イノベーション創造と知的財産権 BPASオーガナイザ SMIPS特許戦略工学分科会オーガナイザ 久野 敦司 2008年12月2日

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イノベーション創造と知的財産権 BPASオーガナイザ SMIPS特許戦略工学分科会オーガナイザ 久野 敦司 2008年12月2日 「大韓民国 第8回 国家 R&D IPフォーラム」にて発表 イノベーション創造と知的財産権 2008年12月2日 BPASオーガナイザ SMIPS特許戦略工学分科会オーガナイザ  久野 敦司 Web: http://www.patentisland.com Email: patentisland@hotmail.com

概要   イノベーションは知識の新結合であるので、イノベーション活性化のためには、各プレイヤーのキーパーソンの人的ネットワークの広さや創造性が重要である。   複数のプレイヤーの有機的な連携でイノベーションエンジンと言える仕組みを形成することで、イノベーションが活発化する。しかし、イノベーションの一歩手前での阻害要因が組織内や組織間にあると、イノベーションは停滞する。また、過度な件数の知的財産権の独占排他機能がイノベーションの阻害要因になることもあるので、知的財産権の独占排他機能を抑制するとともに、創作者に別のメリットを与えるようにする第2世代知財によって、イノベーションを促進しようと言う動きが始まっている。

第1章 イノベーション創造のメカニズム 【イノベーション促進と知的財産権制度】 イノベータの頭脳 の働きが起点となり、 第1章 イノベーション創造のメカニズム 【イノベーション促進と知的財産権制度】 イノベータの頭脳 の働きが起点となり、 組織的活動により イノベーションが現実 になっていく。 イノベーション発生の主要因は利益獲得ではない 新しい物や価値ある物の創作意欲、 利益獲得意欲、 社会や所属企業への貢献の意欲(これが最大) 独占排他権 のカバーする範囲 顧客が存在する領域 独占排他権が事業利益を もたらす可能性がある領域 発明、著作物 などの知的創作物

【イノベーション実現の現場】 機密保持契約を締結したとしても、相手を信頼しなければ、貴重なアイデアや情報を 相互交換できない。事業や技術開発のプレイヤーの直接結合では、プレイヤーの知識や 技術の新結合での価値創出は本質的な利害対立の壁を乗り越えねば、形式的で意味の 無いものになりがちである。 【プレイヤー相互の直接結合】 プレイヤーA プレイヤーB 契約関係 利害対立を含んだ 緊張関係の上に 築かれる協力関係

技術と事業、技術と技術、事業と事業の新結合や新たなビジネスモデルの発想や戦略の提示をボランティアとして実行 【知的エンジェルを介したプレイヤーの新結合】 プレイヤーA プレイヤーB 知的エンジェル 事業情報 技術情報 技術と事業、技術と技術、事業と事業の新結合や新たなビジネスモデルの発想や戦略の提示をボランティアとして実行 発想や戦略の 提示 大学のシーズ技術

【イノベーション活性化のための条件】 プレイヤー企業A キーパーソンA プレイヤー企業B キーパーソンB イノベーション能力 が高いこと 人的ネットワークが 大きいこと 他の団体との密な関係 人的ネットワークが 大きいこと 知的エンジェル: 触媒機能を果たす イノベーション能力 が高いこと

BPAS(技術シーズも活用した事業特許統合戦略を、ベンチャー企業に提言する研究会) 京都イノベーションエンジン構想 ASTEMが中心となり、京都市ベンチャー企業目利き委員会と技術価値評価研究会とBPASの相互連携を実現して、有望ベンチャー企業と適切な技術シーズを、MOT,MBA,知財,法科の大学院生の知識と弁理士や企業の知財エキスパート達の専門知識やアイデアのもとで作成された事業特許統合戦略を用いて組み合わせ、さらに産学連携支援者+弁理士等の専門家のアフターフォローのもとで1ランク上の事業体を育成していくという構想。 現時点では正式なものではなく、各機関のメンバーが試行のためにこの構想にボランティア参加して活動している。 ASTEM 大企業、 中堅企業、 ベンチャー 大学の 研究室1 産業応用 可能性の 高いシーズ 技術価値評価研究会 京都目利き委員会 大学の 研究室2 同志社大学産学連携支援ネットワーク ベンチャー 企業1 Aランク 認定企業 大学の 研究室3 産業応用 可能性の 高いシーズ ベンチャー 企業N Aランク 認定候補 大学の 研究室N 産学連携 支援事業者 BPAS(技術シーズも活用した事業特許統合戦略を、ベンチャー企業に提言する研究会) MOT大学院生、 MBA大学院生、 知財大学院生、 法科大学院生、 企業の知財部員等 弁理士、弁護士、中小企業診断士等の専門家

第2章 イノベーション創造の阻害要因 【イノベーション創造の一歩手前での停滞パターン】 第2章 イノベーション創造の阻害要因 【イノベーション創造の一歩手前での停滞パターン】 インフラと、インフラアプリの間のデッドロックのパターン 2. 市場探索のための投資が決断できないパターン 3. 自社の既存事業が障害となって新規事業の創出ができないというパターン (独占排他権の存在がイノベーション阻害要因になっている場合が多いので、 第3章で課題と対策を詳述) 4. 他社の有力な特許権の存在が原因で事業進出ができないパターン 5. アプリケーション実現には自社に要素技術がいくつか不足しているパターン 6. 社会的な規制がイノベーションを阻んでいるというパターン 7. 導入開始のための条件として、導入実績を求められるというパターン 8. 予算策定や組織改変の時期との整合がとれず、イノベーション実現への歩みが消える パターン 【イノベーションキラー】 次のような言葉で、イノベーションをつぶすイノベーションキラーが問題である。 ● どうせ無理  ● 前例が無い  ● 他社では、やっていない ● リスクが無いとは言えない     ● 誰もやっていないのは、駄目だからではないのか ● 時期尚早   ● マニュアルとは異なる  ● 皆の同意が得られない

第3章 イノベーションのための第2世代知財

人口が爆発的に増加している                                                                                                                                                                                                                            出典: http://www.unfpa.or.jp/p_graph.html

地球環境問題、食糧問題、エネルギー問題 イノベーション促進で諸問題を解決する必要性 行使が本格化するとイノベーションを阻害する独占排他権を知的財産権制度の中心から取り除く 知的創作物の利用を原則自由としながらも、知的創作者のモチベーションと先行者利益の確保を図る 実施料受領権,元祖権,標準策定参加権,公共調達優先受注権,ネット権などの第2世代知財

いつまで、 環境に無関心に 生産と消費の拡大を 継続できるか? 環境に悪影響を与えない ようにしながら、 多くの問題を解決するための 技術を急速に開発 できる体制が必要 協創と地球環境保護の第2世代知財

環境に余裕がある間は、新分野を開拓してはそこでの生産や消費を増加させていくことが産業の発達であった。 新分野の開拓を促進するため、最先端で開拓をした者に、 一定期間だけ開拓地を独占させるということにした。

環境が飽和すると、生産と消費の増大をさせることは 生活や幸福を破壊することになっていく。 新分野の魅力を用いて、環境破壊につながる活動を減少させるような制度設計が必要。 技術が混み合ってくると独占排他権が技術開発を促進させるとは限らなくなる。

新しい知識の活用を最適制御するという観点から みると、 知的財産権が独占排他権でなければならないと いう理由は無い。 産業の発達の概念も変化すべきである。

知的財産権制度は、単細胞生物の行動原理である独占排他権を中心とした「第1世代知財」から、多細胞生物の行動原理である協創と環境保護を中心とした「第2世代知財」に進化をすべき時期に来たと考える。 他のプレイヤーとの協力を行ない、技術や事業を組み合わせることで新市場の創造や整備を実現するという「協創」 細胞膜で囲われた単細胞生物が細胞膜内への他の生物の侵入を防止しつつ周囲から栄養を取り込み成長する 進化 ゼロサムゲームの単細胞生物 (独占排他権中心の第1世代知財) プラスサムゲームの多細胞生物 (協創と地球環境保護の第2世代知財)

【第2世代知財】 「第2世代知財」では知的財産権者に先行者メリットを提供すれば、その対象の製品やサービスやコンテンツでの知的創作物の使用行為は、その知的財産権についての正当実施行為となる。また、「第2世代知財」では、公益(例:地球環境保護)に連動した知的財産権の行使を促進することで、公益の実現に知的財産権制度を活用する。

【合算実施料率上限制度の概念図 】 実施料率の合計 善意ではない ライセンシーに 適用される 通常の 利益率β 上限の 実施料率 γ カバーする 特許の個数 実施料率の合計 善意ではない ライセンシーに 適用される 通常の 利益率β 上限の 実施料率 γ 1     2     3    4      5     6 善意のライセンシーに適用される(環境保護規制に違反している場合は不適用)

第2世代知財への動きが加速してきた 「著作権は混迷」「ダメと言ってもネットは止まらない」──東大中山教授 19世紀の状況を前提に作られた著作権法は、一般ユーザーが創作し、ネットで発表する現代に合わない――著作権法の第一人者・東大の中山教授は言う。 出典: http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0803/03/news033.html  文教大学 幡鎌教授 元祖権を取得できた場合には、「自分が元祖」と正式に主張できるだけでなく、他社が模倣して同じサービスを実施(侵害)した場合には、元祖権を持つ会社が「元祖」であることとその問合せ先やリンクを、模倣した会社のカタログやWeb ページ 上に表示することを義務付ける制度である。独占やライセンス料は伴わないが、他社が模倣した場合に、元祖権を持つ企業が必ず営業的な効果を得られるようにする制度である。 出典: http://open.shonan.bunkyo.ac.jp/~hatakama/paper/2H14_hat.pdf