者である。
ミルコリンヌ自由ラジオ・テレビ(RTLM) ・国営放送からフツ過激派が排斥された後、ヘイトスピーチの拠点となる ・「ツチの陰謀や攻撃を警戒する必要があり、フツはツチによる攻撃から身を守るために備えるべきである。」という主旨の報道を繰り返す。 自己の安全を確保する方法としての先制攻撃の必要性を アピールし、民衆を虐殺へと煽動した。
その他のメディア Bikindi Simon “Nanga Abahutu”(こんなフツ族は嫌い) http://youtu.be/rKSZHrvGOfA 若者向けの音楽を持ちいた煽動も行っていた。
ヘイトメディアの存在がジェノサイドの悲劇に 少なからぬ影響を与えたことは確かである。 メディアによる煽動によりどれほどの人々が実際に 残虐な行為に及んだかについては諸説ある。 しかし ヘイトメディアの存在がジェノサイドの悲劇に 少なからぬ影響を与えたことは確かである。
1994年以降のルワンダのメディア ジェノサイドにおけるメディアの役割の評価 →ジェノサイドの教訓をもとにしたメディア政策 ヘイト・メディア:分断主義(divisionism)への加担 大量虐殺(genocide)の扇動 政府一族のプロパガンダ・メディア →ジェノサイドの教訓をもとにしたメディア政策 紛争阻止・民主化のためのメディア教育
ルワンダのメディア状況(2007年当時) ラジオ:14局 テレビ局:1局 新聞社:39社(登録上) 国営:4局 Rwanda Radio コミュニティ・ラジオ(難視聴対策) 私営:10局(規約に同意して登録) テレビ局:1局 Télévision Rwandaise / Rwanda TV 新聞社:39社(登録上) 国営:2紙(キニア・ルワンダ語、フランス語) 私営:37紙 実質29社(資金難など)
法整備の流れ 2000年以降、多くの法律が制定される *メディアに関わる機関や理念などが定められる 「電気通信に関する法律 No.44/2001」 (2001) 「Press High Councilの組織と機能を定めた大統領令 No.99/1」 (2002) 「Pressに関する法律 No.18/2002」(2002) 「法律 No.6/2002」 (2002) 「Rwanda Information Agencyの設置に関わる法律 No.32/2002」 (2002) *メディアに関わる機関や理念などが定められる
メディア・ポリシー(1) 憲法第34条(2003年) 「プレスと情報の自由は、国家によって認められ、保護される。言論の自由と情報の自由は、公共の秩序、倫理、市民の名誉権、評判、個人や家族のプライバシーに損害を与えるべきではない。またそれは、青少年の保護に損害を与えない限りで保護される。」 →限定的自由 cf. 日本憲法 国民の知る権利の充足のために報道の自由と取 材の自由が認められる
メディア・ポリシー(2) Media Policy(2004) Journalist and Media Code(2005) メディアの共通の目的や使命を明記 新しいルワンダを建設し、発展させるために参加すること ルワンダの統一と和解を促進すること 民主主義の文化を促進すること Journalist and Media Code(2005) ジャーナリストとしての「義務」とモラル 報道上の規則など *ジェノサイドの手先となったメディアについて言及
メディア・ポリシー(3) メディア法(2003年) High Council of Press ←政府からの干渉 民族の分割を招く、あるいは憎悪を触発させる出版・報道の禁止 メディアでの和解・平和・安全・貧困削減などの分野のプログラムの放送の奨励 High Council of Press 「hate media」の出現防止を目的とするモニタリング機関 メディアに関する政府へのアドバイス ジャーナリストへのトレーニングの実施 ←政府からの干渉
体制への評価(海外) メディアの自由度ランキング Committee to protect Journalists 2005年 122位 2005年 122位 2006年 128位 2007年 147位 2013年 161位 (Reporters Without Bordersより) Committee to protect Journalists Modern Rwanda is in many ways a progressive nation……But it is by no means a democracy, and it is a nation without a free press.
体制への評価(国内) 住民へのインタビュー 主要メディア:ラジオ・テレビ 番組や局の選択肢の広がり 意見の発信の場の創出 民主化の実感 ←政府の法令・規則による規制には気づかず
新たなメディアの創出 Radio Salus ルワンダ国立大学のキャンパス・コミュニティ・ラジオ 地域社会に根差した番組作り ⇔政府傘下のコミュニティ・ラジオ コーヒー農家に対するエンパワーメント番組 コーヒーに関する番組制作によって農家と市場をつなぐ →コーヒー産業の活性化 ラジオの信頼回復
参考文献・資料 松浦さと子,『ルワンダにおけるジェノサイド以後のメディ ア政策とジャーナリスト教育』,龍谷大学経済出版会, 2009 Code of Ethics governing Journalists, 2011.4 Frank Smyth,『20 years after genocide, Rwanda safe, clean, undemocratic』,2014.4 Committee to Protect Journalists (https://www.cpj.org/) World Press Freedom Index 2005, 2006,2007,2013 Reporters Without Borders (http://en.rsf.org/) Media High Council (http://www.mhc.gov.rw/index.php?id=10) Radio Salus (http://www.salus.nur.ac.rw/)