1次元電子系の有効フェルミオン模型と GWG法の発展

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1次元電子系の有効フェルミオン模型と GWG法の発展 新学術領域「コンピューティクスによる物質デザイン:複合相関と非平衡ダイナミクス」                                計画研究「髙田班」 1次元電子系の有効フェルミオン模型と GWG法の発展 Effective Fermion Model of 1D Electron System and Development of the GWG Scheme 前橋英明、髙田康民 Hideaki Maebashi and Yasutami Takada 東京大学物性研究所  Institute for Solid State Physics, University of Tokyo

⇒ GW近似が明らかにうまくいかない系:性質の悪い金属 GWG法の開発 HM and Y. Takada, Phys. Rev. B 84, 245134 (2011). GWG法の開発 1次元電子系(非フェルミ液体)  3次元電子ガス系(rs>5.25:圧縮率が負のフェルミ液体) 内容 1.GWG法における低エネルギー有効フェルミオン模型   の重要性:一般論と3次元電子ガス系(rs=6)の例 2.1次元電子系の低エネルギー有効フェルミオン模型   を完全に決定する

R. Shankar, Rev. Mod. Phys. 66, 129 (1994) 有効フェルミオン模型の導入 金属(微視的ハミルトニアン ) 金属(有効フェルミオン模型 ) 高エネルギーの 自由度を消去 R. Shankar, Rev. Mod. Phys. 66, 129 (1994) 有効質量 前方散乱相互作用 フェルミ液体模型(2,3次元) 朝永ラッティンジャー模型(1次元)

有効フェルミオン模型に関する厳密な結果 次元に 依存しない 応答関数(乱雑位相近似 → 厳密) W. Metzner, C. Castellani, and C. Di Castro, Adv. Phys. 47, 317 (1998) 次元に 依存しない 応答関数(乱雑位相近似 → 厳密) 自己エネルギー(ジャロシンスキー・ラーキン方程式 → 厳密) 前方散乱(q → 0) ワード恒等式(Ward Identity) → 3点バーテックス関数G

ランダウのフェルミ液体論 (1)局所的な電荷とスピンの保存則 → ランダウの関係式 (2)1粒子スペクトルと運動量分布 → フェルミ液体模型 帯磁率 圧縮率 電荷スティフネス スピンスティフネス (2)1粒子スペクトルと運動量分布 → フェルミ液体模型 微視的ハミルトニアンと 有効模型の関係

GWG法 微視的ハミルトニアンの自己エネルギー 任意のq についての ワード恒等式(Ward Identity) → 3点バーテックス関数G Y. Takada: PRL 87, 226402 (2001); HM and Y. Takada, PRB 84, 245134 (2011). 微視的ハミルトニアンの自己エネルギー 任意のq についての ワード恒等式(Ward Identity) → 3点バーテックス関数G 有効フェルミオン模型の情報をインプット: Ex. 3次元電子ガス系:電荷チャネル 拡散量子モンテカルロ(DMC) 法による圧縮率kの厳密な値 (密度汎関数理論の交換相関核)

3次元低密度電子ガス系 運動量分布関数 1粒子スペクトル関数 有効フェルミオン模型 GWG法 z 1-z

非フェルミ液体(NFL)へとGWG法を展開するために 1次元電子系の有効フェルミオン模型を決定する。 微視的 ハミルトニアン 微視的ハミルトニアン の1粒子スペクトル の k, c, D 有効 フェルミオン 模型 Ex. 3D電子ガス模型(FL)   1Dハバード模型(NFL) Ex. DMC法    ベーテ仮説法    実験値 Ex. フェルミ液体(FL)模型   朝永ラッティンジャー模型 非フェルミ液体(NFL)へとGWG法を展開するために 1次元電子系の有効フェルミオン模型を決定する。

1次元電子系の低エネルギー1粒子スペクトル 「準粒子」の速度vF*の決定 モット転移近傍: 「準粒子」ピーク 既存の理論 1 「準粒子」ピーク 既存の理論 ⇒ 電荷とスピンの速度ucとus    及び臨界指数Kc 「準粒子」の速度vF*の決定

1次元電子系の有効ボゾン模型 朝永ラッティンジャー模型のボゾン化 「ハルデーンの関係式」 圧縮率 電荷スティフネス 帯磁率 スピンスティフネス 朝永ラッティンジャー模型 (パラメーターの数が1個多い)

有効フェルミオン模型 有効フェルミオン模型の応答関数(乱雑位相近似 → 厳密) 電荷密度応答関数: スピン密度応答関数: 2次元および3次元(d=2,3)のフェルミ液体 Cd(x)≠0 ランダウ減衰項 1次元(d=1)朝永ラッティンジャー液体 Cd(x)=0 ランダウ減衰項の消失 応答関数の極 → 電荷とスピンの速度 応答関数の留数 → 臨界指数

1次元電子系の 有効質量と相互作用パラメーターの決定 「ハルデーンの関係式」 = ランダウの関係式 帯磁率 圧縮率 電荷スティフネス スピンスティフネス 前方散乱総和則(パウリの排他律) [SU(2)対称性:           ] ベーテ仮説法による厳密値や実験値 有効質量と相互作用パラメーター [SU(2)対称性:       ]

1次元ハバード模型の有効質量と相互作用パラメーター ほとんど局在した 1次元ヘリウム3系 1次元モット転移系

1次元ハバード模型の「準粒子」の速度 低フィリング: spin character モット転移近傍: charge character

+ 今後の課題: 1次元電子系へのGWG法の展開 1-z z 1次元ハバード模型:有効フェルミオン模型の情報をインプット n=1 低エネルギースペクトル 高エネルギースペクトル z 1-z +

まとめ GWG法における有効フェルミオン模型の重要性 1次元電子系の有効フェルミオン模型をランダウの関係式 と前方散乱総和則によって完全に決定する方法論の提案 1次元ハバード模型の低エネルギー有効フェルミオン模型 を具体的に決定:準粒子速度は、n→0でスピン速度に、 n→1で電荷速度に漸近しながらゼロになる。 今後の課題: 得られた有効フェルミオン模型のパラメーター値を用いた GWG法による1次元ハバード模型の1粒子スペクトル計算