大気レーダーのアダプティブクラッタ 抑圧法の開発 京都大学大学院 情報学研究科 通信情報システム専攻 神尾 和憲 佐藤 亨
研究背景 【問題】 観測対象からのエコー 【方法】 観測対象のエコーに比べて、山など からの反射波が十分大きいため、 【問題】 観測対象のエコーに比べて、山など からの反射波が十分大きいため、 サイドローブでの抑圧では不十分。 【方法】 妨害波を確実に抑圧するために、 アダプティブなクラッタ抑圧を行う 方法を検討する。 観測対象からのエコー 強い反射波 (アンテナパターン)
クラッタのアダプティブ抑圧について + W1 W2 ウエイトを制御することで、所望のアンテナ パターンが作りだせる。 S S U S U S:I=10:0 U S:I=10:1 S:I=1:0 指向性アンテナ アダプティブサブアレー 所望パターン
アダプティブなクラッタ抑圧 サブアレー方式でアダプティブな クラッタ抑圧を行う。 (主アレー) 【大型レーダーに適用する】 レーダーでは主ビーム形状を保つ必要ある。 大型フェーズドアレイレーダーそのものを アダプティブに制御するのは困難。 例:EARのアンテナ数 560本 (主アレー) サブアレー方式でアダプティブな クラッタ抑圧を行う。
サブアレー方式でのクラッタ抑圧 受信専用アレー(サブアレー)をレーダーの周りに配置する。 主アレーとサブアレーにおいて、アダプティブなクラッタ抑圧アルゴリズムを適用する。 【特徴】 レーダー自体を制御する場合に比べて、計算量が少なくてすむ。 レーダーのハードウエアを変更する必要がないため、既存のレーダーシステムにも利用できる。
レーダー・サブアレーのノイズレベル: 0dB シミュレーション条件 利得 アンテナパターン [dB] Θ(deg.) サブアンテナ本数 4 所望波到来方向 0° 妨害波到来方向 80° 無指向性アンテナ レーダー・サブアレーのノイズレベル: 0dB
従来法について DCMP DCMP [dB] 方向拘束付き出力電力最小化法 利得 Θ(deg.) メインビームを保証する新しい Antenna pattern DCMP 方向拘束付き出力電力最小化法 [dB] 利得 所望波(S)方向: 0° 妨害波(U)方向: 80° C は方向拘束ベクトル H は拘束値. (H=1) Θ(deg.) Lagrange 法により解を求める。 メインビームを保証する新しい ウエイト決定法が必要である。
提案アルゴリズム (DCMP-CN) DCMP-CN 入力ベクトル ウエイトベクトル 方向拘束ベクトル 相関行列 ウエイトノルムに関する拘束条件を加えた. (出力パワーを最小化) (所望方向の利得をHに固定) (ノルムをN以下に設定) 入力ベクトル ウエイトベクトル 方向拘束ベクトル 相関行列 :n番アンテナでの入力 :n番アンテナでの制御量 :方向によって生じる位相差
DCMP-CNの解法 罰金関数法 F(x): 最小化すべき関数 g(x): 拘束値関数 評価関数 罰金率ρ を徐々に大きくしていく。 等式・不等式拘束条件ともに満たした最適解が求まる。
DCMP vs. DCMP-CN DCMP-CN DCMP [dB] [dB] 利得 Θ(deg.) Θ(deg.) Antenna pattern DCMP Antenna pattern [dB] [dB] 利得 所望波(S)方向: 0° 妨害波(U)方向: 80° 所望波(S)方向: 0° 妨害波(U)方向: 80° Θ(deg.) Θ(deg.) 所望波電力: 20 dB 妨害波電力: 80 dB DCMP-CNはメインビームを保った 状態で妨害波を抑圧している.
DCMP vs. DCMP-CN (2) DCMP DCMP-CN [dB] [dB] 利得 Θ(deg.) Θ(deg.) Antenna pattern DCMP-CN Antenna pattern [dB] [dB] 利得 所望波(S)方向: 0° 妨害波(U)方向: 80° 所望波(S)方向: 0° 妨害波(U)方向: 80° Θ(deg.) Θ(deg.) 所望波電力: -20 dB 妨害波電力: 80 dB
広範囲から妨害波が到来した場合 (DCMP-CN) 妨害波の到来角 Zenith angle: 70-80° 妨害波の到来角 Azimuth angle: 10-20° [dB] [dB] 利得 Zenith angle Azimuth angle 所望波電力: 20 dB 妨害波電力: 60 dB
MUレーダの実データによる検証 B A C D 【観測方法】 MUレーダーでは受信チャネルが4個 あるので、1チャネルを主アレー、残り 3チャネルを、サブアレーとして使用。 【データの合成】 各受信機から得られたデータを用い て、最適ウエイトを決定する。 そしてそのウエイトを用いて各データ を加えあわせる。
合成された出力のドプラーパワースペクトル 実データの合成結果 合成された出力のドプラーパワースペクトル [dB] DCMP [dB] DCMP-CN クラッタ クラッタ 大気エコー 大気エコー DCMP: サイドローブ上昇 妨害波・雑音が増加 DCMP-CNはクラッタ抑圧として特性が良いことがわかった
クラッタが抑圧がされ、0ドプラー周辺での大気エコーが観測できる。 実データの合成結果(2) クラッタが抑圧がされ、0ドプラー周辺での大気エコーが観測できる。 [km] Main DCMP-CN 高度 誤ってサブアレーのみ熱雑音が大きく なるような観測を行ってしまった。 合成された結果も SN比が劣化している。
サブアレーの設置について A A 正しく1本のアンテナで受信することでSN比の改善が成される。 サブアレーで受信するクラッタ強度を大きくした方が 拘束値を小さく設定できるためでSN比に対して有利である。 A A ・フェンスの回折でクラッタ強度が減衰しているので、 フェンス付近に設置する。 ・八木アンテナを横に向けることで、利得を高める。
飛行機エコーの抑圧 [km] Main DCMP-CN 高度 相関行列の忘却係数は、どの程度の時間で周りの状況が 変化するかが指標となる。 とても早く変化する例として、飛行機エコー抑圧について検討する。 忘却係数を0.8に設定した例を右に示す。 [km] Main DCMP-CN 高度
まとめ アダプティブクラッタ抑圧法について検討 既存のレーダーの周りに数素子の受信専用アレーを設置し、その各素子のウエイト制御を行う。 ウエイト制御法としてDCMP-CNを開発した。 実データの合成によってDCMP-CNでクラッタ抑圧が可能であることを確認した。 サブアレーの配置方法について検討した。