生活習慣病 偏食、運動不足、喫煙、ストレス・・。生活習慣病はその名の通り、ふだんの生活習慣が、発症や進行に深く関わっています。高血圧・脂質異常症・糖尿病・肥満が代表的なもの。これらは「死の四重奏」と呼ばれ、もちろん単独でも恐ろしい病気ですが、重複すると命にかかわる危険が増すのです。 内臓脂肪型肥満で、高血圧や脂質異常症など複数の生活習慣病を合併している状態を「メタボリックシンドローム」と呼んでいます。

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生活習慣病 偏食、運動不足、喫煙、ストレス・・。生活習慣病はその名の通り、ふだんの生活習慣が、発症や進行に深く関わっています。高血圧・脂質異常症・糖尿病・肥満が代表的なもの。これらは「死の四重奏」と呼ばれ、もちろん単独でも恐ろしい病気ですが、重複すると命にかかわる危険が増すのです。 内臓脂肪型肥満で、高血圧や脂質異常症など複数の生活習慣病を合併している状態を「メタボリックシンドローム」と呼んでいます。

どんな治療をすればよいの? 自己管理 高血圧治療の基本は、❶食事療法と❷運動療法による 生活習慣の是正です 効果不十分なときは、❸薬物療法を追加します 生活習慣 の是正 ❷運動療法 自己管理 ❸薬物療法 ❶食事療法

タバコの害 50種類以上の発がん性物質が含まれており、肺がんなど のがんを引き起こすほか、受動喫煙のリスクも高まります。 タバコを吸うか吸わないかの違いで、余命が10年変わりま す。 タバコは、肺がんなどのいろいろながん、脳卒中や心筋梗 塞などの重大な病気の原因になります。そのほかにも、慢 性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病、消化性潰瘍などにな りやすく、妊娠や出産などにも悪影響を及ぼします。 自分の意思とは関係なくタバコの煙を吸い込んでしまう「受 動喫煙」は、タバコを吸わない人を、がんや脳卒中、心筋梗 塞、呼吸器疾患などの危険にさらします。さらに、子どもに いたっては、胎児のときから健康被害を受けています。

薬物療法にはどんな効果があるの? 血管 心臓 腎臓 血流量を減らす 血管を広げる 腎臓からナトリウムと 水の排せつを促して 血圧を下げる 交感神経による心臓の働き 過ぎを抑えて血圧を下げる 血圧を上げる物質の作用を さまたげて血圧を下げる ● アンジオテンシン II (AII)受容体拮抗薬(ARB) ●β遮断薬 腎臓からナトリウムと 水の排せつを促して 血圧を下げる 血圧を上げる物質ができない ようにして血圧を下げる ● アンジオテンシン変換酵素 (ACE)阻害薬 ●利尿薬 血管 血管を拡張させて 血圧を下げる 心臓 ●カルシウム(Ca)拮抗薬 ARBとCa拮抗薬などを 1つにした 配合薬もあります 交感神経による血管の 収縮を抑えて血圧を下げる 腎臓 ●α1遮断薬

利尿薬 血液中の水分が増えると血管を流れる血液の全体量が増えてしま うことから、血圧が上がります。従って、血圧を下げるには尿の出を よくして血液中の水分を減らす方法があります。それを行う薬剤が 利尿薬です。現在、降圧に用いられる利尿薬は腎臓に働いてナト リウム(塩分)の排泄を促進し、尿量を増やします。ナトリウムには 水を引き込む性質があるので、ナトリウムを排泄すると、血液中の 過剰な水分が減っていくのです

利尿薬

利尿薬の作用機序 ループ利尿薬 ◇ヘンレのループにおいてNaとClの再吸収を阻害する。 ◇腎機能に悪影響を与えないため、利尿薬の第一選択として使用 される。 ◇また心不全、高血圧治療薬としても使用される。

サイアザイド系利尿薬 ◇遠位尿細管においてNaとClの再吸収を阻害する。降圧剤として も使用される。 ◇サイアザイド系利尿薬は、高血圧の治療で最初に使用されるこ との多い薬です。利尿薬は血管を拡張させます。 ◇また、腎臓が塩分と水分を排出するのを促し、体内の液体量を 減らすことで血圧を低下させます。 ◇サイアザイド系利尿薬はカリウムを尿中に排出するため、カリウ ムのサプリメントや、カリウムの排出を起こさない利尿薬、カリウ ム濃度を上昇させるカリウム保持性利尿薬などを一緒に服用す る必要がある場合もあります。

カリウム保持性利尿薬 ◇抗アルドステロン薬とも。遠位尿細管においてアルドステロン(抗 利尿ホルモン)に拮抗し、Naの再吸収を阻害する一方、Kの尿中 排泄を抑制する。 ◇ループ利尿薬等と合わせて、肝硬変、うっ血性心不全などに対し て使用される。   スピロノラクトン(アルダクトンA)   カンレノ酸カリウム(ソルダクトン) ◇スピロノラクトン、カンレノ酸カリウムは坑アルドステロン作用が ある。 ◇効力はサイアザイド系、ループ利尿薬に比べて弱く、発現も遅い。 抗アルドステロン薬はK+保持利尿薬であり、K+を排泄することなく 利尿作用を示す。アルドステロンは体内の水分を増やす働きがあり、 この作用によって血圧が上昇する。つまり、アルドステロンを阻害すれ ば水分・ナトリウムがより多く尿中に排泄される。

Ca拮抗薬 動脈の血管壁には、平滑筋細胞でできた層があって、この細胞が収 縮 することで血管は細くなり血圧が上がります。この収縮は、細胞内にカ ルシウム(Ca)イオンが流れ込むことが引き金になっています 。ですから、このカルシウムイオンの通り道であるカルシウムチャネルをふさぐことで、平滑筋細胞の収縮を抑え、血管を拡げ、血圧を下げる ことができます。これがカルシウム(Ca)拮抗薬の働きです。      

Ca拮抗薬の特徴 血管が拡張すると血圧が下がるだけではなく、血液の流れが良くなるという大きなメリットがあります。血流が良くなると脳や心臓、腎臓といった臓器の保護作用が生まれてきます。カルシウム拮抗薬の種類はたくさんありますが、薬の種類によって脳や心臓、腎臓の血管をより選択的に拡張させて血流を改善させる薬があります。たとえば、心臓の血管を冠動脈といいますが、冠動脈の拡張作用のあるカルシウム拮抗薬は、狭心症の予防効果があります 血管が拡張して血流が良くなると、人によっては頭痛や顔のほてり、どうきが起こりやすくなります。

循環血液量が増加して心拍出量と末梢血管抵抗が増加

ACE阻害剤 ACE阻害薬はAⅡの産生を押さえて血圧を下げる薬です。また、血糖・尿酸・脂質代謝、あるいは電解質への影響が少なく、むしろよい効果を及ぼします。高血圧のほか、心不全や糖尿病性腎症の治療にも広く使用 アンジオテンシン変換酵素を介さないAⅡ産生経路も存在するため、ACE阻害薬でAⅡの産生を完全にはブロックできません。ACE阻害薬の副作用として、あまり心配はいらないのですが、のどのいがいが感や空咳がかなりあります

ACE阻害薬の特徴 ① 臓器の障害が進むのを予防するため、さまざまな臓器合併症や糖尿病を有する患者さんに推奨される薬です。 副作用としては空咳が有名で、20~30%の方で内服開始1週間後から数か月以内に出現します。

ARB 作用機序は異なりますが、ACE阻害薬に近い働きで血圧を下げます。心臓の負担を軽くしたり、動脈硬化の予防、糖尿病の発症の抑制効果も期待できることが分かってきました。ACE阻害薬にみられる咳の副作用もなく、安全で使いやすい薬 ARBはカルシウム拮抗薬に比べると降圧効果はやや劣るが、単独で使用されるだけでなく、カルシウム拮抗薬に次ぐ2剤目の併用薬として選択されることが多い。臓器保護作用や動脈硬化予防効果が強く期待できる、すぐれた降圧薬である

AⅡ(ARB)受容体拮抗薬の特徴 Ca拮抗薬に次いで最もよく使用されている 心臓保護作用……心肥大を抑制し、心不全の予 後を改善 心臓保護作用……心肥大を抑制し、心不全の予             後を改善 腎臓保護作用……降圧とは独立に腎臓の機能を             保護 インスリン感受性改善作用……インスリンの効きにくい           体質を改善、糖尿病の発症を抑制 心,腎,脳の臓器合併症や糖尿病などを有する症例で第一選択薬として用いられる。 妊婦や授乳婦への投与は禁忌で,重症肝障害患者には慎重投与 OLM-9253 (JSH2000)

レニン阻害薬 レニンは高血圧にかかわるレニン-アンジオテンシン系(RA系)の基点となる物質です。これが抑制されるとRA系で産生され右アンジオテンシンという昇圧物質が減少し、血圧低下につながります。効果はACE阻害薬やARBに似ており、一日1回の服用で血圧管理が可能です

 β遮断薬

心臓には交感神経に関わるβ受容体が存在する。このβ受容体が心臓の拍動数に関与しており、β受容体が刺激されると心臓の拍動も活発になる。そのため、β受容体を遮断することで心拍数を減らすことができる。 心臓にある交感神経のベータ(β)受容体を遮断することで、これにより心臓の興奮がおさえられ、血圧が下がります。高血圧、狭心症、頻脈性不整脈の治療に用いられるほか、心筋症や心不全の治療に応用されることもあります

■ β遮断薬の副作用・注意点 単独または利尿薬との併用によって血糖や脂質の代謝に悪影響を及ぼすので、高齢者や糖尿病には第一選択にはなりません。また、気管支喘息の患者さんには使えません。突然中止すると狭心症あるいは高血圧発作を生ずることがあるので、自己判断で内服をやめてしまうと危険です。中止する場合には徐々に減量していかなくてはなりません。

α遮断薬 血圧を下げる方法としては心拍出量を減らす以外にも、末梢血管抵抗を下げる方法もある。高血圧患者では動脈硬化などによって血管が細くなっており、その分だけ血圧も高くなる。

■ α遮断薬の副作用・注意点 初めて内服する際には起立性低血圧によるめまい、動悸、失神があるので、少量から初めて徐々に増量にします

虚血性心疾患に含まれる疾患 虚血性心疾患 冠動脈が動脈硬化などの原因で狭くなったり、閉塞したりして心筋 に血液が行かなくなること(心筋虚血)で起こる疾患  虚血性心疾患に含まれる疾患  ・狭心症  ・心筋梗塞  ・虚血性心不全  ・虚血性心疾患の致死性不整脈 虚血 流れ込む動脈血の量が,動脈が圧迫されたり血栓などで閉塞さ れて減少するために起きる。心臓,腎臓,脳などに起こることが多い。

高血圧が続くと心臓に養分と酸素を送り込む冠動脈の動脈硬化が生じるため、血管が狭くなったり、詰まったりして、狭心症や心筋梗塞が起こりやすくなります。    

冠動脈 心臓は、全身の臓器や筋肉に酸素と栄養を運ぶために血液を送り出しています。また、心臓自身も血液の供給を必要としています。心臓に酸素を豊富に含んだ血液を供給する血管を冠動脈と言います

狭心症 心筋に酸素と栄養素を運ぶ冠動脈の内側が部分的に細くなると、心筋への血流が悪くなるために一時的な胸の痛みを感じるようになります。このような状態が起こることを狭心症といい、それに伴う胸の痛みを狭心症発作といいます                                 

「労作狭心症」と「安静狭心症」の2つに大別されます。①労作狭心症は身体を動かしたり、精神的に興奮したとき、心筋の仕事が増えて発作が起きるもの②安静狭心症は安静にしているときにも発作がおきるタイプで、深夜から明け方に発作が起きる異型狭心症はその典型です。  

狭心症の治療 発作時に使用する薬は、即効性硝酸薬であるニトログリセリンがあります。 発作時に使用する薬は、即効性硝酸薬であるニトログリセリンがあります。                        硝酸薬は冠動脈や末梢の血管を広げて心臓の負担を軽減する作用があります。発作時に使うのは主に舌下錠といわれるもので、舌の下に含んで粘膜から吸収させます。口の中が乾いて舌下錠が溶けにくい場合は、舌下に噴霧して使用する「スプレー」もあります。

狭心症の薬には「血管拡張薬」と「ベータ遮断薬」があります。血管拡張薬は、冠動脈を広げて血流をよくする働きと、全身の血管も同時に広げて心臓の負担を軽くする働きがあり、これには硝酸薬とカルシウム拮抗薬があります。 ベータ遮断薬は、興奮する神経である交感神経の活動を抑え、血圧を低くし、脈拍数も少なくして、心臓の負担を軽減する薬です。どちらも血圧を下げますから、高血圧の治療薬としてもよく使われます。 狭心症には、血管拡張薬やベータ遮断薬の中から2、3種類を併せて処方します。また冠動脈の動脈硬化を抑え、心筋梗塞症を予防するため、アスピリンを少量使用します。 アスピリンは血小板の活動を抑えますから、血栓ができにくくなります。同様の働きを持つ薬としてパナルジンも使用します。

心筋梗塞 冠動脈が、動脈硬化などが原因で狭くなると、心筋に送り込まれる血液が不足して胸が痛くなります。これが狭心症です。   さらに動脈硬化が進んだり、何かの原因で血管内のプラークと呼ばれる脂肪などの固まりが破れて血栓ができ、冠動脈が完全に詰まって心筋に血液が行かなくなった状態を心筋梗塞と呼びます。   心筋に血液が行かないと、その部分が壊死してしまい、壊死の部分が大きくなると心臓の収縮・拡張ができなくなるため、命にかかわる危険な状態となり、緊急の治療が必要です 心筋梗塞で起こる胸痛は、焼けつくような激しい痛みや圧迫感が特徴で、時間も15~30分以上長く続きます 心筋梗塞の発症が原因で心室細動という不整脈を起こし、心停止状態になる可能性もあります

心筋梗塞の治療 治療法には、詰まった血栓を血栓溶解薬(tPAなど)で溶かす方法と、血管内に細い管(カテーテル)を入れて、詰まった部位を風船(バルーン)でふくらませる「風船療法」(PTCAなどと呼ばれています)があります

抗血小板剤 血小板の凝固を阻害することで、血栓ができることを防ぎます。できてしまった血栓を溶かす効果は期待できませんが、治療のためにステントを留置された患者さんには、ステントが閉塞しないようにアスピリンに加え同じような効果を有する抗血小板剤を2種類併用することが一般的です。心臓が広範に壊死している患者さんには、心臓の血栓ができないようにワルファリンが使用 ヘパリン

カルシウム拮抗剤 硝酸薬 高コレステロール治療薬 β遮断薬 抗血小板薬 LDLコレステロール値が高い人に効果的で、ACE阻害薬や血栓溶解薬と同じように心筋梗塞の再発予防のために使われます。ちなみに、LDLコレステロールとは、動脈硬化を引き起こす強力な危険因子で、「悪玉コレステロール」と呼ばれているものです。 β遮断薬 交感神経のβ受容体の働きを遮断することにより、心臓の動きを減らすことができ、必要とする酸素量が減ることから心筋梗塞の重篤な状態を防ぐことができる 抗血小板薬 血液が本来持っている血栓を溶かす力(線溶)の働きを助ける作用がある、治療薬よりは予防薬として使用される

心臓は一定のリズムで収縮と弛緩 を繰り返しています。右心房上部の 洞房結節(どうぼうけっせつ)という 場所に自動で動く筋細胞があり、 そこで生じた電気信号が特殊な筋 肉の道すじ(刺激伝導系といいます) を通じて心筋全体に伝えられます。 したがって、全体に統制のとれた収 縮と弛緩を行えるのです。 洞房結節で生じた電気信号は、心房内を放射状に広がり、ついで 房室結節(ぼうしつけっせつ)に集まります。信号はそれからヒス束 → ヒス束の左右脚束(きゃくそく)→ プルキンエ線維 → 心室固有 筋(内膜面 → 外膜面)へと伝えらえていきます。

活動電位とイオンチャネル 心筋細胞の細胞膜には,心臓が規則正しくかつ協調性をもって収縮 ・拡張を繰り返すための電気的な活動のサイクルがあり,これを活動 電位といいます。この活動電位は,細胞内外でのナトリウムイオン (Na+)やカリウムイオン(K)などのイオン交換によって行われてい ます。 心筋細胞が静止状態のとき,細胞内は細胞外に比べてマイナスに なっており,この状態を分極しているといいます。細胞膜には,イオ ンチャネルというゲートのようなものがあり,電気刺激によって開閉 して特定のイオンだけを通過させます。 これにより,細胞内の電位の変化(マイナスからプラスへ)が起こり, これに反応して心筋が収縮します。イオンチャネルはそれぞれの性 質により,ナトリウムチャネル,カルシウム(Ca2+)チャネル,カリウ ムチャネルなどに分類されます。

第0相(脱分極相) : Na+ チャネルが開口してNa+ が急速に細胞内へ流入 する 第1相(スパイク) : Na+ チャネルが閉鎖し、細胞 内へのNa+流入が停止 第2相(プラトー相) : Ca2+ チャネルが開口して緩や かにCa2+が細胞内へ 流入する 第3相(再分極相) : K+チャネルが開口してK+が細胞外に流出 する 第4相(静止電位) : 再び脱分極が行えるよう細胞膜内でイオン交換 が行われる

不整脈の種類 (1)頻脈 運動や緊張とは関係なく、脈が異常に速くなるのが頻脈です。 脈拍が増えると動悸が起こり、ひどい場合にはめまいや冷や汗 吐き気を生じます。意識を失うこともあるので注意が必要です。 脈が突然1分間に140回以上になった場合は、危険な状態であ ると考えられます。 頻脈は、心臓に送られる電気が異常に早くつくられることが原因 であるとされています。また、電気の通り道に異常が生じて電気 信号が本来の働きをしていない可能性も考えられます。 また、病気によって頻脈が誘発されることもあります。 心房細動・発作性上室性頻拍・心室頻拍・心室細動などが頻脈 の原因となる主な病気です。

(2)徐脈 心臓を動かすのに必要な電気がつくられなくなったり、途中で途切 れてしまったりして脈が異常に遅くなるのが徐脈です。脈が遅くなる とだるさを感じ、体を動かすのがつらくなります。動作をするたびに 激しい息切れが生じることも。1分間に40回くらいまで脈拍が減った ときは危険な状態です。 このような症状が治まらない場合には、心不全が起きている可能性 があります。すぐに医師の診察を受けましょう。 徐脈を引き起こす可能性のある病気には、洞不全症候群や房室ブ ロックがあげられます

(3)期外収縮 期外収縮とは、脈が一時的にとんだり、不規則なリズムになったり する不整脈です。心臓を動かしている電気の刺激が通常とは違う 場所から出てくるために脈が乱れます。その場所が心房の場合は 心房性(上室性)期外収縮、心室の場合は心室性期外収縮と呼ば れています。 期外収縮そのものは若い健康な方でも1日に何回か起こることが あり、直接治療が必要なものではありません。しかし、連続して起 こったり自覚症状がある場合には対応を考える必要があります。 特に目立つ症状はありませんが、胸に不快感や痛みを生じること があります。期外収縮が続いて発生すると血圧が十分に上がりま せん。そのため、必要な血液量が体中に行き渡らなくなるので、め まいが起こることもあります。心臓は動いているのですがとても弱く なるため、脈を感じられないこともあるでしょう

◦Ia群は活動電位がおさまるまでの時間を延長する Naチャネル遮断薬(I群抗不整脈薬) 脈に関与する電気信号の一つであるNa(ナトリウム)イオンの通り 道を塞ぎ、乱れた脈(主に頻脈)を整える薬 副伝導路の伝導抑制 Naチャネル遮断作用以外の作用や特徴によりさらにIa群、Ib群、Ic群 に分けられる ◦Ia群は活動電位がおさまるまでの時間を延長する ◦Ib群は活動電位がおさまるまでの時間を短縮する ◦Ic群は活動電位がおさまるまでの時間を変えない ≪Ⅰa≫ 活動電位の持続時間の延長 副作用 : 抗コリン作用(口渇、排尿障害) キニジン、プロカインアミド(アミサリン®)、ジソピラミド(リスモダン®) ≪Ⅰb≫ Naチャネル抑制が弱い。活動電位の持続時間の短縮する リドカイン(キシロカイン®)、メキシレチン(メキシチール®)、アプリンジン(アスペノン®) ≪Ⅰc≫ Naチャネル抑制が強い。活動電位の持続時間の不変 虚血性心疾患例には死亡率を上昇 ピルジカイニド(サンリズム®)、フレカイニド(タンボコール®)

ベータ遮断薬 心室期外収縮・心室頻拍・心室細動・発作性上室頻拍などの治療 に使用されます。過剰に動いて弱ってしまった心臓を休める作用が あります。気管を狭くする作用もあるため、喘息患者には使用でき ません

カリウム・チャネル遮断薬 心室期外収縮・心室頻拍・心室細動・心房細動・心房粗動の治療に 使われます。心臓に流れる電気信号のひとつであるカリウムイオン の通り道をふさぐことで、脈の乱れを整える薬です。毒性を示すもの もあるため、重症な不整脈の治療にのみ使われる薬もあります 特徴 : 活動電位の持続時間(QT)の延長、不応期の延長 心筋収縮の抑制なし アミオダロン(アンカロン®)は間質性肺炎、甲状腺機能障害、 角膜色素沈着

カルシウム拮抗薬 心房細動や心房粗動、発作性上室頻拍の治療に使われる薬で、 不整脈には電気刺激の伝わりを遅くする働きのあるジルチアゼム やベラパミルが有効です。 特徴 : 房室結節の伝導抑制

心不全 全身の組織において栄養分や酸素が必要です。心臓は、栄養分や酸素を含んだ血液を全身に送り出すポンプのはたらきをしています。このポンプのはたらきが低下して、全身が必要とする血液を十分に送り出すことができなくなった状態   、①急性心不全、②慢性心不全、③慢性心不全の急性増悪

ジギタリス 強心配糖体 細胞膜のナトリウムポンプを阻害することでカルシウムイオン排出が抑制されて、心収縮を増す ジギタリス  強心配糖体 細胞膜のナトリウムポンプを阻害することでカルシウムイオン排出が抑制されて、心収縮を増す            ジギタリスによる心収縮力により、心拍出量を増加させる                                  半減期が長いために、体内に蓄積しやすい。また治療域が狭いので用量設定を注意深く行い、薬物の効果と血中濃度をモニタリングしなくてはいけない。       ジギタリス中毒に注意 循環器症状(不整脈、徐脈、頻脈、動悸(どうき)など)、胃腸症状(食欲不振、吐き気・嘔吐(おうと)、下痢、腹部膨満感、下腹部不快感、腹痛など)、視覚障害(光がないのにちらちら見える、ものが黄色または緑色に見える、目がかすむ、まぶしい)、精神神経症状(めまい、頭痛、ものごとを認識できない、錯乱など)、血小板減少など

カテコールアミン 交感神経に類似した作用を示し、血管壁の収縮や心筋収縮力を高め血圧を上昇させる カテコールアミンは体内に分布しているアドレナリン受容体に作用し、交感神経興奮に似た効果を示します。しかし、α作用、β作用の強さがそれぞれ異なるため、その違いにより発現される効果が異なり、医薬品としての使われ方も違います

ドパミン ドパミンは少量の場合、腎、腸間膜、冠血管に分布するドパミンD1受容体に作用することで血管拡張作用を示しますが、その他の血管はα作用で収縮させます ドパミン大量投与(点滴速度15μg/kg/min以上)ではα1作用がD1作用より優位となりすべての血管が収縮するため、 血圧が上昇します。 また、心臓のβ作用も増強されるため、不整脈等の副作用が起こりやすくなります. 急性心不全の第一選択薬 心拍数をあまり上昇させずに心拍出量を増大させることができる 腎血流を増加させるので十分な尿量が確保できる

ドブタミン 急性心不全における心収縮力増強 ドパミンやノルエピネフリンと同じく、急性心不全における心収縮力増強を目的として使用

利尿薬は心不全で過剰に貯留されたナトリウムイオン(塩分)と水分を排出させ、静脈への血流を改善します。強心薬を試用する前に使うことが多い           ACEは血管を拡張させ、アルドステロン分泌よるナトリウムや水の貯留、血管抵抗性を減少させ心臓への負担を軽減、心不全治療の基本薬                       β遮断薬は慢性心不全の進行を抑えるとされる。急性心不全には無効であるばかりでなく、収縮機能低下の著しい患者にはきわめて危険で有害なので、注意は必要である。                              

脂質異常症 血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)などの脂質(血清脂質)が異常に多くなる、またはHDL(善玉)コレステロールが少なくなる病気です。ほとんど自覚症状がありませんが、放置すると動脈硬化が進行し、心筋梗塞、狭心症や脳卒中を引き起こすもとになります。  

 ●LDLとともにHDLは、コレステロールを運搬するという共通の役割を持っており、このHDLによって運ばれるコレステロールをHDLコレステロールと呼びます。主に肝臓で合成されるコレステロールは、LDLにより他の組織へ運ばれ、逆に組織で余ったコレステロールを肝臓に戻すのがHDLです

薬物療法にはどんな効果があるの? コレステロールの合成 コレステロールが を抑えて下げる 血管にたまりにくくする コレステロールの ● HMG-CoA還元酵素   阻害薬(スタチン) ● プロブコール 血管 肝臓 コレステロールの 排せつを促して下げる トリグリセライドが血中に供給されにくくする ● 陰イオン交換樹脂 小腸 ● フィブラート系薬

フィブラート系 肝臓での脂質の合成を抑制し、主に中性脂肪を減らす。 一方、コレステロールよりも中性脂肪が多い人に向くのが「フィブラート系」と呼ばれる薬だ。 ただスタチン系との併用は危険。副作用で筋肉が破壊される恐れがある EPA製剤 魚油から精製された脂肪酸。 主に中性脂肪を減らす。スタチン系との併用も多い。 小腸コレステロール吸収阻害薬 小腸壁で胆汁性および食事性コレステロールの吸収を阻害する レジン(陰イオン交換樹脂) 胆汁酸の排泄を促すとともに、肝臓内での胆汁酸合成を増やし、コレステロールを減らす。

・グリコーゲン合成の促進 ・筋肉細胞や脂肪細胞内へのブドウ糖の取り込み促進 インスリンは次のような作用をする ・グリコーゲン合成の促進 ・筋肉細胞や脂肪細胞内へのブドウ糖の取り込み促進 インスリンはすい臓のランゲルハンス島のB(β)細胞から分泌される。なお、糖尿病の状態では、尿中から糖が検出される 唯一血糖値を下げる働きがあるホルモン グリコーゲン 動物の体内でエネルギーを一時的に保存しておくための物質。 人体の中で主にグリコーゲンが蓄えられるのは、筋肉と肝臓です。 グルカゴン 血糖値が下がって血液中のブドウ糖の量が減少した時に働くホル モン。膵臓のランゲルハンス島α細胞から分泌されて、血糖値を 上昇させる作用

・1型糖尿病 1型糖尿病はインスリン依存性糖尿病であり、インスリン注射が必要不可欠である。つまり、治療にはインスリン注射しかない。1型糖尿病の場合、インスリンの分泌が低下しているのである ・2型糖尿病 日本人の90%以上が2型糖尿病であり、遺伝的要因が高く、中年以降に多い糖尿病である。これはインスリン分泌の低下とインスリン感受性の低下によるものである

糖尿病の薬物治療 ・インスリン分泌を促進させる ・腸管からの糖の吸収を抑制する ・インスリン抵抗性を改善させる

α-グルコシダーゼ阻害薬の特徴 ・必ず食直前に投与する。食後では効果がない。 ・副作用として腹部膨満感、放屁、下痢が認められる。 ・高齢者・開腹手術歴の例では、腸閉塞などの重篤な副作用を引き起こすことがある。 ・重篤な肝障害が報告されているので、定期的な(最初の6ヶ月は月1回)肝機能検査(トランスアミナーゼなど)が必要である。 ・SU薬やインスリンとの併用によって起こり得る低血糖に対しては、ブドウ糖を速やかに経口投与する。ブドウ糖の処方も行うと良い。ショ糖は不可。

SU薬の特徴 膵β細胞に存在するSU受容体に結合する。これによってK+チャネルを閉じさせ、Ca2+チャネル開口によりインスリンを分泌させる ・投与する場合には少量より開始し、血糖値、HbA1cの値を見ながら増量。 ・症例によっては、ごく少量でも低血糖を起こすことがある。 ・肝・腎機能障害、あるいは高齢者には遷延性低血糖を来たすことがあるので注意する。 ・体重増加 ・2種類以上のSU剤の併用や、速効型インスリン分泌促進薬との併用は治療上意味がない

速効型インスリン分泌促進薬の特徴 スルホニル尿素薬と同じ作用であり、SU受容体に結合することでインスリン分泌を増加させる。インスリン分泌作用はスルホニル尿素薬よりも短時間 ・必ず食直前に投与する。食前30分では食事開始前に低血糖を起こす可能性がある。 ・本剤で食後血糖値が下がらない場合にはα-グルコシダーゼ阻害薬との併用を考慮する。SU剤との併用は認められていない。 ・肝・腎機能障害のある患者では低血糖を起こす恐れがあるので使用は慎重に行う。重篤な腎障害のある患者では、添付文書上、ナテグリニドは禁忌、ミチグリニドは慎重投与となっている。 * ナテグリニド: スターシス・ファスティック * ミチグリニド:グルファスト

チアゾリジン薬の特徴 インスリン抵抗性改善薬である。肝臓での糖新生の抑制、筋肉・脂肪組織での糖利用促進によって血糖降下作用を示す。 二型糖尿病では、インスリンが体内にたくさん存在していたとしても、そのインスリンが作用しにくくなっている。この状態がインスリン抵抗性である ・副作用として浮腫、貧血、LDL、CPK上昇が時に認められる。 ・水分貯留する傾向があり、心不全、心不全の既往者には使用しない。 ・基礎に肝機能障害を有するなど、必要な場合には定期的に肝機能検査を実施する。重篤な肝機能患者には使用しない。 ・体重が増加しやすいので、食事療法を確実に実行することが大切である。

ビグアナイド薬の特徴 インスリン抵抗性改善薬である。肝臓での糖新生の抑制、糖の吸収抑制によって血糖降下作用を示す。食欲を抑える効果もある ・SU薬の効果不十分例に併用、インスリン治療例にも併用で効果が期待出来る。 ・副作用として乳酸アシドーシス[乳酸が血中に溜まった結果、血液が酸性に傾いた状態]が挙げられている。肝・腎・心・肺機能障害のある患者、インスリン適応のある患者には使用しない。 ・ヨード造影剤使用の際、使用の2日前から2日後までの間、投与を中止する。 ・発熱時、下痢などの脱水のおそれがあるときには休薬する。

DPP-4阻害薬 インクレチンはDPP-4と言う酵素で短時間で分解 食後一二指腸や小腸から分泌されるホルモン 膵臓からのインスリン分泌を増加しグルカゴンの分泌を減少     血糖値を下げる 血糖値の高いときだけ作用 低血糖の心配がない インクレチンはDPP-4と言う酵素で短時間で分解                        インクレチンはインスリン分泌に関わっているが、食事を取っていない空腹時にはインクレチンは分泌されず、インスリンへ影響しない。つまり、インクレチンは高血糖時においてのみインスリン分泌を促す。インスリン濃度が正常な時、インクレチンは分泌されないためインスリン濃度に影響することはない

SGLT2阻害薬 正常な状態であると、尿中から糖が検出されることはない。しかし、糖尿病であると血糖値が高すぎるために尿中から糖が検出されてしまう。これは、尿細管での糖の再吸収が間に合っていないために起こる 尿細管の中でも、糖の99%は近位尿細管で再吸収される。この時の再吸収を行う輸送単体がまさにSGLT2である。つまり、SGLT2を阻害することができれば、結果として近位尿細管での糖の再吸収が抑制され、血糖値が下がっていくのである 利尿作用                            尿糖が増えることによる膀胱などの感染症 夏場の脱水、体重減少            

GLP-1受容体作動薬 インクレチン 分泌されたGLP-1は、血液の中を流れてすい臓に運ばれます。すい臓にたどりついたGLP-1はここで、「インスリンを出して!」と呼びかけます。すい臓はこの呼びかけに応じてインスリンを分泌し、その結果、血糖値が下がります。 この仕組みは上手くできていて、食事をしていないときつまり血糖値が高くないときにはGLP-1は分泌されずインスリンも出てきません。 また、GLP-1には、血糖値を上げる働きをもつグルカゴンというホルモンの分泌をおさえたり、食欲をおさえるといったなどの作用もあり、これらも血糖低下につながっています

 下記にそれぞれのタイプの特徴をイメージ化してみました。                                                                                   

脳梗塞 脳の血管が細くなったり詰まったりして、その先に血液が行かなくなり、脳の細胞が死んでしまうものです。詰まった場所によって知覚障害や運動障害、意識障害などのいろいろな症状が出てきます 脳梗塞は血管が動脈硬化を起こし細くなり、血液の固まり(血栓)を形成し詰まってしまう脳血栓と、心臓や頸動脈にできた血栓が血液の流れにのって進み、脳の血管をふさいでしまう脳塞栓の2つに分けられます。脳血栓はさらに細い血管に発生し無症状の場合も多いラクナ梗塞と、太い血管に起こるアテローム血栓性梗塞に分けられます。

ラクナ梗塞は脳梗塞の半数近くを占め、日本人では一番多いタイプ 脳の細い動脈が高血圧で痛めつけられながらも破れずに長期間を過ぎると、だんだん詰まって、脳の深い部分に小さな梗塞ができます アテローム血栓性梗塞は、首から脳に通じる頸動脈や頭蓋内の比較的太い動脈の硬化(アテローム硬化)が原因となって起こる梗塞です アテローム硬化とは、血管の中でコレステロールがお粥(かゆ)が固まったようになっていることから、粥状硬化(じゅくじょうこうか)ともいわれます

心原性塞栓症は、心臓あるいは頸動脈などの太い血管でできた血栓(血の塊)が、ある日突然、血液の流れに乗って脳に運ばれ、脳の血管を詰まらせてしまうものです 比較的大きい病巣ができるため、症状が強いことが多く、生命が危険な場合も多くなります

脳の血管が、動脈硬化を起こしてもろくなっている上に高血圧が続くと、さらにもろくなり、ついには破れて脳の中で出血が起こります 脳から出血した血液は固まって塊(これを血腫といいます)になります。頭のなかで血腫が大きくなると、頭の中の圧力が高まったり、血腫がまわりの正常な脳を押したりするので、脳の働きが悪くなります 出血した場所によって症状は違いますが、片麻痺、感覚障害を伴うことが多く、重症だと意識障害、さらには死亡につながることがあります

脳は頭蓋骨に守られていますが、骨の下にはくも膜というクモの巣のように透明な薄い膜があり、その内側に脳があります。脳に血液を送る血管はくも膜の下を走っています。 この血管に動脈瘤(こぶ)や動脈硬化があると、血圧が高くなったときに急に破れます。出血した血液は、くも膜と脳のすき間に拡がっていきますが、これがくも膜下出血です 何の前触れもなく突然猛烈な頭痛、吐き気、嘔吐が起こり、そのまま意識不明になることが多い疾患です。出血が軽い場合、意識は回復しますが、出血量が多いときや、血液が脳内に流れ込んだ場合には死に至ることもあります。1度出血した動脈瘤は、短時間の内に再出血することが多いため、入院しての絶対安静が必要です

脳卒中は何の前触れもないか?というとそうではありません。中には警告発作が生じているものもあります。その警告発作が「一過性脳虚血発作(TIA:Transit Ischemic Attack)」です 前触れの症状としては、舌がもつれた感じ、言いたいことが言えない、片側の手足がしびれるなどの症状があります 症状が軽く一時的なことが多いためそのまま放置しがちですが、再び脳の血管を詰まらせる可能性は高く

線溶系で大切な役目を担うのがプラスミンと呼ばれるタンパク分解酵素です。このプラスミンが凝固血栓を分解していきます。 血栓溶解療法(t-PA・ウロキナーゼ等) 線溶系で大切な役目を担うのがプラスミンと呼ばれるタンパク分解酵素です。このプラスミンが凝固血栓を分解していきます。 プラスミノーゲンおよびプラスミノーゲン活性化因子が、凝固血栓中のフィブリンと呼ばれる血液凝固に欠かせないタンパク質に吸着することで、プラスミノーゲン活性化因子が活発となり、効率的にプラスミンが産生され血栓を分解していきます。

脳保護剤(フリーラジカル消去剤) 脳梗塞急性期に作用し,脳浮腫,脳梗塞,神経症候,遅発性神経細胞死などの虚血性脳血管障害の発現及び進展(増悪)を抑制に作用。フリーラジカル消去による細胞膜脂質の過酸化を抑制し脳保護作用を示します フリーラジカルとは、脳などの細胞が脳梗塞などで障害を受けた場合に、障害を受けた細胞から放出される「活性因子」です。この「フリーラジカル」が周りの脳細胞に影響を与えて、脳梗塞による被害をより広げてしまう「遅発性神経細胞死」という現象を引き起こします。

血液が固まる仕組みとしては、「血小板血栓が作られる過程」と「フィブリン血栓が作られる過程」の2パターンがある 血液が固まる過程の中でも、血小板血栓の生成を予防する薬を抗血小板薬と呼ぶ。それに対して、フィブリン血栓が作られる過程を抑制する薬を抗凝固薬と呼ぶ 血液をサラサラにする薬(血液を固まりにくくする薬)には抗血小板薬と抗凝固薬の2種類が存在する。血小板血栓とフィブリン血栓のどちらの疾患を予防したいかによって薬が使い分けられる

・血小板血栓(抗血小板薬) 血小板がどのような時に活性化しやすいかと言うと、動脈のように血液の流れが早くなっている場所で活性化しやすいと考えられている 動脈硬化を発症すると、血管壁が傷つきやすくなる。そして、動脈硬化によって作られたプラークが破裂することによって血管に傷がつくと、血小板が活性化して血栓が作られる この時に生成した血栓が脳血管を詰まらせると脳梗塞となり、冠動脈を詰まらせると心筋梗塞を発症する。つまり、これら血小板が主に関与している血栓を予防したい場合は抗血小板薬を使用すれば良いことが分かる

・フィブリン血栓(抗凝固薬) 血小板血栓とは逆に、フィブリン血栓は血液の流れが遅い静脈で生成しやすい。そのため、この血栓が作られる主な原因としてはうっ滞(血液の流れが滞っている状態)がある 不整脈の一種である心房細動では、心臓がうまく拍動せずに細かく震えているだけの状態となっている。心臓の拍動が上手くいっていないために血液の流れが滞ってしまい、結果としてフィブリン血栓を生成してしまうのである。この時に生成したフィブリン血栓が脳に飛ぶと脳梗塞を引き起こしてしまう。そのため、この心房細動による血栓の生成を予防したい場合、フィブリン血栓の生成を予防する抗凝固薬を使用する必要がある。また、手術後や長い時間飛行機に乗っている状態など、長時間の安静も同じようにフィブリン血栓が作られやすくなる。そのため、これらの患者さんに対しても抗凝固薬が使用される

血小板血栓は動脈に出来やすいことから分かるとおり、出来上がる血栓は比較的小さい事が多い フィブリン血栓はより強固な血栓であり、血液の流れが悪い場所で生成するために血栓も巨大になりやすい。そのため、フィブリン血栓が脳や心臓の血管に飛んでしまうと致命傷となる確率が高い

抗凝固剤 トロンビンによる「フィブリン生成」「血小板凝集」「 血管収縮」の3つの作用を抑制する 発症後48時間以内の脳血栓症急性期(ラクネを除く) 蛋白質分解酵素の一つであるプロテアーゼの一種。血液の中にはプロトロンビンとして存在しており,活性化してトロンビンとなる。血液凝固の際に水溶性のフィブリノーゲンを不溶性のフィブリンとする作用をもっている

オザグレルは、血小板の凝集因子として強い活性を持つTXA2の生成を阻害して、血小板凝集を抑える薬剤です 抗血小板薬 オザグレルは、血小板の凝集因子として強い活性を持つTXA2の生成を阻害して、血小板凝集を抑える薬剤です TXA2による血小板凝集能を抑制すると共に、プロスタサイクリンの産生を促進して、両者のバランス異常を改善する。また、脳血管攣縮や脳血流量低下の抑制作用も認められている プロスタサイクリン 毛細血管から分泌され血小板の凝集を防止し、血管を拡張する抗血栓作用がある

抗血栓療法の分類 1. 抗血小板療法: 血小板の働きを抑制して、いわゆる血液をさらさらにする治療法です。主として、動脈血栓症(脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈血栓症など)の予防に用います。もっとも歴史のあるお薬は、アスピリン(バファリン、バッファリンと同じ)です。 2. 抗凝固療法: 凝固の働きを抑制して、いわゆる血液をさらさらにするお薬です。主として、静脈血栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓など)や、心房細動からの脳塞栓(心原性脳塞栓)の発症予防に用います。もっとも歴史のあるお薬は、ワルファリン(商品名:ワーファリン)です。 3. 線溶療法: できてしまった血栓を溶かす治療です。ウロキナーゼやt-PAがこの分類に属する治療薬です。 抗血栓療法、抗血小板療法、抗凝固療法は、それぞれ意味するところが違います。抗血小板療法と抗凝固療法を合わせて(線溶療法も含めることがあります)、抗血栓療法と言います

蛋白リン酸化酵素阻害剤 Rho-kinase阻害作用

脳梗塞を起こして、梗塞範囲の脳細胞が壊死してくると、その梗塞範囲が「浮腫」を起こすようになります。大体発症から1~3日経過あたりがピークになります。浮腫とは細胞の水分調節機能が崩壊して水を際限なく吸ってしまう、また血管壁が崩壊して血漿が染み出してきてしまうなどの理由で起こる一種の「水ぶくれ」です 頭蓋骨という限られた範囲に詰まっている(実際はさらに硬膜・くも膜・軟膜で包まれて)脳の一部がそうやって腫れてしまうと、周辺の正常な脳細胞までもが圧迫されて、正常な機能を喪失し、最悪は壊死の範囲が広がる これを防ぐために脳の腫れ・浮腫を抑えるのが「抗浮腫療法」

「グリセロール」などの薬剤で、主に静脈注入で使用されます。非常に水を吸収する力の高いグリセロールを血中に投与することで血液の浸透圧を一時的に引き上げ、脳細胞から水を吸い取って尿などにするわけです 本来のバランスを大きく崩して尿を出させますし、高浸透圧状態になっている血液からの尿濾過ですので腎臓への負担はかなり大きくなります。また、心臓への負担も大きいため、腎臓・心臓に大きな不安のある高齢者ではこの治療を行えない場合もあります より強力な抗浮腫作用を持つ薬剤としてマンニトールなどもありますが、こちらは脱水症状も引き起こす可能性が有るため、より緊急性の高い脳浮腫対策に用いられます