電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/23講義分 電磁場の運動量 山田 博仁
今後のスケジュール(案) ・ 本日(第7回目) 電磁場の運動量 ・ 6/30(木)(第8回目) 電磁波の反射と透過 (第2回レポート出題) ・ 本日(第7回目) 電磁場の運動量 ・ 6/30(木)(第8回目) 電磁波の反射と透過 (第2回レポート出題) ・ 7/7(木)(第9回目) 電磁波の反射と透過、偏波 ・ 7/14(木)(第10回目) 電磁波の共振器と導波路 (第2回レポート〆切) ・ 7/21(木)(第11回目) 光導波路と光共振器 ・ 7/23(土)(第12回目) 電磁ポテンシャルとゲージ変換 (第3回レポート出題) ・ 7/28(木) オープンキャンパスのため休講 ・ 8/4(木)(第13回目) 電気双極子による電磁波の放射 (第3回レポート〆切) ・ 8/11(木)(第14回目) 点電荷による電磁波の放射 ・ 9/5~9/9(補講期間) or 8/22~8/26 定期試験 or 8/29~8/31(院試)
2個の点電荷間に作用する力 運動している2個の点電荷を考えたとき、それらの間に作用する力は、作用・反作用の法則を満たしているか? 2 v2 m2 q2 F2 1 m1 v1 q1 E2(z1) E1(z2) B2(z1) B1(z2) z1 z2 F1 速度 v2 で運動している2番目の点電荷 q2 が、1番目の電荷の存在する位置 z1 につくる電場および磁場を、E2(z1), B2(z1)とすると、質量 m1 電荷 q1 の1番目の点電荷の運動に対して以下の運動方程式が成り立つ 速度 v1 で運動している1番目の点電荷 q1 が、2番目の電荷の存在する位置 z2 につくる電場および磁場を、E1(z2), B1(z2)とすると、質量 m2 電荷 q2 の2番目の点電荷の運動に対して以下の運動方程式が成り立つ
2個の点電荷間に作用する力 さて、それぞれの点電荷の電荷密度と電流密度は、 Coulombの法則より、 Biot-Savartの法則より、 従って、
2個の点電荷間に作用する力 上式は、各々の点電荷が他の点電荷からの力の作用の下で運動する時の運動方程式。右辺第1項は、他の電荷からの静電力を表し、第2項は、他の電荷が運動することによって作られる磁場から受けるアンペールの力を表している。 上の2式の和をとると、 y z x v2 従って、点電荷間の静電力は作用・反作用の法則を満たしているが、アンペールの力はこれを満たしていない。このため、二つの点電荷の全運動量は保存しない。 v1 何故でしょう ? z1 - z2
2個の点電荷間に作用する力 前の議論では、二つの点電荷の全運動量が保存しなかった。 即ち、二つの点電荷間で作用反作用の法則が成り立たなかった。その理由は ? 理由その1. 電磁場の運動量を考慮に入れていなかった ・ 外力によって点電荷が加速されると、その点電荷は電磁波を放射する ・ そしてその電磁波も、点電荷と同様に運動量 Ge.m. を持っている ・ 従って、電磁波の運動量をも考慮に入れてこそ運動量保存則が成立する つまり、 理由その2. 自己場の影響を考慮に入れていなかった ・ E2(z1) や B2(z1) は、点電荷2が点電荷1の存在する位置 z1 に作る電場およ び磁場 ・ しかし、点電荷1自身も、点電荷1の存在する位置 z1 に電場および磁場を 作るはずであり、この影響をも考慮する必要がある
自己場と微分形式 二つの点電荷間に働く力の表し方 原点にある電荷 Q が、もう一方の点電荷 q のある位置 r に作る電場 E(r)は、 一方、微分形式で書かれたMaxwell方程式の、電場に関するGaussの法則は、 re(x) は位置 x での電荷密度 F r この電場 E(x) には、電荷 q による電場(自己場)も含まれている 力 +Q +q この電場の下で電荷 q に働く力 F は、 従って、電荷 q に働く力 F は、 となり、微分形式で表す方が自己場の影響も正確に取り入れて扱うことができる。 この場合、電荷 q のある位置 r での電界E(r)には、電荷 q による電界は含まれていない
微視的体系における運動方程式 領域 V 内に多数の点電荷が存在しているとする q1 z1 m1 q2 z2 m2 q3 z3 m3 qi zi mi 領域 V qj zj mj i 番目の点電荷に対する運動方程式は、 またこの場合の E(x, t), B(x, t)は、各々の点電荷による自己場を含んでいる ここで、 G: 万有引力定数 全点電荷に対して和をとると、 万有引力に関しては、作用・反作用の法則が成り立っているので
微視的体系における運動方程式 代入 代入 すると、 ここでの電磁場は、点電荷系の自己場を含む ベクトルの微分公式より、 ファラデーの電磁誘導の法則を用いると、 従って、上式の被積分関数は以下のようになる。
微視的体系における運動方程式 ここで、 と置くと、 なので x 成分は、 同様に、x 成分は、
微視的体系における運動方程式 y 成分、z 成分についても同様に計算した後、以下のような行列を定義する。 磁場に関しても同様に、 すると、
微視的体系における運動方程式 y 成分、z 成分についても同様に計算すると、以下の式が得られる。 ただし、 と置いている。 この Ti j を要素とする行列は、電磁場におけるマクスウェルの応力テンソルと呼ばれている。 x 成分に関する上式の右辺を領域 V にわたって積分し、ガウスの定理を用いて領域 V を囲む閉曲面 S 上の面積分に置き換えると、 は、閉曲面S上の単位法線ベクトル となる。 従って、 と表され、 F(t) は、領域 V 内に存在する点電荷系と電磁場に、外部から作用する電磁的な力を表す。
電磁場の運動量 この式の意味するところは、 点電荷系の全運動量 電磁場の全運動量 ニュートン力学的な力ではない 領域 V 内の点電荷系と電磁場に外部から作用する電磁力 これが、 点電荷系の電磁場に対する運動量保存則 従って、単位体積当たりの電磁場の運動量(運動量密度) g は以下の式で与えられる。 S(x, t) は Poynting ベクトル 媒質内での電磁場の運動量 Gは、 U は電磁場のエネルギー
電磁波の運動量と放射圧 電磁波は単位体積当たり、下記の式で与えられる運動量を運ぶので、電磁波が 物体に当たると圧力を及ぼす。これを放射圧と呼ぶ。 電磁波は、この空間内に存在する電磁運動量を、波数ベクトル k の方向に波の伝搬速度 c で運ぶので、単位面積あたり物体に及ぼす放射圧 p は、 単位体積当たりの 電磁場の運動量 g 完全吸収のとき c g k p 完全反射のとき 電磁波は、単位時間に c だけ進む
宇宙帆船イカロス JAXA: www.jspec.jaxa.jp/ikaros_channel/ 2010年5月21日打上げ 想像図 セイル面積: 14m×14m セイル鏡面反射率: 0.7~0.75 全重量: 300kg 想像図 太陽光圧による最大推力: 1.12mN (約0.114gに相当) 問) イカロスがその帆に受けている太陽からの放射エネルギーを1kW/m2と見積もると、セイルの推力はいくらになるか? ただし、セイルの反射率を70%と仮定せよ。
電磁場のエネルギーと運動量との関係 電磁場のエネルギー密度 u と運動量密度 g との間には、以下のシンプルな関係が成り立つ。 ところで、光は粒子(光子)としての性質も合わせ持っているので、古典電磁気学における電磁波のエネルギーとか運動量とかの概念は、光子のエネルギーや運動量といった概念で置き換えられる。即ち、光子はエネルギー E と運動量 p を持つ粒子であり、その間には、 c は光速度 というシンプルな関係がある。この関係は相対性理論の結果からも導かれる。 上の関係式は、光子のエネルギー E が、E = hν (hはプランク定数)、光子の運動量 |p|が、 |p| = h/λ と表されることからも理解できるであろう。
電磁波における重要な関係式 伝搬速度: v 真空中の光速度: c 波長: λ 周波数: f 角周波数: ω 周期: T 波数: k 電場(電界)ベクトル: E 磁場(磁界)ベクトル: H 波数ベクトル: k インピーダンス: Z 真空のインピーダンス: Z0 電界振幅: |E| 磁界振幅: |H| 電磁場のエネルギー密度: u ポインティングベクトル: S (等方性媒質の場合) 電磁場の運動量密度: g