第10回心臓血管外科勉強会 心臓手術患者のICUにおける術後管理.

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第10回心臓血管外科勉強会 心臓手術患者のICUにおける術後管理

心臓外科術後急性期 血行動態が不安定、生命の危険性が高い 精神的にも不安定 血行動態の観察の他、合併症予防や精神的援助を行わなくてはならない

心機能のおさらい 心収縮力 前負荷 心機能 後負荷 心拍数 血圧、呼吸回数 治療:カテコラミン 中心静脈圧 肺動脈楔入圧 治療:補液、輸血     利尿薬 体温(中枢・末梢温度較差) 末梢動脈蝕知 治療:血管拡張薬     IABP 心拍数 心拍数、不整脈 治療:抗不整脈薬     ペースメーカー

前負荷 心臓(心室)に流入する循環血液量 中心静脈圧(CVP)、肺動脈楔入圧(PCWP)の値により適切かどうか判断できる 不足:補液、輸血(貧血時) 過剰:利尿剤、水分制限

後負荷 心臓が血液を拍出するときの抵抗 中枢と末梢の温度較差、末梢動脈蝕知で推測可能 実際の値はSGカテーテルからのデータで算出できる。 SVR=(平均血圧ー中心静脈圧)x79.92/心拍出量 高値(末梢が締まっている):温罨法、血管拡張薬、IABP(大動脈内バルーンパンピング) 低値:ノルアドレナリン

心拍数 心臓が1分間に収縮する回数 モニターを見れば心拍数はすぐわかる 頻脈:カテコラミン調整、ボリューム負荷、その他 心拍出量=一回心拍出量 x 心拍数 であるから、心拍数を増やしてやれば心拍出量が増える。 心拍数が高すぎると一回心拍出量が落ちるので心拍出量は減る。 不整脈が出ると心拍出量は減少 頻脈:カテコラミン調整、ボリューム負荷、その他 徐脈:ペースメーカ、薬剤

心収縮力 心筋自体の収縮能力 血圧、呼吸状態(心筋収縮に酸素が必要)により判断 心筋虚血、心筋梗塞、電解質異常、心肥大などにより低下する 心収縮力をあげるためにはカテコラミンを使用する。 しかしそれは一過性のものであることに注意

術後合併症 低心拍出量症候群(LOS) 出血 不整脈 呼吸障害 腎機能障害 感染 中枢神経障害

低心拍出量症候群 (LOS:Low Cardiac Output Syndrome) 低心拍出量症候群 (LOS:Low Cardiac Output Syndrome) 心拍出量が低下している状態 原因:心筋障害、心タンポナーデ、重度の不整脈、貧血、低酸素血症、電解質異常、弁機能異常、不適切な循環血液量 症状:末梢冷感、倦怠感、不穏、チアノーゼ、低血圧、尿量減少、中心静脈圧上昇 診断:SGカテーテルによって正確な心拍出量が測定できる

Forrester分類と治療 S-1 S-2 2.2 S-3 S-4 18 心係数 左房圧 (ℓ/min/㎡) 末梢循環不全(-) 肺うっ血(-) 死亡率 3% [治療] 安静、鎮静薬 末梢循環不全(-) 肺うっ血(+) 死亡率 9% [治療] 血管拡張薬 利尿剤 心係数 2.2 S-3 S-4 末梢循環不全(+) 肺うっ血(-) 死亡率 23% [治療] 輸液、ペーシング カテコラミン 末梢循環不全(+) 肺うっ血(+) 死亡率 51% [治療] カテコラミン+血管拡張薬 IABP 利尿剤 18 左房圧 (mmHg)

LOSに対する看護 バイタルサインの異常の早期発見 異常の原因について関連付ける 意図的に観察することが患者の生命を守ることに繋がる 心機能の要因のどの部分がどんな原因で障害あれているか? 意図的に観察することが患者の生命を守ることに繋がる

術後出血 低体温、ヘパリンの使用、末梢血管の収縮 縦隔や心嚢、胸腔に血液や凝血塊が貯留すると心タンポナーデの原因となり、LOSに繋がる 出血により循環血液量が低下する 輸血を余儀なくされることになり輸血の副作用が出現してくる

術後出血 治療 止血剤投与 硫酸プロタミン、Vit K2 FFP、血小板投与 再開胸止血術 ドレーンからの出血が3ml/kg以上3時間 硫酸プロタミン、Vit K2 FFP、血小板投与 再開胸止血術 ドレーンからの出血が3ml/kg以上3時間 Hbの低下、循環動態の変動   (血圧低下、脈圧減少、頻脈、CVPの上昇、尿量低下)

術後出血 看護 ドレーンからの排液状態、流出量、性状の観察 体内に血液が貯留しないように適宜ミルキングを行う ミルキングによる痛みや違和感などについて患者に説明し、ストレスを軽減する 出血量が多い場合は特に血行動態に注意を払う

不整脈 心臓外科手術後の不整脈は珍しくはない 重篤な不整脈は心拍出量を低下させLOSの原因となる

重篤な不整脈 心室性期外収縮:致死的不整脈を引き起こす可能性がある 多形性 RonT VTへ

重篤な不整脈 Ⅱ度房室ブロック:Mobitz II型:PQ時間の延長なしに突然抜けるもの 完全房室ブロック:PP間隔とRR間隔が異なるもの。PとQRSは無関係 心室性期外収縮:多形性、R on T 心室頻拍:変形したQRS波が速やかに連続して出現する 心室細動: QRS波もT波もなく基線は静止することなく絶えず動揺する

不整脈の看護 心身ともに安静が大切 低酸素状態も原因となるので評価する 水分、電解質(特にカリウム)をチェック 生命に関わる不整脈の場合、心臓マッサージ、除細動器(DC)の使用が必要 日頃から知識、技術を習得、日常機器の保守・管理を確実に行う

呼吸障害 心臓外科手術では人工心肺の使用等により呼吸障害を起こす危険性が高い 高齢者、肥満、心機能低下を合併している場合はさらに発生率は高くなる

呼吸障害に対する看護 血液ガスデータや胸部写真をみて呼吸障害の原因がどの部分にあるかを把握する 人工呼吸中は体位交換やタッピング、バイブレータの使用による排痰効果を高める援助が大切 気管内チューブからの喀痰吸引は最低限の回数で効果的に行う必要がある(患者の苦痛を最低限に)、判定は聴診にて行う 自己抜管の予防(上肢の抑制など)、予め抑制については術前からその必要性について説明しておくことが望ましい

呼吸障害に対する看護 気管内チューブ抜去後は患者が主体的に呼吸訓練を行えるように説明し、胸郭可動域の拡大と喀痰喀出を行えるように指導する フェイスマスクによる酸素療法を確実に行う、マスク装着の不快感については、酸素療法の必要性を予め説明しておくと共に、マスクと皮膚装着部にガーゼをはさむなどの工夫が重要

腎機能障害 心機能の低下 術中の人工心肺 腎灌流量・圧が低下 GFRが低下、尿細管壊死 急性腎不全

腎機能障害の対策 十分な血圧:120mmHg以上 十分な還流量:CI 2.5ℓ/min/㎡以上 十分な利尿剤:ラシックス、マニトール、HANP 十分な循環血液量:CVP,PCWP 10mmHg以上 補液絞る、カリウムの心配 ECUM、CHF、CHDF、HD、PD

腎機能障害の看護 正確な水分バランス管理 体外循環時間をチェックし腎機能障害の可能性を予想する 厳しい水分制限が必要な患者には、水分制限について説明し、精神的なストレスを最低限に抑える 一日の水分量を考慮しバランスよく患者に水分を提供する

感染 術後感染として起こりうる経路としては 感染経路が多いのでそれぞれに対する清潔操作の徹底が必要 気管内チューブ、中心静脈カテーテル、末梢点滴ルート、スワンガンツカテーテル、動脈ライン、創部、ドレーン、ペースメーカリード、尿道バルーンカテーテル、IABP、透析用ダブルルーメン 感染経路が多いのでそれぞれに対する清潔操作の徹底が必要 気管内吸引カテーテルはディスポ、三活は汚染されやすいので注意

中枢神経障害 原因としては低酸素や脳塞栓が主 意識レベル(JCS,GCS)、瞳孔の左右差、対光反射、麻痺、痙攣、不随意運動の有無、その他異常反射の有無 痙攣が発生した場合はその時間、初発部位、様式等を観察する

精神的援助 手術を受けるに当たって、術前から様々な不安と恐怖を抱いている 術後ICUでは、挿管チューブ、サクション、声が出せない、コミュニケーションが取れない、同一体位で体が痛い、傷が痛い、水が飲めない、眠れない等のストレスで理性が飛んでしまう ICUシンドローム:多弁型、悲観型、暴力型、うつ型などさまざま 解決するのはICUだけではなく、術前、術直後ICU、術後一般病棟での取り組みが必要 身体的、精神的な安静.できるだけコミュニケーション良く.十分な睡眠

実際のICUの流れ マーゲンチューブ、挿管チューブの深さ記録 レスピレーター装着 血圧ライン接続 オペ室申し送り 点滴整理 家族面会 血圧実測 心電図12誘導記録 瞳孔、意識レベルチェック 心電図モニタ装着 レントゲン写真 尿量、ドレーン量チェック

実際のICUの流れ マーゲンチューブ、挿管チューブの深さ記録 心電図モニタ装着 血圧実測 点滴整理 レスピレーター装着 レントゲン写真 血圧ライン接続 心電図12誘導記録 瞳孔、意識レベルチェック 家族面会 尿量、ドレーン量チェック オペ室申し送り