井原章之 (Toshiyuki Ihara) 東京大学 秋山研究室 D2

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井原章之 (Toshiyuki Ihara) 東京大学 秋山研究室 D2 ’06 11/06 @ 軽井沢 合同セミナー 電子系におけるKMS関係 井原章之 (Toshiyuki Ihara) 東京大学 秋山研究室 D2 Ph.D student of Akiyama group in Institute for Solid State Physics, University of Tokyo and CREST, JST, Chiba 2778581, Japan 10

イントロ KMS (Kubo-Martin-Schwinger) relation 発光 吸収(利得) (ボーズ分布関数) ボーズ分布 1/ボーズ分布 発光 吸収 ※Einstein’s relation と呼ぶ文献も多い μ Henry et al., J. Appl. Phys. 51, 3042 (1980). Chatterjee et al., Phys. Rev. Lett. 92, 067402 (2004).

電子に比べて正孔の密度が極端に小さい場合 発光 吸収(利得) (ボーズ分布関数) 電子系の場合(正孔の密度が小さい場合) const

背景 ① 関係式 I(ω)=g(ω)×α(ω)を積極的に使った例 実験で使う例 : 発光から利得を求めるために利用 ・ Henry et al., J. Appl. Phys. 51, 3042 (1980), J. Appl. Phys. 52, 4457 (1981) J. Appl. Phys. 52, 4453 (1981).   “Measurement of gain and absorption spectra in AlGaAs buried heterostructure lasers” (526-528) ・ Song et al., App. Phys. Lett. 72, 1418 (1998). “Gain characteristics of InGaN/GaN quantum well diode lasers” (593) 理論で現われる例 : 発光と利得を結びつける関係式として紹介 ・ Haug et al., Prog. Quantum Electron. 9, 3 (1984). “Electron theory of the optical properties of laser-excited semiconductors“ (568) ・ Zimmermann (1988). “Many-particle theory of highly excited semiconductors” (572) ・ Koch et al., Physica E 14, 45 (2002).  “Theory of the optical properties of semiconductor nanostructures” (612) ・半導体レーザ(伊賀健一編著) 3章 (浅田雅洋)「半導体と光利得」→拡張された拡張されたアインシュタインの関係式 I(ω)=g(ω)×α(ω)を使って吸収(利得)から発光を計算する例 ・ Rodriguez et al., Phys. Rev. B 47, 1506 (1993). “Optical singularities in doped quantum-well wires” (9) ・ファイさん Hatree-Fock計算 ボーズ分布関数

背景 ② そもそKMS条件とは何か 線形応答理論  (電場など平衡状態を乱す外力を系に加えた時の系の応答を、外力の一次の範囲で近似する理論) ・ Kubo et al., J. Phys. Soc. Jpn. 12, 570 (1957). “Statistical-Mechanical Theory of Irreversible Processes. I. General Theory and Simple Applications to Magnetic and Conduction Problems” (634) ・ Martin et al., Phys. Rev. 115, 1342 (1959). “Theory of Many-Particle Systems. I” (635) ・理学研究科 非平衡統計 (非平衡物理学基礎論) 講義ノート 第11回 「線形応答理論の歴史的レビュー」  → KMS条件:無限系の熱平衡状態を定義するために、時間発展との関連で熱平衡を特徴づける条件式。 ③ KMS関係が成立するための条件とは? 励起子などの束縛状態の存在下では、KMS関係を疑問視する声もある ・ Kira et al., Prog. Quantum Electron. 23, 189 (1999). “Quantum theory of spontaneous emission and coherent effects in semiconductor microstructures” (614) ・ Chatterjee et al., Phys. Rev. Lett. 92, 067402 (2004). “Excitonic Photoluminescence in Semiconductor Quantum Wells: Plasma versus Excitons” (611) 成立するための条件については、 理論的にも実験的にもまだ決着はついていないようだ。 ※ そもそも、実験的に発光と吸収(利得)を両方測定してチェックした例がない!?

PLE measurement on perpendicular geometry 直交配置では散乱光が減り、共鳴吸収が測定できる 単一量子細線の(共鳴)PLEスペクトルの電子濃度依存性や温度依存性が測定可能!

Sample structure of n-type doped T-wire <fabrication> MBE with cleaved edge overgrowth method <size of wire> 14 x 6nm x 4mm(single) <doping> ①Si modulation doping ②FET gate structure →tunable electron density <measurement> Temperature-elevated micro-PL spectra & resonant PLE spectra

Result at high electron density High electron density : 6x105 cm-1 Cryostat temperature : 5K (Estimated temperature : 10K) Vg=0.7V ’04 T. Ihara et. al. We observed the Fermi-edge absorption onset with small FES enhancement

Good agreements between PLE and PL×exp[β(ћω)] at T=10K 発光から吸収に変換してみる 温度:パラメータ PL (I) PLE with T=10K with T=5K with T=15K Good agreements between PLE and PL×exp[β(ћω)] at T=10K

発光から吸収に変換してみる 1D 2D

発光と吸収から温度を見積もる PL (I) PLE (A) A/I

発光と吸収から温度を見積もる(様々な電子濃度) 上から順に 10.6 K 11.5 K 10.5 K 10.1 K 10.0 K Log [ A/ I ] Log [ I / A ] Photon energy

発光と吸収から温度を見積もる(温度を変える) 温度計 51.75 K 41.11 K 30.35 K 20.3 K 3.671 K

発光と吸収から温度を見積もる(温度を変える) 温度計 51.75 K 上から順に 59.9 K 44.8 K 34.0 K 22.9 K 13.3 K Log [ A / I ] 41.11 K 30.35 K 20.3 K Photon energy 3.671 K

気になっていること 電子正孔系 電子系 上記の関係式を用いる際に気をつけるべき点は? ① 準熱平衡状態になっていなければ使えない。 ① 準熱平衡状態になっていなければ使えない。 ② 束縛状態による不連続なピークがある場合は成立しないかも。(by Koch, Kira, Ning) ③ 理論的には、電子正孔系のμ(joint chemical potential)の近傍ではボーズ分布関数が 発散するために、利得から発光を出す時は注意が必要。(by冨尾さん、浅野先生) ④ Mahan励起子や、FESべき発散の効果があっても成立するのかどうかは不明。 Chatterjee et al., Phys. Rev. Lett. 92, 067402 (2004). Kira et al., Prog. Quantum Electron. 23, 189 (1999).

まとめ 電子系のKMS関係が1D・2DのPL・PLEスペクトルの間に 成立しているように見えた。 熱接触が悪いことが原因か、外部の熱輻射による加熱か、 (または、実はKMSで温度を求めることが間違いか)。 原因については不明。これから調べたい。 低濃度の場合や、2次元における対数プロットは今後の課題