サザンクロスVLBIプロジェクト(案) -地球姿勢と海水準の高精度モニターを目的としたフィジーにおける 超小型VLBI観測の可能性-

Slides:



Advertisements
Similar presentations
2004 年新潟県中越地震と スマトラ沖巨大地震の 震源で何が起こったのか? 八木勇治 (建築研究所・国際地震工学セン ター)
Advertisements

宇宙開発事業団 (NASDA) が開発した、環境観測技術衛星「みど りⅡ」 (ADEOS- Ⅱ ) 搭載の高性能マイクロ波放射計 (AMSR) による オホーツク海の流氷 ( 海氷 ) 画像。左図は 2003 年 1 月 18 日の夜間 (20 時半頃 ) に取得されたデータによる擬似カラー合成画像。
温暖化に対する 寒冷圏の応答 予想以上に氷流出進行? 2月 17 日朝日新聞 3月 25 日朝日新聞 阿部彩子 地球 Frontier 研究センター 東大気候システム研究センター 国立環境研究所.
オンセットアークの構造化と 背景電場の変化
前回の授業への質問 質問:プロトコルアナライザで測定できる範囲はどこまでか?
広視野望遠鏡を用いた ガンマ線バーストの可視光同時観測
時間・空間補間した 基準局網観測値による キネマティックGPS性能の評価
(Precipitation Radar)
富永 貴良 松村 優佑 宮坂 勇樹 浜田 亮司 佐藤 ちはる 有田 俊介
W31A領域に付随する 水蒸気メーザーによる3次元的速度構造
2006年2月22日 宇宙重力波干渉計検討会 - 小型衛星とDECIGO - 川村静児 国立天文台
GPS観測 2006年度地球観測実習 ~新しい可能性を求めて~     新井隆太 大久保忠博 米田朝美        担当教官 宮崎真一.
筑波大学衛星と教育との関わり 筑波大学 保田敦司 「小型衛星の科学教育利用を考える会」 2015/08/22.
三鷹FX相関器互換の ソフトウェア相関処理システムの構築
首都圏広域地殻変動観測施設によるVLBI観測成果
情報とは ? 何かを知ること,知らせること その内容 形式 伝達手段 過去・現在・未来
任意のGPS測位点における ICタグ用四次元座標の管理
Ⅱ.東南海・南海地震に関する調査研究-予測精度向上のための調査研究- 2.微小地震分布を把握するための海底地震観測研究 2-1.想定震源域および周辺における地殻構造と地震活動の対比等に関する研究(東南海・南海17-1-3) 九州大学理学研究院附属地震火山観測研究センター 課題:想定震源域と周辺域(日向灘)の地震活動、地殻構造、起震応力場を比較して、震源域の固着状態とその要因を推定する。
オリエンテーション 測量学実習 第1回.
南極からの新赤外線天文学の創成 南極内陸は、ブリザードがなく、非常に穏やかな、地球上で最も星空の美しい場所です。この場所で私たちは新しい赤外線天文学を展開します 宇宙初期の広域銀河地図を作って、私たちの銀河系の生い立ちを解明します 137億年前 100億年前 宇宙の果て 最初の星が生まれ、銀河が成長した時代.
須藤 広志 高羽浩、川口則幸、 他光結合VLBIグループ
レーザー励起Csガスセル型原子発振器による測地VLBI実験
NICTにおける e-VLBIのアクティビティ
高周波観測 大田 泉 (甲南大学理工学部) 空気シャワー電波観測ワークショップ2014@甲南大
本間 希樹 Mareki Honma (水沢VLBI観測所)
(研究期間 平成13年~平成17年) 領域代表者 東京大学大学院理学系研究科・教授・坪野公夫
宇宙での重力波観測 (1) 宇宙での重力波観測 宇宙で観測するメリット : 他にはないサイエンスがある
図表で見る環境・社会 ナレッジ ボックス 第2部 環境編 2013年4月 .
Ver 地球温暖化と気候変動.
セッション3:最近のミスマッチの実例分析 実例2:地震予知 地震予知情報発信のされ方について 予知研究の現場から
山中 佳子(准教授) 専門:地震学 巨大地震発生  メカニズムの解明 リアルタイム     地震学.
CONT05/VLBI実験における マイクロ波放射計観測結果
熱中症の救急搬送者数 今日は,熱中症について勉強したいと思います。.
アジアモンスーン地域における気候変動とその農業への影響評価 PI:松本 淳 CI:荻野慎也・森 修一・遠藤伸彦・久保田尚之・徐 健青
2m電波望遠鏡の製作と 中性水素21cm線の検出
フィールドセンシング Field Sensing Technologies
第8週 高精度GPSの構築 位相測位の原理 通信システムの構築.
Taurus-Auriga association
高まるVLBI観測における野辺山45m鏡の需要
第2回 位置情報とは 空間の中の位置 位置計測の原理.
NICTにおける e-VLBIのアクティビティ
クワッドリッジホーンアンテナ (広帯域フィード) を 用いた電波望遠鏡の測地VLBIにおける性能評価
Mareki Honma Director, Mizusawa VLBI Observatory, NAOJ
(GAmma-ray burst Polarimeter : GAP)
添付図-1:課題⑦-2-1 「巨大都市・大規模ターミナル駅周辺地域における複合災害への対応支援アプリケーションの開発」
科学・技術と社会 ◎科学・技術: 現代社会の基礎; 人類の物質生活を豊かにするもの
第6回 高精度GPSの構築 位相測位の原理 通信システムの構築.
ANIRによるM型星まわりの トランジット地球型惑星の観測 国立天文台 成田憲保.
精密単独測位(PPP)による スタティック・キネマティック 測位精度の評価
小型JASMINE計画の状況       矢野太平(国立天文台)       丹羽佳人(京大).
ROACHボードによるFOREST用バックエンドの開発
前回の授業への質問 質問:プロトコルアナライザで測定できる範囲はどこまでか?
環境情報学部2年 中本裕之 総合政策学部2年 千代倉永英
ICMPを用いた侵入検知システムの負荷軽減
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
Johnson et al., 1999 (Journal of Climate)
SKnet担当者の会 <<鷹野氏>>
浮上磁場はこれからだ 茨城大学 野澤恵 2006/6/15 13:30-14:00 東大地球惑星
学部生対象 地球水循環研究センター(一部)説明会 趣旨説明
地方公共団体オープンデータ推進ガイドラインの概要
緑の気候基金(GCF)との連携に関する JICAの取組み方針
総務省総合通信基盤局電波部 国際周波数政策室 平成19年12月9日
スターバースト銀河NGC253の 電波スーパーバブルとX線放射の関係
<限定地域での無人自動運転移動サービス>
ギガビット観測システムによる長基線測地 VLBI
電離圏イオン流出現象 山田学,渡部重十(北大・理) プラズマ圏・内部磁気圏研究会(2002/03/13)
米倉 覚則 (茨城大・宇宙科学教育研究センター)
VLBI観測によって求められたプレートの移動速度
ASTE望遠鏡を用いたVLBI観測の ための超伝導230GHz帯受信機開発
Ⅲ 地球地図アプリケーション戦略の施策案(2)
Presentation transcript:

サザンクロスVLBIプロジェクト(案) -地球姿勢と海水準の高精度モニターを目的としたフィジーにおける 超小型VLBI観測の可能性- IVS/TDCシンポジウム 9/20/2002 市川隆一、近藤哲朗 通信総合研究所鹿島宇宙通信研究センター 高橋冨士信 南太平洋大学 動機 高速回線インフラがあるフィジーにおいて、リアルタイムVLBI観測による地球姿勢決定実験を計画する場合の観測意義などについて測地学的、地球物理学的観点から整理する フィジーにある衛星通信用アンテナ フィジーの地学的背景 南太平洋上の島嶼国(Fig.1) 南緯 18度8分 東経 178度25分 海水準上昇の影響大 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change: 気候変動に関する政府間パネル)において、全地球で9~88cmの平均海水面の上昇(1990~2100年)が予測されている[IPCC, 2001] フィジーを含む南太平洋の島嶼国では、高波による浸水被害大 背弧海盆拡大の顕著な地域 フィジーの東側、Lau RidgeとTonga Ridgeに挟まれるLau Basinが拡大(Fig.2) Tonga諸島は、オーストラリアプレートに対して24cm/yearの速度で東向きに運動(世界最大のプレート運動速度) Republic of Fiji フィジーにおけるGPS観測 Lau Basinのテクトニクス解明[Bevis et al., 1995] IGS観測点 フィジーの首都Suvaにハワイ大学が1999年に設置 海水準観測[http://imina.soest.hawaii.edu/cgps_tg/] 米国・フランスなどが潮位計近傍にGPS設置(Fig.3) フィジーのIGS点は潮位計との取り付けはまだ 回線速度不足のため、GPSデータはzipディスクなどで郵送 Fig.1 フィジーの位置とIGS観測点 フィジーでリアルタイムVLBI観測を行う意義 地球姿勢観測 質量再配分・形状の変化で地球姿勢変動(Fig.4) 氷床の融解 海水の熱膨張 遠隔地でのリアルタイムVLBI実証実験 GPS観測網とのコロケーション 2500km以内にVLBI観測点なし(最も近い点はTidbinbilla) より正確なテクトニクス把握と海水準計測のためグローバルな座標系で位置決め必要 国際貢献 プロジェクト観測終了後は、フィジー共和国とその周辺での通信インフラ整備と海水準観測などの地球環境モニターに役立ててもらえるように技術移転を行う Fig.2 拡大を続けるTonga-Lau BasinでのGPS観測 Fig.3 潮位計近傍でのGPS観測例(写真はホノルル観測点) Fig.4 地球姿勢変動に影響する様々な現象。氷床の融解や海水の膨張も地球形状や質量分布を変化させ、地球姿勢変動に影響する。 [Lambeck, 1988] フィジーにおけるリアルタイムVLBI観測の可能性 技術的利点 比較的簡便な観測→現在PCベースのVLBIシステム開発中 ギガビットシステムによる高感度観測可能 超小型アンテナ~2.4mアンテナ、あるいはCARAVAN((Fig.5:赤道儀VLBI、米沢他[2002]) 現地でのサポート体制 南太平洋大学(Fig.6) 高速回線インフラ既にあり(Fig.7) 周辺の測地観測に関する情報 南太平洋でGPS観測を展開しているハワイ大学とのパイプあり 課題 現状はまだサーベイの段階だが、 観測意義のさらなる煮詰め 現地協力体制の確立 周波数標準の確保~GPS? 22GHz測地観測の確立 どの周波数帯を観測するかを含めて要検討 単周波観測の電離層補正 などが必要 Fig.5 超小型VLBIシステムCARAVAN [米沢他、2002] Fig.6 南太平洋大学で講義中の高橋冨士信氏 Fig.7 サザンクロスケーブル回線図(上図)とフィジー国際通信会社FINTELのファイバー陸揚げ地点局内(左図)。20Gbps以上あるが、フィジー国内へは、国全体で6Mbpsのみ。