(2)なぜ君は 「応用行動分析」を選ぶのか? 09応用行動分析学 (2)なぜ君は 「応用行動分析」を選ぶのか? 望月昭 mochi@lt.ritsumei.ac.jp ブログ 『対人援助学のすすめ』
応用行動分析学 (Applied Behavior Analysis) 1)実験的行動分析 Experimental Behavior Analysis 2)応用行動分析 Applied Behavior Analysis (ABA) B.F. Skinner 『対人援助学』キーワード集 “応用行動分析”
応用行動分析(ABA)対人援助学キーワード集 スキナー(Skinner,B.F,)による行動分析学の枠組みを、様々な社会的課題の分析や具体的対策を実行・評価するために用いるひとつの学範(ディシプリン)である。対人援助という実践作業においては、応用行動分析は、個別の被援助者の自発的行動の成立とその選択肢拡大という目標設定の原則の下で、対象者(被援助者)の一般的な生物学的属性(たとえば自閉症、ADHDあるいは発達段階やIQなど)によらず、「随伴性」(contingency)と呼ばれる、行動の結果事象がその後の当該行動の消長を統制する原理を基本とした機能的関係の把握や、変更・改善する実践の目標設定やその効果の評価を行う方法論としての特徴を持つ。
応用行動分析は「技法」ではない 応用行動分析は、ともするとTEEACHや感覚統合などと並んで「教授」の技法として狭くとらえられる場合があるが、対人援助の実践において応用行動分析がもっとも優先することは、まず被援助者が「与えられる(given)」のではなく、「得る(get)」すなわち正の強化を受ける行動成立を実現することである。そしてその実現を、まず必要な環境設定(援助設定)を同定し、それを促進するために社会的活動(援護)を通じて行おうとするところである。
応用行動分析は『二人称の科学』 一般に、対人援助における「科学性」といった場合、生物的属性や生理的指標、あるいは特定集団の平均値を指標として対応するものという認識は専門家にもみられる。そうした科学を「三称の科学」とよぶならば、応用行動分析は、個別の被援助者と援助者との関係を表現する「二人称の科学」と区別することができる。「二人称」という、人と人との関係を扱う以上、目標となる行動の価値や方法の妥当性についてはその時代的な文脈を抜きにして考えることはできない。
応用行動分析学の持つ倫理性の特徴 従って、絶えず自らの援助行動が相手にもたらす効果はもちろんのこと、その作業自体の妥当性についても行動分析的に分析することを実践作業の一環とすることを特徴とする。 行動の原因を当事者の生物学的属性に帰属させず、環境設定とその工夫によって実践的に同定し改善する応用行動分析の特性は、援助者の実践行動を勇気づけると同時に、倫理的作業を内包しているがゆえに、対人援助、とりわけ職業的対人援助者の科学的方法としてふさわしいものと言える。
生物学的属性か環境との関係か 20世紀の初頭では、 「行動主義」が主流 ・試行錯誤学習 (Trial and Error) 「行動主義」が主流 ・試行錯誤学習 (Trial and Error) 「やってみなはれ」風な心意気が米国では受けた。
ウォルフガング・ケーラー(1925) 「チンパンジーの洞察学習」 ところが・・・・ 「チンパンジーの洞察学習」 手の届かないところにバナナがつるしてある.隅には踏み台があった. しばらくチンパンは,ジャンプしたりしたが手がとどなかない.「しばらく考えた」そして「!」という感じで,踏み台をバナナの下まで持ってきて,それに乗ってバナナをget!
箱を積み上げる
そしてバナナをとる
踏み台と棒も使う!
人と動物とは学習のメカニズムが違う? ○新しい行動主義派(行動分析学) 「やってやろうじゃん!」 ●ケーラー派:「ネズミやハトじゃ無理ね.チンパンジーとか人間とか霊長類の固有の能力だよ.だから,人間のことを考えるには,こういう固有の「能力」について研究していかないとだめ」 ○行動主義派:「もちろんハトと人間の能力は違う.でも,能力の差って言ってしまったらそれで話は終わりだろ」 ●ケーラー派:「ほな,ハトでこんなことができまっか?」 ○新しい行動主義派(行動分析学) 「やってやろうじゃん!」
Epstein, R. (1996) “Insight” in pigeon http://www.youtube.com/watch?v=RJvBXPxFwsI&feature=related
Epsteinの実験の内容 「バナナを踏み台でとる」という問題には2つの大きな行動の獲得が必要だろう.それは 1)バナナをつつくとそれがとれる 2)踏み台を移動させて「目的地」につく. 2つとも必要か,試してみよう(実験). それまで全然,経験のないデンショバトを使ってやってみよう. 洞察と言われるような「個体の能力」ではなく、外的に操作可能な経験によって、同じ行動を生み出せるかも知れない (説明できるかも知れない)
踏み台でバナナpeckだけを練習 踏み台でバナナpeck/踏み台の無目的移動だけを練習 踏み台でバナナpeck + 踏み台の目的地移動を訓練
この研究が示すもの 1)観察可能な環境事象を、取り扱う内容とする(教育・援助実践には不可欠) 2)求められた課題について、そこに含まれる必要な行動を獲得させれば、複雑に見える行動も獲得が可能である。 3)なんとかなる!
応用行動分析学の特徴 2)を選ぶことを「宣言」します! ・なぜ、ある行動をするのか 1)生物学的属性、個人の「能力」? 2)現在と過去の環境との相互作用? 2)を選ぶことを「宣言」します! (どちらが科学的に正しいという事ではない)
なんでそんな宣言を? こうした宣言をすることは、いったいどんな状況で有効なのだろうか? 誰が、どんな相手に、どんな行為をするときに、こんな宣言は有効なのだろう?