パルサー星雲を伴うパルサーの 回転進化について 田中 周太 大阪大学 宇宙進化グループ D2 共同研究者 高原 文郎 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
パルサー星雲(PWN) パルサー、磁気圏、パルサー風の物理を パルサー星雲から抜き出す!! 中心パルサー & ジェット+トーラス構造 =>回転駆動パルサーのエネルギー供給!! 超新星残骸(SNR)の殻 &膨張速度~1000km/s =>SNRにより閉じ込め!! 広波長域の非熱的シンクロトロン放射 =>加速粒子と磁場で構成!! Chandra Hester 08 パルサー、磁気圏、パルサー風の物理を パルサー星雲から抜き出す!! 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
研究内容 パルサー星雲のスペクトルモデルを用いて その中心パルサーの回転進化を調べる。 Braking Indexを用いたパルサーの回転進化モデル パルサーの回転進化のモデル 観測でのパルサーの初期周期を求め方 その他のパルサーの初期周期の求め方 用いたパルサー星雲のスペクトルモデル 若い、TeVガンマ線観測のあるパルサー星雲 注入されたエネルギーと断熱膨張の影響 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
パルサーの回転進化 Braking Index 1 n = const. : Braking index, n = 3, when magnetic braking. . (τ0 = P0 / 2P0 ) 年齢 t のみが不定のパラメータ . 注 1.characteristic age tc = P / 2P は年齢 t は違う。 2.k は磁場の大きさに関連、また n = 3 では磁場は一定。 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
パルサーの回転進化 Braking Index 2 τ0 t L(t) spin-down powerの進化 L0 と τ0 が個々のPSRに固有の量である。 L0・τ0 = 1/2 I Ω02 :回転エネルギー B = B0 (B2 R*3/ 6) :磁場エネルギー が個々のPSRに固有の量である。 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
P(t), P(t)の観測があれば、(n = 3) 年齢 t を決めればよい。 観測から得られる初期周期: 方法 . P(t), P(t)の観測があれば、(n = 3) 年齢 t を決めればよい。 Name P0 (msec) B (1012G) Method J0205+6449(3C58) 60 4 A B0531+21(Crab) 19 J0537-6910(N157) 11 1 B J0538+2817(S147) 139 0.7 C B0540-69 30 5 J1124-5916(G292.0+1.8) 90 10 J1811-1024(G11.2-0.3) 62 1.7 J1833-1024(G21.5-0.9) 55 3.6 B1951+32(CTB80) 27 0.5 A. 過去にSNが観測された記録がある(と思われている)。 B. PSR周りのSNRの半径(e.g. Sedov解など)。 C. PSRの固有運動とSNRの中心のずれ。 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
プロット(観測より) P0 (ms) B(1012 G) 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
その他の初期周期の求め方 SNR内のPWNの力学(膨張)進化のモデル化(Chevalier 05) RSNR / RPWN の観測より (SNR周囲のlocal ISM, SN typeなどの仮定が必要) Name P0 (msec) B (1012G) SN type J0205+6449(3C58) 50 4 IIP B0531+21(Crab) 20 J1824-0.3(Kes75) 30 4.8 Ib/c B1509-58(MSH15-52) 10 14 B0540-69 40 5 J1124-5916(G292.0+1.8) IIL/b J1811-1024(G11.2-0.3) 60 1.7 J1930-19(G54.1+0.3) 100 IIP, Ib/c 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
プロット(Chevalier 05) P0 (ms) B(1012 G) コンパクト天体で探る極限物理@京都大学 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
ここまでに紹介したモデルで含まれる可能性がある不定性 ここまでのまとめ パルサーの回転進化をBraking indexを仮定して求める。 観測的もしくは、PWN特有のモデルを介して年齢を求めることで個々のパルサーの固有のパラメータについて考察。 ここまでに紹介したモデルで含まれる可能性がある不定性 Braking index n が一定という仮定。 モデルの不定性(SNR+PWN進化両方のモデル化)。 膨張速度などの観測の不定性。 以下で我々のパルサー星雲スペクトル研究 から得られる独立な方法での結果を見る。 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
パルサー星雲のスペクトル進化 e±, B 若いパルサー星雲のスペクトルを加速された電子陽電子からの シンクロトロン放射、逆コンプトン散乱で説明する。 一様な球状のパルサー星雲内の粒子エネルギー分布関数の進化 ⇒スペクトルの進化。 パルサー近傍での粒子加速の情報。 放射冷却+断熱冷却 e±, B 磁場の見積もり 等速膨張を仮定 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
かに星雲 観測をよく再現する。 1kyrで磁場は~85μG ガンマ線はSSC優勢。 シンクロトロン光度は 逆コンプトン散乱成分 逆コンプトン散乱成分 よりも早く減衰。 (~100TeVで増光) 電波や可視光の減光率 を説明できる。 Tanaka & Takahara 10 電波減光 [%/yr] 可視減光 [%/yr] 計算 -0.16 -0.24 観測 -0.17 -0.55 Vi;nyaikin 07 (radio), Smith 03 (opt.) 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
このような条件に合うものについて調べる。 適用可能な天体 大きさが分かっている。 (断熱膨張の効果) パルサー(P, Pの観測)が見つかっている。 (あたりまえ) 電波、X線での非熱的成分の観測 (シンクロトロン成分、broken power-law) ガンマ線の観測がある。(逆コンプトン成分) . このような条件に合うものについて調べる。 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
適用した天体 14 星間光子場の寄与を考慮すると、 かに星雲と同じモデルでよく説明される。 B ~ 15μG B ~ 60μG Kes 75 B ~ 20μG G54.1+0.3 B ~ 10μG 3C58 TeV upper limit 星間光子場の寄与を考慮すると、 かに星雲と同じモデルでよく説明される。 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学 14
若いTeVPWNの性質 これらを踏まえて non-TeV PWN(3C58)にも適用。 かに星雲を除いて逆コンプトン散乱の種光子は星間ダスト からの赤外線放射が優勢。 パルサーか供給された回転エネルギーの大部分を粒子の エネルギーとして保持し、磁場のエネルギーは1000分の 1程度しかない。 すべてのTeV PWNは、X線領域の放射はベキ~2.5の粒子 を注入することで説明できる。 これらを踏まえて non-TeV PWN(3C58)にも適用。 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
星間光子場のエネルギー密度を決めると決まる。 ηの値がパラメータとなる。(典型的に103 程度) PSRの年齢の決め方: ざっくり TeVガンマ線観測があるもの。(空間構造の不定性小) 星間光子場のエネルギー密度を決めると決まる。 TeVガンマ線観測がないもの。 (空間構造の不定性大) ηの値がパラメータとなる。(典型的に103 程度) P0 が直接求まる 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
Klein-Nishina効果や粒子の冷却を無視した議論だったので 断熱膨張の効果など Klein-Nishina効果や粒子の冷却を無視した議論だったので Klein-Nishina効果は計算には取り入れている。 まだ手で計算可能 現在の年齢では放射冷却はあまり効かず、断熱冷却優勢 スペクトルの進化計算が重要になる (τ0、年齢、冷却時間の関係が複雑, 例えばτ0が年齢より小さい天体は断熱冷却がよく効くなど。) 比較的精度よくパルサーの 初期周期が見積もれる。 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
プロット(パルサー星雲スペクトル) P(ms) Kes75 B(1012 G) コンパクト天体で探る極限物理@京都大学 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
PWNスペクトルのまとめ One-Zoneのモデルから PWNを伴うPSRの性質を抜き出せた。 若いなどの条件を満たしたPWNに適用。 TeV PWNについてはUph の不定性のみでP0 が決まる。 Braking indexの仮定への依存性小(P0 を求めるには)。 これまでの観測的な方法、PWNの力学進化を考えた方法 とは独立の方法である(PWNの非熱的放射に着目)。 One-Zoneのモデルから PWNを伴うPSRの性質を抜き出せた。 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
プロット(全部) P(ms) 被っている天体あり B(1012 G) 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
問題点 基本的にはどの方法でもPWNを伴うPSRしか 初期周期(年齢)が測られていない。 どのモデルも一長一短。 Braking index n = const. = 3 を仮定。 PSRの質量や半径(慣性モーメント)などは仮定。 (むしろ回転エネルギーという形で入っている。) 同じ天体でも方法に依ってP0 が違うものがある。 どちらが正しいと思うのか? 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学
まとめ PSRの初期周期、初期磁場は、SN progenitorや SN形成時の現象と関連している。 PSR初期周期の統計的な分布は? 初期にmsec程度PSR(magnetar)は存在するのか? 統計が足りないが、全体では特にP0 の値に傾向はない。 逆にPWNに見られる多様性がPSR起源で どれくらい説明できるか。 ガンマ線光度が小さいPWN、PWN内の磁場の大きさ 膨張速度(大きさ) Broken power-lawのベキ、multiplicity 17, Feb., 2011 コンパクト天体で探る極限物理@京都大学