割り箸から見た環境問題 伊藤 井上 今森 大柿 奥田.

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割り箸から見た環境問題 伊藤 井上 今森 大柿 奥田

はじめに 割り箸は本当に環境問題を引き起こしているのだろうか? 21世紀は環境の世紀だと言われ続けて久しい。 割り箸は本当に環境問題を引き起こしているのだろうか?                21世紀は環境の世紀だと言われ続けて久しい。 ここでは環境=環境問題と捉える。 一口に環境問題と言っても、酸性雨、オゾンホールの破壊、地球温暖化など、様々なものがある。 ここで、身近な、しかし、難しい問題として、割り箸の問題を取り上げる。 割り箸の関わる環境問題で思いつくものと言えば、森林破壊である。 しかし、それは本当に環境問題を引き起こすようなものなのだろうか? そのことについては今日に至るまで、様々な議論がされてる。(→次のスライドへ)

割り箸論争とは 資源保護団体・消費者 製造業者・林野庁 森林破壊を促進 林業の促進に重要 今日に至るまでされてきた議論と言えば、「割り箸論争」である。 内容は総括すると、(クリック1) 資源保護団体や一般消費者の「割り箸は森林破壊を促進して環境を破壊している」 という主張と、(クリック2) 製造業者や林野庁の「割り箸は低利用材や間伐材を利用していて、林業の促進に重要である」 という主張である。 1978年や1990年に何度か議論が盛り上がったが、1990年には実際に使用量が減少した。(→次のスライドへ) 林業の促進に重要 製造業者・林野庁

割り箸の現状 現在、日本では年間約230億膳、 一人当たり年間約200膳を消費 割り箸の消費状況を見てみると、1960年以降日本人の外食化傾向の影響により増加の一方であった。 しかし、1990年には、外食産業の伸び悩みや、先ほど触れた割り箸論争の影響もあり、消費量は一定水準に留まっている。 少々古い資料のため、2000年以降の状況は載っていないが、現在も状況は一定してる。 しかし、現在の日本においては年間約230億膳もの割り箸が消費されている。(クリック1) これは、国民一人当たりにすると、年間200膳近くを消費していることとなる。 ちなみに、昨年度の生協食堂の営業日数は239日間であり、毎日食堂で昼食を取り、うち、3回に2回は割り箸を使ったとすると、この値になる。 では、このうち、どれくらいが日本国内で生産された割り箸なのかを見てみると、(→次のスライドへ) 現在、日本では年間約230億膳、 一人当たり年間約200膳を消費

国産割り箸生産状況 外材+国産材=国産割り箸生産量 グラフの見方について注意すると、白枠の外材と黒枠の国産材を足したものが日本国内で生産されたものである。 グラフを見てみると、1990年頃から国内産の割り箸の量が減り、逆に、輸入量は増加している。 最近では割合的には国内産の割り箸は、消費される割り箸の1割にも満たない。 これでは製造業者や林野庁の主張する「割り箸は低利用材や間伐材を利用しているので、林業の促進に重要である」という内容からずれているように思える。実は、かつての日本においては低利用材や間伐材を利用して割り箸を生産していたが安い外国産材や外国産割り箸に押され、1990年には国内産業が衰退していたのにもかかわらず、林野庁は当時の割り箸論争においてこのような主張を続けていたのである。 それはさて置き、 では、実際にはどのような国から輸入されているのかを見てみる(→次のスライドへ) 外材+国産材=国産割り箸生産量

国別の割り箸輸入割合 輸入の9割以上を中国に依存 どのような国から輸入されているかと言うと、9割以上が中国からのものである。 そして、割り箸が環境問題を引き起こしていると言われる理由は、中国における割り箸生産の現状である。(→次のスライドへ) 輸入の9割以上を中国に依存

中国産の割り箸 北部は木製 南部は竹製 中国産の割り箸は大別すると木製のものと竹製のものがある。 北部は木製       南部は竹製 中国産の割り箸は大別すると木製のものと竹製のものがある。 木製のものは主にアカマツ・シラカバ・エゾマツなどから生産される。 材料となる木材は主に、黒龍江省、吉林省、遼寧省、内蒙古自治区などの森林から供給されるが、その供給方法に問題がある。 果たして、その供給方法はというと、(→次のスライドへ)

中国産の割り箸(2) 皆伐方式 →森林内の全ての樹木を一度に伐採して収穫 経済的には最も効率が良い 大面積の皆伐は、環境への影響が大きい 皆伐方式である。(クリック1) この木材の供給方法は、全ての木を一斉に伐採する方法である(クリック2) 経済的に効率がよく、短期的な外貨の大量獲得が可能である。が、(クリック3) しかし、大量伐採を行うと環境面への負荷が大きい。 今まで見てきたように、日本は中国から大量の割り箸を輸入している。 中国側からは「森林が国土の7割を占める日本が、森林が国土のわずか2割未満の中国から森林資源を略奪してる」と揶揄されている。 このように先進国が途上国から資源を収奪する様子を図式化すると、(→次のスライドへ) 大面積の皆伐は、環境への影響が大きい

途上国からの資源収奪 貧困 外貨獲得のために資源を輸出 さらに貧しくなる 生産力低下 環境破壊 このようになる。 これは、日本と中国の間だけにある問題でなく、この世界で起こっている先進国の途上国からの資源収奪の様子を表してる。 再びさっきのスライドに戻ると、(→次のスライドへ) 生産力低下 環境破壊

中国産の割り箸(2) 皆伐方式 →森林内の全ての樹木を一度に伐採して収穫 経済的には最も効率が良い 大面積の皆伐は、環境への影響が大きい 皆伐の後、植林がされれば問題が無いのだが、中国ではほとんどの皆伐後の森林で植林されず農地に転換されてしまっているのが問題である。先ほどの図における環境破壊の項目がこれに当たる。因みに、植林は一応義務付けられてはいるが、守られていないのが現状である。 これでは、森林の持つ色々な機能が失われてしまう。その機能とは、(→次のスライドへ) 大面積の皆伐は、環境への影響が大きい

森林の機能 洪水を防ぎ渇水を緩和する 水を浄化する 土砂が流出するのを防ぐ 炭素固定を行い、貯蔵する 安らぎや憩いの場をつくる 主にこのようなものが挙げられる。 1番最初の「洪水を防ぎ渇水を緩和する」という機能についてであるが、1998年には、中国の北部、長江流域で大洪水が発生した。このことに関して、中国政府は「割り箸などのための森林伐採で土地の保水能力がなくなり、そのために洪水が発生した」との見解を示した。 では、このような環境への負荷を軽減するにはどのようにすればよいのだろうか?(→次のスライドへ)

問題点を解決するには 割り箸そのものの使用量を減らす 使用済みの割り箸をリサイクルにまわす 規制により、同じ割り箸を作るのに切る木の利用を減らす 低利用木の利用により、同じ量の割り箸を作るのに切る木の量を減らす これまでに森林への環境負荷を見てきたが、このような負荷を減らすには、主に次の4項目が考えられる。 1.割り箸そのものの使用量を減らす 2.使用済みの割り箸をリサイクルにまわす 3.規制により、同じ割り箸を作るのにきる木の利用を減らす 4.低利用木の利用により、同じ遼の割り箸を作るのにきる木の量を減らす 1つ目に関して、割り箸の利用を減らし、洗い箸への転換を考えるというものである。しかし、洗い箸を使うと、今度はそれを洗うために水と洗剤が必要である。それが、汚水となり環境負荷を作り出す。つまり、割り箸から洗い箸に転換したからといって、必ずしも環境負荷が軽減されるとは単純には言えない。これをLCA(ライフサイクルアセスメント)という。(→次のスライドへ)

LCA:ライフサイクルアセスメント LCAとは、ある製品について、それが工場で作られる段階から最終的にゴミとして処分されるまでの間に、どれだけの資源を使用するのかを調べる方法。 現在、その手法について盛んに研究が行われている。 再び、前のスライドへ戻ると、(→次のスライドへ)

問題点を解決するには 割り箸そのものの使用量を減らす 使用済みの割り箸をリサイクルにまわす 規制により、同じ割り箸を作るのに切る木の利用を減らす 低利用木の利用により、同じ量の割り箸を作るのに切る木の量を減らす 2つ目の項目については、京都府立大学でも、とあるサークルが行っていたので馴染み深いかもしれない。 3つ目、4つ目に関しては、木材資源の利用法について考え直すということである。 3つ目に関して言えば、現在、割り箸を作る段階で、使われずに捨てられる割り箸の量が多いが、木材の中の割り箸に使われる部分の割合、つまり歩留まりを増やせばそれだけ環境負荷が少なくなるというものである。(→次のスライドへ)

結論 割り箸自身が低利用材や間伐材を用いるものである限りは、林業の促進につながり、環境負荷を与えているとは言えず、また、輸入しているとしても、それが持続可能な森林経営に基づいた生産物である限りはやはり、その国の林業の活性化につながるものであり、環境負荷を与えるというよりは、固定した炭素の有効利用、林業の活性化にとって重要なものであると言える。 しかし、今まで見てきたように、日本で消費される割り箸の9割近くが中国産の割り箸であり、それが、持続不可能な森林経営に基づいた生産物であるということは明らかである。これは、森林伐採という明らかな環境負荷である。 このことに関して、2つのことが考えさせられる。 1つは、割り箸を通して大量消費型のライフスタイルを見直すこと。 もう1つは、人間社会と森林の持続可能な関係について研究していくことである。