大気レーダーのアダプティブクラッタ 抑圧法の開発

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 フェーズドアレイ気象レーダーに よる局地的大雨の3次元詳細観測 佐藤晋介( NICT )、牛尾知雄、嶋村重治、円尾晃一 (大 阪大)、水谷文彦、和田将一(東芝)、花土弘、川村誠治、 浦塚清峰、井口俊夫( NICT ) 気象学会2013年度春季大会@国立オリンピック記念青少年総合センター 2013.
Advertisements

3次元nクイーン問題の 解に関する研究 論理工学研究室 伊藤精一
反射波が支配的な状況下でのマルチパス誤差低減
高精度画像マッチングを用いた SAR衛星画像からの地表変位推定
点対応の外れ値除去の最適化によるカメラの動的校正手法の精度向上
情報通信システム論I ---無線航法---
川口則幸教授 退任記念ワークショップ 日通機における 電波天文機器の開発 2014年6月3日 日本通信機株式会社 武井 健寿.
音響モデルを利用したシングルチャネルに よる音源方向推定
発表内容 研究背景・目的 伝送線路の構造 伝送線路間カップリングシミュレーション - 1段増幅器シミュレーション
ウェーブレットによる 信号処理と画像処理 宮崎大輔 2004年11月24日(水) PBVセミナー.
自作電波望遠鏡による木星電波の検出 園田愛実 冨田敬人 静岡県立磐田南高等学校 地学部 天文班
Pattern Recognition and Machine Learning 1.5 決定理論
神奈川大学大学院工学研究科 電気電子情報工学専攻
「データ学習アルゴリズム」 第3章 複雑な学習モデル 3.1 関数近似モデル ….. … 3層パーセプトロン
クロストーク成分の相互相関に 着目した音場再生システム
デジタル信号処理①
GPS3点観測によるF領域 イレギュラリティのドリフト速度の測定
5.アンテナの基礎 線状アンテナからの電波の放射 アンテナの諸定数
雑音重み推定と音声 GMMを用いた雑音除去
第 七 回 双対問題とその解法 山梨大学.
電子物性第1 第6回 ー原子の結合と結晶ー 電子物性第1スライド6-1 目次 2 はじめに 3 原子の結合と分子 4 イオン結合
ワイヤレス通信におけるMIMO伝送技術.
6.3.4 無給電アンテナ 伝播路上に障害物があるときこれを避ける 例題6.5 無給電アンテナを用いたマイクロ波回線.
無線LANにおけるスループット低下の要因の分析
高山建志 五十嵐健夫 テクスチャ合成の新たな応用と展開 k 情報処理 vol.53 No.6 June 2012 pp
情253 「ディジタルシステム設計 」 (7)Channel
名古屋大学 エコトピア科学研究所 情報・通信科学研究部門 (大学院 工学研究科 電子情報システム専攻 兼担) 片山 正昭
不安定な補償器を用いた 低剛性・高慣性比の 二慣性ねじり振動系における 外乱抑制制御性能の改善
通信情報システム専攻 津田研究室 M1 佐藤陽介
2.伝送線路の基礎 2.1 分布定数線路 2.1.1 伝送線路と分布定数線路 集中定数回路:fが低い場合に適用
ネットワーク理論講義補助資料 Text. 組合せ最適化とアルゴリズム 4.3 節 Lagrange緩和 pp
情報工学総合演習 D-I 近似アルゴリズム 埼玉大学 理工学研究科 山田 敏規、 橋口 博樹、 堀山 貴史
2m電波望遠鏡の製作と 中性水素21cm線の検出
5.3 接地アンテナ 素子の1つを接地して使用する線状アンテナ 5.3.1 映像アンテナと電流分布
第8週 高精度GPSの構築 位相測位の原理 通信システムの構築.
画像認識レポート課題 ガイダンス.
ひび割れ面の摩擦接触を考慮した損傷モデル
アクティブフィルタによるW-CDMA受信機の歪抑制に関する検討
制御系における指向性アクチュエータの効果
1-P-6 パラボラ反射板を用いたアクティブマイクロフォンによる方向推定
逐次伝達法による 散乱波の解析 G05MM050 本多哲也.
5.2 半波長アンテナ 5.2.1半波長アンテナ 同一方向に置かれた長さλ/4の2つの導体で構成される。
遺伝的アルゴリズムを用いた 構造物の最適形状探索の プログラムの作成
Introduction to Soft Computing (第11回目)
基本システムのボード線図 ボード線図による基本システムの同定
第6回 高精度GPSの構築 位相測位の原理 通信システムの構築.
ミリ波帯キャパシティブクロスカップリング差動増幅器のための対称交差レイアウトの提案
熱音響コアが多段接続された 電力フィードバック進行波型熱音響発電機の 発振条件及び実験
多重ベータ混合モデルを用いた調波時間構造の モデル化による音声合成の検討
低剛性・高慣性比の二慣性系の 外乱抑制制御問題に対して 任意の制御性能を達成する 不安定な補償器
Max Cut and the Smallest Eigenvalue 論文紹介
人工知能特論II 第8回 二宮 崇.
1.85m電波望遠鏡 230GHz帯超伝導(SIS) 受信機の現況
対象:せん断補強筋があるRCはり(約75万要素)
400MHz帯ウィンドプロファイラとCOBRAで観測された台風0418号の鉛直構造
第 5 章 :周波数応答 5.1 周波数応答と伝達関数 周波数伝達関数,ゲイン,位相 キーワード : 5.2 ベクトル軌跡 ベクトル軌跡
線路上での電圧、電流 Ix I0 添え字は、線路上での位置を表わす ZL γ, Z0 Vx V0 x x = 0
分枝カット法に基づいた線形符号の復号法に関する一考察
DECIGOの光学設計の検討 第17回DECIGOワークショップ 2018.11.1 川村静児(名古屋大学)
音響伝達特性を用いたシングルチャネル音源方向推定
多重関数を用いた調波時間スペクトル形状のモデル化による音声合成 1-P-4
わかりやすいパターン認識 第6章 特徴空間の変換 6.5 KL展開の適用法 〔1〕 KL展開と線形判別法 〔2〕 KL展開と学習パターン数
ソースフィルタモデル.
確率的フィルタリングを用いた アンサンブル学習の統計力学 三好 誠司 岡田 真人 神 戸 高 専 東 大, 理 研
振動体の振幅を一定とする 振動発電機負荷のフィードバック制御 長岡技術科学大学 ○ 永井 和貴 齋藤 浄 小林 泰秀
長岡技術科学大学 大学院 工学研究科 機械創造工学専攻 髙山 誠 指導教員 小林 泰秀 准教授
電磁気学C Electromagnetics C 7/10講義分 電気双極子による電磁波の放射 山田 博仁.
CSP係数の識別に基づく話者の 頭部方向の推定
PRISM-FFAG電磁石の開発 大阪大学 久野研究室 中丘末広.
各種荷重を受ける 中空押出形成材の構造最適化
Presentation transcript:

大気レーダーのアダプティブクラッタ 抑圧法の開発 京都大学大学院 情報学研究科 通信情報システム専攻   神尾 和憲 佐藤 亨 

研究背景 【問題】 観測対象からのエコー 【方法】 観測対象のエコーに比べて、山など からの反射波が十分大きいため、 【問題】   観測対象のエコーに比べて、山など からの反射波が十分大きいため、 サイドローブでの抑圧では不十分。 【方法】   妨害波を確実に抑圧するために、 アダプティブなクラッタ抑圧を行う 方法を検討する。 観測対象からのエコー 強い反射波 (アンテナパターン)

クラッタのアダプティブ抑圧について + W1 W2 ウエイトを制御することで、所望のアンテナ パターンが作りだせる。 S S U S U S:I=10:0 U S:I=10:1 S:I=1:0 指向性アンテナ アダプティブサブアレー 所望パターン

アダプティブなクラッタ抑圧 サブアレー方式でアダプティブな クラッタ抑圧を行う。 (主アレー) 【大型レーダーに適用する】 レーダーでは主ビーム形状を保つ必要ある。 大型フェーズドアレイレーダーそのものを アダプティブに制御するのは困難。 例:EARのアンテナ数 560本 (主アレー) サブアレー方式でアダプティブな クラッタ抑圧を行う。

サブアレー方式でのクラッタ抑圧 受信専用アレー(サブアレー)をレーダーの周りに配置する。 主アレーとサブアレーにおいて、アダプティブなクラッタ抑圧アルゴリズムを適用する。  【特徴】  レーダー自体を制御する場合に比べて、計算量が少なくてすむ。 レーダーのハードウエアを変更する必要がないため、既存のレーダーシステムにも利用できる。

レーダー・サブアレーのノイズレベル: 0dB シミュレーション条件 利得 アンテナパターン [dB] Θ(deg.) サブアンテナ本数 4 所望波到来方向  0° 妨害波到来方向   80° 無指向性アンテナ レーダー・サブアレーのノイズレベル: 0dB

従来法について DCMP DCMP [dB] 方向拘束付き出力電力最小化法 利得 Θ(deg.) メインビームを保証する新しい Antenna pattern DCMP 方向拘束付き出力電力最小化法 [dB] 利得 所望波(S)方向: 0° 妨害波(U)方向: 80° C は方向拘束ベクトル H は拘束値. (H=1) Θ(deg.) Lagrange 法により解を求める。 メインビームを保証する新しい ウエイト決定法が必要である。

提案アルゴリズム (DCMP-CN) DCMP-CN 入力ベクトル ウエイトベクトル 方向拘束ベクトル 相関行列 ウエイトノルムに関する拘束条件を加えた. (出力パワーを最小化) (所望方向の利得をHに固定) (ノルムをN以下に設定) 入力ベクトル ウエイトベクトル 方向拘束ベクトル 相関行列 :n番アンテナでの入力 :n番アンテナでの制御量 :方向によって生じる位相差

DCMP-CNの解法 罰金関数法 F(x): 最小化すべき関数 g(x): 拘束値関数 評価関数 罰金率ρ を徐々に大きくしていく。 等式・不等式拘束条件ともに満たした最適解が求まる。

DCMP vs. DCMP-CN DCMP-CN DCMP [dB] [dB] 利得 Θ(deg.) Θ(deg.) Antenna pattern DCMP Antenna pattern [dB] [dB] 利得 所望波(S)方向: 0° 妨害波(U)方向: 80° 所望波(S)方向: 0° 妨害波(U)方向: 80° Θ(deg.) Θ(deg.) 所望波電力: 20 dB  妨害波電力: 80 dB DCMP-CNはメインビームを保った 状態で妨害波を抑圧している.

DCMP vs. DCMP-CN (2) DCMP DCMP-CN [dB] [dB] 利得 Θ(deg.) Θ(deg.) Antenna pattern DCMP-CN Antenna pattern [dB] [dB] 利得 所望波(S)方向: 0° 妨害波(U)方向: 80° 所望波(S)方向: 0° 妨害波(U)方向: 80° Θ(deg.) Θ(deg.) 所望波電力: -20 dB 妨害波電力: 80 dB

広範囲から妨害波が到来した場合 (DCMP-CN) 妨害波の到来角 Zenith angle: 70-80° 妨害波の到来角 Azimuth angle: 10-20° [dB] [dB] 利得 Zenith angle Azimuth angle 所望波電力:  20 dB 妨害波電力: 60 dB

MUレーダの実データによる検証 B A C D 【観測方法】 MUレーダーでは受信チャネルが4個 あるので、1チャネルを主アレー、残り 3チャネルを、サブアレーとして使用。 【データの合成】 各受信機から得られたデータを用い て、最適ウエイトを決定する。 そしてそのウエイトを用いて各データ を加えあわせる。

合成された出力のドプラーパワースペクトル 実データの合成結果 合成された出力のドプラーパワースペクトル [dB] DCMP [dB] DCMP-CN クラッタ クラッタ 大気エコー 大気エコー DCMP: サイドローブ上昇       妨害波・雑音が増加 DCMP-CNはクラッタ抑圧として特性が良いことがわかった

クラッタが抑圧がされ、0ドプラー周辺での大気エコーが観測できる。 実データの合成結果(2) クラッタが抑圧がされ、0ドプラー周辺での大気エコーが観測できる。 [km] Main DCMP-CN 高度 誤ってサブアレーのみ熱雑音が大きく なるような観測を行ってしまった。 合成された結果も SN比が劣化している。

サブアレーの設置について A A 正しく1本のアンテナで受信することでSN比の改善が成される。 サブアレーで受信するクラッタ強度を大きくした方が 拘束値を小さく設定できるためでSN比に対して有利である。 A A ・フェンスの回折でクラッタ強度が減衰しているので、  フェンス付近に設置する。 ・八木アンテナを横に向けることで、利得を高める。

飛行機エコーの抑圧 [km] Main DCMP-CN 高度 相関行列の忘却係数は、どの程度の時間で周りの状況が 変化するかが指標となる。 とても早く変化する例として、飛行機エコー抑圧について検討する。 忘却係数を0.8に設定した例を右に示す。 [km] Main DCMP-CN 高度

まとめ アダプティブクラッタ抑圧法について検討 既存のレーダーの周りに数素子の受信専用アレーを設置し、その各素子のウエイト制御を行う。 ウエイト制御法としてDCMP-CNを開発した。 実データの合成によってDCMP-CNでクラッタ抑圧が可能であることを確認した。 サブアレーの配置方法について検討した。