沿岸生態系 海での物質循環・流動生態系モデル

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沿岸生態系 海での物質循環・流動生態系モデル 川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第9章(pp.150-164)

海岸法の一部改正(平成11年)の背景 災害からの防護 海岸浸食の進行 海岸環境意識の高まり 海岸レクリェーションの需要の増加 地方分権化の推進 防護,環境,利用 被害からの海岸防護,海岸環境の整備と保全,公衆の海岸の適正利用

沿岸域の多様な生息空間 干潟,浅場,藻場,砂浜,磯などは,小魚や貝類の生息地であるとともに,それらを餌とする野鳥の生息地にもなっている. 波や潮汐は複雑な力学的・物理的環境を与えている.これが多様な種を育む1つの要素となっている.

干潟(tidal flat) 潮汐により露出したり冠水したりする領域 1)生物生息機能  貝類をはじめとし底生生物(ベントス)の生息場 2)生物生産機能  生物の産卵,生育 3)水質浄化機能  底泥や海水の有機物や栄養塩(窒素やリン)が干潟の生物によって除去,固定される.

藻場(submerged vegetation) 本来、漁師が、内湾でアマモ類の繁茂する場所を指してよんだ用語であるといわれているが,現在では,一般に水底で大型水生植物が群落状に生育する場所を総称して、藻場とよんでいる. 1)産卵場・幼稚仔育成機能 2)飼料供給機能 3)水質浄化機能 4)底質安定化機能 アマモ場

コンブ,カジメ,アラメ

現在,水質の悪化,干潟や藻場の消失が問題となっている. 1960年代の高度経済成長を契機として,大都市に人口が集中した結果,大都市を背後に持つ内湾では大量の生活排水や産業排水が発生し,海域に排出され水質が悪化した. 下水処理では有機物は除去されても栄養塩は除去できず(栄養塩を処理するには高次処理が必要)に海域へ排出され,赤潮や青潮の原因となる. 河川からの土砂供給の減少(海岸浸食の増加),臨海部の埋立造成により干潟や藻場が消失していった. 東京湾では明治後期に約2万haあった干潟がその後の100年間で90%以上消失したと言われている.

ミティゲーション(mitigation): 干潟・沼地の埋め立て・改変などの開発行為が、生態系や自然環境に影響を及ぼすと考えられるとき、開発による悪影響を軽減するために取る補償措置や代替措置のこと。わが国では開発の対象となる生態系の持つ機能を他の場所で代償する行為を指すことが多いが、特に湿地(wetland)を守るためにミティゲーションが盛んに利用されているアメリカでは、事業自体の見直しや規模の縮小も含まれる。 ある失われた環境(例えば干潟)を別の場所で再生することは,本質的な環境の修復ではない.

失われた自然環境を修復・補償・強化する技術 ミティゲーション技術(環境修復技術) 失われた自然環境を修復・補償・強化する技術 望ましい 環境の質 良い 悪い 時間 ③ ① ② ①:ミチゲーション技術を伴わない開発 ②:悪い環境状態で始めるミチゲーション    (回復プロジェクト) ③:良い環境状態で始めるミチゲーション    (保持プロジェクト)

異なる水域間の海水の移動 植物プランクトン増殖に窒素,リン,ケイ素,微量金属を必要とする. 栄養素としてのミネラル(栄養塩)

海水効果が悪い内湾は水質汚濁が進行しやすい. 湾内にあったが一度外洋に流出し再び内湾に戻ってきた水塊 新たに外洋から入ってきた水塊 タイダルプリズムの容積 塩分の収支 タイダルプリズム 平均水位 満潮位 干潮位 を消去 海水交換率 海水交換率 河川 外洋 湾 海水効果が悪い内湾は水質汚濁が進行しやすい.

赤潮  プランクトンの異常増殖により海や川、運河、湖沼等が変色する現象である。水が赤く染まることが多いため「赤潮」と呼ばれるが、水の色は原因となるプランクトンの色素によって異なり、オレンジ色、赤色、赤褐色、茶褐色等を呈する。赤潮を引き起こす生物は、色素としてクロロフィルの他に種々のカロテノイドを持つ場合が多く、細胞がオレンジ色や赤色を呈する為にこう見える。 珪藻,ラフィド藻,渦鞭毛藻 溶存酸素濃度の低下。 鰓(えら)にプランクトンが詰まる事 による物理的窒息。 藻類が産生する毒素による斃死。 降雨のあと晴天になると,河川から大量に供給された栄養塩を利用して藻類が増殖する.

青潮 海水に含まれる硫黄がコロイド化し,海水が白濁する現象 酸素の豊富な水面付近で酸化され硫黄酸化物の微粒子が生成される. スケールの小さい湾 多くはこれに該当する. 嫌気性細菌の硫酸還元菌が硫化水素を発生させる. 右手に岸を見て移動する(北半球) スケールの大きい湾 あるいは成層効果の強い湾 (コリオリ力の効果が現れるスケール) 成層効果の強い湾 (コリオリ力の効果が現れるスケール)

窒素とリンの海域での循環 全窒素(T-N) 有機体窒素(Org-N) 無機体窒素(Inorg-N) アンモニア態窒素(NH4-N) 亜硝酸態窒素(NO2-N) 硝酸態窒素(NO3-N) 水中の窒素の構成

無機溶存態リン(DIP) 全リン 溶存態リン 懸濁態リン リン酸態リン(PO4-P) 凝集態リン 有機体リン 無機体リン 凝集体リン 水中のリンの構成

リン酸態リン 懸濁態有機物 無機溶存態窒素(DIN) 植物プランクトン 溶存態有機物 動物プランクトン 溶出 DIP DIN 負荷流入 (有機物) 排糞・死亡 排泄 呼吸 摂食 沈降 分解 枯死 無機化 細胞外 分泌 光合成 底質 日射 好気条件下の水域での炭素,窒素,リンの循環

生態系モデル 水質モデル 流動モデル 貧酸素水塊の挙動,赤潮の発生などを コンピュータを用いて予測する.

連続の式 x方向運動方程式(水平方向) y方向運動方程式(水平方向) z方向運動方程式(鉛直方向) 水温の保存則 塩分の保存則 重力項(水面勾配項) コリオリ力 運動量の流れによる輸送 せん断応力項(運動量の拡散) 密度差に起因する圧力勾配項 y方向運動方程式(水平方向) コリオリ力 せん断応力項(運動量の拡散) 運動量の流れによる輸送 密度差に起因する圧力勾配項 z方向運動方程式(鉛直方向) 静水圧 水温の保存則 塩分の保存則

植物プランクトン(phy) 動物プランクトン(zoo) 実質微分 植物プランクトン(phy) 植物プランクトンの拡散+光合成による増殖-細胞外分泌-呼吸-動物プランクトンによる摂食-枯死-沈降 動物プランクトン(zoo) 動物プランクトンの拡散+植物プランクトンによる摂食-排糞-排泄-自然死亡 懸濁態有機物(デトリタス:POM) 懸濁態有機物の拡散+植物プランクトンの枯死+動物プランクトンの排糞+動物プランクトンの自然死亡-細菌による分解-分解余剰物生成-沈降+海域外からの流入 溶存態有機物(DOM) 溶存債有機物の拡散+植物プランクトンの細胞外分泌+POM余剰物生成-無機化+海域外からの流入

無機溶存態窒素(DIN:NH4+NO2+NO3) 無機態溶存窒素の拡散+植物プランクトンの呼吸-植物プランクトンによる摂食+動物プランクトンの排泄+懸濁態有機物の無機化+溶存態有機物の無機化+底質からの溶出+海域外からの流入 リン酸態リン(DIP) リン酸態リンの拡散+植物プランクトンの呼吸-植物プランクトンによる摂食+動物プランクトンの排泄+懸濁態有機物の無機化+溶存態有機物の無機化+底質からの溶出+海域外からの流入 溶存酸素(DO) 溶存酸素の拡散+光合成による供給-植物プランクトンの呼吸-動物プランクトンの呼吸-懸濁態有機物の分解に伴う消費-溶存態有機物の無機化に伴う消費-底質による消費+大気中からの供給(再曝気)