加速器の基本概念と構成                 May 17, 2006                 KEK加速器 佐藤康太郎.

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加速器の基本概念と構成                 May 17, 2006                 KEK加速器 佐藤康太郎

加速可能な粒子 電荷を持った安定な粒子 電子、陽電子 陽子、反陽子 正、負イオン、アルファ ミュオン 短寿命  電子、陽電子  陽子、反陽子  正、負イオン、アルファ  ミュオン 短寿命     相対論的効果による延命、将来計画の加速器(muon factory)  中性子 スピンによる磁気モーメント

加速器のエネルギー 非相対論的:運動エネルギー 相対論的: 荷電粒子への力: Lorentz力

エネルギー増減 エネルギー増減率 よく知られているように、電場のみ寄与する エネルギー変化量 U:電圧(volt, MKSA) エネルギー単位 小さな量にも見えるが、温度に換算すると超高温

粒子の偏向 Lorentz力の比較 高エネルギーではBの効果はEの約100倍 低エネルギーではEも有効、CRT

初期の加速器開発 高電圧発生装置+粒子源 1932年 Cockcroft-Walton 500keV pによるLiの核破砕 1933年 Van de Graaff 1MV イオン加速 ベルト式静電起電機 Tandem型:負イオンを高圧部で正イオンへ変換      加速電圧を2倍 制限:絶縁破壊、    粒子源を高圧部に設置、電力、信号の伝送の課題

繰り返し加速のアイデア サイクロトロン 一様、一定磁場 加速は2台のD電極間のRF電場 加速とともに円軌道が大きくなる. 非相対論領域では回転周波数は一定 サイクロトロン周波数 RF周波数の繰り返しで連続的に加速可能 陽子で20MeV程度 現在でも大出力加速器として有用、産業、医療

繰り返し加速:線型加速器1 Drift tube linac 加速によって速度が変わる粒子、 陽子、イオン 一定のRF周波数 drift tube間のgapでのRF電場による加速. 加速によって速度が速くなるにつれ、 drift tubeを長くして、gapでの同期を取る. RF周波数の繰り返しで連続加速が原理的に可能 中エネルギーの陽子、イオン加速に現在でも有用

繰り返し加速:線型加速器2 Disk loaded linac 光速に近い粒子の加速 電子 一定周波数 一様なwave guide中の電波の伝播では、 phase velocity > c, 同期がとれない Wave guide中にiris diskを挿入し、電波を散乱させ、  phase velocity = cに調整 Microwaveの繰り返しで連続加速が原理的に可能 Room temp. linear colliderで採用 医療用電子加速器、X線発生用 SC linear colliderも加速原理は同じ(disk loadedではないが)

円型繰り返し加速の発展1 サイクロトロンの限界1 相対論的効果が見え始めると、回転周波数が低下し、 同期が外れることによる最高エネルギーの制限. 最高エネルギー増加のアイデア 1.加速周波数を変えて、同期をとる.      synchro-cyclotron 800MeV ただし、連続加速は不可能. 周波数変調による断続的加速. 2.回転周波数が一定となる磁場分布、  (実際には収束作用を持たせるため、   半径及び周方向にも磁場が変化)        AVF cyclotron 100MeV

円型繰り返し加速の発展2 サイクロトロン(型)の限界2 加速とともに軌道半径が増加するため、 すべての軌道を含む面積の磁場が必要. 最高エネルギー増加とともに磁石が巨大となる. 加速途中の軌道を一定にするアイデア  磁場も加速電場周波数も互いにエネルギーと同期をとって変動 1.ベータトロン   磁場変化で発生する誘導電場で加速. 2.シンクロトロン   磁石が軌道上のみ、磁石の最小化   軌道上のRF空洞で加速 高エネルギー円型加速器の定番

ベータトロン 加速電場を必要としない特殊な加速器、電子用 誘導電場 半径rの円で積分 ベータトロン条件

シンクロトロン 一定軌道 2つの同期条件が必要 運動量と磁場との同期 運動量と加速周波数の同期 (実際には加速周波数はfrev(t)の整数倍)

収束作用 粒子の加速の安定化、収束作用が必須 収束作用:変位に応じた(比例した)復元力 最も簡単な例:一次元調和振動子        振動数が振幅に依存しない. 加速器の場合は3自由度 1.進行方向(縦方向)   高周波電場の加速位相との同期のずれ 2.横方向(2自由度)  設計軌道からの水平、垂直方向のずれ 3自由度すべてに、収束作用が必要

縦方向の収束、位相安定の原理 原点:平衡粒子 決められた加速量が正確に得られる位相で 常に加速装置を通過する. 単振動子との比較   決められた加速量が正確に得られる位相で 常に加速装置を通過する. 単振動子との比較 変位 ー>Df 平衡粒子の位相からのずれ、 速度 ー>DE 平衡粒子からのエネルギーのずれ DEとDfの関係(符号)が加速器によって異なる Df 平衡粒子の位相は2カ所ある. 円型、 相対論的 符号によって片方が安定(stable fixed point)、 他方が不安定(unstable fixed point) DE 安定点の周りの振動:シンクロトロン振動 DfがDEに依存しないと位相安定はない 1.円型加速器のtransition energy 2.高エネルギー電子線型加速器 光速で位相安定は不必要 非相対論的

横方向の収束1 弱収束 一様磁場: 水平方向の設計軌道からのずれは 1周すると戻る、振動数1. 垂直方向は収束がない.  1周すると戻る、振動数1. 垂直方向は収束がない. 傾斜(外側で低下)磁場: 垂直方向の収束作用が発生. 水平方向の収束が低下.傾斜が大きすぎると発散作用 弱収束:水平、垂直とも収束できる傾斜磁場  設計軌道からずれた粒子は設計軌道の周りを振動      ー> ベータトロン振動  一周あたりの振動数は、水平、垂直方向とも1以下.

横方向の収束2 強収束 光線の場合には凸レンズが存在. 水平、垂直の両方で収束. 中心からのずれに比例して中心方向へ偏向. 荷電粒子への対応物は存在するか?  同心円状の磁場方向で、半径に比例した強度.  物理的にほとんど不可能. B(r) 傾斜磁場 弱収束の例では、水平発散、垂直収束. 逆の傾斜では、作用が逆.  同時に収束は物理的に不可. 弱収束 r

横方向の収束2(続) 光学レンズからのヒント: 凸と凹レンズを適当に離したレンズ系は収束作用 強収束の原理(革命的)  凸と凹レンズを適当に離したレンズ系は収束作用 強収束の原理(革命的) 向きの違う傾斜磁場を適当に離しておくと、 水平垂直の両方で収束作用. 傾きを大きくすると、さらに収束作用を強くできる. 収束作用が強くなったことにより、 粒子の広がりが小さくなり、磁石が最小化. ベータトロン振動数を大きくできる. KEKB 〜40、KEK-PS ~7  線型を含むほとんどすべての加速器の収束

横方向の収束2(補) 機能分離型(separated function): 傾斜磁場を一様な部分(偏向)と、傾きの部分(収束)とに分け、 それぞれを別な磁石. B 偏向と独立に収束を  調整できる. = + r 偏向(2極)磁石 4極磁石 機能複合型(combined function): 偏向と収束の両方の機能を持つ磁石、加速器の小型化 円型の高エネルギー加速器 機能分離型シンクロトロン

KEK PS Linac, Booster

KEK PS Booster

KEK PS MR, Booster

KEK PS Booster bunch 1

KEK PS Booster bunch 2

KEK PS MR, Booster