本教材の利用について 本教材は、平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究「デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究」(請負先:国立大学法人大阪大学 知的財産センター)に基づき作成したものです。 本教材の著作権は、第三者に権利があることを表示している内容を除き、特許庁に帰属しています。また、本教材は、第三者に権利があることを表示している内容を除き、クリエイティブ・コモンズ.

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Presentation transcript:

本教材の利用について 本教材は、平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究「デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究」(請負先:国立大学法人大阪大学 知的財産センター)に基づき作成したものです。 本教材の著作権は、第三者に権利があることを表示している内容を除き、特許庁に帰属しています。また、本教材は、第三者に権利があることを表示している内容を除き、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。 本教材は、できる限り正確な情報の提供を期して作成したものですが、不正確な情報や古い情報を含んでいる可能性があります。本教材を利用したことにより損害・損失等を被る事態が生じたとしても、特許庁、国立大学法人大阪大学 知的財産センター及び執筆者は一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。                                   [本教材の利用に関するお問い合わせ先]                                    特許庁 審査第一部 意匠課 企画調査班                                    TEL:03-3581-1101(内線2907) デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

「デザイナーが身につけておくべき知財の基本」 パート13 クライアントと契約する 「デザイナーが身につけておくべき知財の基本」 デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

クライアントと契約する 目次 13-01 契約において留意すべきこと 13-02 コンペにおいて留意すべきこと 13-03 海外のクライアントとの契約において 留意すべきこと 13-04 下請法とは デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

CASE コンペに応募し、見事受賞したデザイナーが、受賞後に応募要項を確認すると、「応募作品の所有権および著作権は当社に帰属します。」との記載があることに気がついた。 あるコンペへの応募作品が、賞を受賞した。この作品に目をつけた海外のクライアントから商品化に関する仕事の話が来たが、英文の契約書が送付されてきて慌てることになった。 〔狙い〕 ・CASEを通して、デザイナーとして活動するに当たってどういう問題に遭遇するかを理解する。 〔説明〕 ・CASEでは、コンペと海外のクライアントの問題を取り扱っているが、これに限らず、実際の契約書等を素材にできる場合は活用することが望まれる。 デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-01 契約において留意すべきこと デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-01 契約において留意すべきこと 一例として、下図のプロセスで商品開発がなされたとする。 13-01 契約において留意すべきこと 一例として、下図のプロセスで商品開発がなされたとする。 自社ですべての工程を行う場合もあるが、一定のアイデアやコンセプトだけを決定して、実際のデザイン・設計は外注することもある。外部のデザイナーは、このような場面で企業と契約を取り交わすことになる。 また、デザイナーが外注する場面でも、外注先と契約を取り交わすことになる。 企画 デザイン 設計・試作 商品化 製造 販促・販売 〔狙い〕 ・契約において留意すべき点を理解する。 〔説明〕 ・前提として、学生も日々様々な契約をして生活していることを想起させた上で、デザイナーとして活動する上でも、契約を取り交わす機会は頻繁に起こり得ることを説明する。 ・専門的な問題は、もちろん専門家の助力を得るべきであるが、いざ契約書を目の前にした際に慌てないために、最低限の契約書のポイントを教えるものである。 デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-01 契約において留意すべきこと 契約とは、法律によって破ることができない(破ると制裁を受ける)ようになっている約束のこと。 13-01 契約において留意すべきこと 契約とは、法律によって破ることができない(破ると制裁を受ける)ようになっている約束のこと。 いつ、誰と、どこで、どのような内容、どのような方式で契約するかは、一部法律による制限はあるものの、原則自由である。 契約は、当事者間で、「あなたと○○したい」という申込みと、「わかりました。一緒に○○しましょう」という承諾が一致した場合に成立し、一部例外を除き書面は必須ではない。 しかし、トラブルを未然に防ぐために、契約書を交わすことが望ましい。契約書を作成する余裕がない場合であっても、当事者の合意をメール等に残しておくことがトラブル防止に役立つ。 〔狙い〕 ・契約において留意すべき点を理解する。 〔説明〕 ・契約の内容は基本的には自由であり、契約書を作成する義務もないことが原則であることを示す。 ・しかし、契約書を作成する目的は、将来、契約を巡って当事者間で争いが生じた場合に備えて、あらかじめ証拠を担保しておくことにある。さらに進めて、契約書は、そもそも紛争が生じないよう、各当事者の権利、負担する義務を明確化し、相互に共通の理解の上で信頼関係に基づいて契約が円滑に進行するように準備するものである。 ・そのため、契約書の中の言葉(文言)が、明確なものとなるようにする必要がある。 ・仮に契約書の作成が難しくとも、メール等の形で当事者間の合意を残すことで、後のトラブルを防ぐのに役立つ。 デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-01 契約において留意すべきこと 未然にトラブルを防ぐ目的で、契約書では以下の①~⑤などについて特に注意して明確化する。 ① 委託する業務の内容(業務範囲、成果物など) ② 対価・報酬(金額、支払方法、支払日など) ③ 経費(試作費、出張費等の取扱いなど) ④ 知的財産権の取扱い ⑤ 保証、免責(途中で中止した場合の取扱いなど) ただし、現実には契約書が交わされないことも多い点に注意。 〔狙い〕 ・契約において留意すべき点を理解する。 〔説明〕 ・例えばデザイン契約で想定される、契約書に書くべき事項について、確認する。 ・しかし、実際上、契約書を交わさないままデザイン創作を発注されることもある等、現実の運用についても説明する必要がある。その上で、どういう場合に契約書を求めるべきか、学生と検討することも考えられる。 デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-01 契約において留意すべきこと 著作権に関して 著作権譲渡の場合 著作権留保+利用許諾の場合 13-01 契約において留意すべきこと 著作権に関して 前提として、著作権は特別な合意がない限り、著作者であるデザイナー(映像に関しては、プロデューサーや監督など「全体的形成に創作的に寄与した者」)に帰属。 契約の内容が、①著作権譲渡なのか、②著作権留保+利用許諾なのかに注意する。 著作権譲渡の場合 著作権譲渡がなされると、たとえ著作者であってもその著作物を自由に使用できなくなるため、譲渡するかどうか慎重に検討する必要がある。 譲渡対象の範囲にも注意する。 著作権法第27条(翻案・翻訳権)及び第28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)に規定する権利は、書面等において特掲されていない限り、譲渡者に留保されたものと推定される。 〔狙い〕 ・契約において留意すべき事項の例として、著作権をめぐる規定を理解する。 〔説明〕 ・ここでの分類がすべてではないが、一つのメルクマールとして、契約を締結することで、著作権を譲渡するのか、利用を許諾するのか等については、必ず確認しておく必要がある。 著作権留保+利用許諾の場合 どの範囲で利用許諾するのか(ウェブなのか、ポスターなのか、販促物全般なのか等)を明確に合意しておくことが大切である。 デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-01 契約において留意すべきこと 著作者人格権に関して 著作者人格権の「不行使特約」の形で契約書に記載されている場合がほとんど。 13-01 契約において留意すべきこと 著作者人格権に関して 著作者人格権の「不行使特約」の形で契約書に記載されている場合がほとんど。 著作者人格権の不行使特約を受け入れなければならない場合でも、実績開示や改変の際に事前に承諾を得ること等を契約で相手方に義務づけることは可能である。 公表権については、どの範囲のデザインが公表されるか、いつ公表されるかといった事項に注意する(ただし、著作権譲渡に伴う公表の同意が推定される)。 氏名表示権については、デザイナーの氏名を表示してもらえるかどうかが大きな問題となる。 同一性保持権については、デザインの修正、変更、加工等の可否や範囲が規定されることがある。 〔狙い〕 ・契約において留意すべき事項の例として、著作者人格権をめぐる規定を理解する。 〔説明〕 ・著作者人格権についても、契約書に規定が含まれていることがある。著作者人格権が譲渡できないものであることを再度確認したうえで、「同意する」といった表現のほかに、「著作者人格権を行使しない」といった表現で規定されていることもあり、注意する必要性を指摘する。 デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-02 コンペにおいて留意すべきこと デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-02 コンペにおいて留意すべきこと 著作権に関する規定 著作権譲渡の場合 著作権留保+利用許諾の場合 13-02 コンペにおいて留意すべきこと 著作権に関する規定 著作権に関する規定には、以下のようなバリエーションがある。 著作権譲渡の場合 対象 受賞作品 or 全作品 対価 賞金等 or なし 著作権留保+利用許諾の場合 目的・範囲 展示 or 印刷物 or 商品化 等 〔狙い〕 ・コンペの応募要領における著作権法に関する規定を理解する。 〔説明〕 ・コンペの応募要項も契約の一種となり得ることを説明する。 ・その上で、コンペの応募要項では、著作権法に関する規定があるのが一般的であるが、その内容に統一的な決まりがなく、中には応募者に著しく不利な内容になっている場合もあるため、確認する必要があることを説明する。 ・実際の応募要項を素材とすることが最も有効である。 ・例えば、2020年東京オリンピックのエンブレムに関する応募要項については、以下に掲載されている。 https://tokyo2020.jp/jp/games/emblem/data/guidelines-JP.pdf 対価 賞金等 or ロイヤリティ or なし 等 利用制限 独占 or 非独占 期間 一定期間 or 制限なし デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-02 コンペにおいて留意すべきこと 著作者人格権に関する規定 その他の規定 13-02 コンペにおいて留意すべきこと 著作者人格権に関する規定 応募要領に、著作者人格権の「不行使特約」の形で規定されている場合が多い。 公表権:デザインの公表範囲・時期等に関する規定 氏名表示権:デザイナーの氏名表示に関する規定 同一性保持権:デザインの修正、変更、加工等の使用に関する規定。 その他の規定 その他の知的財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権等)についての取扱いに関する規定 応募作品の無断使用・出願の禁止に関する規定 秘密保持義務(受賞まで作品を公開しない等)に関する規定 〔狙い〕 ・コンペの応募要領における著作権法に関する規定を理解する。 〔説明〕 ・著作者人格権についても、コンペの応募要項に規定が含まれていることがある。著作者人格権は不行使という形で規定されることもある点に注意する必要がある。 デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-03 海外のクライアントとの契約において 留意すべきこと デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-03 海外のクライアントとの契約において留意すべきこと 13-03 海外のクライアントとの契約において留意すべきこと 海外のクライアントとの契約においては、宗教、風俗、習慣、言語、文化、社会、法律制度等の違いから、国内のクライアントとの契約以上に誤解や紛争が生じやすい。 契約書は、契約の成立や内容の証拠として重要な証拠となる。国内の場合と同様の視点に加えて、 ① 支払方法 ② 準拠法(どの国の法律が適用されるか) ③ 管轄(どの国の裁判所に訴訟を起こすことができるか) といった点にも注意を要する。 〔狙い〕 ・海外のクライアントとの契約において留意すべき点を理解する。 〔説明〕 ・海外のクライアントとの契約では、言語や商慣習等の違いがあるために、国内のクライアントとの契約よりも、より注意する必要がある。また特有の規定等もあることから、その基礎的な視点について説明する。 デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-03 海外のクライアントとの契約において留意すべきこと 13-03 海外のクライアントとの契約において留意すべきこと 支払方法についての確認 ① その金額 ② 支払期日 ③ 通貨等(例えば、円建て、ドル建て) ④ 送金・為替手数料をどちらが負担するか が明示されているか。 例えば、特に支払いに関しては、可能な限り対価を受け取るタイミングを前倒しするなどの対応も大事となる。また、ロイヤリティの支払いが、売上に応じたものなのか、利益に応じたものなのかといった点や、その数値を確認する方法等、支払方法をめぐる点については、明確性を確保したい。 〔狙い〕 ・海外のクライアントとの契約において留意すべき点を理解する。 〔説明〕 ・海外のクライアントとの契約では、言語や商慣習等の違いがあるために、国内のクライアントとの契約よりも、より注意する必要がある。 ・デザイナーの収入に直結する支払方法については、国内のクライアントとの関係でも問題となる点ではあるが、更に注意を要する。 デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-03 海外のクライアントとの契約において留意すべきこと 13-03 海外のクライアントとの契約において留意すべきこと 準拠法や管轄について 例えば、フランスの企業と契約を結ぶ場合、その契約解釈をめぐって争いになったとき、日本の法律とフランスの法律のどちらに照らして判断するかを定めるのが「準拠法」に関する条項であり、これが規定される場合がある。 また、どこの国の裁判所で争うかを決める「管轄」についても規定される場合がある。 【例文】日本法を準拠法とする場合の条項 GOVERNING LAW This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan. 〔狙い〕 ・海外のクライアントとの契約において留意すべき点を理解する。 〔説明〕 ・海外のクライアントとの契約では、従う法律や訴訟を起こす裁判所についても、契約の内容とされることが多い。この点について外国法・外国裁判所とする規定が盛り込まれていると、いざとなったときに対応が困難となることが予想される。 デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-04 下請法とは デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)

13-04 下請法とは 下請法によるデザイン制作契約の規制 13-04 下請法とは 下請法とは、例えばデザインの提供を内容とする契約について、デザイナーに不当に不利な契約とならないよう、規制するルールである。 したがって、デザイナーは企業との契約をする場合、下請法に違反する契約でないかという点に注意する必要がある。 下請法によるデザイン制作契約の規制 例えば、企業からデザイナー個人で引き受けたデザイン制作契約において、デザイナーが不当に不利な立場に置かれないように、様々な規制を及ぼしているのが、下請法(デザインの委託契約は、下請法の規制の及ぶ「情報成果物作成委託」に該当し得る)。 委託者である親事業者には、例えば、重要事項の書面交付義務や、納品後60日以内の代金支払期日を定める義務が課され、(デザイナーに責任のない場合)納品デザインの受領拒否や下請代金の減額(値引き)等が禁止される。 〔狙い〕 ・デザイナーを保護する契約の特別ルールとして、下請法を理解する。 〔説明〕 ・下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、下請事業者(契約の相手方=親事業者との資本金の違い等で定義される。下請法2条8項。)の利益を保護し、取引の適正化するための制度である。デザイナーのデザイン委託契約等については、下請法上、「情報成果物作成委託」の類型に含まれ得る(下請法2条3項)。 ・その場合、親事業者(相手方委託者)は、契約の重要事項に関して書面交付をする義務や、代金の支払期日を定める義務がある(親事業者の義務)。 ・また、親事業者は、下請事業者の責任のない場合に受領拒否をしたり、代金支払を減額したりすることは許されない(親事業者の禁止行為)。 ・詳細は、公正取引委員会のウェブサイトを参照。 http://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/gaiyo.html http://www.jftc.go.jp/houdou/panfu.files/contentspamph.pdf (条文:下請法2条~7条) デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 (平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)