イオン透過性の差をもたらす機構 ・チャネルにはイオン選択性がある。 ・チャネルは常に開いているものばかり ではない(開閉の制御機構がある)。 イオンチャネルについて考える 最低限知っておくべきことは以下の二つ! ・チャネルにはイオン選択性がある。 ・チャネルは常に開いているものばかり ではない(開閉の制御機構がある)。 掲示板にもどる 静止膜電位の成り立ちが理解できたでしょうか? 続いて、活動電位の発生を理解ましょう。 これまで、膜電位の成り立ちや概念をわかってもらうため、 専門的な言葉や分子機構の説明を極力避けてきました。 ↓ しかし、活動電位を理解するためには、少なくともイオンチャネルについて知る必要があります。 細胞膜は、脂質二重層でできていますから、その部分については人工膜と基本的に変わりません。 (K+は通しやすいが、Na+は通しづらいという性質とは無関係ということです) ↓ それでは、イオン透過性の特異性というのはどこから生じるのか? その答えが、イオンチャネルです。 ※イオンチャネルは細胞膜をイオンが通過するための通路。 脂質二重層に埋まったドーナツと考えて下さい。 イオンチャネルについて、スライドに示した2つの点は最低限知っておいて下さい。 (1)チャネルは単純な穴でなく、イオン選択性がある。 (ナトリウムチャネルだとか、カリウムチャネルだとか言います) ・単純な穴なら、K+が通れる穴は、より小さなNa+も通すはず ↓ しかし、K+だけ通すチャネルがある。 (要するに、パスカードをチェックするシステムがあるということ) (2)チャネルは常に開いているものばかりではない(いくつかの異なる開閉の制御機構がある)。 ※次のスライド参照
チャネル開閉の制御機構 [A] 非開閉性チャネル [B] リガンド開閉性チャネル [C] 電位依存性チャネル (1) チャネルがRcの一部 (2) 直接共役 (3) Gタンパク質を介する (4) セカンドメッセンジャー (5) セカンドメッセンジャーとキナーゼ 掲示板にもどる チャネルの開閉制御機構についてまとめます。 (全てを網羅しているわけではありませんので、注意) [A] 非開閉性チャネル ・開閉が全く制御されずに、開いたままのもの (ただし、イオン選択性とは別) [B] リガンド開閉性チャネル ・ホルモンや神経伝達物質の刺激があったときに開くもの (リガンドという言葉は、結合されるもの、ここでは受容体(R)から見て、 結合する分子のことを指す) ※受容体にリガンドが結合した後、どのようにしてチャネルが開くか ということについて、いくつかのパターンを図に示した。 [C] 電位依存性チャネル ・膜の電位が変化すると開閉するもの チャネルのタイプについて、Aタイプ、Bタイプ、Cタイプなんて言い方をしませんが、 以下のスライドでは説明のしやすさを考えて、 Aタイプ = 非開閉性チャネル Bタイプ = リガンド開閉性チャネル Cタイプ = 電位依存性チャネル という言い方にします。 (この説明の中だけの定義であり、正式な呼び名ではないから、くれぐれもご注意を!) [C] 電位依存性チャネル
静止膜電位をチャネルレベルで考える 静止状態では・・・ ・非開閉性のカリウムチャネルが働いている ・ナトリウムチャネルは、リガンド開閉性と 静止膜電位 = K+ が通りやすい Na+ が通り難い という性質に依存 これをチャネルのレベルで再考してみる。 静止状態では・・・ ・非開閉性のカリウムチャネルが働いている ・ナトリウムチャネルは、リガンド開閉性と 電位依存性なので、透過性が低い 掲示板にもどる 静止膜電位をチャネルレベルで考えてみましょう。 静止膜電位 は、細胞が興奮していないときの電位であり、 K+ が通りやすい、 Na+ が通り難い という性質に依存する。 ↓ これをチャネルのレベルで再考してみると・・・ 静止状態では・・・ ・非開閉性のカリウムチャネル(Aタイプ)が働いている ・ナトリウムチャネルは、リガンド開閉性(Bタイプ)と 電位依存性(Cタイプ)なので、透過性が低い ということ。
K+ K+ Na+ Na+ 活動電位が発生するメカニズム Bタイプ STEP1:刺激により眠っていたBタイプのNaチャネルが 目を覚ます 目を覚ます K+ K+ Aタイプ 刺激が 加わると K+ K+ Na+ Na+ 掲示板にもどる それでは、活動電位の発生について考えていきましょう。 始めのSTEPとして、刺激が加わり、眠っていたBタイプの Naチャネルが目を覚ました結果、何が起こるか考えよう。 具体的に、骨格筋に活動電位が発生することを想定する。 ↓ 収縮性よ!という命令は、運動神経終末からのアセチルコリン アセチルコリンが、受容体に結合すると、BタイプのNaチャネルが開く 今まで封印されていたNa+の平衡電位が表に出てくる! 低いマイナスの電位が、プラス側へと向かうことになる (膜電位が、浅くなるという言い方をします) Bタイプ Bタイプ Cタイプ Na+ Na+
K+ K+ Na+ Na+ 活動電位が発生するメカニズム Cタイプ STEP2:膜電位の変化により眠っていたCタイプの Naチャネルが目を覚ます K+ K+ Aタイプ 膜電位が 浅くなると K+ K+ Na+ Na+ 掲示板にもどる 膜電位が浅くなったことで、電位依存性Naチャネルが一斉に開く (自己増幅的にNa+の透過性を高める仕組みと言えます) ↓ K+の透過性が無視できるほど、Na+の透過性が上がる (静止状態では、 PK : Pna : PCl = 1:0.04:0.2 であったが この状態では、 PK : Pna : PCl = 1: 20 :0.2 となる ) 細胞全体の電位は、急激に高くなり、Na+の平衡電位に近くなる (これがスパイクの発生です) 端的に言ってしまえば、活動電位の発生は・・・ チャネルが閉じていたために封印されていたNa+の平衡電位が、 チャネルの急速かつ大々的な開きによって、全面にでる ということです。 Bタイプ Cタイプ Na+ Na+
活動電位が発生するメカニズム STEP3:膜電位の回復過程:Naチャネルの開閉過程 スタンバイ状態 不活化状態 活性化状態 掲示板にもどる さて、活動電位が発生した後の回復過程を考えてみましょう 静止状態が、細胞としては安定なのだから、興奮した状態を持続するわけにはいかない ↓ それ故に、Naチャネルは極短時間で閉じてしまう この時に注意して欲しいことは、スライド左側のように、 閉じた状態と開いた状態を単純に行き来するというわけではない! ということ 黄色で着色した枠内にあるとおり、Naチャネルは、 スタンバイ状態 → 活性化状態(開いた状態)→ 不活化状態 を経て もう一度、スタンバイ状態に戻る これで、「絶対不応期」の存在理由が理解できますか? Naチャネルが、不活化状態にある時間が絶対不応期に相当するんですよ! 不活化状態 活性化状態
全か無かの法則について 膜電位 (mV) 50 Naの透過性 -50 Kの透過性 -100 活動電位の模式図 -50 -100 Naの透過性 Kの透過性 掲示板にもどる ついでですから、活動電位の模式図を見ながら、「全か無かの法則」について考えましょう 点線で示したあるのが、閾電位です ↓ これが何を意味するかは、これまでのスライドでわかるのでは? (電位依存性Naチャネルが開くために必要な膜電位変化です) 要するに、スパイクが発生するか否かは、このラインを超えて 膜電位が浅くなるような刺激が加わるかどうかによっているということ 神経伝達物質で誘発される膜の脱分極(膜電位が浅くなること)は、 決して全か無かではありません! (刺激の強さに応じて、脱分極の度合いは違います) 点線以下の膜電位変化なら、電位依存性Naチャネルは眠ったまま(発火しない) 点線を越える膜電位変化なら、電位依存性Naチャネルは目を覚ます(発火する) ・・・・という単純な話です。 さらに、ついでの話です。 スパイクに続く後過分極(静止膜電位よりも一過性に深くなる現象)はなぜか? ↓ 黄色で着色した枠内に、活動電位波形とNaおよびKの透過性を重ねました。 Na+の透過性亢進が、活動電位発生の基盤になっていることがわかる。 さらに、再分極(元の電位に戻ること)の時には、Kの透過性も高くなる (電位依存性のKチャネルが、ゆっくりしたタイミングで開く) K+の通り易さが、静止状態よりも高いから、 膜電位が、よりK+の平衡電位に近づく ということ (これが後過分極のメカニズムです) 活動電位の模式図