柔軟構造大気突入機の研究開発 ISAS/JAXA 大気球観測センター ISAS/JAXA 宇宙輸送工学研究系

Slides:



Advertisements
Similar presentations
2007/01/27 - 卒業論文合同発表会 - ♪ 早稲田大学理工学部 電気・情報生命工学科4年 神保直史 熱音響管の解析とシミュレーション.
Advertisements

第2章 機械の強度と材料 機械の必要条件 ★壊れない ★安全である ★正しく機能する そのためには・・・ ★適切な材料を使う
MACFT 2005 Meeting カラー!? MACFT project team.
2006年2月22日 宇宙重力波干渉計検討会 - 小型衛星とDECIGO - 川村静児 国立天文台
『どこでも運用システム』の開発状況 (第二報) iPad版衛星状態監視システム (プロトタイプ) どこでも運用システムと他システムとの接続
筑波大学衛星と教育との関わり 筑波大学 保田敦司 「小型衛星の科学教育利用を考える会」 2015/08/22.
柔構造大気突入システムの研究 1C12 ○山田和彦、秋田大輔、安部隆士(JAXA) 鈴木宏二郎、今村 宰(東京大学) 林光一(青山学院大学)
展開型柔軟構造飛翔体による 火星大気圏内飛行型探査機の概念検討
第10章 機械設計の高度化 ★本講義の内容だけでは機械設計はできない? ★教科書や参考書の設計手順で設計ができるのか?
建物周辺気流の予測手法としての 数値シミュレーション・風洞実験の検証
流体のラグランジアンカオスとカオス混合 1.ラグランジアンカオス 定常流や時間周期流のような層流の下での流体の微小部分のカオス的運動
宇宙での重力波観測 (1) 宇宙での重力波観測 宇宙で観測するメリット : 他にはないサイエンスがある
トランジット法による低温度星まわりの地球型惑星探索と大気調査
大気レーダーのアダプティブクラッタ 抑圧法の開発
塑性加工の有限要素シミュレーション 豊橋技術科学大学  森 謙一郎 有限要素法の基礎 鍛造,押出し,深絞り加工への応用.
コンクリートの強度 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
研究背景 研究目的 手法 研究計画 分散型プラズマアクチュエータと物体形状の統合最適設計による 仮想空力形状の実現 jh NAH
スペースシャトル~恐るべき生還率~ 松本 紘熙.
研究背景・目的 研究組織 実施内容 適用手法 提案研究により期待されること
大気球を利用した展開型柔構造エアロシェルの実証試験
経歴 金崎 雅博(かなざきまさひろ) 2004年3月東北大学大学院 情報科学研究科 システム情報科学専攻 博士後期課程 修了
高速CFDコードを用いた次世代空力応用研究プラットフォーム構築に 向けた実証研究
ひび割れ面の摩擦接触を考慮した損傷モデル
MACFT3 Review Meeting CONTENTS MACFTの紹介   研究背景、歴史、三陸実験 MACFTⅢの進捗状況報告.
(GAmma-ray burst Polarimeter : GAP)
展開型柔構造体を用いた 回収システム実証試験の提案
火星探査への応用を想定した 密閉型パラフォイルの風洞試験結果について
塑性加工 第1回 今日のテーマ 塑性変形とは(塑性変形した後どうなる?) (応力(圧力)とひずみ(伸び)、弾性変形) 金属組織と変形
柔軟エアロシェルと柔軟翼航空機を利用した
~2011年度 成果報告~ 柔軟翼航空機(PPG機)を利用した 火星表面探査システムに関する研究開発 火星航空機WG PPG機検討チーム
展開型柔軟飛翔体による火星EDLシステム
別紙1 高速走行軌道実験設備とは 本学の航空宇宙機システム研究センター(APReC)では、地上に敷設した軌道上においた台車をロケットで加速走行させる、高速走行軌道実験設備を運用しています。 地上において飛行環境を模擬した高速・高加速度環境を作りだし、エンジンの推進特性や機体の空力特性を試験することができ、学内外の様々な試験に利用しています。
大気球を利用した展開型柔構造エアロシェルの実証試験
H30.2.5破壊実験フィンクトラスの改良点 初代フィンクトラス 改良型フィンクトラス.
設計工学 内容 目的 ★もの作りのための設計 ★実際の現場で役立つ設計 ★機械設計や機械作りの楽しさを知る。 ★工学的な理屈を考える。
MEMSセンサを用いたINS/GPS複合航法システム
都市表面における 熱輸送速度の実験的研究 スケールモデルによる野外実験と風洞実験の比較 大久保 典明
小型衛星パスファインダーによる総合的試験
宇宙航空開発研究機構 宇宙科学研究所 安部研究室 前川 啓
連続体とは 連続体(continuum) 密度*が連続関数として定義できる場合
すばる望遠鏡による10GeV領域ガンマ線天体の観測
背景 課題 目的 手法 作業 期待 成果 有限体積法による汎用CFDにおける 流体構造連成解析ソルバーの計算効率の検証
柔軟構造大気突入システム           ミーティング 2007/08/13.
東京大学大学院工学系研究科・工学部第12回記者会見
GOAL 1.準軌道(観測)ロケットの回収システム 2.軌道からの輸送カプセル 3.惑星探査衛星 4.再使用宇宙輸送システム
第10章 機械設計の高度化 ★本講義の内容だけでは機械設計はできない? ★教科書や参考書の設計手順で設計ができるのか?
研究背景・目的 研究組織 実施内容 適用手法 提案研究により期待されること
第17回DECIGOワークショップ 2018.11.1 川村静児(名古屋大学)
京大岡山 3.8m 新技術望遠鏡 東アジア最大の望遠鏡計画 この望遠鏡で用いられる3つの新技術
京大岡山 3.8m 新技術望遠鏡 東アジア最大の望遠鏡計画 この望遠鏡で用いられる3つの新技術
JASMINEワークショップ March 6-7,2003 松原英雄(宇宙研)
惑星探査にむけた パラフォイルEDLシステムに関する研究 火星パラフォイル リスタート会合 風洞内部でのPPG機の自由飛行試験の試み
第4班 王 健強 倉本吉和 須賀孝太郎 和田英志 服部修策 池内 玄
大学院ガイダンス(柏キャンパス) 2011年6月11日 岸本 康宏
対象:せん断補強筋があるRCはり(約75万要素)
CO2大幅削減のためのCNF導入拡大戦略の立案 (3)バイオマスプラスチックによるCO2削減効果の検証
オオワシ着陸時のドラッグシュート開傘による減速イメージ
設計工学 内容 目的 ★もの作りのための設計 ★実際の現場で役立つ設計 ★機械設計や機械作りの楽しさを知る。 ★工学的な理屈を考える。
半正定値計画問題(SDP)の 工学的応用について
1.5層スペースフレームの 接合方法に関する研究
高靭性コンクリートを用いた新しい耐震補強技術
低軌道周回衛星における インターネット構築に関する研究
DECIGO Workshop DECIGO:衛星設計/検討の進め方 JAXA宇宙科学研究本部 船木一幸.
国際宇宙ステーション搭載 全天X線監視装置搭載用CCDカメラ開発の現状
高地におけるγ線エアシャワー地上観測のシミュレーション
宇宙重力波干渉計検討会 -小型衛星とDECIGO- (2006年02月24日 国立天文台, 東京)
風況を効果的に利用して長時間飛行する 無動力飛行機の開発
(GAmma-ray burst Polarimeter : GAP)
MACFT3 Review Meeting CONTENTS 進捗状況報告.
大規模粒子法による大型クルーズ船の浸水解析
Presentation transcript:

柔軟構造大気突入機の研究開発 ISAS/JAXA 大気球観測センター ISAS/JAXA 宇宙輸送工学研究系 東京大学大学院新領域創成研究科 他

研究背景 現在は空力加熱に耐えながら火の玉になって帰還 宇宙時代の到来のためには、宇宙輸送システムの革新が必要 特に帰還システムに関しては、 安価に 安全に どんなものでも 帰還できるようになれば、宇宙開発が一気に進む そのためには、これまでにない新しい大気突入システムが必要なのでは? 帰還システムのもっとも大きな問題は大気突入時の空力加熱 表面温度は2000℃ 現在は空力加熱に耐えながら火の玉になって帰還 気流温度は5000℃ 発想を転換して、空力加熱を避けれないか? 大気突入のイメージ

低弾道係数*大気突入機 *弾道係数=質量÷抵抗面積 機体を軽く、大きくすることで空力加熱を避けることができる 計算条件  *弾道係数=質量÷抵抗面積 機体を軽く、大きくすることで空力加熱を避けることができる 高度400kmの円軌道からの    大気突入時の空力加熱の推算 計算条件 機体重量 1000kg 抵抗係数 1.3 淀み点曲率半径    =エアロシェル半径 重量が同じなら直径を 大きくすれば、 空力加熱は小さくなる 直径 ペイロード 1ton

これまでの実際のミッションに利用された例はない* 柔軟構造大気突入機 軽く、大きい機体を実現するために柔軟構造をつかう。 さまざまな形状が提案されている フレア型 気球型 傘型 ドーナツ型 1.打ち上げ時はエアロシェルをコンパクト収納 2.軌道上で大型のエアロシェルを展開(不具合があればやり直しも可) 3.低弾道係数で大気突入 4.パラシュートなしで軟着陸(←もうひとつの利点) これまでの実際のミッションに利用された例はない* (*試験フライトは数例ある)

柔軟構造大気突入機の実現への課題 1.高速流中で柔軟構造の挙動や飛翔体としての性能が不明 → 我々がこれまで行ってきた研究の中心テーマ 1.高速流中で柔軟構造の挙動や飛翔体としての性能が不明  → 我々がこれまで行ってきた研究の中心テーマ 風洞試験や数値解析などの基礎研究からフライト試験まで 2.実際のミッションへの応用検討、既存の方法との比較 →各国でさまざまなミッションにおける検討がおこなわれている。 地球帰還システムだけでなく、惑星突入ミッションでも利点がある。 3.膜面材料への要求が厳しい → クレーストがその解決になるかも、ご協力を願いたい 膜材料の性能があがれば、設計の自由度が増える。

これまでの研究 1 高速流体中の柔軟構造の挙動の解明と、フレア型柔軟エアロシェルを有する機体の飛翔体としての性能の把握が中心テーマ 基礎研究 これまでの研究 1 高速流体中の柔軟構造の挙動の解明と、フレア型柔軟エアロシェルを有する機体の飛翔体としての性能の把握が中心テーマ 基礎研究 単純形状での実験 数値解析法の開発 応用研究 各種風洞試験 数値解析例 実機形状での数値解析計算や風洞試験 大気球を利用したフライト試験 ZYLON布で製作した直径1.5m展開剛体枠フレア型エアロシェル 基本コンセプトの実証と地上試験の検証に成功 (ただし、この試験では空力加熱環境は模擬できていない) 次は、実環境(特に空力加熱環境)でのフライト試験をめざす。 エアロシェルのさらなる大型化→インフレータブル構造の採用 膜材料の高速気流中での性能実証→極超音速風洞の完成

これまでの研究 2 次のフライト試験への準備をすすめている インフレータブル構造の 大型エアロシェルの試作 (材料はZYLON布を用いた) これまでの研究 2 次のフライト試験への準備をすすめている インフレータブル構造の 大型エアロシェルの試作 (材料はZYLON布を用いた) ドーナツ型のインフレータブルチューブで 構造をささえる。(内部に小型ガス注入機構が仕込まれている) 強度試験の様子 2.8m 東京大学柏キャンパスに 極超音速風洞が完成 柔軟構造大気突入機の 試験に利用予定 ZYLON布エアロシェル模型の試験の様子 膜材料を選定し、評価しなければならない段階にある。

想定されるミッション例 フレア型大気突入実験機 観測ロケットなどで高高度で期待を打ち上げ、上空でエアロシェルを展開し 低弾道係数で大気突入を行う 機体規模:重量30kg,サイズ2.5m 柔軟構造大気突入衛星 軌道上で気球状の膜面を展開し、空気抵抗で徐々に降下する間に超高層大気の大気観測を行う。 機体規模:重量70kg,サイズ7.0m

膜材料への要求 柔軟、耐熱、気密、強度が要求される。 *耐熱性:少なくとも650℃以上、高いほど機体設計の自由度がふえる *柔軟性:折りたためること。折りたたんでも痛まないこと *気密性:ミッションによるが少なくとも数日間を内部の気体を維持すること (衛星ミッションの場合は寿命に直接関連) *強度:突入時の空気力やインフレータブル部の圧力差にたえる (ポリエチレン(30MPa)では弱く、ZYLON(5.8GPa)では十分) *加工の容易さ:袋状に加工する必要がある。 *耐放射線:大気突入まではコーティングしておくなどの防御法がある ZYLONなどの高強度、耐熱性繊維材料と クレーストの組み合わせがこの要求をみたせるのでは?

クレーストに関する質問 耐熱性(耐熱温度) 柔軟性 気密性 機械強度(破断荷重、弾性係数、ポアソン比) 加工性(溶着の可否) 耐放射線 重量(密度) 他の材料とのコーティングの可能性 他の材料とのラミネートの可能性