教育センターにおける エネルギー環境教育講座実施の実態 エネルギー環境教育研究Vol.2, No.1 2007年12月 川村康文 (東京理科大学) 2017/6/28 小堀 智昭
問題と目的
エネルギー環境問題は人類生存に関わる問題 問題と目的 エネルギー環境問題は人類生存に関わる問題 人類共通の認識とするために エネルギー環境教育が必要! ESD:「持続可能な開発のための教育」 世界には環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な問題がある。これらの現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動のこと 例:ユネスコのESD (Education for Sustainable Development)
学校教育現場での取り組みが重要 日本は京都議定書の発信国 エネルギー環境教育への 問題と目的|日本の現状 この論文:2007、京都議定書:2005年発効2007年~2012年削減期間
調査方法
環境・エネルギー教育の教員研修講座の担当者 調査方法|調査対象者および調査時期 対象: 47都道府県の都道府県立教育センター 回答者: 環境・エネルギー教育の教員研修講座の担当者 時期: 2004年10月
調査方法|質問紙法の流れ 調査方法は質問紙法 調査票の作成 担当者へ郵送 回収
調査方法|調査票の各質問項目 調査票の質問は7項目 ➊ 環境・エネルギー教育講座の開催日数と定員 ➋ どんな教員を対象にしているか ➌ 講座で実際に行われた内容 ➍ エネルギー教育を扱った講座の内容 ➎ どんな人に講師を依頼しているか ❻ 今後工夫したい点や重点を置きたいこと ➐ 環境・エネルギー教育を行う上での課題 ④環境・エネルギー教育講座の中でも特にエネルギー教育
調査結果
35センターから回答(74.5%) どの質問項目にも丁寧な記載 担当者不在で回答できなかったセンターも複数 調査結果|回答の回収状況 エネルギー教育や環境教育の講座を行っていなかったり、 担当者不在で回答できなかったセンターも複数 35センターから回答が来たこと、頭に入れておこう
調査結果・考察 質問①:環境・エネルギー講座の 開催日数と定員
調査結果|質問①:エネルギー・環境教育研修講座の開催日数 日数(日) 1 2 3 4 5 6以上 小学校 6 9 7 中学校 10 高校 8 その他 12 ※その他 養護・盲・聾学校 :15 実験助手 :1 幼稚園 :3 栄養士 :1
調査結果|質問①:エネルギー・環境教育研修講座の定員 定員(人) 0~10 11~20 21~30 31~40 41~50 51~99 100以上 小学校 2 10 1 3 8 中学校 4 9 6 高校 5 その他 ※その他 養護・盲・聾学校 :15 実験助手 :1 幼稚園 :3 栄養士 :1
考察|質問①:エネルギー・環境教育研修講座の開催日数 行っていない 小学校 17.1% 中学校 11.4% 高校 28.6% 1日のみ行っている 小学校 25.7% 中学校 25.7% 高校 17.1% 5日以上行っている 小学校 17.1% 中学校 20.0% 高校 20.0%
考察|質問①:エネルギー・環境教育研修講座の開催日数 行っていない + 1日のみ行っている 小学校 42.9% 中学校 37.1% 高校 45.7% 行っていない 小学校 17.1% 中学校 11.4% 高校 28.6% 1日のみ行っている 小学校 25.7% 中学校 25.7% 高校 17.1% 5日以上行っている 小学校 17.1% 中学校 20.0% 高校 20.0%
エネルギー環境教育に関する研修は 十分に開催日数を取れていない! 考察|質問①:エネルギー・環境教育研修講座の開催日数 行っていない + 1日のみ行っている 小学校 42.9% 中学校 37.1% 高校 45.7% 行っていない 小学校 17.1% 中学校 11.4% 高校 28.6% 1日のみ行っている 小学校 25.7% 中学校 25.7% 高校 17.1% 5日以上行っている 小学校 17.1% 中学校 20.0% 高校 20.0%
調査結果・考察 質問② :研修講座の対象者属性
調査結果|質問②:研修講座の対象者属性について どのような教員を講座の対象者としているか質問 24 4 5 1 8 複数回答有り ※その他:長期派遣研修、専門研修、短期研修講座
調査結果|質問②:研修講座の対象者属性について どのような教員を講座の対象者としているか質問 24 4 5 1 8 複数回答有り ※その他:長期派遣研修、専門研修、短期研修講座
考察|研修への参加者 希望者による参加が多い 自由参加であるため、 教員が意識的にならない限り参加者は増えない
調査結果・考察 質問③:講座で実際に行われた内容
調査結果|質問③:講座で実際に行われた内容 講座を以下の7タイプに分類 講義 野外実習 施設見学 観察、実験 ものづくり 事例発表、討論 ビデオ等の視聴
調査結果|講座で実際に行われた内容 27 23 18 11 21 1 複数回答有り
調査結果|講座で実際に行われた内容(講義) 27 23 18 11 21 1 環境教育の進め方(11) 環境教育の実践事例(7) 野外観察・調査(8) 環境問題の総論的内容(2)
調査結果|講座で実際に行われた内容(野外実習) 27 23 18 11 21 1 『プロジェクト・ワイルド』とは「自然を大切に」と理解するだけでなく 「自然や環境のために行動できる人」を育成することに取り組んだ野生生物を題材とした米国産の環境教育プログラム。エデュケーターと呼ばれる指導員を養成している 水生生物調査 (7) 里山体験学習(2) 水質調査(6) 森林の役割や種の保存について、 森林の動植物の観察(3) 地層・化石・動植物の観察、 学校農園管理、 身近な環境調査(2) プロジェクト・ワイルドの体験(各1) ビオトープ観察(2)
調査結果|講座で実際に行われた内容(施設見学) 27 23 18 11 21 1 「持続可能な開発(SustainableDevelopment←ESD)」実現に向けた手法の一つとして、事業者の環境マネジメントに関する関心が高まった。それを踏まえて、ISO(国際標準化機構)では、平成5年から環境マネジメントに関わる様々な規格の検討を開始した。これがISO14000シリーズと呼ばれるものである。 大学・企業等の研究所(7) 清掃工場、浄水場、風力発電、 資源変換・再生センター(4) 原子力発電所、ISO取得企業、 電力会社等の資料館、植物園 火力発電所(2) (各1)
調査結果|講座で実際に行われた内容(観察、実験) 27 23 18 11 21 1 水質調査(3) 土壌生物を利用した環境診断、 水生生物の観察(3) 燃料電池の製作、紫外線の測定、 気体の調査(3) 環境教育のためのスキルアップ、 バードウォッチングの方法と実際、 森林観察(2) 廃油で燃料作り、エコクッキング、 物化生地分野の実験(2) 騒音調査(各1)
調査結果|講座で実際に行われた内容(ものづくり) 27 23 18 11 21 1 風力発電モデル作り(2) 太陽電池での工作、和紙作り、 燻製作り、ソーラークッカー作り、ペットボトル透視度計製作、 身近な物を使った工作(2) リサイクルものづくり、 環境教育教材の製作(各1)
調査結果|講座で実際に行われた内容(事例発表、討論) 27 23 18 11 21 1 環境教育・実践プログラムの発表(11) 学校におけるISO認証について、 環境教育モデル校の取り組み、 学校版ISO実践校の取り組み、 総合的な学習の時間(竹炭作り)、 指導法と実技、ワークショップ、 各学校における事例発表、 学校ビオトープ、淀川の生物、地域の環境特性を生かした取り組み(各1) インタラクティヴ・エコ、
調査結果|講座で実際に行われた内容(ビデオ等の視聴) 27 23 18 11 21 1 風力発電に関するビデオ
直接体験を重視した講座を多く設置 野外実習や発表・討論など 有意義な学習となるような工夫 ➡すぐ実践に移せるよう配慮 考察|講座で実際に行われた内容 野外実習や発表・討論など 直接体験を重視した講座を多く設置 有意義な学習となるような工夫 ➡すぐ実践に移せるよう配慮
調査結果・考察 質問④:エネルギー教育について扱った 講座の内容
エネルギー教育に関わる内容として扱ったものについて質問 調査結果|エネルギー教育について扱った講座の内容 直近の1~2年の研修講座で特に エネルギー教育に関わる内容として扱ったものについて質問 5 8 6 12 4 1 直近の1~2年の研修講座で特にエネルギー教育に関わる内容として扱ったものについて質問 エネルギー資源(科学的・社会経済学側面から)
考察|エネルギー教育について扱った講座の内容 直近の1~2年の研修講座で特に エネルギー教育に関わる内容として扱ったものについて質問 5 8 6 12 4 1 エネルギー資源(科学的・社会経済学側面から) エネルギー問題というよりは環境保護を前提としたエネルギー節約の内容? エネルギー問題にフォーカスした内容は あまり扱われていない
調査結果 質問⑤:担当講師の属性
どのようなタイプの人に講師を依頼しているか質問 調査結果|講師の属性 どのようなタイプの人に講師を依頼しているか質問 11 13 15 8 1 4 どのようなタイプの人に講師を依頼しているか質問 その他: 研究所のスタッフ、ジャーナリスト、 エネルギー財団、見学施設の担当者(各1)
教育実践者が最も多く、 考察|講師の属性 どのようなタイプの人に講師を依頼しているか質問 学校に持ち帰ってすぐ活用できるよう配慮 11 13 15 8 1 4 教育実践者が最も多く、 学校に持ち帰ってすぐ活用できるよう配慮
調査結果・考察 質問⑥:今後の工夫したい点や 重点を置きたいこと
調査結果|工夫したい点や重点を置きたいこと 実践に有用な体験型・実習重視 14.3%(5) 学校で実践可能な事例 11.4%(4) アウトソーシングで教員の負担減 8.6%(3) 人材育成 5.7%(2) 総合的に捉えられるような研修 5.7%(2) 校種ごとの研修、系統的な研修、今日的課題、 原発地域を踏まえたエネルギー教育、 多面的思考・判断のできる人材育成、新エネルギー、 野外研修、学習指導要領の内容 etc.(各1) アウトソーシングはNPOや地域の協力によるものを想定 「全学校でできるように人材育成」?→どの学校でも活かせるような研修内容にしたい、ということ? (自由記述)
調査結果|工夫したい点や重点を置きたいこと 実践に有用な体験型・実習重視 14.3%(5) 学校で実践可能な事例 11.4%(4) アウトソーシングで教員の負担減 8.6%(3) 人材育成 5.7%(2) 総合的に捉えられるような研修 5.7%(2) 校種ごとの研修、系統的な研修、今日的課題、 原発地域を踏まえたエネルギー教育、 多面的思考・判断のできる人材育成、新エネルギー、 野外研修、学習指導要領の内容 etc.(各1) 学校ですぐに活かせること =「即戦力」の養成を志向 「即戦力」はこの論文の中でたびたび登場するキーワード (自由記述)
調査結果・考察 質問⑦:環境・エネルギー教育を 行う上での課題
時間数の確保 14.3%(5) 総合的な学習との棲み分け 5.7%(2) 体系化 5.7%(2) 予算・指導者の確保 5.7%(2) 調査結果|教育センターでの課題 時間数の確保 14.3%(5) 総合的な学習との棲み分け 5.7%(2) 体系化 5.7%(2) 予算・指導者の確保 5.7%(2) 専門的機関(環境局など)との連携 5.7%(2) 学んだことを授業に活かせるか、 環境問題を根本から吟味する方法、校種間・学校間格差、 学習者の発達段階に合わせること、高校教員の関心・参加率の低さ、 教科指導の枠を超えて広げること、参加者を増やすこと 環境教育研究指定校との連携、適当な見学施設の少なさ (自由記述)
時間数の確保 14.3%(5) 総合的な学習との棲み分け 5.7%(2) 体系化 5.7%(2) 予算・指導者の確保 5.7%(2) 調査結果|教育センターでの課題 時間数の確保 14.3%(5) 総合的な学習との棲み分け 5.7%(2) 体系化 5.7%(2) 予算・指導者の確保 5.7%(2) 専門的機関(環境局など)との連携 5.7%(2) 学んだことを授業に活かせるか、 環境問題を根本から吟味する方法、校種間・学校間格差、 学習者の発達段階に合わせること、高校教員の関心・参加率の低さ、 教科指導の枠を超えて広げること、参加者を増やすこと 環境教育研究指定校との連携、適当な見学施設の少なさ 教師の研修が強化された昨今、 長期休暇中の教員研修の日程に 余裕がなくなったのでは? 各教科の研修講座だけで手いっぱい(教育センター側でも受講者側でも) (自由記述)
(あらためて)考察
エネルギー環境教育の研修日数の少なさ(質問①) 考察|エネルギー環境教育の研修実施実態 エネルギー環境教育の研修日数の少なさ(質問①) 時間数確保の課題(質問⑦) 研修センター側も、受講者側も、 各教科の研修講座だけで手一杯 質問①:環境・エネルギー講座の開催日数と定員 質問⑦:環境・エネルギー講座を行ううえでの課題
軽視されがち 「高校教員のエネルギー環境教育に対する 関心は 低い ?」 大学受験への対応という 小中学校と異なった背景 考察|研修への参加者 「高校教員のエネルギー環境教育に対する 関心は 低い ?」 大学受験への対応という 小中学校と異なった背景 総合的な学習の時間は 進学学習に大きなウエイト ➡受験に関係ないエネルギー環境教育は 軽視されがち 質問①:研修講座の開催日数 で高校は1or0日のみの開催が最も多かった 質問②:参加者の属性 で希望者による自由参加の割合が最も高かった→意識的にならない限り改善は難しい 質問⑦で高校教員の関心・参加率の低さが課題に挙げられていた
考察|総合的な学習の時間で 積極的にエネルギー環境教育を行っている場合について 考察|総合的な学習の時間で 積極的にエネルギー環境教育を行っている場合について 質問⑥⑦より、即戦力養成の志向 野外実習 ものづくり 事例発表 討論 観察・実験 講義 環境教育の進め方 野外観察・調査 環境教育の実践事例 質問⑥:今後の工夫したい点や重点を置きたいこと 質問⑦:環境・エネルギー教育を行う上での課題 講義77.1%、野外実習65.7%、観察実験51.4%、施設見学51.4% ものづくり31.4%、
考察|総合的な学習の時間で 積極的にエネルギー環境教育を行っている場合について 考察|総合的な学習の時間で 積極的にエネルギー環境教育を行っている場合について 質問⑥⑦より、即戦力養成の志向 直接体験重視 講義77.1%、野外実習65.7%、観察実験51.4%、施設見学51.4% ものづくり31.4%、
考察|総合的な学習の時間で 積極的にエネルギー環境教育を行っている場合について 考察|総合的な学習の時間で 積極的にエネルギー環境教育を行っている場合について 問題点 ●即戦力育成には不十分な時間数 教員研修が夏休みにも開催され 過密状態 ●総合的な学習の時間での研修と 理科などの教科での研修との棲み分けは?
結論
結論|明らかになったこと ●エネルギー環境教育講座の開催日数は少ない ●自由参加で、高校教員の参加が特に少ない ●各自の学校ですぐ活用できる実践的な内容が多い ●講師は教育実践者が多く、学校での活用に配慮
結論|現状について ●PISAやTIMMSにより学力低下問題が表面化 ●日本の環境教育では自然保護教育が中心で エネルギー教育はあまりなされていない ➡総合的な学習の時間のあり方の議論の上で エネルギー環境教育及びESDのあり方を 考える必要あり ESD:Education for Sustainable Development おぼえてますか? 京都議定書発効の世の流れ(今ならパリ協定か)
論文を読んで
すぐ実践に移せるものが求められている 即戦力、自分の学校に持ち帰って 慣性力実験器もできる限り構造を簡略化し 現場で使い得るものにしたい 論文を読んで 即戦力、自分の学校に持ち帰って すぐ実践に移せるものが求められている 慣性力実験器もできる限り構造を簡略化し 現場で使い得るものにしたい 慣性力実験器は教員免許更新講習で扱う