エステバの「開発」 「低開発」の発明 P18 I. 概念としての「開発」と「低開発」

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井手 鑑人 岡村 佳祐 中嶋 仁 橋本 佳奈.  生活水準の向上には、物価上昇しないことが関係  衣料費の場合 ファストファッションブランドが多数誕生  その背景には 安価 安価 良質 安い労働力を提供する中国などの発展途上国が役割担う安い労働力を提供する中国などの発展途上国が役割担う.
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国民所得 エンゲル係数:生活費に占める食事の割 合 所得の増加と逆に動く指数 食費:所得が増加してもそれほど増えな い なぜなら 娯楽費:所得が増加すると増加する このエンゲル係数を国際比較すれば、各国の生活水準を比べることができ る しかし ある国の衣服費だけ上昇したとする 生活費は上昇する、が、食費は上昇しないエンゲル係数は低下する.
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エステバの「開発」 「低開発」の発明 P18 概念としての「開発」と「低開発」
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エステバの「開発」 「低開発」の発明 P18 I. 概念としての「開発」と「低開発」 「低開発」の発明 P18 I. 概念としての「開発」と「低開発」 第2次世界大戦直後のトルーマン米大統領の提案 (1949年演説):“「我々」の「キャンペーン」は、他国の改善や経済成長”    筆者:「この日、この(低開発の)レッテルを張られた     人びとは20億人にのぼる」 p19 その背景:ヨーロッパ向け援助計画「マーシャル・プラン」。戦後日本もマーシャル・プランの影響を受けた。安保条約の案によって米国の食料(麦、パン)を受けさせられた

1950年米国の経済状態 トルーマン大統領やローストーの時代 「先進国」と「低開発」の比較 1950年米国の経済状態  トルーマン大統領やローストーの時代 失業率 約 6.0% 平均家族所得=$3,300ドル (現在 $20,000=現在¥2,400,000) 低所得家族の所得= $1,800 (現在 $12,000 = 現在¥1,450,000) 1950年代後半, 米国民総合貧困率 = 22%   貧困線の定義:所得は住宅、教育費、衛生水準、必要な治療、食糧への支出より低い   開発過程が始まったからの50年間の間に、逆に「五分の一、二の人びとが窮乏化する」(p30を参照する)

エステバの「開発」:開発の概念のインフレーション 経済成長の計画を支えた理論~その「欠陥」は? 『経済成長の諸段階』(Walt Whitman Rostow著1960年) によると、開発の「段階」の測定(変数)は、国の   全社会を特徴づけることが可能である。   Rostowによる5段階: ①伝統社会(自己生産~自己消費) ②過渡期(過剰生産、通商) ③工業化の初期 ④製造、生産の多様性・技術に基づいているイノベーション ⑤大量消費

エステバの「開発」:開発の概念のインフレーション 経済成長の計画を支えた理論~その「欠陥」は? 例: Rostowの第4、第5段階に入った「豊かな国」と 第1,2段階にある「貧しい国」の中には、 豊かな国の場合貧困層もあるし、 貧しい国に富んだ人・層もいる 問題点:  「全社会」(=社会全体)が、同時に同じ段階に入ることもしないし、同じ変数に従うこともないから、様々な  社会層や部門をこうした標準化された変数による測定  ができない。

開発レベルの公平的な測定範疇は何だろうか? エステバの「開発」 開発レベルの公平的な測定範疇は何だろうか? II.「低開発」と「先進」の対比はどのように測定されて来たか? 経済的な測定 貨幣システムの有無、普及 貨幣経済(資本経済)の循環、範囲 国家間の為替相場(レート) 教育施設や内容 近代教育施設での就学率・高学年の就学率 義務教育の中の読み書き、算数、英語の有無 工業化 輸出志向経済むけの生産過程、生産物・生産率 工業によるGNP (国民総生産)への貢献

III. 「低開発」の定義や測定によるどのような開発過程を 進めて良いのか? エステバの「開発」 III. 「低開発」の定義や測定によるどのような開発過程を 進めて良いのか? 問題点: 低開発地域の定義づけをする側は先進国である。 先進国の者は低開発というように定義付けられた地域に  派遣されたりすると、何ができたのか?

(「開発」の)概念のインフレーション p26~ 第1部 エステバの「開発」 「低開発」の定義や測定によるどのような開発過程を進めて良いのか (「開発」の)概念のインフレーション p26~ 第1部 ・「経済成長」の目標の誕生(Lewis経済学者の理論に基づいた) 「経済成長」としての開発=ただの「有形財の一人あたり生産」 という概念に還元されてしまう。有形資産、私有、私益を重視する。 その問題点:経済の現状や成長率を証明する方法は、大企業や  政府組織の取引の国レベルでの記録である。 そうした経済成長や国の経済データは、国の様々な部門、様々な個人、地域別の現状を反映しない。 経済成長のみを中心にする開発は少数(企業に関わる人等)だけが利益とる可能性があり、格差社会が生じる

エステバの「開発」 概念のインフレーション p31の上~ 概念のインフレーション p31の上~ 1980年代:貧国の経済成長をすすめるはずのStructural Adjustments 経済学による発展途上国の構造改革(経済構造調整改革) =“Structural Adjustments”。目標は、国政府の歳出を減らす、銀行のローンポリシーを厳しくさせる、金融的な浪費をとめるはず。 問題点:インフォーマルセクター(非公式雇用部門・契約、保証のない雇用関係)に従事する人への悪影響。    農民、女性、少年、老人、少数民族への負担が増える その理由: 構造改革は、国の財政配分を変える。    構造改革を指導する先進国や国際機関に従うために、途上国政府が支えるはずの社会福祉、公立教育、公立病院、環境保全の予算を減らす対策をとる

国際連合による社会や人間を含める発展開発の歴史 エステバの「開発」 国際連合による社会や人間を含める発展開発の歴史 第一次国連開発の十年 1960年~: 社会的開発を経済的開発に統合する構想 その問題点: 「社会開発」の定義は曖昧である 急速な成長に伴う不平等が発生する (p28上) 所得格差が広くなる (教育、就労などへの)機会格差が広くなる

国際連合による社会や人間を含める発展開発の歴史 エステバの「開発」  国際連合による社会や人間を含める発展開発の歴史 第2部 p28~  第二次国連開発の十年(1970年から): 「国際開発戦略」(IDS)における「(経済開発+社会開発を統合集中する地球大の戦略」 p29 その問題点: 以前からの「社会開発」の定義の曖昧さ 経済開発はある「社会」の部門に悪影響及ぼす 「地球」という規模でやる計画であるが、 普遍的な処方箋を出せない 国も地域も異なるし、歴史背景や物質的な状態も異なる。

エステバの「開発」 「開発」の歴史 第2部 p28~ つづき 2.1975年からの「もう一つの開発」、 エステバの「開発」   「開発」の歴史 第2部 p28~  つづき 2.1975年からの「もう一つの開発」、   開発は「総合的なプロセス」 となるべきという概念。      他方、ILO(国際労働機関)における「基本的人間ニーズ」(Basic Human Needs)アプローチを加える。   ベーシック・ヒューマン・ニーズは、「衣食住プラス」となる: 衣料 (服装) 食料 住居(家屋) 医療へのアクセス 初等教育へのアクセス  

エステバの「開発」 1990年~ ・「サステーナブル・デヴェロップメント」が目ざすこと: ・「人間開発」、「人間中心開発」 ・「参加型開発」、「内発的開発」 外部からの事業でなく、内発的な開発や意思決定 「基本的」人間ニーズ(Basic Human Needs)を充足する 地域共同体・住民による環境保全や資源管理を行う 文化遺産を保護する これからその問題点は。。。?

「開発」の歴史とこれへの感想・批判 p31上~ エステバの「開発」 「開発」の歴史とこれへの感想・批判 p31上~  70年代で始まったのUNESCO(国連教育科学文化機関) による「内発的な開発」:  地域の意思決定を促進するはずの概念であった。 問題点は、開発の概念に根付いた問題はその皮肉である 疑問点・批判点:  「その衝動が真に内発的なものなら、つまり、そのイニシアチブが本当に多様な文化や価値体系に由来するものならば、そこから必然的に開発・・・への衝動が生じてくるとは・・・考えられない」~という皮肉である。