臨床画像に密接に関わる画質特性と撮影パラメータ

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臨床画像に密接に関わる画質特性と撮影パラメータ 第15回 徳島CT研究会 2005.10.14 臨床画像に密接に関わる画質特性と撮影パラメータ 名古屋大学医学部保健学科 市川 勝弘

CTの画質特性と撮影パラメータ ・解像度(スライス面) 「どこまで見えるか?」 「どう変化してきたか。」 ・ノイズ 「実際のノイズ量」  「どこまで見えるか?」  「どう変化してきたか。」 ・ノイズ  「実際のノイズ量」 ・Isotropic voxelとは ・3次元画像の実力 ・シングルヘリカルCTとマルチスライスCT  「ピッチとノイズ」  「ピッチの限界(速度の限界)」

解像特性 CTの仕様書では,0.3mm,0.35mm..... しかし,現実は...

焦点 回転中心 開口幅 約0.6mm(推測値) 検出器 検出器開口幅が限界解像度をほぼ決める

CTの再構成法 (単純重ね合わせ Back projection) 元画像 投影データ 投影像を一様に伸ばし 重ね合わせる。 画像にボケが生じる ボケを修正するためにフィルタ関数を用いる

フィルタ関数 -rH rH Y X H(r) フィルタ補正なしの画像 r 空間周波数領域 F(X,Y)≒MRIの k-space 補正あり 多方向からの投影で空間周波数領域 を埋める。1/r(r=(X2+Y2)1/2)に比例した 密度で埋められてしまう。 補正あり これを逆補正する関数をフィルタ関数 という. H(r) rH r -rH フィルタ関数

フィルタ補正におけるフィルタ関数 元画像 基本フィルタは、ややボケた感じ(≒腹部用関数)。 高分解能フィルタ 関数 基本のフィルタ関数 軟部用フィルタ関数 レスポ ンス 空間周波数 空間周波数 空間周波数 元画像 基本フィルタは、ややボケた感じ(≒腹部用関数)。 ∴高分解能関数は、かなりの強調 -> やや真実と違う場合あり

標準関数 高解像度関数1 高解像度関数2

解像度変化と画質のシミュレーション

高解像度関数のシミュレーション 標準関数 オリジナル 強調関数1 強調関数2

MTF(modulation transfer function) 1.0cycles/mmは,0.5mmに該当する。( 0.5cycles/mmは1mm) Spatial frequency (cycles/mm) 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 Modulation transfer factor 骨用高解像度関数 MDCT16列 標準関数 MTFからも0.5mm以上の分解はほぼ不可能であることがわかる。 *0.7mm程度が通常の解像度限界

解像度 と 画像 0.5mm 0.5mm 1.0mm 1.0mm 1.0 1.0

Standard Bone Bone Standard Spatial Frequency (cycles/mm) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 Modulation Transfer Function Bone Standard

胸部CT画像(中心と周辺の比較) center off-center 150mm

解像度の位置依存性 悪い 悪い 悪い 良い 悪い 悪い 悪い 悪い 悪い 周辺部は幾何学的条件などが厳しく解像度が低下する

回転中心から距離によるスライス面MTFの変化 spatial frequency (cycles/mm) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 MTF 1.2 中心から150mm 高解像度関数 中心から100mm 中心から30mm 周辺部の解像度低下は著しい。高解像度関数を用いても周辺部では, 腹部関数より劣る解像しか得られない。周辺部ほど末梢となり,実は 影響は大きい。

CTの進歩でスライス面の解像度は,どう変わってきたか Spatial frequency (cycles/mm) 0.2 0.4 0.6 0.8 1.2 1.0 Modulation transfer factor 標準関数 SDCT MDCT16列 残念ながら... 検出器密度はZ方向に改善されたが,それ以外は変化ない

ノイズ特性 ・基本的なノイズ特性 ・どう変わってきたか。

ノイズの原因 X線検出量の統計的変動 電気系のノイズ ... 統計的変動 -> 線量のルート分の変動 統計的変動 -> 線量のルート分の変動 線量が低下するほど、変動成分の占める割合が増加する 4 -> 2      .....50% 25 -> 5      .....20% 100 -> 10    .....10% 10000 -> 100  .....1%

腹部CT画像 (スライス厚=5mm) 一般的には... SD(CT値の標準偏差) =7~10 検出する対象のCT値差 =10以上

ファントム(シミュレーション)による比較 CT値差 5 10 20 径 2 3 5 7 SD=3 SD=5 SD=8 SD=10 実用レベルのノイズでは,5mm以下の検出は難しい CT値差10以下の検出も難しい

線量増加によるノイズ低減効果 2~3倍の線量の増加でやや改善される 200mA 300mA 500mA SD=8 SD=6.5 SD=4.5 あまり効果なし やや効果あり 2~3倍の線量の増加でやや改善される

CTのノイズ特性の移り変わり 1列ヘリカル 4列マルチ 16列マルチ ノイズ特性は,格段に良くなっている....ように見える..が。

オーバーラップスキャンを基本としている. (同じ電流でも,ノイズを抑制できる) (被ばくは.....やはり増える傾向にある) マルチスライスCTのスキャン方法 シングル   ヘリカル マルチスライス ビーム幅 ビーム幅 オーバーラップスキャンを基本としている. (同じ電流でも,ノイズを抑制できる) (被ばくは.....やはり増える傾向にある)

CTのノイズ特性の移り変わり (被ばくをほぼ同じにした場合) 16列のピッチ16 シングル ピッチ1 4列 ピッチ5 16列 ピッチ16 実のところ,ノイズ特性はほとんど変わっていない。 良い画像が得られてるマルチスライスCTは,速いピッチを 用いない限りどうやら被ばくを増加させているようです。 (薄いスライスのための複数スキャンが必要ないという意味 では被ばくは減っている)

Isotropic Data スライス厚0.5mmのデータが必ずしもIsotropicとは限らない. 解像度的に等方位性のデータと解釈すべきである.

・スライス厚は,厚みそのものが解像度に直接影響する。   *スライス厚0.5mmでは,0.3~0.4mmの解像度   *スライス厚1.0mmでは,0.6~0.8mmの解像度 ・しかし,ピクセルサイズは,解像度を表すとは限らない。 ピクセルサイズ 0.65mm ピクセルサイズ 0.5mm ほぼ同じ解像度(0.7mm程度)

1mm厚(FWHM1.0mm)ですでに,Z方向が勝る解像度である. 0.7mm厚では,十分すぎる解像を持つ. 体軸方向とXY方向の解像度の比較 1.2 1.0 体軸方向 1.0mm厚 0.8 体軸方向 0.7mm厚(設定は0.5mm) Modulation transfer factor 0.6 0.4 スライス面 0.2 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Spatial frequency (cycles/mm) 1mm厚(FWHM1.0mm)ですでに,Z方向が勝る解像度である. 0.7mm厚では,十分すぎる解像を持つ.

Axial高解像度関数と比較 Z方向 Z方向 XY方向 スライス面 0.75mm 0.5mm 0.75mmでも優る,0.5mmは良すぎる.

Axial MPR Sagital 1mm厚,0.6mm間隔 1mm厚 1mmでも,isotropicが実現できています。

1mm厚で実現した,isotropicデータ スキャン範囲(FOV220mm) 1mm厚,0.4mm間隔 矢状断像 横断像

3次元CT画像の画質

3次元画像の画質(性能) 画質測定用オリジナルVRソフトウェア (基本に忠実に緻密なレンダリング画像を作成)

凹凸の表現能力 FOV100mm 0.2mm 0.8mm 0.4mm 0.6mm FOV100なら0.2mmの凹みを描出可能

形状の再現性 Axial画像 Original Software メーカー製WS メーカ製WSは,レンダリング速度を上げるため,やや手抜き

解像度 - 1ボクセル間隔の円盤 ー Original SW WS1 緻密にレンダリングすれば忠実に再現可. (メーカ製のWSは、十分な解像を示さない場合がある)

濃度分解能 ノイズにより正確な形状を示さなくなる。 SD=0 SD=7 SD=20 (SD:ピクセル値の標準偏差) (模擬血管ピクセル値は周囲と200の差 ) ノイズにより正確な形状を示さなくなる。

濃度分解能 ー 模擬血管のピクセル値による描出能 ー (周囲ピクセル値0) ピクセル値200 ピクセル値100 ピクセル値50 VR MPR VRは,周囲との十分に大きいピクセル値差が必要 MPRは,少ないピクセル値差でも認識可 今のところ,3次元再構成は濃度分解能が不足している。

マルチスライスCTの撮影パラメータ ・何が重要か... 何と言ってもピッチが最も重要 なぜか 適当に設定していては良い画像が 得られない。

シングルヘリカル マルチスライス 単に複数同時にデータ取得できるようになっただけか。 そんなに単純なものではなく,適した使い方がある。 X線管球 X線管球 連続回転 連続回転 被写体 被写体 検出器 検出器 単に複数同時にデータ取得できるようになっただけか。 そんなに単純なものではなく,適した使い方がある。

マルチスライスCTにおけるピッチ Z軸 X線管 検出器 寝台移動距離/1回転 寝台移動距離 ピッチ = (ヘリカルピッチ) コリメーション幅    ピッチ = (ヘリカルピッチ) 寝台移動距離 コリメーション幅 ビームピッチ = 寝台移動距離 ビーム幅 コリメーション幅 Z軸 ビーム幅 検出器

マルチスライスCTにおける補間再構成 展開図(各検出器の軌跡) 展開図からはデータの位置関係 やデータ密度がわかる。 CW π 2π z方向 3rd rot. 2nd rot. 1 2 3 4 1st rot. 1 2 3 4 1 2 3 4 z方向 π z方向 2π 対向データ 実データ zs 展開図からはデータの位置関係 やデータ密度がわかる。 zs CW 補間データ対

MSCT(4列)におけるピッチによるアーチファクトの変化 4列 ピッチ0.66 4列 ピッチ1.25

ピッチによる展開図(スキャンデータ密度)の変化 0.5 0.7 0.6 0.8 0.9 どれも均等でない。アーチファクトの抑制には均等で密度が高いことが重要!

マルチスライスCTでは ピッチのSweat spotが存在する。 ピッチによる展開図(スキャンデータ密度)の変化 Very Nice! 0.69 0.63 0.66 マルチスライスCTでは ピッチのSweat spotが存在する。

16列におけるピッチとデータ間隔 0.4d~0.9d 0.3d~0.4d 0.5d pitch 0.81 pitch 1.2 pitch 0.66 d:スライス厚

スライス面 球体 4列 ピッチ1.25 16列 ピッチ1.2 投影データの粗密がアーチファクトに大きく関係する.

16列 ピッチ0.662 16列 ピッチ0.85 16列 ピッチ1.2

マルチスライスCTにおいては,画質的な境界点は    補間データ間隔=0.5 x スライス厚 となるピッチ すなわち,pitch0.8程度のところにある.また最も高密 度となるのはpitch0.66である。 

アーチファクトフリーな画像は,3DCT目的であっても 重要である. こういった画像では, 性状の確認ができない. アーチファクトフリーな画像は,3DCT目的であっても 重要である.