J-PARCにおけるハイペロンを含む少数多体系の実験計画

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J-PARCにおけるハイペロンを含む少数多体系の実験計画 谷田 聖(京都大学) 2008年12月25日  研究会「少数粒子系物理の現状と今後の展望」 @阪大RCNP

少数系における核物理 通常核では・・・ ハイパー核ではどうか? p D p 原子核を核力から(直接)理解できるか?  いったんは NO off-shellでの核力、3体力 これらを入れると、かなり良くなる(なりそう) ハイパー核ではどうか? on-shell の性質もよくわからない  YN、YY散乱のデータは質・量 ともに(圧倒的に)不足 これをハイパー核のデータから出したい。 核力の拡張 [SU(3)対称性] 核力も含めて統一的に理解し、その起源に迫りたい 伝統的な中間子交換模型で十分か?クォーク、グルーオンの自由度は見えるか? p D p N N N

YN、YY相互作用へ 相互作用モデルの構築 SU(3)対称性 ハイパー核構造を計算 実験データとの比較 相互作用の特定部分をいじれる  モデルのどこが良い、悪い? 少数系の利点:  広大なモデルスペースを扱える 生の相互作用を用いて直接計算 正しい相互作用  正しい結果

例:計算が(いきなり)破綻? 束縛エネルギー 3LH 4LH, 4LHe 5LHe ほとんどどんなLN相互作用を持ってきても、この3つを 同時に合わせることができない (1972年、 Dalitz et al. (NPB47 109) 以降数多い) 赤石 et al.,による説明(PRL84 (2000) 3539) 強いΛN-∑N coupling を取り入れる アイソスピンの選択則によりA=4を強く下げる

Hyperon mixing 小さな質量差 ∑は1π交換で混ざる T=0のハイパー核では弱い 荷電対称性の破れ Λ→∑で変化したアイソスピンを埋め合わせるために、残りの核も励起 荷電対称性の破れ MS+ ー MS- = 8 MeV ~0.1 (MS ー ML) 相互作用にも現れるはず

J-PARC News: 12月23日 30 GeV 陽子加速に成功! J-PARC = Japan Proton Accelerator Research Complex 50 GeVの陽子加速器を中心とした大強度加速器群 50 GeV×15 mA = 750 kW KEK-PSの100倍、BNL-AGSの10倍の強度のビームを供給 世界で最も強力なK中間子のビームが得られる → 他の施設の追随を許さない研究が可能 建設はほぼ終了、施設のcommissioning中 News: 12月23日 30 GeV 陽子加速に成功! 2009年からストレンジネス核物理の実験を行う予定

Tokai Site of JAEA

Feb. 2008

Feb. 2008

June, 2007

June, 2007

Dec, 2008

24の実験提案のうち、9つがストレンジネス核物理 すべてScientific approval, 7つがフル採択、4つはDay-1

ハイパー核のγ線分光 3次元核図表の拡張へ “Table of Hyper-Isotopes”の出版 (p+,K+ g) at KEK-PS (K-, p- g) at BNL-AGS using Ge array “Hyperball” NaI array (13LC) J-PARCでは数10~数100倍のスピードでデータを収集 3次元核図表の拡張へ “Table of Hyper-Isotopes”の出版

Ge detctor array: Hyperball Constructed by Tohoku/ KEK/ Kyoto in 1998 Upgraded to Hyperball2 in Tohoku (2005~) Large acceptance for small hypernuclear g yields Ge (r.e. 60%) x 14 W ~ 15%, e ~ 3% at 1 MeV High-rate electronics for huge background BGO counters for p0 and Compton suppression

荷電対称性の破れ A=4: ΛNー∑N混合が強い  荷電対称性の破れ? BΛ(4LH) =2.04±0.04 MeV BΛ(4LHe)=2.39±0.03 MeV ΔBΛ    =-0.35±0.05 MeV ← 強いCSBを示唆                   (3H, 3He の場合の約5倍) 励起状態(1+)では、He側のデータが怪しい  J-PARC で精度の良いデータが欲しい 4He(K-,p-)反応を利用 1.1~1.5 GeV/cのK-ビームで 1+ 状態を効率よく生成 (K-,p0)反応によるさらなる発展を期待

Doppler Shift Attenuation Method : 核内Lのg因子測定へ 核内バリオンの磁気モーメント  ・ カイラル対称性の部分的回復?  ・ Sの混合、核媒質効果 mq が減少→ mq増大? L-spin-flip M1 遷移のB(M1) -> gL swelling → mq増大? in s-orbit gc Doppler Shift Attenuation Method : 核構造は正確に押さえなくてはいけない

J-PARCでのガンマ線分光の他のテーマ LN 相互作用の詳細 (E13) LN スピン依存相互作用と LNN force (10LB and 11LB) LN 相互作用の動径依存性 (19LF) B(E2) 測定 7LHe, 9LBe and 13LC  → 8Be,12Cのクラスター構造と Lによるその変化 Lを加えることで中性子ハローは消えるか? sd-殻ハイパー核    →変形、集団運動の変化 重いLハイパー核 → 核内深部のバリオンの性質? J-PARC E13 (Tamura et al.)

中性子過剰ハイパー核 J-PARC E10 さらに強いp-ビームを利用できるビームラインの計画あり(野海) (p-,K+)反応 (K-,p+)反応 J-PARC E10 6LH, 9LHeの分光実験 高強度p-を利用した (p-,K+)反応 さらに強いp-ビームを利用できるビームラインの計画あり(野海)

Hyperheavy hydrogen Λ(I=0) + コア核(I=0)  ∑(I=1) + コア核(I=0)] アイソスピン大 相手になる核子が増える nL  pS-:コア核が安定化 束縛エネルギーを精度よく 決定したい Akaishi et al. p n

S=-2の世界 初めてhyperon-hyperon 相互作用が現れる 非常にdynamicな システムなのでは? ここがわからないとmulti strangeness系に行けない。 非常にdynamicな システムなのでは? Large baryon mixing? 質量差に反比例 XN-LL-SSが混ざった状態 としてのHダイバリオン? ほとんどわかっていない  J-PARCでの中心課題

E07 Hybrid Emulsion実験 ~10000個のX-を原子核乾板中に静止 100個のLL核の検出  LL相互作用

LL核の生成 Xp  LL が運良く 核内に残る(~10%)

エマルジョン中のイベントの例 各軌跡の長さ・太さ 各バーテックスで何ができたかを推定 粒子の種類・エネルギー 各バーテックスで何ができたかを推定 ハイパー核の束縛エネルギーを出す。 DBLL = BLL - 2BL がLL相互作用による分 → 弱い引力?

LL束縛エネルギーのsystematics DBLLは原子核によって違うかも知れない 例えば Hyperon mixing によって変わり得る 5LLHe 6LLHe p n L p n L p n X p n X Suppress される Enhance される

E05 X核分光 Missing mass spectroscopy of 12C(K-,K+)X  12XBe, 12LLBe 1.8 GeV/c K- ビーム 大強度 1.4x106 K- /spill (Phase-1) 高純度 K-/p- ~6.9 Proton beam 30GeV-9mA

E03 X原子のX線測定 X-atom のX線を測る世界初の実験 Fe(K-,K+) 反応による X- 生成 → 静止 X- → X線測定 X-A の Optical Potential の直接測定 Fe(K-,K+) 反応による X- 生成 → 静止 X- → X線測定 方法の確立を目指す 数多くのX線測定で、 XA相互作用の解明へ ダブルL核のg線分光にもつなげていきたい K- K+ X- X ray Fe target

まとめ 現在建設中のJ-PARCにおいて、ストレンジネス核物理はメインの研究テーマ 9つの実験が提案・採択済み 5つのDay-1実験 さらに多くのアイデアが考えられている (弱崩壊の実験もありますが、紹介しきれませんでした) 少数系の特徴を活かして、YN, YY相互作用や、その荷電対称性の破れ、hyperon mixingに興味が持たれている。 実験は2009年から開始予定 今後もJ-PARCにおける発展が期待できる