小標本検査データを元にした 疲労破損率のベイズ推定

Slides:



Advertisements
Similar presentations
母平均の区間推定 ケース2 ・・・ 母分散 σ 2 が未知 の場合 母集団(平均 μ 、分散 σ 2) からの N 個の無作為標本から平均値 が得られてい る 標本平均は平均 μ 、分散 σ 2 /Nの正規分布に近似的に従 う 信頼水準1- α で区間推定 95 %信頼水準 α= % 信頼水準.
Advertisements

1標本のt検定 3 年 地理生態学研究室 脇海道 卓. t検定とは ・帰無仮説が正しいと仮定した場合に、統 計量が t 分布に従うことを利用する統計学的 検定法の総称である。
『わかりやすいパターン認 識』 第 5 章 特徴の評価とベイズ誤り確率 5.4 ベイズ誤り確率と最近傍決定則 発表日: 5 月 23 日(金) 発表者:時田 陽一.
計量的手法入門 人材開発コース・ワークショップ (IV) 2000 年 6 月 29 日、 7 月 6 ・ 13 日 奥西 好夫
土木計画学 第3回:10月19日 調査データの統計処理と分析2 担当:榊原 弘之. 標本調査において,母集団の平均や分散などを直接知ることは できない. 母集団の平均値(母平均) 母集団の分散(母分散) 母集団中のある値の比率(母比率) p Sample 標本平均 標本分散(不偏分散) 標本中の比率.
統計学 西山. 標本分布と推定 標準誤差 【例題】 ○○ 率の推 定 ある人気ドラマをみたかどうかを、 100 人のサンプルに対して質問したところ、 40 人の人が「みた」と答えた。社会全体 では、何%程度の人がこのドラマを見た だろうか。 信頼係数は95%で答えてください。
統計学入門2 関係を探る方法 講義のまとめ. 今日の話 変数間の関係を探る クロス集計表の検定:独立性の検定 散布図、相関係数 講義のまとめ と キーワード 「統計学入門」後の関連講義・実習 社会調査士.
●母集団と標本 母集団 標本 母数 母平均、母分散 無作為抽出 標本データの分析(記述統計学) 母集団における状態の推測(推測統計学)
土木計画学 第5回(11月2日) 調査データの統計処理と分析3 担当:榊原 弘之.
Bassモデルにおける 最尤法を用いたパラメータ推定
統計的仮説検定の考え方 (1)母集団におけるパラメータに仮説を設定する → 帰無仮説 (2)仮説を前提とした時の、標本統計量の分布を考える
疫学概論 母集団と標本集団 Lesson 10. 標本抽出 §A. 母集団と標本集団 S.Harano,MD,PhD,MPH.
統計的仮説検定 治験データから判断する際の過誤 検定結果 真実 仮説Hoを採用 仮説Hoを棄却 第一種の過誤(α) (アワテモノの誤り)
「データ学習アルゴリズム」 第3章 複雑な学習モデル 3.1 関数近似モデル ….. … 3層パーセプトロン
大数の法則 平均 m の母集団から n 個のデータ xi をサンプリングする n 個のデータの平均 <x>
ベイズ的ロジスティックモデル に関する研究
「データ学習アルゴリズム」 第2章 学習と統計的推測 報告者 佐々木 稔 2003年5月21日 2.1 データと学習
確率モデルによる 画像処理技術入門 --- ベイズ統計と確率的画像処理 ---
応用統計学の内容 推測統計学(inferential statistics)   連続型の確率分布   標本分布   統計推定   統計的検定.
計測工学 -測定の誤差と精度2- 計測工学 2009年5月17日 Ⅰ限目.
母集団と標本調査の関係 母集団 標本抽出 標本 推定 標本調査   (誤差あり)査 全数調査   (誤差なし)査.
ベイズ基準によるHSMM音声合成の評価 ◎橋本佳,南角吉彦,徳田恵一 (名工大).
【小暮研究会2】 「ベイズのアルゴリズム」:序章 【1,2:計量経済分析と統計分析】 【 3:ベイズ定理】
看護研究における 統計の活用法 Part 3 京都府立医科大学 浅野 弘明 2012年11月10日 1.
ガウス過程による回帰 Gaussian Process Regression GPR
リスクポートフォリオ 京都大学大学院 小林研究室 修士2回 関川 裕己.
応用数理工学特論 期末発表 西口健太郎 渡邉崇充
相関分析.
協調機械システム論 ( ,本郷) 協調機械システム論 東京大学 人工物工学研究センター 淺間 一.
内視鏡画像からの奥行き情報提示による 視覚支援システムの開発
第9章 混合モデルとEM 修士2年 北川直樹.
応用統計学の内容 推測統計学(inferential statistics)   連続型の確率分布   標本分布   統計推定   統計的検定.
混合ガウスモデルによる回帰分析および 逆解析 Gaussian Mixture Regression GMR
モデルの逆解析 明治大学 理工学部 応用化学科 データ化学工学研究室 金子 弘昌.
多重ベータ分布を用いた音色形状の数理モデリングによる
T2統計量・Q統計量 明治大学 理工学部 応用化学科 データ化学工学研究室 金子 弘昌.
顧客維持に関するモデル.
第5章 特徴の評価とベイズ誤り確率 5.5 ベイズ誤り確率の推定法 [1] 誤識別率の偏りと分散 [2] ベイズ誤り確率の上限および下限
MSET使用方法  一時中断したい場合には、マウスの右クリックをしてください(小ウインドウが開き一時停止します)。続行する場合には、開いた小ウインドウ以外の適当な場所を右クリックしてください。
標本分散の標本分布 標本分散の統計量   の定義    の性質 分布表の使い方    分布の信頼区間 
予測に用いる数学 2004/05/07 ide.
市場調査の手順 問題の設定 調査方法の決定 データ収集方法の決定 データ収集の実行 データ分析と解釈 報告書の作成 標本デザイン、データ収集
2つの平行光の観測による 内部カメラパラメータの安定なキャリブレーション
ロボットの協調動作の研究: マップ作成とマップ情報を利用した行動計画
1-Q-9 SVMとCARTの組み合わせによる AdaBoostを用いた音声区間検出
誤 差 誤差 = 測定値 - 真値 ・真値は神様だけが知っている。 ・ばらつきの程度を表す意味が薄い。
確率と統計2009 第12日目(A).
第4章 識別部の設計 4-5 識別部の最適化 発表日:2003年5月16日 発表者:時田 陽一
「データ学習アルゴリズム」 第3章 複雑な学習モデル 報告者 佐々木 稔 2003年6月25日 3.1 関数近似モデル
第3章 線形回帰モデル 修士1年 山田 孝太郎.
ベイズ最適化 Bayesian Optimization BO
情報経済システム論:第13回 担当教員 黒田敏史 2019/5/7 情報経済システム論.
経営学研究科 M1年 学籍番号 speedster
母集団と標本抽出の関係 母集団 標本 母平均μ サイズn 母分散σ2 平均m 母標準偏差σ 分散s2 母比率p 標準偏差s : 比率p :
クロスバリデーションを用いた ベイズ基準によるHMM音声合成
最尤推定・最尤法 明治大学 理工学部 応用化学科 データ化学工学研究室 金子 弘昌.
HMM音声合成における 変分ベイズ法に基づく線形回帰
情報の集約 記述統計 記述統計とは、収集したデータの分布を明らかにする事により、データの示す傾向や性質を要約することです。データを収集してもそこから情報を読み取らなければ意味はありません。特に膨大な量のデータになれば読みやすい形にまとめて要約する必要があります。
ベイズ基準による 隠れセミマルコフモデルに基づく音声合成
ベイズ音声合成における 事前分布とモデル構造の話者間共有
ポッツスピン型隠れ変数による画像領域分割
小標本に関する平均の推定と検定 標本が小さい場合,標本分散から母分散を推定するときの不確実さを加味したt分布を用いて,推定や検定を行う
確率と統計2007(最終回) 平成20年1月17日(木) 東京工科大学 亀田弘之.
1.基本概念 2.母集団比率の区間推定 3.小標本の区間推定 4.標本の大きさの決定
低軌道周回衛星における インターネット構築に関する研究
データ分布の特徴 基準化変量 歪度 尖度.
第3章 統計的推定 (その2) 統計学 2006年度 <修正・補足版>.
実都市を対象とした初期マイクロデータの 推定手法の適用と検証
混合ガウスモデル Gaussian Mixture Model GMM
外れ値検出 Outlier Detection 外れサンプル検出 Outlier Sample Detection
Presentation transcript:

小標本検査データを元にした 疲労破損率のベイズ推定 2004年12月2日 ○岡島智史(東大),酒井信介(東大) 泉聡志(東大) ,岩崎篤(東大)

研究の背景 リスク=破損確率×被害の大きさ RBM (Risk Based Maintenance) プラント内の各機器について 影響度 小 大 低 高 危険 安全 プラント内の各機器について リスクを評価、優先順位をつけて メンテナンスを行う手法 現在国家的に導入に向けた 取り組みがなされている リスク=破損確率×被害の大きさ

問題点 プラント内の、膨大な数の機器・部品に対して 破損率評価が必要 既存の検査データは破損率評価を意識して 記録されていない 検査データのみから通常の統計処理により 破損率評価を行うのは非効率・非現実的 欧米では… 汎用データベースを元に、ベイズ推定によって 個々の機器の破損率を導出

ベイズ推定 汎用データベースの情報を 事前分布として推定に利用可能 確率分布の母数を、確定値で無く確率変数であるとして扱い、 通常の統計処理 (最尤法など) 検査結果A 推定値   誤差 事前分布 事後分布 ベイズ推定 検査結果A 確率分布の母数を、確定値で無く確率変数であるとして扱い、 検査結果により分布を絞ることで推定を行う手法 汎用データベースの情報を 事前分布として推定に利用可能

検査データからの機器の破損確率推定において 研究の目的 検査データからの機器の破損確率推定において ベイズ推定を利用することの有効性、 およびその限界範囲を調査する

課題 推定手法の整理 ベイズ推定の有効性調査 破損、検査のモデル化 推定手法 実機検査データによる検討 実機検査データによる推定の可否 仮想検査データによる検討 通常の統計処理との比較 事前分布の推定精度への影響

推定手法整理 破損・検査のモデル化 推定手法構築

疲労破損のモデル 前提: 疲労による破損の検査データとして、 検査時期と、き裂の有無が与えられている。 ・ き裂が発生することをもって破損と定義した。 ・ 検査を行うことで、必ずき裂を発見できるものとした。 ・き裂が発見された機器には補修が行われるが、 補修が行われた機器は新品同様の寿命を持つとした。

検査データからベイズ推定によりα,βを推定 推定手法 疲労寿命の分布として、故障率が時刻と共に上昇する という疲労の特徴を表現可能なワイブル分布を用いる ワイブル分布の累積分布関数 (α:形状母数 β:尺度母数) 起動停止回数とtの関係、寿命って何? 検査データからベイズ推定によりα,βを推定 寿命の累積分布関数は時刻tまでの破損確率なので 寿命分布が推定されれば破損確率も計算可能

ベイズ推定の有効性調査 実機検査データによる検討 仮想検査データによる検討 実機検査データによる推定の可否 通常の統計処理との比較 事前分布の推定精度への影響

実機検査データ 炉壁付箱型構造物のコーナ部 溶接部(128箇所)のき裂検査データ 1st inspection 225 128 2nd Number of start and stop inspected equipment equipment with crack no crack 1st inspection 225 128 2nd 310 30 18 12 3rd 331 96 78 炉壁付箱型構造物

事前情報なしの場合に用いることが適当とされる 実機検査データによる推定結果 ベイズ推定の事前分布として、 事前情報なしの場合に用いることが適当とされる 無情報性事前分布を用いた 寿命分布母数が推定可能

仮想検査データによる検討 シミュレーションによって仮想的な検査データを作成し、 このデータを用いた推定結果より以下の検討を行う。 通常の統計処理と比較した優位性の調査   事前情報なしのベイズ推定 ⇔ 最尤法 事前分布の推定精度への影響調査   事前情報ありのベイズ推定 ⇔ 事前情報なしのベイズ推定 シミュレーション条件 機器数:10個 形状母数:2.6, 尺度母数:130 検査:起動停止回数30回ごと 仮想検査データ数:20個

優位性の基準 MTBFの90%確信区間が狭く推定されることを優位とする。 優位性の検討を、一つの指標によって行うため、 Γ(x)はガンマ関数である 比較にあたり、ベイズ推定における「確信区間」と 最尤法における「信頼区間」が同等のものであるとした。

汎用データベースの情報を利用しない場合であっても、 通常の統計処理と ベイズ推定の比較 六回目以前のほうを主題にするように ベイズ推定有効 推定結果に大差なし 汎用データベースの情報を利用しない場合であっても、 少回数の検査データからの推定では 最尤法よりベイズ推定が優位

事前分布の影響の検討 汎用データベースを利用して事前分布を与えた場合を想定し、 事前分布の真値に対する偏差が推定精度に与える影響を調査する。  母数の取りうる範囲がα>0,β>0であるため  対数正規分布として事前分布を設定 Meα,Meβを様々に与える。 σα,σβは0.5とした。

事前分布の形状母数の影響 事前分布中央値 Meα Meβ Case1 5 130 Case2 1.5 いずれも無情報の場合より優位

事前分布の尺度母数の影響 事前分布中央値 Meα Meβ Case3 2.6 250 Case4 60 いずれも無情報の場合より優位

結言 実機検査データからの疲労破損率推定を通じて、 疲労破損率推定にベイズ推定が利用できることを 確認した シミュレーションによる仮想検査データからの推定を 通じて、疲労破損率推定へのベイズ推定利用の 有効性とその範囲を系統的に調査した

発表内容 研究の背景 研究の目的・課題 破損率推定のモデルと手法 実機検査データによる検討 シミュレーションによる検討 結言