会社法1 第3回 2016/4/21 千葉大学2016.

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会社法1 第3回 2016/4/21 千葉大学2016

本日のメニュー 募集設立の特則 設立の瑕疵 設立関与者の責任 2016/4/21 千葉大学2016

募集設立 2016/4/21 千葉大学2016

発起設立との異同 主な差異 発起人のほかに、株式を引きうける者(設立時募集新株引受人)を募集(会57) 払込取扱銀行は、払込保管証明を発行(会64) 機関の具備および設立手続きの調査は「創立総会」の場で行われる(会65~101) ※創立総会は、決定事項(会66)、決議要件(会73)等が特殊 引受人保護のために発起人、設立時取締役の責任を加重(会102)、また疑似発起人の責任法定(会103) 2016/4/21 千葉大学2016

設立の瑕疵と設立の効力 2016/4/21 千葉大学2016

設立の瑕疵 意義 設立の瑕疵 内容的瑕疵 手続的瑕疵 ①会社が成立(設立登記を経由)したが、設立過程に瑕疵が存在する場合と、②そもそも会社成立に至らずに設立手続きが頓挫する場合がある ①については設立無効の訴え(会828Ⅰ①)、②については会社不成立の場合の発起人の責任(会56)で処理 設立の瑕疵 内容的瑕疵 株式引受のない発起人の存在、最低出資額不到達 手続的瑕疵 定款の絶対的記載事項の欠缺、定款未認証、創立総会決議の欠缺・瑕疵 2016/4/21 千葉大学2016

設立無効 意義 設立無効原因 無効原因となるもの 無効原因とならないもの 設立の効力を争う手段は、設立無効の訴え(会828Ⅰ①)に限られる ※理論的には「会社不存在確認の訴え」も考えられるが、実際に用いられることはほぼないと考えてよい 設立無効原因 無効原因となるもの 内容的瑕疵、手続的瑕疵を問わず、会社の存立を許すべきでないすべての瑕疵 ※遡及効が否定されていることから、特に制限解釈の必要なし 無効原因とならないもの 個々の入社契約の瑕疵 払込みの仮装 2016/4/21 千葉大学2016

設立無効の訴え 訴えの性質 訴えの手続 設立無効判決の効力 判決によって一度成立した会社を清算して消滅させる(形成の訴え) 提訴期間は会社成立後2年 原告適格は、株主、取締役・執行役、監査役、清算人 設立無効判決の効力 設立無効判決が確定すると、会社は清算手続きに移行し、最終的に消滅(会475) =遡及効はない 認容判決には対世効 2016/4/21 千葉大学2016

設立関与者の責任 2016/4/21 千葉大学2016

設立関与者 業務執行機関 監督機関 表見業務執行機関 発起人 設立時(代表)取締役 設立時取締役 設立時監査役 設立事務全般についての業務執行権限者 設立時(代表)取締役 設立登記のみが職務(明文はないがそのように解されている) 監督機関 設立時取締役 設立時監査役 ⇒どちらも設立手続きの調査権限を有する 表見業務執行機関 疑似発起人 ※募集設立の場合のみ責任を負う 2016/4/21 千葉大学2016

差額支払責任(価額塡補責任) 総論 意義 趣旨 現物出資・財産引受の目的物の価額が、定款記載の価額に著しく不足する場合に、その差額を設立関与者に塡補させる制度 趣旨 会社法制定前は資本充実責任のひとつと考えられていた 会社法下では、①出資者間の衡平を確保するための特別な法定責任と説明されるが、②資本充実責任であるとする見解もある 2016/4/21 千葉大学2016

責任の内容 要件 現物出資・財産引受の目的物の価額が、定款記載の価額に著しく不足すること(会52Ⅰ) 検査役の調査を経ていないこと(同Ⅱ①) ※「著しく」との限定があるのは、現物出資・財産引受の目的物の価額の通常の変動を除外するため 検査役の調査を経ていないこと(同Ⅱ①) ※専門家の証明(会33Ⅹ)は検査役の調査には該当しない 2016/4/21 千葉大学2016

責任を負う者とその内容 発起設立の場合 募集設立の場合 現物出資者である発起人、財産引受の譲渡人である発起人・設立時取締役は無過失責任(会52Ⅰ) ※一種の瑕疵担保責任だから ①以外の発起人・設立時取締役は過失責任(同Ⅱ②) ※発起人間の衡平を確保するため(≒資本充実責任ではない)責任だから 会33Ⅹの証明を行った専門家は過失責任(同Ⅲ) ※債務不履行責任類似だから 募集設立の場合 現物出資者である発起人、財産引受の譲渡人である発起人・設立時取締役は無過失責任 ①以外の発起人・設立時取締役も無過失責任(会103Ⅰ) ※引受人保護のため加重 会33Ⅹの証明を行った専門家は過失責任 2016/4/21 千葉大学2016

責任の免除 責任の追及 発起人、設立時取締役 証明者 発起人、設立時取締役に対する責任追及については株主代表訴訟の対象(会847Ⅰ参照) 責任の免除には総株主の同意が必要(会55) 証明者 総株主の同意が必要とする見解もあるが、多数説は免除には制限がないとする 責任の追及 発起人、設立時取締役に対する責任追及については株主代表訴訟の対象(会847Ⅰ参照) 証明者については特段の規定がなく、会社による追及しかできない 2016/4/21 千葉大学2016

仮装払込みの責任 払込みを仮装した者(発起人・引受人)の責任(会52の2Ⅰ,102の2Ⅰ) 無過失責任 ※払込みが完了するまでは、設立時株主、株主としての権利行使不可 他の発起人・設立時取締役の責任(会52Ⅱ,103の2Ⅱ) 仮装の払込に関与した者(会施規7の2,18の2)は過失責任 責任の免除 発起人、設立時取締役、設立時募集株式引受人の責任の免除には総株主の同意が必要 2016/4/21 千葉大学2016

任務懈怠責任 会社に対する責任(会53Ⅰ) 第三者に対する責任(同Ⅱ) 会423と同様の規定だが、法的性質は(債務不履行類似の)特別な法定責任 ※「成立後の会社」に対する責任だから、契約責任ではない(発起人・設立時役員は成立後の会社と契約しているわけではない) 第三者に対する責任(同Ⅱ) 会429Ⅰと同様の規定 虚偽記載責任(会429Ⅱ)に相当する規定は存在しないが、立法の過誤であると言われている。学説では会429Ⅱが発起人、設立時取締役・監査役にも類推適用されると解するのが多数 2016/4/21 千葉大学2016

会社不成立時の責任 会社不成立 会社不成立の場合の発起人の責任 規定(会56) 論点 設立が中途で頓挫し、設立登記に至らない ※あくまでも設立登記がなされたかどうかで区別 会社不成立の場合の発起人の責任 規定(会56) 設立行為について無過失責任を負う 設立費用を負担 論点 会社不成立時には、①払込金の返還、②設立債権者への弁済が競合し、債権の優劣が問題 ※発起人の払込金は会56により劣後するため、もっぱら募集株式引受人に対する返還が問題 2016/4/21 千葉大学2016

株式引受人 設立債権者 返還請求 弁済請求 返還請求 弁済請求 発起人 2016/4/21 千葉大学2016

学説 個人法説によれば当然の規定であり、①②は同列 同一説(擬制説)では、会社不成立と同時に設立中の会社は遡及的に消滅し、個人法説と同じ処理に。ただし、江頭説は①優先の規定と解する 同一説(実質説)では、会社不成立が確定すると設立中の会社の清算手続きが開始される。そこで株主の残余性(残余財産分配請求権しかない)を貫徹すると、まず設立債権者に対して弁済を行い(②優先)、残余を引受人に返還。ただし会56は引受人を設立債権者と同列に扱う規定と解する見解(①②同列)もある 2016/4/21 千葉大学2016

発起人の権限・設立中の会社概念 と会社不成立時の法律関係 会社の存否 法律関係の帰属 学説 債権者と引受人の優劣 56条の趣旨* 債権者 引受人 払込金 発起人の 個人財産 同一性説 擬制説 遡って消滅 発起人 田中耕 債権者・引受人同順位 当然の規定** 江頭 債権者・引受人 同順位 引受人の 保護規定 実在説 存在する (清算) 設立中の会社 弥永 加藤雅 債権者優先、引受人劣後 当然の規定 個人法説 存在しない 宮島 * 56条の意義として、①設立費用等について引受人が責任を負わないことを明らかにする(個人法説及び擬制説からすれば当然、実在説からすれば政策的規定)、②発起人間の連帯責任を定める、という意義があるという点については各見解共通 **個人法説・擬制説の場合、債権者・発起人間の法律関係は会社法の射程外(個人間の取引)であるため、56条はもっぱら引受人・発起人間を規律する規定と位置づけられる(一種の原状回復義務) 2016/4/21 千葉大学2016

設立関与者の責任一覧 責任(責任を負う者) 条文 法的性質 過失の要否 免除の要件 差額支払責任 発起人・設立時取締役 (現物出資者〔発起人のみ〕 ・財産引受の譲渡人) 52Ⅰ 法定責任 (瑕疵担保類似) 無過失責任 総株主の同意 他の発起人 52Ⅱ 103Ⅰ 過失責任 (募集設立は 無過失責任) 設立時取締役 ????? 証明者 52Ⅲ 債務不履行類似 自由 仮装払込 払込みを仮装した発起人・ 設立時募集株式引受人 52の2Ⅰ 102の2Ⅰ (債務不履行類似) 他の発起人・設立時取締役 52の2Ⅱ 103Ⅱ 発起人、設立時取締役・監査役 の会社に対する責任 53Ⅰ (会423類似) の第三者に対する責任 53Ⅱ (会429類似) N/A 会社不成立時の発起人の責任 56 個人責任 /法定責任 2016/4/21 千葉大学2016

疑似発起人の責任 意義 「疑似発起人」 責任の内容 募集設立においては引受人保護のために、発起人であるような外観を有する者にも責任を負わせる 募集に関する書面・電磁的記録に、自己の氏名・名称と設立を賛助する旨を記載することを承諾した者 設立を賛助する旨・・・賛助する文言のほか、「設立賛助者」「創立委員長」といった肩書きの記載を含む 承諾・・・明示の承諾のほか、黙示の承諾や放置を含む 責任の内容 発起人とみなして責任を負わせる ⇒発起人が負うすべての責任が適用される 2016/4/21 千葉大学2016

株式総論 2016/4/21 千葉大学2016

組合と社団 組合 社団 社員契約 E E 組合契約 A D A D 社団 B C B C 2016/4/21 千葉大学2016

持分の意義 社員契約 持分=社員たる地位 =社員契約の(社団側ではない)当事者としての地位 =契約当事者として有する権利義務の総体 社員 2016/4/21 千葉大学2016

会社における持分 元本の償還を保証しない代わりに、利益の分配請求権と経営参加権を付与 社員契約 出資の義務 自益権・共益権付与 社員 会社 ⇒この点が出資(持分・株式)と貸付(債権)との理念的な差異だが、契約自由から両者の境界は曖昧になっている(例:無議決権累積型非参加型優先株、利益参加型永久劣後債) 2016/4/21 千葉大学2016

上記①から、社員契約成立時点では株主の義務は履行済みで株主は権利しか有していない ⇒株主としての地位=株主権 出資の義務 (34,63,208等) 自益権・共益権付与 (105) 株主 株式会社 株主の出資が契約の成立要件(34等) 上記①から、社員契約成立時点では株主の義務は履行済みで株主は権利しか有していない ⇒株主としての地位=株主権 ※仮装払込について、改正会社法は履行義務を課す予定 自益権は少なくとも配当請求権と残余財産分配請求権のどちらかを与えなければならない。共益権は与えなくても良い(105Ⅱ) 2016/4/21 千葉大学2016

株式の種類 2016/4/21 千葉大学2016

株式の種類の整理 株式 譲渡 譲渡 自益権 共益権 全株式についての特別の定め 一部の株式についての特別の定め (107) 特別の定めのない株式 (普通株) 全株式についての特別の定め (107) 譲渡 譲渡制限 (107Ⅰ①) 取得条項 (107Ⅰ②) 取得請求権 (107Ⅰ③) 一部の株式についての特別の定め =種類株式(108) 譲渡           (108Ⅰ④) (108Ⅰ⑤) (108Ⅰ⑥) 全部取得条項(108Ⅰ⑦) 自益権 剰余金 (108Ⅰ①) 残余財産(108Ⅰ②) 共益権 議決権制限 (108Ⅰ③) 拒否権 (108Ⅰ⑧) 取締役・監査役選任(108Ⅰ⑨) ※斜字体=非公開会社のみ発行可。(108Ⅰ⑨は指名委員会等設置会社も発行不可。108Ⅰ柱書) 属人的定め(109Ⅱ) 2016/4/21 千葉大学2016

細かいポイントの確認 公開・非公開の別は、「すべての(種類の)株式について譲渡制限の定めがある」か否かで決まり、実際に当該株式の流通の有無は問わない(2⑤) 種類株式発行会社は定款に種類株式についての定めのある会社であり、現に2種類以上の株式を発行しているかどうかは問わない(2⑬、184Ⅱ) 取得条項の付加・変更(廃止除く)の定款変更は総株主(種類株式の場合は当該種類の総株主)の同意が必要(110,111Ⅰ) 種類株式に譲渡制限・全部取得条項を付する場合には、当該種類株主総会の他に、将来的に当該種類株式を対価として交付することが定められている他の種類株主総会の決議が必要(111Ⅱ) 議決権制限株式は発行済株式総数の1/2までしか発行できないが、超過発行は無効にはならず、是正義務が会社に生じるのみ(115) 2016/4/21 千葉大学2016

自益権に関する種類株式 自益権に関する特別な定め 配当 残余財産分配 優先株 劣後株 その他 混合株 優先配当後普通株と同様の配当を 行う 累積的 参加的 非参加的 非累積的 劣後株 その他 トラッキングストック 残余財産分配 混合株 優先配当後普通株と同様の配当を 行う 行わない 不足額を翌年度に 繰り越す 累積的参加的 累積的非参加的 繰り越さない 非累積的参加的 非累積的非参加的 2016/4/21 千葉大学2016

取得条項・取得請求権 実務上の名称 随意償還株式 義務償還株式 強制転換条項付株式 転換予約権付株式 強制償還株式 任意償還株式 内容 会社が強制取得 会社が株主と契約して取得 株主の請求で会社が取得 会社が強制的に他の株式に転換 株主の請求で他の株式に転換 会社法での扱い 金銭を対価とする取得条項付株式 自己株式の合意取得(160以下) 金銭を対価とする取得請求権付株式 他の株式を対価とする取得条項付 種類株式 他の株式を対価とする取得請求権付種類株式 2016/4/21 千葉大学2016

全部取得条項付種類株式 ④少数派株主の締め出し完了 ①種類株式発行 ②定款変更で普通株に 全部取得条項付加 ③株主総会特別決議で A種類株 ①種類株式発行 ②定款変更で普通株に 全部取得条項付加 全部取得条項 普通株 ③株主総会特別決議で 株式を強制取得 2016/4/21 千葉大学2016

立法の経緯 当初は、破綻の危機に瀕した会社に新たなスポンサーがつき、既存株主の株式を無価値にして、新スポンサーが新株を引き受ける場面を想定(会社更生等における100%減資スキームと同様の効果を予定) 立法の過程で、条文上、利用場面を限定する要件を立てることが困難であるとされて、目的要件による絞りは断念 立法後は、本来の目的ではなく、少数派株主の締め出し、MBO等の目的で用いられることがほとんど 2016/4/21 千葉大学2016

全部取得条項付種類株式の問題点 少数派株主の締め出しに全部取得条項付種類株式を用いることの可否 ⇒裁判例は明文の目的規制がないことを理由に許容(対価が著しく低廉というような事情がなければ「著しく不公正」(831Ⅰ③)な決議に該当せず。東京地判H22.9.6インターネットナンバー事件) 会社に株式を取得された「元」株主も決議取消訴訟の原告適格を有する(東京高判H22.7.7日本高速物流控訴審判決他) ⇒②は改正で明文化 2016/4/21 千葉大学2016

振替制度採用会社においては、価格決定の申立てに際し、会社側が株主の地位を争う場合には、審理終結までに個別株主通知がされる(=通知が会社に到達する)ことが必要(裁決H22.12.7メディアエクスチェンジ事件) 取得条項付加の定款変更決議と取得決議が同時になされた場合、株主は116条の株式買取請求権を行使することも、172条の価格決定の申立てをすることもできるが、取得の効力発生後は買取請求不可(最決H24.3.28) 2016/4/21 千葉大学2016

全部取得条項付種類株式制度改正 取得決議の総会の2週間前と価格決定申立通知・公告日の早い日から取得条件等の事前開示(171の2) 差止請求規定の導入(171の3) 価格決定申立期間を「総会から20日」⇒「取得日の前20日」に変更(172Ⅰ) ⇒「定款変更+取得決議+取得」を同時に行うコンボを封じる 価格決定申立株主についての取得の効力を否定(173Ⅱ) 2016/4/21 千葉大学2016

種類株式発行手続き 株式の種類/号 種類株主総会決議 定款記載事項 108Ⅲにより先延ばし可 譲渡制限 ④ 特殊決議* ・譲渡制限 ・みなし譲渡承認 取得請求権 ⑤ 特別決議 ・取得請求権 ・対価 ・請求可能機関 取得条項 ⑥ 総株主の同意 ・条件または期限 ・一部取得の方法 ・一定の日に取得する旨 ・具体的取得日 ・対価の種類 全部取得条項 ⑦ 特別決議* ・あれば総会決議の条件 ・取得対価の決定方法 剰余金配当 ① ・決定方法(要綱) ・具体的決定方法 ・財産の種類 残余財産分配 ② 議決権 ③ ・議決権行使可能事項 ・あれば議決権行使条件 拒否権 ⑧ ・拒否権行使可能事項 ・あれば拒否権行使条件 取締役・ 監査役選任 ⑨ ・人数 ・共同選任ならその旨と人数 ・あれば変更条件と変更後 ・社外取締役・監査役 ・共同選任する旨と人数 2016/4/21 千葉大学2016