第14回 法人(法人の意義と種類;法人の対内的・対外的法律関係) 民法(1) 第14回 法人(法人の意義と種類;法人の対内的・対外的法律関係)
法人の意義と種類 法人の意義 法人の種類 法人=自然人以外に、法律によって権利能力の帰属主体(→法人格)として認められたもの 社団=人の集まりに法人格が認められたもの 財団=財産の集まりに法人格が認められたもの →さらに、法人の目的に応じた区別として、営利法人と公益法人という区別がある
公益法人制度改革 公益法人制度改革 ・公益法人制度に関する不備 ①設立に関する許可主義(←設立を許可するかどうかが主務官庁の裁量に委ねられる) cf. 特定非営利活動促進法(NPO法)(1998年)→認証主義 ②営利目的でも公益目的でもない法人(e.g. 同窓会や互助団体)の受け皿の不存在 cf. 中間法人法(2001年)〔→現在は廃止〕 →一般法人法(2006年)、公益法人認定法(2006年)の制定へ
公益法人制度改革 一般法人法(2006年) 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」 ①非営利法人一般に関し、準則主義(法定の条件を備えて登記を行えば法人格を取得可能)を採用 ②設立に際しての主務官庁によるコントロール(←許可主義)から、会社類似の内部統制制度(←自律的なガバナンス)へ ③非営利法人のうちで公益認定を受けたものが、公益法人として扱われる(←税法上の優遇措置等のメリット) cf. 認定特定非営利活動法人制度(認定NPO法人制度)(2001年) →認定NPO法人に寄付をした個人や法人に税制上の優遇措置が与えられるため、寄付金の増加を期待できる
社団と組合 社団と組合における構成員の責任 原則として、社団=有限責任、組合=無限責任 原則として、社団=有限責任、組合=無限責任 有限責任事業組合契約法(日本版LLP [Limited Liability Partnership]) 民法上の組合でも、一定の要件を満たせば構成員が有限責任しか負わない団体(LLP)となし得る →無限責任か有限責任かは、組合と社団の区別とは無関係なものとなった 社団と組合における財産関係(←共同所有形態としての共有・合有・総有) 組合→合有(個々の構成員の持分は潜在的にのみ認められ、持分の処分や清算前の分割請求などは認められない) 社団→総有(団体的な拘束が強く、個々の構成員の持分は観念されない)
権利能力なき社団 権利能力なき社団 最判昭和39・10・15民集18-8-1671 法人としての実質を有する社団でありながら、未だ法人格を取得していない団体の取扱い →権利能力なき社団として、法人に類する取扱いを一定限度適用する →財産の総有的帰属;団体名義での不動産登記は認められない(最判昭和47・6・2民集26-5-957) 最判昭和39・10・15民集18-8-1671 「権利能力のない社団というためには、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要する。」
権利能力なき社団 団体の債務と構成員の責任 組合→構成員の無限責任 社団→構成員の有限責任 ◎最判昭和48・10・9民集27-9-1129 「権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、その社団の構成員全員に、一個の義務として総有的に帰属するものであり、構成員各自は、取引の相手方に対し、直接には個人的責任を負わないと解すべきである。」 →権利能力なき社団における構成員の有限責任
権利能力なき社団 構成員の債務と団体財産 構成員の債権者による持分の差押えの可否 cf. 組合に関する民法676条1項 「組合員は、組合財産についてその持分を処分したときは、その処分をもって組合及び組合と取引をした第三者に対抗することができない。」 →持分に対する差押えは処分に等しいものであるため、組合員の債権者は持分に対する差押えをなし得ない →権利能力なき社団についても、同様に解すべき
法人の組織 一般社団法人の組織 一般財団法人の組織 必置機関としての社員総会と理事 社員総会=総社員で構成される最高の意思決定機関 理事=業務執行機関 →その他、任意の機関として、理事会、監事(←理事の業務執行についての監督機関)、会計監査人を置くことができる 一般財団法人の組織 理事会(←理事相互の監督)、評議員および評議員会(←独立の立場からの理事の監督)、監事が必置機関となる
法人の能力 法人の能力に関する民法34条 「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」 →「目的の範囲」による制限は、法人の権利能力に関する制限か、代表者の代理権に対する制限か ◎八幡製鉄政治献金事件(最大判昭和45・6・24民集24-6-625) 「会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められる限り、会社の権利能力の範囲に属する行為である。」 →「目的の範囲」による制限を法人の権利能力に関する制限と解した上で、営利法人における「目的の範囲」につき、極めて広範に解釈
法人の能力 非営利法人における「目的の範囲」 ・対外的効力 員外貸付(組合員以外に対する貸付) ・対内的効力 員外貸付(組合員以外に対する貸付) →「特段の事情の認められない限りは、少なくとも右組合の事業に付帯する事業の範囲内に属するものと認めるを相当とする。」(最判昭和33・9・18民集12-13-2027) ・対内的効力 税理士会による政治献金のための特別会費の徴収 →目的の範囲外であるとして、会員の納入義務を否定(南九州税理士会事件、最判平成8・3・19民集50-3-615) cf. 阪神淡路大震災における復興支援のための特別負担金の徴収 →目的の範囲内(群馬司法書士会事件、最判平14・4・25判時1785-31)
定款等による代表権の制限 代表者の代理権に加えられた内部的制限(民法旧54条) 一般法人法77条5項、197条、会社法349条5項 「(代表者の)権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」 ←表見代理に関する110条(→第三者の保護要件としての「正当な理由」〔=善意無過失〕)の特則 ◎最判昭和60・11・29民集39-7-1760 定款による代表権への制限について知っていたが、その制限を解除する旨の理事会の決定があったものと第三者が信じた場合につき、そう信ずるにつき正当な理由があるときには、110条が類推適用されるとした