サザンクロスVLBIプロジェクト(案) -地球姿勢と海水準の高精度モニターを目的としたフィジーにおける 超小型VLBI観測の可能性- IVS/TDCシンポジウム 9/20/2002 市川隆一、近藤哲朗 通信総合研究所鹿島宇宙通信研究センター 高橋冨士信 南太平洋大学 動機 高速回線インフラがあるフィジーにおいて、リアルタイムVLBI観測による地球姿勢決定実験を計画する場合の観測意義などについて測地学的、地球物理学的観点から整理する フィジーにある衛星通信用アンテナ フィジーの地学的背景 南太平洋上の島嶼国(Fig.1) 南緯 18度8分 東経 178度25分 海水準上昇の影響大 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change: 気候変動に関する政府間パネル)において、全地球で9~88cmの平均海水面の上昇(1990~2100年)が予測されている[IPCC, 2001] フィジーを含む南太平洋の島嶼国では、高波による浸水被害大 背弧海盆拡大の顕著な地域 フィジーの東側、Lau RidgeとTonga Ridgeに挟まれるLau Basinが拡大(Fig.2) Tonga諸島は、オーストラリアプレートに対して24cm/yearの速度で東向きに運動(世界最大のプレート運動速度) Republic of Fiji フィジーにおけるGPS観測 Lau Basinのテクトニクス解明[Bevis et al., 1995] IGS観測点 フィジーの首都Suvaにハワイ大学が1999年に設置 海水準観測[http://imina.soest.hawaii.edu/cgps_tg/] 米国・フランスなどが潮位計近傍にGPS設置(Fig.3) フィジーのIGS点は潮位計との取り付けはまだ 回線速度不足のため、GPSデータはzipディスクなどで郵送 Fig.1 フィジーの位置とIGS観測点 フィジーでリアルタイムVLBI観測を行う意義 地球姿勢観測 質量再配分・形状の変化で地球姿勢変動(Fig.4) 氷床の融解 海水の熱膨張 遠隔地でのリアルタイムVLBI実証実験 GPS観測網とのコロケーション 2500km以内にVLBI観測点なし(最も近い点はTidbinbilla) より正確なテクトニクス把握と海水準計測のためグローバルな座標系で位置決め必要 国際貢献 プロジェクト観測終了後は、フィジー共和国とその周辺での通信インフラ整備と海水準観測などの地球環境モニターに役立ててもらえるように技術移転を行う Fig.2 拡大を続けるTonga-Lau BasinでのGPS観測 Fig.3 潮位計近傍でのGPS観測例(写真はホノルル観測点) Fig.4 地球姿勢変動に影響する様々な現象。氷床の融解や海水の膨張も地球形状や質量分布を変化させ、地球姿勢変動に影響する。 [Lambeck, 1988] フィジーにおけるリアルタイムVLBI観測の可能性 技術的利点 比較的簡便な観測→現在PCベースのVLBIシステム開発中 ギガビットシステムによる高感度観測可能 超小型アンテナ~2.4mアンテナ、あるいはCARAVAN((Fig.5:赤道儀VLBI、米沢他[2002]) 現地でのサポート体制 南太平洋大学(Fig.6) 高速回線インフラ既にあり(Fig.7) 周辺の測地観測に関する情報 南太平洋でGPS観測を展開しているハワイ大学とのパイプあり 課題 現状はまだサーベイの段階だが、 観測意義のさらなる煮詰め 現地協力体制の確立 周波数標準の確保~GPS? 22GHz測地観測の確立 どの周波数帯を観測するかを含めて要検討 単周波観測の電離層補正 などが必要 Fig.5 超小型VLBIシステムCARAVAN [米沢他、2002] Fig.6 南太平洋大学で講義中の高橋冨士信氏 Fig.7 サザンクロスケーブル回線図(上図)とフィジー国際通信会社FINTELのファイバー陸揚げ地点局内(左図)。20Gbps以上あるが、フィジー国内へは、国全体で6Mbpsのみ。