神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義3 近傍宇宙の銀河の統計的性質 1) 銀河の星の系の統計的性質 2) 銀河の力学構造 3) 銀河の活動性、中心の巨大ブラックホール 4) 銀河の大規模構造、環境効果 2010/09/14
銀河の星の系の統計的性質
Sloan Digital Sky Survey : アリゾナに 2.5m の専用望遠鏡を設置して可視光での撮像、分光サーベイを統一的に行った。撮像探査は 5 色で 8,423 平方度(赤色で示された領域)をカバーしている。分光探査はこの中の 8,032 平方度(緑色で示された領域)の中で見つかった銀河、クェーサー候補に対して行われた。3800-9200A の波長域をR=1800-2200 でカバーしている。 http://www.sdss.org/
Sloan Digital Sky Survey : 撮像サーベイ ドリフトスキャンモードを用いて、u(3551A; 22.0mag), g(4686A; 22.2mag), r(6165A; 22.2mag), i(7481A; 21.3mag), z(8931A: 20.5mag) の5バンドで探査された(カッコ内は波長と点源に対する限界等級を示す)。典型的なイメージサイズは 1.4” (r-band)。 用いられたフィルターの透過曲線(赤線が大気、CCD効率、望遠鏡を含む値)。 http://www.astro.princeton.edu/PBOOK/camera/camera.htm http://home.fnal.gov/~annis/astrophys/filters/filters.html
Sloan Digital Sky Survey : 撮像サーベイ r<16mag のサンプルの銀河の画像の一例。 Fukugita et al. 2007, ApJ, 134, 579
Sloan Digital Sky Survey : 撮像サーベイ r<16mag のサンプルの銀河の画像の一例。 Fukugita et al. 2007, ApJ, 134, 579
Sloan Digital Sky Survey : 撮像サーベイ r<16mag のサンプルの銀河の画像の一例。 Fukugita et al. 2007, ApJ, 134, 579
Sloan Digital Sky Survey : 撮像サーベイ r<16mag のサンプルの銀河の画像の一例。 Fukugita et al. 2007, ApJ, 134, 579
Sloan Digital Sky Survey : 分光サーベイ 光ファイバーを用いた多天体分光器による大規模分光探査が行われた。銀河については等級が r(Petrosian)<17.77 の 929,555天体、QSOについては i(PSF)<19.1 の 111,693(z<2.3)+9,670(z>2.3) 天体の分光データを得ている。 http://www.astro.princeton.edu/PBOOK/spectro/spectro.htm 各コンポーネントの効率(下)から推定された分光器の効率(上)。
Sloan Digital Sky Survey : 分光サーベイ 銀河のスペクトルの1例 。吸収線も含めたスペクトルの研究。 [OII]3727 Hd Hg 若い 古い CaHK Kauffmann, 2003, MNRAS, 341, 33
SDSS による銀河のスペクトルの統計的性質: 銀河の星質量とスペクトルの関係。銀河の星質量と銀河の星形成史の間に関係がある。 3x10^11 Msolar のところで急激に変化が見られる。 Kauffmann et al., 2003, MNRAS, 341, 54
SDSS による銀河のスペクトルの統計的性質: 銀河の星質量とスペクトルの関係。銀河の星質量と銀河の星形成史の間に関係がある。 3x10^11 Msolar のところで急激に変化が見られる。 Kauffmann et al., 2003, MNRAS, 341, 54
SDSS による銀河のスペクトルの統計的性質: 各星質量毎のバースト割合の推定値の分布。重い銀河ではバースト的星形成の寄与は小さい。 Kauffmann et al., 2003, MNRAS, 341, 54
銀河の形態別の光度関数(各絶対等級ごとの銀河の数密度)。 近傍宇宙の銀河の光度関数 : 銀河の形態別の光度関数(各絶対等級ごとの銀河の数密度)。 Nakamura et al. 2003, AJ, 125, 1682
2MASS (K-band 全天探査) のデータから求められた銀河の形態別の光度関数。 近傍宇宙の銀河の光度関数 : 2MASS (K-band 全天探査) のデータから求められた銀河の形態別の光度関数。 Kochanek et al. 2001, ApJ, 560, 566
近傍宇宙の銀河の光度関数 から星質量関数へ: SDSS+2MASS のデータから求められた銀河の形態別の星質量関数。 Bell et al. 2003, ApJS, 149, 289
銀河の力学構造
力学構造:中性水素ガス(HI) 21cm 線を用いた銀河の回転曲線 Bosma (1978, PhD thesis)
円盤銀河の力学構造 Tully-Fisher Relation: 円盤銀河の光度と回転速度(電波 HI 21cm 線で測定される)の間の関係。より長い波長で光度を測った方が回転速度との相関が良い。星質量との相関が示唆される。 Pierce & Tully 1992, ApJ, 387, 47
円盤銀河の力学構造 Tully-Fisher Relation: より大きなサンプルを用いて形態など別に Velocity – Luminosity – Size の間の関係を調べる。Velocity – Luminosity の間の関係は良い=Tully-Fisher relation。 Courteau et al. 2007, ApJ, 671, 203
楕円銀河の力学構造 : Faber-Jackson 関係、Fundamental Plane Kormendy & Djorgovski 1989, ARAA, 27, 235
楕円銀河の力学構造 : 回転と速度分散 明るい楕円銀河では回転の寄与は成分は速度分散に比べて小さいが、暗い楕円銀河では回転の成分の寄与が大きい。回転により扁平な形状をしている場合に必要な回転速度を持つものもある。 Davies et al. 1983, ApJ, 266, 41
楕円銀河の力学構造:速度分散と回転 速度分散の寄与と他のパラメータ(楕円形からのずれの大きさなど)との関係。 Kormendy & Djorgovski 1989, ARAA, 27, 235
より詳細な力学構造を調べる 例えば SAURON survey: 面分光(3次元分光)により銀河中心部の力学構造をマッピングする。ロングスリットではスリット方向の情報しか得られないが、面分光により銀河全体からの情報が得られる。たとえばSAURON survey では William Herschel Tel. 4.2m 望遠鏡に下のような面分光器を取り付けて 50 近い近傍の E-S0 銀河の面分光サーベイを行った。 Bacon et al. 2001, MNRAS, 326, 23
楕円銀河の力学構造 : 回転と速度分散 見かけの傾きの効果も考慮したモデルにより V/sigma と楕円率の間の関係を再検討。 楕円銀河の力学構造 : 回転と速度分散 見かけの傾きの効果も考慮したモデルにより V/sigma と楕円率の間の関係を再検討。 速度分散が等方(緑)、非等方(実線)の場合のモデル。 Cappellari et al. 2007, MNRAS, 379, 418
銀河の活動性、中心巨大ブラックホール
活動銀河中心核の紫外線・可視スペクトル: Seyfert 1 vs. Seyfert 2, Seyfert 1 には FWHM=2000-10000km/s の幅の広い輝線が見られる。禁制線は幅の広い輝線は持たない=幅の広い輝線を出す領域は密度が高く、衝突が効いているため禁制遷移は起こらない。幅の狭い(FWHM~100-500km/s)の輝線も見られる。禁制線も顕著に出てくる。
活動銀河中心核の紫外線・可視スペクトル: QSOでは広輝線領域から出てくる幅の広い輝線が顕著になる。 Richards et al. 2003, ApJ, 126, 1131
活動銀河中心核の紫外線・可視スペクトル: 輝線比を用いた星形成領域のスペクトルと Seyfert 2の分離。 AGNs tend to have stronger highly ionized emission lines, like [OIII] Solid line :selection line by Kewly et al. (2001) model calculation, Dashed line : empirical line. Kauffmann et al. 2003, MNRAS, 346, 1055
活動銀河中心核の構造: ダストトーラスを用いた統一モデル。X線のスペクトルからもサポートされる。 Awaki et al. 1991,PASJ, 43, 195
活動銀河中心核の普遍性: 近傍銀河の中心核付近のスペクトルの詳細を調べることで銀河の中の低光度の活動性を見つけることも出来る。低光度の活動銀河核はかなりの割合の銀河が持つ。 Ho et al. 1997, ApJ, 487, 568
Stellar motion at the center of the MW-galaxy 2018/11/17 From http://www.astro.ucla.edu/~ghezgroup/gc/pictures/index.shtml These images/animations were created by Prof. Andrea Ghez and her research team at UCLA and are from data sets obtained with the W. M. Keck Telescopes.
銀河のバルジと中心巨大ブラックホールの質量の相関 Introduction 2018/11/17 銀河のバルジと中心巨大ブラックホールの質量の相関 From STSci
どのパラメータとの相関がプライマリなのか?: 当初はバルジの B-band 等級との相関が見つけられたが、その後バルジ部分の速度分散との間の方が相関が良いことが示唆された。 Ferrarese and Merritt 2000, ApJ, 539, L9
どのパラメータとの相関がプライマリなのか?: MBH-LK relation has rms~0.3 dex in logMBH, MBH-Mbulge(=Re*Sigma^2, bulge virial mass) has 0.25 dex in logMBH. Marconi and Hunt 2003, ApJ, 589, L21
どのくらい小さい質量まで成り立っているのか?: SDSS 分光データを用いた暗いSeyfert1 の探査。銀河の中心部分の速度分散の測定と合わせると MBH-Sigma 関係とコンシステントになっている。 Barth et al. 2005, ApJ, 619, L151 Greene & Ho 2004, ApJ, 610, 722
どのくらい小さい質量まで成り立っているのか?: M31 の中の星団 G1 の HST/STIS による観測。中心での速度分散は 30km/s で推定されるブラックホール質量は MBH=18000Msolar。 Gebhardt et al. 2005, ApJ, 634, 1093 Gebhardt et al. 2002, ApJ, 578, L41
どのくらい小さい質量まで成り立っているのか?: HST STIS による M15 中心部のブラックホール探査。中心で速度分散と回転速度の二乗和が 14km/s と上がっており、推定されたブラックホール質量はMBH=3900Msolar。 Gerssen et al. 2002, AJ, 124, 3270
どのくらい小さい質量まで成り立っているのか?: HST WFPC2 の画像を用いた M15 中心部の星の固有運動探査。そこから推定される速度分散は中心部で 15km/s。N-body 計算 (Baumgardt & Makino 2003, MNRAS, 340, 227) の結果と比較するとブラックホールは必要なし。上限値は 500Msolar。 McNamara et al. 2003, ApJ, 595, 187
活動銀河中心核でも同じ関係が成り立つのか?: VLT/SINFONI による Centaurus A の中心部分の速度場の観測。推定されたブラックホール質量は 5.5x10^7 Msolar。 Cappellari et al. 2009, MNRAS, 394, 660
活動銀河中心核でも同じ関係が成り立つのか?: 反響マッピングに基づいて求められた AGN のブラックホール質量と母銀河の速度分散の関係。同じ関係が成り立っているとして良い。 Onken et al. 2003, ApJ, 585, 121 Ferrarese et al. 2001, ApJ, 555, L79
散らばりはどれくらいあるのか?: そもそも MBH-Mbulge 関係はどれくらい小さな散らばりで成り立っているのか。イントリンジック(観測の不定性をのぞいた)は 0.3-0.4 dex と推定される。 Gultekin et al. 2009, ApJ, 698. 198
銀河の大規模構造、環境効果
環境による銀河の形態別の光度関数の違い(古典的)。 SDSS前: 環境による銀河の形態別の光度関数の違い(古典的)。 Binggeli et al. 1988, ARAA, 26, 509
環境毎の銀河の形態の割合。Concentration parameter (C) などを用いて銀河を形態分類。 SDSS初期: 環境毎の銀河の形態の割合。Concentration parameter (C) などを用いて銀河を形態分類。 Goto et al. 2003, MNRAS, 346, 601
密度が高い、宇宙初期に銀河が形成される、領域では選択的に楕円銀河が形成される? 環境依存性: 生まれ (nature) か? 密度が高い、宇宙初期に銀河が形成される、領域では選択的に楕円銀河が形成される? 育ち (nurture) か? 密度が高い領域では形成された後で楕円銀河になりやすい? 銀河相互作用? 合体・衝突? 高速のすれ違い? 銀河団内のホットガスによる銀河内ガスのはぎとり?(S0=anemic spiral ?) ローカルな密度場の影響からグローバルな密度場の影響。
銀河の性質の環境依存性 SDSS の大規模サンプル、Subaru/Scam の広視野データを用いて銀河の性質の環境依存性が良い統計で調べられるようになった。 SDSS の結果の一例。楕円銀河の割合は、大局的な銀河の密度によるのか、局所的な銀河の密度によるのか。局所的な銀河の密度、隣の銀河までの距離といったパラメータへの依存性が強い。 Park et al. 2007, ApJ, 658, 898