つながる思いプロジェクト -第一回 福島県西郷村での実践- 東京理科大学 川村康文 発表者:東京理科大学 川村研究室 久米 望

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つながる思いプロジェクト -第一回 福島県西郷村での実践- 東京理科大学 川村康文 発表者:東京理科大学 川村研究室 久米 望 日本エネルギー環境教育学会 エネルギー環境教育研究Vol.6,No.1, pp.29-32 (2011) つながる思いプロジェクト -第一回 福島県西郷村での実践- 東京理科大学 川村康文 日本エネルギー環境教育学会の学会誌「エネルギー環境教育研究」 実践報告 西郷村(にしごうむら) 発表者:東京理科大学 川村研究室 久米 望

原子力発電をどのようにとらえるべきか 2011.3.11 東日本大震災 確かな学び 個人の判断 つながる思いプロジェクト 1.はじめに 人類 必要 個人の判断 求められる つながる思いプロジェクト 理科,エネルギー環境学習の実験教室 子ども 放射線に関する講座など おとな 功罪;功績と罪過。よい点と悪い点。 原発;全廃⇔必要! 個人の判断⇒正しい知識,判断力⇒確かな学び必要 東日本大震災復興支援プロジェクト⇒つながる思いプロジェクト

風評 東日本大震災 福島第一原発事故 1,000人を超える避難者 農作物の出荷制限 工業製品の放射線検査 いわれのない蔑視 2.西郷村について 地震 津波 原発 風評 東日本大震災 福島第一原発事故 福島第一原発 西郷村 東京より北へ約185km東北新幹線で約90分の距離 栃木県接する 地震,津波,原発の三重苦+第四の困難“風評”⇒復興遅らせる 具体的には 避難者(一時1,000超) 福島県民⇒蔑視 1,000人を超える避難者 農作物の出荷制限 工業製品の放射線検査 いわれのない蔑視

住民 放射線の知識が乏しい 放射線は “ただ怖いもの” 放射線への先入観 放射線の基礎を学ぶ (性質,人体への影響,身を守る方法) 3.西郷村の思い 住民 放射線の知識が乏しい 放射線は “ただ怖いもの” 放射線への先入観 放射線の基礎を学ぶ (性質,人体への影響,身を守る方法) 住民 放射能汚染問題,放射線に関する知識乏しい 漠然とした恐怖 基礎学ぶことで解消,生活 先入観,不安の解消 個人が放射線被害を 最小限に抑える生活

「放射線の人体への影響と身を守る方法について」 4.実施までの経緯 川村研究室 自然エネルギーの必要性を訴え続けていた     ・エネルギー環境教育教材の開発     ・教材の実用化 依頼 福島県西郷村 「ふれあい体験塾」 (エネルギー教育の実験教室) 小学生 講演会 「放射線の人体への影響と身を守る方法について」 村民 ストップ・ザ・温暖化の立場⇒自然エネルギーの必要性 教材化(色素増感,サボ, デモンストレーション実験器,身近な材料燃料電池) 実用化(シャカシャカ振るフルライト) 平成20年学習指導要領改訂⇒中学生の学習内容に放射線加わる ⇒ネットにて川村先生が模擬授業行った⇒依頼

日時 対象 9月3日(土) 午前 小学生86人 講義 「自然エネルギーについて」 実験 「手回し発電機」 5.ふれあい体験塾 日時 9月3日(土) 午前 対象 小学生86人 講義 「自然エネルギーについて」 実験 「手回し発電機」 「太陽電池でメロディーカードを作ろう」 「燃料電池の実験」 「自転車発電機でテレビをつけよう」 「水素ロケットを飛ばそう!!」

電子メロディが鳴ることを実演 赤色LEDの点灯を実演 冒頭と最後に「つながる思い」を歌った 5.1 講義 「自然エネルギーについて」 自然エネルギー教材を紹介しながら解説 色素増感太陽電池 電子メロディが鳴ることを実演 サボニウス型風車風力発電機 赤色LEDの点灯を実演 講師;川村先生 東日本大震災復興支援テーマソング 冒頭と最後に「つながる思い」を歌った

5.2 「手回し発電機」 手回し発電機の作製(持ち帰り工作) 作製した手回し発電機による発電実験 手回し発電機を 利用した学習(小6) 小学校学習指導要領 (H23年度実施) 手回し発電機の作製(持ち帰り工作) 作製した手回し発電機による発電実験 5.3 「太陽電池でメロディカードを作ろう」 手回し⇒持ち帰り工作 指導要領考慮 講師;藤原清さん メロディカード⇒持ち帰り工作 音楽なる⇒有用性 講師;辻川達美さん 太陽電池と電子メロディ,台紙で作製 光を当て,音楽が鳴った 子どもたちの笑顔が見られた

5.4 「燃料電池の実験」 グループ実験 身近なドリンクでできる燃料電池を使用 作製した手回し発電機による電気分解 模型自動車の走行 5.4 「燃料電池の実験」 グループ実験 身近なドリンクでできる燃料電池を使用 作製した手回し発電機による電気分解 模型自動車の走行 5.5 「自転車発電機でテレビをつけよう」 サイエンス・ショー形式 ブラウン管TVと省エネTVの違いを体感 燃料電池⇒講師;川村先生 自転車発電⇒講師;辻川達美さん 同じ発電能力もつ自転車発電機用いる

5.6 「水素ロケットを飛ばそう!!」 サイエンス・ショー形式 酸素:水素=1:2の混合気体使用 反応後発生するのは水( CO 2 は出ない) ロケットが飛ぶ   ⇒水素エネルギーの有用性を認識 講師;藤原清さん

「放射線の人体への影響と身を守る方法について」 6.第二回西郷村風評被害対策事業実行委員会 講演会 日時 9月3日(土)  13:30~15:30 演目 「放射線の人体への影響と身を守る方法について」 環境エネルギーの可能性 放射能の性質 放射線の人体への影響 放射線から身を守る三原則

6.1環境エネルギーの可能性 再生可能エネルギーについて デモ実験をまじえて説明 色素増感太陽電池 サボニウス型風車 風力発電機

放射能 放射性物質 放射線 α線 β線 γ線 用語 単位 ベクレル〔Bq〕 シーベルト〔Sv〕 グレイ〔Gy〕 主な放射線 正体 透過力 6.2放射能の性質 用語 放射能 放射性物質 放射線 単位 ベクレル〔Bq〕 シーベルト〔Sv〕 グレイ〔Gy〕 主な放射線 正体 透過力 α線 β線 γ線 放射能;放射線を出す能力 放射性物質;放射能をもった物質 放射線;高エネルギーの粒子線,電磁波(透過作用や電離作用) 単位 Bq;1秒間に原子核が崩壊する数 Sv;放射線による人体への影響の度合い(放射線の種類の重み⇒等価線量×組織加重計数⇒実効線量)  Gy;物質や人体の組織に吸収されたエネルギー量。1Gy⇒1kg当たり1Jのエネルギーの吸収線量。がん治療や滅菌照射など、人に対する影響<照射した効果の期待 自然放射線 (2008)アンスケア 世界平均値 2.4 mSv 日本平均値 1.5mSv 自然放射線(年間)

医療被ばくの例 ・胸部CTスキャン 6.3放射線の人体への影響 2.2~12.9mSv/回 ・胸部X線撮影 0.02~0.3mSv/回  一人当たり年間線量(日本) 医療被ばくの例 ・胸部CTスキャン 2.2~12.9mSv/回 ・胸部X線撮影 自然及び人工放射線源から受ける年間線量(日本)⇒医療被曝多い 医療被曝⇒機械や様々な条件で変動(UNSCEAR) がん放射線治療  リスク<医療効果 0.02~0.3mSv/回 http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/attach/1314251.htm より転載

〔Gy〕 罹患率(りかんりつ)or死亡率が1%になる閾値(作用するかどうかの境界) http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/attach/1314251.htm より作成

確定的影響 身体的影響 確率的影響 遺伝性影響 ・放射線による影響の現れ方の分類と例 急性障害 (脱毛) 胎児発生障害 (形態異常) (白内障) 晩発障害 確率的影響 (がん・白血病) 被ばくした本人に現れる⇒身体的影響  急性障害 数か月中 晩発障害数か月から数年 子孫に現れる⇒遺伝性影響(人体への影響の証拠なし)閾値あり 細胞の遺伝的な影響を含む⇒遺伝的影響 確定的影響⇒あるレベルの線量を超えると必ず現れる影響。重篤度は線量とともに増加 確率的影響⇒線量の増加とともに現れる確率が増加すると見なされる影響 閾値なし 遺伝性影響 遺伝性障害 (先天異常) http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/attach/1314251.htm より作成

時間(time) 遮へい(shied) 距離(distance) 時間(time) 6.4.1 放射線から身を守る三原則 時間(time) 遮へい(shied) 距離(distance) 放射線にさらされている時間を短くする 時間(time) 線量=(作業場所の線量率)×(作業時間) O 時間 線量

遮へい(shied) 距離(distance) 線源との間に遮へい物を設置する 遮へい(shied) 線量率⇒厚さを増すと指数関数的に減少 線源との距離を離す 距離(distance) 線量率∝ 1 距離 2 線量率 O 厚さ 線量率 O 距離

放射線源が体内に取り込まれること 危険性 ・長時間の被ばく ・線源との距離が近い ・遮へい物がない ・体内に蓄積する 蓄積について 6.4.2 内部被ばく 放射線源が体内に取り込まれること 危険性 ・長時間の被ばく ・線源との距離が近い ・遮へい物がない ・体内に蓄積する 蓄積について 放射性物質の種類による溜まり方の違い 主に口から食べ物と入る「経口曝露」、口・鼻から吸い込む「経気道曝露」、皮膚から入る「経皮曝露」 長時間⇒排泄されるまで 距離,遮へい物⇒線源自体が体内 骨にたまる長い⇒筋肉内臓(セシウム) 早い 例) ストロンチウム;骨 プルトニウム;骨,肝臓

滅菌 診断 治療 食品への照射 品種改良 害虫駆除 新素材 厚さ計 非破壊検査 環境保全 年代測定 宇宙観測 先端研究 6.4.3 放射線の利用 医療 滅菌 診断 治療 農業 食品への照射 品種改良 害虫駆除 工業 新素材 厚さ計 非破壊検査 環境保全 医療  ・滅菌 注射器やメスなどの医療器具 滅菌。煮沸滅菌⇒加熱による材質劣化 薬品⇒薬品の残留汚染 放射線照射による放射線滅菌⇒材質の劣化,汚染がほとんど無い,包装したまま滅菌できる 現在 ディスポーザブル(使い捨て)の器具が数多く開発。 ・診断 胸や胃などの内臓診断 X線撮影 CT(コンピュータ断層撮影)  核医学検査 微量の放射線出す化合物 体内に投与 体内から出て来る放射線診断する 半減期の短い放射性物質を工業的に作って供給 ・治療 がん細胞などを手術をせずに破壊,治療 外から放射線照射する方法 患部に放射性物質を埋め込む方法 切り取らずそのままの形としてせる。投薬治療のような副作用もほとんど無い。 農業 ・食品照射 じゃが芋の発芽防止(コバルト60から出るガンマγ線) 寄生虫や病源微生物の制御 ・品種改良 寒さに強い稲 ・害虫駆除 薬を使わない方法 不妊虫放飼法 放射線を当て不妊化したオスの害虫を野外に放して害虫の数を減らす技術 不妊処理したオ ス>野生のオス⇒野生虫同士の受精の機会減少⇒次世代の害虫の数が減少⇒絶滅 日本での実践;沖縄(ゴーヤ)1972 実施 1993 沖縄 鹿児島県奄美群島 ウリミバエ根絶 工業 ・新素材 自動車 ダッシュボード,シート,タイヤ,水泳用のビート板,お風呂場のマットなど 電離作用を利用⇒耐熱性に優れた物質に改質 強度 を高める技術  ・厚さ計 物質に放射線を照射⇒透過作用を利用 食品包装用のラッピングフィルム,紙,アルミはくなど 厚さを均一につ必要ある工業製品 ・非破壊検査 材料内部の欠陥,表面の微小な傷など⇒分解しないで調べる検査方法 非破壊検査 機器,構造物,金属の溶接部分,金銅仏, 重要な美術工芸品などの細かい傷やひび割れその他内部の欠陥状況 X線やγ線で検査す 空港での手荷物検査 ・環境保全   火力発電所⇒酸性雨の原因となるイオウ酸化物(Sox)や窒素酸化物(Nox)が排出⇒除去対策 日本原子力研究開発機構 大気汚染 物質の除去⇒小型の加速器により作り出した電子線照射⇒効率よく除去する方法を開発 中国,ポーランドなどで実用(火力発電主流) その他 ・年代測定 土器の年代 こげ すすに含まれる炭素 測定⇒推測 炭素14⇒大気中でつくられる。宇宙からやって来る放射線(宇宙線)によって         つくられた中性子が空気中の窒素に吸収⇒放射線を出す炭素に変化⇒濃度は空気中で一定 伐採⇒炭素の取り込みは無くな         る⇒放射線を出す炭素の量は時間とともに規則的に減少⇒放射線を出す炭素の量と出さない炭素の量の割合⇒土器の使用さ         れた年代特定 ・宇宙観測 「すざく」X線を観測する天文衛星 色々な波長のX線を観測可能⇒宇宙の構造,進化,ブラックホールの研究に利用 この他、宇宙         からの微弱な放射線を観測⇒望遠鏡では捉えることのできなかった宇宙の姿を観測 ・Spring-8 兵庫県 放射光 電子を光とほぼ等しい速度まで加速 磁石によって曲げる⇒細く強力な電磁波発生(放射光)⇒X線など含  ナノテクノロジー 材料科学 生命科学 医学 幅広い研究分野に利用 小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った微粒子の解析 自動車排ガス浄化用の高性能な触媒の開発 インフルエンザ治療薬の開発  Super Photon ring-8 80億eV ・ その他 年代測定 宇宙観測 先端研究

7.アンケート(内容) 1.性別        2.年齢 3.この講演会に参加したいと思いましたか 4.この講演会に参加してみようと思われた理由は  なんですか 5.この講演会に参加してよかったですか 6. 5のように思われた理由を教えてください 7.この講演会に参加して放射線について理解でき  ましたか 8.この講演会に参加して、放射線から身を守る方  法が分かりましたか

7.1.アンケート(結果) 1.性別 2.年齢 男69 女99 計168 女多い  50,60代多い 70歳以上 全体の20%弱⇔若い年齢層× 10代1%,20代0%

項目別(3,5,7,8) ③ 村民の期待極めて高い  ⑤ おおむね気体に応えられた ⑦ 高齢の方含めた村民⇒放射線の基礎知識の啓発 達成 ⑧低くはないが充分でない

4.この講演会に参加してみようと思われた理由 自由記述(4,6) 4.この講演会に参加してみようと思われた理由 「放射線から身を守る方法を生の声で聴きたい」 ⇒TVなどの報道以外の新規な情報への期待 6. 参加してよかった(悪かった)と思われた理由 「既知の情報の再確認ができてよかった」 「フロアーの質問が聞けて良かった」 など ⇒参加した意義があった 「住み続けて大丈夫かわからなかったので失望した」 ⇒不満もみられた

生の講義の必要性 十分な学びにならない 印象的 8.考察 マスコミによる情報のみ アンケート結果より 真剣にノートをとる姿 参加者 講義の様子より アンケート マスコミ(テレビ,ラジオの再確認) 生の講義で初めて知識ついた 生の講義の必要性

本当に日々の生活を守れるのか? 住民 放射線から身を守る三原則 安心や安全を与えることできなかった 科学的に正しい内容を伝える 不安感への配慮 踏み込んだ話 できなかった 教科書的な話

リアリティを見出せない 住民 生の声を聴き,学びたい 人と人とのつながり 信頼関係 9.おわりに マスコミによる情報 リアリティを見出せない 住民 生の声を聴き,学びたい 人と人とのつながり 信頼関係 伝えるために… 講演会 短時間 信頼関係難しい 単に時間長くすればいいものでない 多くの地域で求められる  多くの人と つながる 講演会 積極的に取り組む

思考力・判断力を養う物理教育 エネルギー環境教育の充実 信頼される教師 10.今後の展望 ・理論のわかる実験指導 ・生徒に考えさせる,気付かせる指導 思考力・判断力を養う物理教育 ・実験教材の開発 ・他の教員をリードする実力を身につける エネルギー環境教育の充実 思考力・判断力 個人の判断より求められる。情報化グローバル化 理系だけでなく文系もなにするにしても必要 生徒に論理的思考力身につけさせる! エネルギー環境教育 教材少ない 開発 川村研プライド 他の教員引っ張る実力  ・コミュニケーション⇒信頼関係 生徒理解 生徒の可能性,未来信じる 実力⇒授業で勝負! 信頼される教師 ・コミュニケーション  ・実力を身につける

10.参考文献 [1]三浦登ら,「高等学校理科用文部科学省検定済教科書物理基礎」 p.185, 2011 [2]らでぃ,川村康文先生の模擬授業 http://www.radi-edu.jp/contents/detail/kawamura [3] 文部科学省,「放射線等に関する副読本掲載データ」, http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/attach/1313004.htm