農業土木における水質研究手法-観測・分析・ひろがり-

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水の話 水分子の特徴 水分子は分極している 常温で液体である NH3やCH4と比較して沸点高い 水から氷になると 体積が大きくなる
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9 水環境(4)水質汚濁指標 ・人の健康の保護に関する環境基準 (健康26項目) 環境基本法 地下水を含む全公共用水域について適用
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静電気学会のプラズマ研究と 学会連携への期待
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図3 地球環境変動の中核的課題と動向 自然圏(Natursphäre) 人類圏(Anthropophäre) 生物圏 大気圏 水文圏 土壌圏
実務フォロー研修 クリーンセンター多摩川の現状と課題 平成11年3月2日 東京都清掃研究所.
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農業土木における水質研究手法-観測・分析・ひろがり- 水文・水環境研究部会企画セッション8-2 農業土木における水質研究手法-観測・分析・ひろがり- 農業土木における 水質測定項目と 分析法について 神戸大学農学部      ○多田明夫

測定項目の選定要因 1)研究目的 制約 2)機器導入コスト 3)ランニングコスト 4)サンプル数 5)手間(煩雑さ・処理時間) 6)環境基準

農業土木 での 測定項目 (1)

農業土木 での 測定項目 (2)

測定項目についての整理 ・水温/pH/EC/SS - 基本 ・N/P/COD - 主要 ・汚水還元や浄化→ +重金属 ・汚水還元や浄化→ +重金属 湖沼        → +バクテリアとChl-a →オーソドックス/新しい変化 小 →将来、安定同位体/環境ホルモン/農薬・重金属の分析へ?

測定法について 基本的に公定法に準ずる 1)工業用水試験法(JISK0101) 2)工業排水試験法(JISK0102) 3)上水試験法     3)上水試験法     4)下水試験法     5)水の分析     6)土壌養分分析法     7)土壌標準分析・測定法     8)分析関連の学会報告・論文 →測定法間の互換性に問題/Cross Check 必要

測定機器(1) ←15~40万円 ←100~300万円 2)電気化学法 ・ISE/pH計/DO計/ORP計 1)吸光光度分析(比色法)  ・分光光度計/吸光光度計(UV/VIS)  ※FIAの導入          ー無機イオン、(重)金属イオン 2)電気化学法  ・ISE/pH計/DO計/ORP計  ・EC計  ・ポーラログラフ   -各種元素

測定機器(2) ←150~500万円 3)原子吸光・フレーム光度計 ・励起⇔基底 黒鉛炉付→高感度 ←2000万円~ 4)発光分光分析  ・励起⇔基底 黒鉛炉付→高感度                    -各種(重)金属 4)発光分光分析 ・ICP、ICP-MS    -各種元素の一斉分析 5)蛍光光度分析/蛍光X線分析   -各種(重)金属・無機化合物/各種元素

測定機器(3) ←150~600万円(MSは2500万円~) 6)クロマトグラフィー ←350~500万円 7) ・TOC計/C/Nコーダー ←30~50万円 ←150~600万円(MSは2500万円~) ←2000~5000万円 ←350~500万円 6)クロマトグラフィー ・LC、HPLC、LC-MS、イオンクロマト ・GC、GC-LC ・CE(キャピラリー電気泳動法)、CEC     -無機・有機イオン、有機化合物、VOC、     農薬、ガス成分 7) ・TOC計/C/Nコーダー   ・富栄養計/簡易水質計(Hack等)   ・MS -同位体   ・ガス拡散法 ・赤外分光 -有機化合物・官能基

これからの研究・分析展望(1) 問題点(1) 1)調査・分析・機器メンテナンスの 経済的・時間的コスト 2)分析法の習熟度に関する不安           経済的・時間的コスト 2)分析法の習熟度に関する不安 3)水文観測への不安・不備 →経験者への問合せ窓口必要?   →水文関係では学会内によい窓口がない    →研究グループ集団の創生

これからの研究・分析展望(2) 問題点(2) 農業土木の特徴(水質研究) ・農地・農村中心のフィールド研究 ・水質+水量などのフラックスの研究 →・水文観測の精度が不十分。水収支がとれない →・水文観測の整備された試験圃場・流域の              共同研究・維持管理が重要 →・過去20年を振り返って、     抜本的な技術的/方法論的進展がない。

これからの研究・分析展望(3) 研究の方向性 1)自動分析法・省力化-連続モニタリング 2)ガス成分の分析とフラックス評価 3)土壌養分分析・土壌中の物質移動 4)微生物などの生物系分野との連携 5)農薬・環境ホルモンによる汚濁/地球環境/農業問題との境界領域

方向性を決めるもの 1)従来の延長路線(閉塞) →新しい技術的な方法論の導入 ・新たな分析法(高頻度化) ・水収支フラックスの観測方法      →新しい技術的な方法論の導入 ・新たな分析法(高頻度化) ・水収支フラックスの観測方法 ・新たな水質・物質測定項目 2)従来の研究場での新Topic →①リサイクル・浄化・環境ホルモンなどの化学物質など、②対象の拡大(土壌・大気)

これからの研究・分析展望(4) 1)ICP、MS(質量分析計)、LC-MS、GC-MSなど高価な機材を要する特異物質の計測と環境中での追跡 分析の観点からは2極化が進行 1)ICP、MS(質量分析計)、LC-MS、GC-MSなど高価な機材を要する特異物質の計測と環境中での追跡 2)モニタリングの重要性の増大  ←第5次水質規制やTMDLs等の面源管理  →自動分析法・現地観測機器の導入

注目すべき分析技術の 動向 1)センサ ー半導体技術の応用・微小化 ・ISFET-pH計のみ実用化 ダウン・サイジング 2)半導体技術の応用 注目すべき分析技術の 動向 1)センサ ー半導体技術の応用・微小化  ・ISFET-pH計のみ実用化 2)半導体技術の応用      (国策としてのナノテクノロジ・新技術推進)  ・μ-TAS -(考え方として)        ラボ・オン・チップなどへの応用  ・キャピラリーを用いたクロマトグラフ・CE(C)法   -ポンプやバルブ類のマイクロ化の進行        →さらなる微量化・高感度化へ ダウン・サイジング 組込(オンライン)化

新しいモニタリング技術・アプローチの必要 解決すべき課題(1) 1)環境シミュレーションへの対応 ・欧米では流域の水質管理などで進展   -GISベースの水文モデル+水質モデル             研究だけでなく行政ツールに ・詳細なデータ蓄積・モニタリングの進展             ←日本よりも深刻な水質被害 ↓ 新しいモニタリング技術・アプローチの必要

解決すべき課題(2) ①関連分野の研究者の共同研究が必要 ②新しいモニタリング技術の必要 2)広域水管理・流域管理と物質循環の把握 ・環境保全・浄化も考慮した広域の物質循環の把  握が必要 ・ベースとなる流域データの蓄積・詳細なデータ・  モニタリングの進展が重要 ・ガス態の移動・土壌吸着などのフラックスの計   測評価 ↓ ①関連分野の研究者の共同研究が必要 ②新しいモニタリング技術の必要