銀河物理学特論 I: 講義1-2:銀河の輝線診断 Tremonti et al. 2004, ApJ, 613, 898

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どんな天体がX線を出すか? MAXIのデータを1年半に わたり集積した全天X線画像
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銀河物理学特論 I: 講義1-2:銀河の輝線診断 Tremonti et al. 2004, ApJ, 613, 898 2009/04/27

準安定準位と禁制線 : 酸素原子、イオンの場合 準安定準位と禁制線 : 酸素原子、イオンの場合 電子密度が臨界密度よりも低い時には、電子温度によって各準位の定在数の比が決まるので、輝線比から電子温度を推定することができる。 5000-10,000K の温度範囲では電子密度によって各準位の定在数の比が決まるので、電子密度を推定することができる。

金属量の決定 : 厳密に行う場合には。。。 小暮 智一 “星間物理学” 金属量の決定 : 厳密に行う場合には。。。 小暮 智一 “星間物理学” Collisionally excited forbidden lines を用いて各銀河のO/H 組成比を推定する。 [OII] 3729/3726, [SII] 6716/6731 から電子密度を推定する。 [OIII] (4959+5007) / 4363 から電子温度を推定する。 電子温度、電子密度が決まると、、 酸素の各電離度に関連したラインとバルマー線の強度比を 合わせることで、酸素の組成比がわかる [OIII] / Hb + Te -> O++ / H+  [OII] / Hb + Te + ne -> O+ / H+ O++ / H+ + O+ / H+ -> O / H

金属量測定の難しさ: 単一のライン比では2価関数になるものがある。ライン比によってはAGNの影響が大きくなる。波長域が離れると(たとえばR23)ダスト赤化の影響が大きくなる。 Kauffmann et al. 2003, MNRAS, 346, 1055 Maiolino et al. 2008, A&A, 488, 463

銀河の化学進化モデル: 1-zone model Instantaneous Recycling Approximation = 生成された星はすぐに爆発して、ある割合を残骸に閉じ込め(lock-up: 白色矮星、中性子星、ブラックホール、長寿命の星)、ある割合を金属汚染して放出(星風、超新星爆発)する。 1-zone model = Mgas(t) + Mstar(t) = 一定とする。 これらの仮定が成り立つ場合、ガスが星になった割合に合わせてガスの中の金属組成比( Z(t) )は上がっていく。 ガスの中の金属の量は Mgas(t) * Z(t) イールド P= Mgas(t) * dZ(t) / dMstar(t) : 星ができた時にどれだけガスの中に金属量が出ていくか。 ガスの組成は Z(t) = - P ln( Mgas(t) / Mtotal(t) ) 質量で平均した星の組成は <Z> = P

星の金属量とガスの金属量の比較: SDSS の銀河のスペクトルから D4000, Hb, HdA+HgA, [Mg2Fe], [MgFe]’ として定義されるインデックスを測定し、モデルと比較して年齢、金属量を決めた。ガスの金属量は観測された時点での値なのに対し、星の金属量はこれまでのそれぞれの星の形成された時点での金属量の光度で重みづけされた平均(モデルと比べにくい?)。 Gallazzi et al. 2005, MNRAS, 362, 41