行列模型を用いたR×S3上のN=4 SYMにおける相関関数の数値的解析

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行列模型を用いたR×S3上のN=4 SYMにおける相関関数の数値的解析 伊敷 吾郎 (KEK → CQUeST, Korea) 共同研究者 本多 正純 氏 (総研大), Sang-Woo Kim 氏 (CQUeST), 西村 淳 氏 (総研大・KEK), 土屋 麻人 氏 (静岡大)

イントロダクション AdS/CFT対応 行列模型を用いてN=4 SYMを非摂動的に定式化して、 [Maldacena] N=4 SYM ラージN・強結合 IIB superstring Classical IIB SUGRA Strong/Weak duality 対応を示すにはSYM の強結合領域を調べる必要がある。 そのためにはN=4 SYMの非摂動的定式化が必要であるが、現在のところ、 Lattice上 では多くのSUSY(特にmaximal SUSY)を保つことは困難である。 行列模型を用いてN=4 SYMを非摂動的に定式化して、 N=4 SYMの強結合領域の数値的な解析を試みる。

場の理論の非摂動的正則化としての行列模型 行列模型による正則化 Cf.) 格子正則化 ラージNゲージ理論 QCD N→∞ (ラージNリダクション) 連続極限 行列模型 格子 QCD ◆ 行列模型はゲージ対称性やSUSYなど、多くの対称性を保つことができる。 SYMを非摂動的に記述できれば、AdS/CFT対応の研究などに応用できる。 行列模型の数値的解析も可能。[Hanada-Nishimura-Takeuchi]

研究内容 得られた結果 ◆ Plane Wave 行列模型によるR×S3上のplanar N=4 SYM    の非摂動的正則化を用いて、この理論の数値的解析が可能。 ◆ Chiral primary演算子の相関関数はGKP-Witten関係式   を通して、重力理論側から計算される予言値がある。 ◆ ゲージ理論側で、この演算子の数値的解析をおこなった。 2点関数の測定を行った。 重力側と比較が可能な多点関数については、現在測定中 得られた結果 ◆ 2点関数の結果は、N=4 SYMのみならず、PW行列模型に    非繰り込み定理が存在することを示唆している。

講演の内容 1. イントロダクション 2. R×S3上のN=4 SYMの数値計算の方法 3. Chiral primary演算子の相関関数 4. 相関関数の数値的解析とその結果 5. まとめと展望

2. R×S3上のN=4 SYMの数値計算の方法

R×S3 上のplanar N=4 SYMの非摂動的正則化の方法 R×S3上のN=4 SYM この正則化の特徴 ◆ massive な理論であり、    quench が必要ない。 ラージNリダクション =S1上のラージNリダクション +非可換球面の構成 S1×S2~S3 S3方向の 次元簡約 ◆ PWMMの持つ対称性     ゲージ対称性     SU(2|4)対称性 (16 susy)   をあらわに保つ。 0+1 次元 Plane wave 行列模型 ◆ PWMMの行列サイズ   ~UVカットオフ ラージNリダクションによって、 PWMMのある極限として SYMを記述することが可能となる。 ◆ 連続極限で超共形対称性   PSU(2,2|4)が回復しているのか?

R×S3 上のplanar N=4 SYMの非摂動的正則化の方法 連続極限 (S2) (S1) この古典解周りの行列模型は、R×S3上の N=4 SYM のplanar極限を再現する。 [Ishii-Ishiki-Shimasaki-Tsuchiya] 弱結合、有限温度では、この方法をとおして、N=4 SYMの自由エネルギーを正しく導出 することができている。[Ishiki-Kim-Nishimura-Tsuchiya]

R×S3 上のN=4 SYMの数値計算の方法 ◆ Plane Wave 行列模型の数値的解析の方法 ・Non-lattice simulation BFSS行列模型の場合のN.L.S [Hanada-Nishimura-Takeuchi] [Anagnostopoulos-Hanada -Nishimura-Takeuchi] ・Lattice simulation [Catterall-Wiseman] ◆ Non-lattice simulation 完全にゲージ固定をした後に、運動量のカットオフを導入する方法。 0+1次元の理論 → ゲージ変換の自由度で、ゲージ場をほとんど消すことができる。 ゲージ場(static diagonal gauge) 他の場 は定数 1.Euclidean時間方向に、IR cutoff (逆温度)  を導入。  2. UV cutoff 3. と各フーリエモードについて(R)HMCを行う 本来0+1次元の理論特有の方法だが、large N reductionと組み合わせることで、 3+1次元のN=4 SYM のsimulationが可能となる。

2. Chiral primary演算子の相関関数

R4上のN=4 SYMにおけるChiral primary演算子 : SO(6) scalar : traceless sym tensor ◆共形不変性から期待値の形は決まる。 2点関数 : 演算子の共形次元 3点関数 4点関数以上は一般に、二つ以上の項の線形結合

Chiral primary演算子が持つ重要な性質 ◆   (2点関数の係数)はcouplingに依らない。(非繰り込み定理) (Near) extremal な多点関数に対しても、非繰り込み定理は示されている。 [Eden-Howe-Sokatchev-West] ◆            や、その多点関数版はSUGRAから計算できる。 [GKP, Witten] (例) SUGRA SYM, N→∞, λ→0 一般の3点関数に対する非繰り込み定理を予言 SUGRA ◆ 繰り込まれないという性質が数値解析から理解できるかどうか。   また、強結合での解析から、重力側の結果を再現できるのかどうか。 多点関数に対しても、extrimalな場合(                  )や near extrimalな場合(                     )には 非繰り込み定理が示されている。 [Eden-Howe-Sokatchev-West]

4. 相関関数の数値的解析とその結果

計算した演算子 (例) 2点関数の場合 R4 → R×S3への mapping (共形変換) S3上で積分 (例) の場合 (例)  の場合 Large N reduction を計算した。

数値計算を行ったbackground Free な場合には、解析的な計算から、 SYMの結果を再現できる 連続極限 N=10 N=14 2 3 2 3 4 3 この場合の計算結果を紹介

2点関数の数値計算結果 (弱結合領域 ) N=4 SYMの結果 現在のbackground周りのPWMMでのfreeな場合の結果 0.1 2点関数の数値計算結果 (弱結合領域    ) 0.1 N=4 SYMの結果 0.01 0.001 0.0001 現在のbackground周りのPWMMでのfreeな場合の結果 0.00001 0.2 0.4 0.6 0.8

2点関数の数値計算結果 (強結合領域 ) N=4 SYMの結果 現在のbackground周りのPWMMでのfreeな場合の結果 2点関数の数値計算結果 (強結合領域    ) 1 N=4 SYMの結果 0.1 0.01 0.001 現在のbackground周りのPWMMでのfreeな場合の結果 0.0001 0.5 1 1.5 2 結果はfreeな場合の計算結果とほぼ一致。PW行列模型における非繰り込み定理を示唆。

まとめ ◆ planar N=4 SYM理論のPWMMを用いた正則化 [Ishii-Ishiki-Shimasaki-Tsuchiya] +    行列模型のnon-lattice simulation [Hanada-Nishimura-Takeuchi] Planar N=4 SYM の数値的解析が可能 ◆ chiral primary演算子の2点関数を数値計算し、弱結合ではfreeな場合の結果を再現。 ◆ 強結合でも結果は、ほぼfreeな場合の結果と一致していた。      →PW行列模型の2点関数に非繰り込み定理があることを示唆。      →もしそうであれば、連続極限でSYMが非繰り込み定理を持つことが導かれる。 展望 ◆ 連続極限 ◆ 3点関数、4点関数の計算 Conformal 対称性の回復や AdS/CFT対応の検証。 ◆ ウィルソンループの計算   (本多君のポスター発表で紹介)