シミュレーションの現状 ver 0.42 岸本 祐二
シミュレーション条件 TPC * Fiducial volume: 28 cm×28 cm×28 cm * Gas: Ar : CF4 : iC4H = 54 : 40 : 6(分圧比), 1atm * アルミハニカムフランジ使用 * SMILE-Iと同等のEncoding Simulatiorを使用 * 解析方法もSMILE-Iと同様 GSO PSAs * Pixel Size: GSO, 6 mm×6 mm×13 mm * PSA: (8×8 pixels)×1 PMTs, 4端読み出し * ピクセル間の光漏れはSMILE-I simulatiorと同様 * 底面: 8×9 PMTs * 側面: 4×1+ 2 PMTs(底面重視モデル②) * 治具無し * 解析方法はSMILE-Iと同じ 入射γ線 * 平行光 * 0度入射 セレクション * Nhit > 3 * single GSO-Unit hit * Le/[cm] - (3.42e-3 * Ke/[keV] ^1.67) < 2 * Fiducial volume中にコンプトン点がなければカット * Ke > 5 keV * Rconstructable * |Δα| < 20 degree * photo-peakのみセレクト その他のジオメトリ * ETCCは1台のみ * 与圧ベッセルあり * ゴンドラなし * 回路系なし
検出効率 コンプトン確率 Nhit >= 3 反跳電子がガス中に全てのエネルギーを落とす 散乱γがシンチに全てのエネルギーを落とす コンプトン点と放出方向を求められる 1本のPMTに全てのエネルギーを落としている |α_kin – α_geo| < 20deg コンプトン点がfiducial volume(28×28×28cm3)中にある 反跳電子のエネルギーとtrack lengthによるカット後 (式は※1) Energy cut後 (式は※2) se PSF cut後 (※3) ※1 |L - 0.00342291 * E1.67046| > 2 ならカット (L : track length [cm], E : 反跳電子のエネルギー [keV] ) ※2 R(E0)= 0.147 * sqrt(356) / sqrt(E0) として、|E -E0| > R(E0) ならカット (E0 : 入射γのエネルギー [keV],E : 再構成γのエネルギー [keV],R(E0)エネルギー分解能(HWHM)) ※3 再構成γと入射γのなす角がPSF(E)以上の場合はカット (E : 入射γのエネルギー, PSF(E) : simulationから求めたPSF(HWHM))
検出効率が大きく落ちているところの解釈 ① ② ③ ④ ①高エネルギー側では反跳電子が外に抜けてしまっている コンプトン確率 ① Nhit >= 3 反跳電子がガス中に全てのエネルギーを落とす ② ③ 散乱γがシンチに全てのエネルギーを落とす コンプトン点と放出方向を求められる ④ 1本のPMTに全てのエネルギーを落としている |α_kin – α_geo| < 20deg コンプトン点がfiducial volume(28×28×28cm3)中にある 反跳電子のエネルギーとtrack lengthによるカット後 (式は※1) Energy cut後 (式は※2) se PSF cut後 (※3) ①高エネルギー側では反跳電子が外に抜けてしまっている ②散乱γがGSOで再びコンプトン散乱してしまう & GSOに到達する前にベッセル等と相互作用してしまう ③正しくαが取れていない→トラッキングがうまくできていない or セレクションが良くない ④これは原理的に大体4分の1位になる
②の要因追求 デフォルト ベッセルを除いた場合 低エネルギー側でベッセルによる損失は見えるが、それだけでは説明がつかなかった
それ以外の要因 ・入射窓から散乱γが逃げていったイベント ・側面シンチと底面シンチの間から散乱γが逃げていっ たイベント
SMILE-IのEfficiencyとの比較 SMILE-IのEfficiency(高田さんD論から) Xe:Ar:C2H6=54:40:6 (pressure ratio), 1atm Fiducial volume : 9×9×14cm3 2.5×10-4/14cm = 1.8×10-5 [cm-1] (356keV) ×0.15 Ar:C2H6=90:10 (pressure ratio), 1atm Fiducial volume : 8×8×7.6cm3 2.0×10-5/7.6cm = 2.6×10-6 [cm-1] (356keV) Xe→CF4の影響 Ar:C2H6=90:10 (pressure ratio), 1atm efficiency : 1.81×10-5@356keV ×1.35 Gasの違いとgas depthの違いを考慮してもSMILE-IIの方が検出効率が高い → Fiducialが広がった効果? Ar:CF4:C4H10=54:40:6 (pressure ratio), 1atm efficiency : 2.44×10-5@356keV (Gas depth : 10cm) 高橋修論より コンプトン確率 反跳電子がガス中に全てのエネルギーを落とす 散乱γがシンチに全てのエネルギーを落とす 1本のPMTに全てのエネルギーを落としている Nhit >= 3 コンプトン点と放出方向を求められる コンプトン点がfiducial volume(28×28×28cm3)中にある |α_kin – α_geo| < 20deg se 反跳電子のエネルギーとtrack lengthによるカット後 (式は※1) Energy cut後 (式は※2) PSF cut後 (※3) SMILE-Ⅱ Ar:CF4:C4H10=54:40:6 (pressure ratio), 1atm Fiducial volume : 28×28×28cm3 2.3×10-4/28cm = 8.2×10-6 [cm-1] (356keV) SMILE-Iの性能からスケーリングのみで見積もると 1.8×10-5×0.15×1.35 = 3.6×10-6 [cm-1] (356keV)
検出効率を上げるには(長期的な視点で) GSO BGO 飛躍的には改善しない ~400keV ~500keV ①高エネルギー側では反跳電子が外に抜けてしまっている → ドリフトケージ内に電子吸収体を入れる、ガス領域のサイズアップ ② 散乱γがGSOで再びコンプトン散乱してしまう → もっと重たいシンチを考えるか? → 飛躍的には向上しなそう(右図) GSOに到達する前にベッセルと相互作用してしまう → ベッセルの2層化、ベッセルを軽い物質でつくる ③正しくαが取れていない or セレクションが良くない →トラッキングアルゴリズムの改善 or セレクションの最適化 ④PSFカットは原理的に大体4分の1のイベントを落とすのでこれは仕方がない GSO BGO 飛躍的には改善しない ~400keV Gd : Z=64 Si : Z=14 O: Z=8 Bi : Z=83 Ge : Z=32 O: Z=8 ~500keV (その他) TPC-Ⅲモードに移行することで解析効率が上がらないか? TPC-Ⅲモードで取得したデータに対してTPC-Iと同等の解析をやったら大体コンシステントな解析効率になるという結果は出ているが、TPC-Ⅲモードに特化した解析はまだ試していないとのこと(by株木さん)→解析効率が上がる可能性はまだある
(参考)イメージング性能 ARM SPD PSF
CrabのSignificance計算 ・Crabのエレベーションの推移(2011.5.31) ・Crabのflux Fneb(E) = 37.5*10-5(E/100keV)-2.18 [photons/cm2 sec keV] Fpul(E) = 7.6*10-5(E/100keV)-2.04 [photons/cm2 sec keV] FCrab(E)=Fneb(E)+Fpul(E) ref: L.M.Bartlett et al. AIP conf. Proc. 304 (1994) 67 ・バックグラウンドのflux Extended Ling’s model Lingのバックグラウンドモデルは300keVまで しか値が示されていないが、それをpower law で 100keVまでのばしたもの。天頂角依存性も入っている。 ref: 高田さんがApJに投稿中の論文 大樹町多目的航空公園での打ち上げを仮定 42°29’58.44” 143°26’10.89” ・入射角依存性 ・視野 シミュレーションから得られた PSF のFWHMを視野とする。
Significanceの定義 Significance = S /sqrt(S+2B) ・・・ 視野内のBGのみで計算する場合 S = FCrab(E) * A * cos(θ) * Katt(E,d) * D’(E) * Kang(θ) B = Fbg(E,d,θ) * A * cos(θ) * Ω(E) * D(E) * Kang(θ) E: エネルギー A: 検出面積(28×28cm2) θ: 入射角 D’(E): 検出効率(視野で切り取った影響を含む) D(E): 検出効率(視野で切り取った影響を含まない) Kang(θ): D(E)の入射角依存性(300keVのデータを使用) Katt(E, d): 大気による減衰率(d: 大気深さ) Ω(E): 視野(立体角)←PSFのFWHMとしている
CrabのSignificance計算 上記の値からSignificanceを求めると 100keV~1050keV、検出面積A=28×28cm2、観測時間T=(南中を挟む)3時間観測、高度35km Crabから飛来するフォトンの数 BGフォトンの数 = 308814 [photons] = 533183 [photons] 大気による減衰を考慮 検出効率を考慮 = 153110 [photons] = 89.8 [photons] 検出効率を考慮 Crab観測時と同じエレベーションを考慮 = 5.9 [photons] Crabのエレベーションを考慮 = 49.2 [photons] = 3.2 [photons] 上記の値からSignificanceを求めると S/sqrt(S+2B) = 0.32, S/sqrt(S+B) = 0.45 現状ではこの程度しかいかない。検出効率が低すぎる。
PSFのHWHM以上の領域で切り取った場合のSignificance PSFのHWHM以上の領域で切り取ると、S/Nは今より悪くなるが、Significanceとしては得をする可能性がある。PSFのHWHMより広い範囲で切り取った場合をいくつか調べてみた。 100keV~1050keV、検出面積A=28×28cm2、観測時間T=(南中を挟む)3時間観測、高度35km 1、PSF(HWHM)の2倍の領域で切り取る場合 Crab photon : 7.8 [photons], BG photon : 192.8 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 0.39, S/sqrt(S+B) = 0.55 2、PSF(HWHM)の3倍の領域で切り取る場合 Crab photon : 11.7 [photons], BG photon : 419.2 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 0.40, S/sqrt(S+B) = 0.56 どこかでSignificanceの極大値を取ると考えられるので、ちゃんと見るにはもっと細かい間隔で調べる必要があるが、上記の様子だと極端に高い値が出るとは考えづらい。
PSFのHWHM以上の領域で切り取った場合のSignificance HWHM×3.1位で切るともっとも得する
単純計算① ガスを2気圧にしたら・・・ Crab : 6.5 [photons], Bg : 98.4 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 0.45, S/sqrt(S+B) = 0.63 ガスを2気圧、ETCC×2台にしたら・・・ Crab : 12.9 [photons], Bg : 196.8 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 0.64, S/sqrt(S+B) = 0.89 ガスを2気圧、ETCC×2台、解析効率が現状の3倍になったら・・・ Crab : 38.7 [photons], Bg : 590.3 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 1.11, S/sqrt(S+B) = 1.54 ガスを2気圧、ETCC×2台、解析効率が現状の3倍、ETCCを40cm3に拡張したら・・・ Crab : 68.9 [photons], Bg : 1049.2 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 1.48, S/sqrt(S+B) = 2.06
単純計算② Efficiency × 10 Crab : 32.3 [photons], Bg : 491.9 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 1.01, S/sqrt(S+B) = 1.41 Efficiency × 20 Crab : 64.6 [photons], Bg : 983.8 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 1.43, S/sqrt(S+B) = 1.99 Efficiency × 50 Crab : 161.4 [photons], Bg : 2459.5 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 2.26, S/sqrt(S+B) = 3.15 Efficiency × 130 Crab : 419.7 [photons], Bg : 6394.6 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 3.65, S/sqrt(S+B) = 5.08
Kirunaでのエレベーション Crab Nebula Cygnus X-1 ・ Stellarium使用 Crab Nebula Cygnus X-1 ・ Stellarium使用 ・ キルナ 67°52′12″N、 21°4′12″E ・ 2012年6月1日についてのエレベーション
KirunaでのBG 高田さんの計算
Kirunaでの感度予測(Crab) Preliminary 南中を跨ぐ10時間観測(高度35km) Crab : 5.26 [photons], Bg : 90.8 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 0.38, S/sqrt(S+B) = 0.54 南中を跨ぐ10時間×10日間観測(高度35km) Crab : 52.6 [photons], Bg : 908.2 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 1.22, S/sqrt(S+B) = 1.70 南中を跨ぐ10時間×10日間観測(高度35km、BG5倍) Crab : 52.6 [photons], Bg : 4541.0 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 0.55, S/sqrt(S+B) = 0.78 高度40kmの計算はまだ
Kirunaでの感度予測(Cygnus X-1) Preliminary 南中を跨ぐ24時間観測(高度35km) Cygnus : 7.80 [photons], Bg : 158.4 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 0.43, S/sqrt(S+B) = 0.60 南中を跨ぐ24時間×10日間観測(高度35km) Cygnus : 78.0 [photons], Bg : 1584.9 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 1.37, S/sqrt(S+B) = 1.91 南中を跨ぐ24時間×10日間観測(高度35km、BG5倍) Cygnus : 78.0 [photons], Bg : 7919.5 [photons] → S/sqrt(S+2B) = 0.62, S/sqrt(S+B) = 0.87 高度40kmの計算はまだ
セレクションパラメーター依存性 ① ② ③ ④ 4ページの図 コンプトン確率 ① Nhit >= 3 反跳電子がガス中に全てのエネルギーを落とす ② ③ 散乱γがシンチに全てのエネルギーを落とす コンプトン点と放出方向を求められる ④ 1本のPMTに全てのエネルギーを落としている |α_kin – α_geo| < 20deg コンプトン点がfiducial volume(28×28×28cm3)中にある 反跳電子のエネルギーとtrack lengthによるカット後 (式は※1) Energy cut後 (式は※2) se PSF cut後 (※3) 4ページの図 4ページの図①~④の内、セレクションパラメータとして自由度があるのは③のαカットのみ。 そこでalphaカット(|α_kin - α_geo| < Δα)でのΔαに対する依存性を見てみた。
PSFのΔα依存性 200~300keV付近と、900~1000keV付近で比較的大きな変化が見て取れる 200~300keV付近はsignificanceの計算に大きく寄与するので特に重要
EfficiencyのΔα依存性 Δα=10deg Δα=20deg Δα=30deg Δα=40deg Δα=50deg αカット後 Δα=40deg Δα=50deg 4ページの図と同様のプロット。αカット後の Efficiencyが大きく変化している。
100keV~1050keV、検出面積A=28×28cm2、観測時間T=(南中を挟む)3時間観測、高度35km(P7~P8と同様の計算条件) SignificanceのΔα依存性 100keV~1050keV、検出面積A=28×28cm2、観測時間T=(南中を挟む)3時間観測、高度35km(P7~P8と同様の計算条件) Δαが大きい方が僅かに得をするようだ。しかしながら、5σまでは全然届いていない。
Deltaカット デフォルト αカットの変わりにDeltaカット Preliminary |1-Vg・Vk|< 0.1
Deltaカットを使った場合のイメージング性能 ARM SPD Preliminary Preliminary PSF Preliminary PSFは同じくらい出てる
(参考)αカットの時のイメージング性能 ARM SPD PSF
まとめ (1) シミュレーションの結果から (2)Significanceの計算 下記の3点が性能を損ねる主要な点であると考えられる ①高エネルギー側では反跳電子が外に抜けてしまっている ②散乱γがGSOで再びコンプトン散乱してしまう & GSOに到達する前にベッセル等と相互作用してしまう &散乱γが隙間から逃げていってしまう ③正しくαが取れていない or カットがうまくできていない → これらの点を重要視して今後のデザインを考えるべき 【大樹町でCrabを見る場合】 現状のデザインでは高度35km、3時間観測で S/sqrt(S+2B) = 0.32、S/sqrt(S+B) = 0.45 【キルナでCygnus X-1を見る場合】 現状のデザインでは高度35km、10日間観測で S/sqrt(S+2B) = 0.62, S/sqrt(S+B) = 0.87 いずれにしても飛躍的な性能向上を図らないと現実的なフライト条件で5σまで到達するのは難しい