栄光放課後ゼミ 「激甚災害 -東日本大震災(2011)で 見た、聞いた、した事-」

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栄光放課後ゼミ 「激甚災害 -東日本大震災(2011)で 見た、聞いた、した事-」 栄光放課後ゼミ 「激甚災害 -東日本大震災(2011)で 見た、聞いた、した事-」 2018.05.23 (株)地域・技術経営総合研究所 (株)多夢 28K 中原 新太郎

中原の役割(期待されていた事) 1.情報の収集、整理、統合、伝達 2.初動 3.関係諸活動の調整 4.記録・記憶に残し次に備える 背景として長期の活動に裏付けられた 相互の信頼感 醸成 千葉、茨城、福島、宮城、岩手の5県で活動

1.東日本大震災発生当日、中原の周囲で起きたこと 発生から2時間で民-民が中心になるという暗黙の了解   ←公的支援の即時出動は、規模の大きさから無理     日赤も共同募金も資金は半年動かないと予測 特定個人を中継点・結節点とした情報の流通開始 特定個人への著しい情報の集中   +中継点・結節点が事実上の司令センターに。 トリアージの訓練無しでの状況判断と、   それに対する高レベルのストレスの発生 各組織からの参加要請←情熱のある人はいるが、             実務家は案外少ない。 阪神淡路被災者が中心となり活動開始 12

2.日本の特徴 1.まず自分に何ができるか考え、リスクを取って 行動する人間が、年代・地域を問わずに存在。 2.子供の頃から身近にICT。 3.研究者、技術者等の専門家コミュニティが 被災地の近くに存在。 4.歴史の伝承がある。 5.自然との共生が受け継がれている。 6.利他の心が重んじられている。 7.識字率が高く、地方でも大学進学率が高い。

2.1.自分に何ができるか考え、リスクを取って 行動する人間が、年代・地域を問わずに存在。 2.2.子供の頃から身近にICT。 同時多発的に各地で行動が開始される。  NPO、J-MAT(医療)、JC、日弁連(無料法律 相談) 例:NHKのニュースをネットに流したのは    広島の中学生だった。    それをNHKの公式Twitter担当者が追認。    更にはNHKの公式サイトからリンク。    発災2時間後には福岡県久留米市運営の     地域SNSが支援表明。  

2.3.研究者、技術者、弁護士等の専門家 コミュニティが被災地の近くに存在。 2.3.研究者、技術者、弁護士等の専門家     コミュニティが被災地の近くに存在。 これにより、被災地で必要な製品、サービスが  災害の段階に応じて提供される。 プロボノ (専門知識を活用したボランティア)の拡大 例:スマートフォンのアプリケーション    by Androidの会、IT×災害on Facebook    IT DART←IT×災害会議 2013年    大阪安全安心まちづくり支援ICT活用協議会   Yahooトップページ     災害復興法学:法律相談案件をDB化し、新 法  」

2.4.歴史の伝承があること。 過去の風習と現代技術の融合でイノベーション 過去の災害の記憶の伝承 例:地域SNS連携村継ぎプロジェクト    村継ぎ:江戸時代(400年前)の風習    災害の境界線としての古刹

2.5.自然との共生が受け継がれている。 自然の脅威を抑え込むのではなく、  受け止め受け流す。 例:信玄堤、防潮林

2.6.利他の心が重んじられている。 公益>利己 例:1986年大島三原山の噴火 支払の約定も無いのに私企業の東海汽船    支払の約定も無いのに私企業の東海汽船    自主的に定期便を全便欠航、避難に振向。    同社バス運転手、ピストン輸送    島民1万人全員脱出、犠牲者ゼロ。   南三陸町防災無線係の犠牲   東京都特殊救助隊、域外である福島原発での   放水、冷却作業   北海道からの自衛隊の輸送に民間フェリー 為政者は自己犠牲を称揚して半強制するのではなく     しなくて済むようにするのが務め

2.6.識字率が高く、地方でも 大学進学率が高い。 2.6.識字率が高く、地方でも     大学進学率が高い。 災害の詳細な記録が残される。 状況や意思伝達が迅速、的確。 モバイルフォーンの普及率が高く、 アプリケーションソフトの開発も活発

3.1.自然災害とICT:課題と教訓(まとめ1) 発生直後は 多(被災地)→ 一(首長)の情報集約 次いで 多(指揮命令)→ 多(被災地現場部隊) 復興時は 一(公的機関)→ 多(被災者)の情報提供 と時期により、情報伝達の形態が異なる。 また、情報伝達の形態により、最適な通信システム異なる 映像情報(特に現場からのもの)の有用性と、複数機関 /組織(警察・消防・防衛・県庁)での情報共有の重要性 しかし、緊急時に実際に使える通信システムは少ない。 通信インフラの重要性の再認識:被害の局限化に必須。 ↓ 復旧の加速にも寄与。 途切れない通信網への期待 国際貢献としてソフト(人)も含めたシステム提供

3.2.自然災害とICT:課題と教訓(まとめ2) 自治体機能喪失時の情報の流れの規定   信用できる連絡先に玉石混交の情報が殺到し   結果として機能不全に。 民間ベースでの連携の基盤   地域SNSでは半年毎に全国フォーラムで   顔をあわせているので、相互の信頼関係構築 システムの日常使い化 「普段使っていないものを緊急時だけ使えるかという  話になる。 普段使っているものの安全性を高めない と、通信途絶と孤立の 問題には対応できない」     新潟県 泉田知事(新潟中越地震の経験)

4.安全・安心を確保するICTシステムの課題[調達面] 平時には、調達数少←自治体緊縮財政 災害・事件が起きてから緊急調達急増 調達が活発なのは半年のみ(喉元過ぎれば) 担当者、首長が変わると教訓活かされず ↓ 調達の急増に対応できない(部品手配、IC増産) 調達少ない平時は生産ラインが維持できない 半年後には、仕掛品、部品在庫の山 メーカーにとっては参入リスク大 製造は企業の社会的責任への対応頼み?

5.中原の役割:情報の収集、整理、統合、伝達 1.情報の真偽の判断 2.重要度の判定 3.どの情報とどの情報を組み合わせて どこに流すか、流さないか。 4.相手が理解できるように翻訳。 5.情報を流した相手からの反応を見据え ながら、支援ができる団体に案内する。

6.中原の役割:初動 全国で500ある地域SNSと相談 リレーで物資搬送

地域SNS連携による震災救援プロジェクトの概要 ・リクエストも地域SNS、応えたのも地域SNSという民-民プロジェクト ・20の地域SNSが参加、夫々が物資を集めリレー形式の「村継ぎ」で搬送 ・第一回:山武市への古タオル発送 ・第二回:盛岡へ児童むけ学用品とランドセル(新品)を発送                  背景 ・職員/庁舎が被災→自治体機能低下/消滅 →被害/必要な物資の把握困難 ・個社/業界団体は既に赤十字/共同募金に寄付 ・個社/業界団体は特定地域のみを優遇できず→どこに救援を求めてよいか  わからない→個人やNPOへの依存比率の拡大活躍の余地                 「信頼と互酬性」という日本人が持つ空間の履歴 をSNSというITで蘇らせた世界初のプロジェクト ↑ 環境宗教学(お遍路さん研究)+ITのコラボ 村継ぎ:江戸時代、 巡礼の際に病気になった人をリレー形式で運んだ風習 温故知新と異分野研究者ネットワークが新しい価値を生み出す

地域SNS連携による震災救援プロジェクト 近畿は姫路、関東は葛飾に集積 第一回:山武向け     第二回:盛岡向け搬送   同  :物資集積      浸水対策タオル約2万本 段ボール230箱分の 新品学用品や ランドセルを搬送 盛岡 福井 松江 熊谷 宍粟 上田 桐生 栃木 三田 伊丹 宇治 佐用 上五島 尾道 姫路 春日井 葛飾 掛川 山武 南房総 収入 支出 差 第一回 75,000 58,000 17,000 第二回 364,000 126,762 237,238 計 439,000 184,762 254,238

地域SNSとは 規模は様々だが全国で500以上 会員数は100名前後から数千名まで オープンソース使用により初期費用節減 運営の主体は様々:自治体、私企業、NPO 通常から知見交換の交流有 半年毎に全国フォーラム開催 被災地への応援実績有:2009年の台風9号 上下関係よりも緩やかな連携を重視 実名で招待登録で匿名性は薄い

第一回救援活動:山武市向け 洪水の後始末に吸水性が高い 古タオルが緊急に必要と連絡。 3/21出発 3/22到着 姫路 春日井 葛飾 山武 洪水の後始末に吸水性が高い 古タオルが緊急に必要と連絡。 台風9号の被害で同じく古タオルを全国のSNSから集めた兵庫 から約2万本を陸送 総経費\58,000

第二回救援活動:盛岡市向け 「学び応援プロジェクト」 +村継ぎ 盛岡の地域SNSから流された学用品の代わりを 近畿は姫路、関東は葛飾に集積 盛岡の地域SNSから流された学用品の代わりを 届けて欲しいと連絡。全国のSNSから協力表明。 現代に「村継ぎ」を蘇らせ応援メッセージもリレーしよう。 段ボール230箱分の学用品搬送。総経費\126,762 盛岡 4/9 福井 松江 熊谷 宍粟 上田 桐生 栃木 三田 伊丹 宇治 佐用 上五島 4/7 尾道 姫路 春日井 葛飾 4/6 4/7 掛川 山武 4/8 4/8 南房総

プログラム設計方針 1.継続性を重視:一過性に終わらせない 2.負担の公平感:数字として正しいではない 3.適度な負担感:多少汗をかかないと参加意識をもてない 4、最終的な収支ではなく、資金繰りを重視 5.参加SNSの段階的な拡大:最初はコアを固め、後に拡大 6.参加メンバーに「プロ」としての力を発揮できる環境を      提供する

実際の運用 1.継続性を重視→負担の集中の是正 2.負担の公平感→集めた物資に応じた経費負担(一箱千円) ↑                    ↑   SNSによって会員数も経過年数も異なり、またコアメンバー   も異なるので、頭割りでは新興・小規模SNSに過度の負担 3.適度な負担感→上記 4、資金繰りを重視→一旦「ひょこむ」が全経費を即時支払い、            他のSNSからは経費清算後に通知、徴収            初期段階で手元資金を厚めに確保 5.参加SNSの段階的な拡大→山武をテストランと位置付け、               盛岡で実績   制度設計段階から、外部公開掲示板でオープンに議論       →後からの参加者も事前に議論が追える

課題・感想 1.安全確保:余震が続き、高速道にも10cm程度の段差 最終が深夜の長距離となった →中間集積地/前進基地設置で調整中          最終が深夜の長距離となった          →中間集積地/前進基地設置で調整中 2.ドライバーの確保:平日ということもあり、少人数で回した。            最長は約1100km:60歳の女性          →関東地区での車輌とドライバー確保 3.資金;初期費用で2回分の運送費を予め確保       緊急物資車輌認定で高速道路無料←プロの仕事 4.出発時に数少ない明るい話題として新聞報道、地域SNSの認知       子供から尊敬されるようになった父、親子での参加も。 5.次回に向けた議論が現在進行形で続いており、記憶の風化から   逃れられる見込み⇔阪神淡路は3月の地下鉄サリン事件発生で           被災地以外の人間の記憶から薄れてしまった

電子会議の様子(ひょこむ提供)

参考資料.東日本大震災復興支援活動1 図は和崎宏氏 提供

7.中原の役割:関係諸活動の調整 NPO・ボランティア相互 自治体とNPO・ボランティア 自治体内の部署間 官庁間 背景として長期の活動に裏付けられ 醸成されてきた相互の信頼感と翻訳機能

支援活動2:大槌みらい新聞 27

そして未来へ:自ら動く高校生による派生プロジェクト (支援活動3) 28

だが課題も残っている

8.自然災害とICT:課題と教訓 災害発生の度に、その教訓とICT進歩で、対応が進化 ・1995年:阪神・淡路大震災→パソコン通信+スニーカーネット      (死者:6,434名 行方不明者:3名 負傷者:43,792名)        課題・教訓:電話の輻輳、        安否確認・生活情報提供の必要性 ・2004年:新潟県中越地震→ 緊急地震速報、GIS、無線LAN        課題・教訓:速報システム、映像情報の重要性認識        (しかしシステム貧弱) ・2005年:スマトラ沖地震→特定非営利活動法人BHN          (Basic Human Needs 1992年設立)        を経由した業界団体(CIAJ)主体の支援    (通信業界OBからなるスタッフを派遣、救援チームのための無線    通信網と被災者のためのFM放送局構築+FMラジオ16千台寄贈)          課題・教訓:日本の社会システムは世界に通用、                  人というソフトの強さ

・2007年:新潟県中越沖地震→緊急地震速報、 BCP(事業継続)(←リケン工場被害)、      コミュニティFM (日経地域情報化大賞2007特別賞) (部品工場被災、死者15名 負傷者2345名 )       課題・教訓:複数機関(警察・消防・防衛             ・県庁)の情報共有の重要性 ・2009年:台風9号→ 地域SNS、SNSコミュニティ        (兵庫県の佐用町、穴粟市中心に多数の家屋 が床上浸水、倒壊)        課題・教訓:SNSによるコミュニティ力回復で被害 局限化/復旧加速

資源配置がアンバランス→間接死 熊本の震災(2016)では建物の倒壊 などによる直接死が50人 それに対して間接死は4倍の200人以上 ある業種の人が呼び寄せるのは同業者 従って一部地域に特定業種の支援が集まる それを調整する自治体もそこまで手が回らない

支援は偏在する 支援は同業者に偏りがち 医療は病院に、法曹は弁護士会に、 物資は情報発信が強いITコミュニティに etc これを各機関から上がってくる情報を分析し 再配置 看護師を避難所に 仮設トイレを車中泊の傍に等

善意の支援が被災地の生活を破壊することも 段階を追って支援内容を切り替えていく 緊急対応→日常を取り戻すことを主眼に 現地に寄り添う心と覚悟を忘れずに 失敗して傷が付くのを恐れて傍観する姿は美しくない そんな人間に限って功績だけは主張する

9.中原の役割:記録・記憶に残し次に備える (1)シンポジウム開催 2014.05.31(土) 開催シンポジウム 震災から3年が過ぎて見えてきたこと。 2015.03.15開催第3回 国連防災世界会議 公式日英合同パブリック・フォーラム 2019.5月~6月実施予定 一部の資料は300の大学図書館に寄贈 (2)神奈川県主催の研究会に委員として参加

例:2014.05.31(土) 開催シンポジウム 震災から3年が過ぎて見えてきたこと。 例:2014.05.31(土) 開催シンポジウム   震災から3年が過ぎて見えてきたこと。 被災地からの声:10:10-12:00 ・千葉:NPO山武IT推進協会SNS担当理事 小島 妃佐子 氏 ・茨城:関東経済産業局 元産業部次長 久野 美和子 氏 ひたちなか商工会議所工業振興課長 小泉 力夫 氏 ・福島:いわきテレワーク センター 代表取締役社長、 会田 和子 氏 ・宮城:東北イノベーション キャピタル 代表 取締役 熊谷 巧 氏 ・岩手:カタリバ、大槌町 高校生 釜石 望鈴 氏

防災・減災・復旧 ・総合:日本総合研究所 調査部 主席研究員 藻谷 浩介 氏 ・災害に強い通信:JAXA 前理事長、NTTドコモ 元社長 立川 敬二 ・インフラの安全確保:ジオ・サーチ 社長 冨田 洋 氏 ・女子力とデザイン:防災ガール 代表 田中 美咲 氏 ・高専・高専人の取り組み~復旧から復興へ~:HN高専 顧問 島田 一雄 氏

復興に向けて: 行政:総務省 大臣官房審議官 渡辺 克也 氏 NPO活動-走れ東北!移動図書館プロジェクト 鎌倉 幸子 氏 料理・食メディアでの事例:アイランド 社長 粟飯原 理咲 氏 ミスキャンパスによるメディア  発信力を生かした学生ボランティア  支援 活動:Sweet Smile 前代表   西川 礼華 氏 観光:JR東海 相談役、   元会長 須田 寬 氏

例: 2015.03.15開催第3回 国連防災世界 会議 2015 公式パブリック・フォーラム 例: 2015.03.15開催第3回 国連防災世界 会議 2015 公式パブリック・フォーラム 基調講演:久保田 崇 陸前高田副市長、 市川 啓一 レスキューナウ最高顧問、中原 新太郎 林 春男 京都大学防災研究所巨大災害研究センター長・教授 パネルディスカッション;粟飯原 理咲 アイランド社長 岡坂 健 東日本大震災支援全国ネットワーク事務局長 和崎 宏 ひょこむ (兵庫県SNS)創立者 牧野 友衛 ツイッター ・ジャパン メディア 事業部 執行役員 酒井 紀之 情報支援プロボノ ・プラットフォーム共同代表

須田 寬 JR東海相談役、 輿石 逸樹 JR東日本 執行役員、 冨田 洋 ジオサーチ社長、 高橋 幸弘 北海道大学創成研究機構宇宙ミッションセンター長 熊谷 巧 東北イノベーションキャピタル代表取締役 鈴木 祐司 地域創造基金みやぎ(さなぶりファンド)理事 パネルディスカッション 麻生 菜穂美 長野五輪組織委 事務次長補佐(IOC出向)、 白石北ロータリークラブ前会長 篠目 貴大 損保ジャパン日本興亜 リスクマネジメント コンサルティング部長

牧 慎太郎 熊本市副市長 地引 泰人 東北大学グローバル安全学プログラム助教 近藤 道雄 福島再生可能エネルギー研究所 所長代理    兼上席イノベーションコーディネーター 今村 文彦 東北大学   災害科学国際研究所長 林 春男 京都大学防災研究所   巨大災害研究センター長・教授

ご静聴ありがとうございました。 自分の立場だけから考えるのではなく、現場に立ち、 肉声を聴き、寄り添う心で多様な視点で考えましょう。 連絡先 (株)地域・技術経営総合研究所 中原 新太郎 連絡・お問合せ 住所 :〒223-0064 横浜市港北区下田町2-6-11 TEL :070-5540-5145 HP :http://www. s-nakahara.com Email:rtmri@s-nakahara.com