東京大学天文学教育研究センター 博士課程3年 中西 裕之

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東京大学天文学教育研究センター 博士課程3年 中西 裕之 天の川銀河ガスディスクの 3次元構造 東京大学天文学教育研究センター 博士課程3年 中西 裕之

CONTENTS 1. HIガス分布でみる天の川銀河 2. COガス分布でみる天の川銀河 3. ALMAでの観測提案

HIでみる天の川銀河

HIで探る天の川 1. 利点 HIガスは銀河全体の構造を探る良いトレーサー 1. 利点   HIガスは銀河全体の構造を探る良いトレーサー    (I)銀河全体に分布、(II)吸収を受けにくい、(III) 視線速度の情報有 2. 現状   新しいサーベイが次々とアーカイヴ化   最新データ:Leiden-Dwingelooサーベイ(Hartmann & Burton, 1997) (I) 高感度 (0.07 K) (II) 広範囲 (全銀緯) (III)細かいグリッド間隔(0.5度以下) 3. 過去のHIマップの改善点   天の川銀河全体の3次元マップ化   Outer rotation curveのupdate

DATA(その1) HI Survey Data Leiden-Dwingeloo survey (Hartmann & Burton, 1997) 0.5° < l < 240°, -10°<b<10° (Δl ,Δb = 0.5°), HPBW=0.6° , ΔVr=1.03km/s Parks survey (Kerr et al. 1986) 240.5° < l < 350°, -10°<b<10°(Δl=0.5°,Δb=0.25°), HPBW=0.8°, ΔVr=2.km/s NRAO Galactic Center survey (Burton & Listz, 1983) 350°<l<359.5°, -10°<b<10 °, (Δl ,Δb = 0.5°), HPBW=0.4°, ΔVr=5.5km/s

DATA(その2) Rotation Curve inner Galaxy : Clemens(1985) outer Galaxy : Dehnen & Binney (1998)                                          R0=8.0kpc,                           V0=217km/s

METHOD(その1) 1. Tb(l,b,Vr)→ nHI(R,θ, z)の変換 視線速度Vr → 距離r Vr = (R0V(R)/R – V0) sinl cosb R2 = R02 + r2 – 2rR0 cos l l,b:銀経、銀緯、r:太陽からの距離、R:銀河中心からの距離、V:回転速度 輝度温度Tb → HI密度nHI[cm-3] = 1.82 ×1018 Tb dVr/Δr 同じ視線速度 を与える点が 2点存在

METHOD(その2) 2. Inner Galaxyの距離不定性問題 z方向の分布のモデル(Spitzer 1942)を導入 nHI[cm-3]=nHIo sech2((z – zo)/h   nHI[cm-3] = (nHIo1 sech2((r1 tan b – zo1)/h           +nHIo2 sech2((r2 tan b – zo2)/h))/cos b (nHIo1, zo1 , nHIo2, zo2)をfittingで決定 観測 Total HI column density [cm-2] Near point Far point 銀緯 b

RESULTS/Log Spiral Arms Column density map 銀河中心周りの角度 Log R Phase-diagram Lopsided-disk Perseus arm 18° Outer arm 7° Sagittarius-Carina arm  11° Spiral arms

Midplane-Displacement Vertical sliced map Outer Disk : ・warpingと呼ぶ ・Θ=80°、260°で顕著 ・warpingはR=12kpc付近  (星のディスクの外縁)から  外側で顕著となる Inner Disk: ・inner diskも銀河面に対して  傾いている (tilted disk)  (図はR=5kpc)

HIディスクの厚み HIディスクの厚みは (ii) HIディスクの厚みは arm-interarm間で変化 銀河中心から離れるほど 増加   銀河中心から離れるほど   増加 (ii) HIディスクの厚みは arm-interarm間で変化 厚い 薄い Interarm Arm 密度

3-D HIディスク

HIで見る天の川銀河:まとめ 3本のLogarithmic spiral arm(Sagittarius, Perseus, Outer arm)をトレース Lopsided HI disk HI diskのmidplane-displacement HIディスクの厚み 銀河中心から離れるほど増大、 armで薄くinterarmで厚い

COでみる天の川銀河

COで見る天の川 1. 利点 COは銀河中心部の構造を探る良いトレーサー (I)銀河中心部に分布、(II) 視線速度の情報有 2. 現状 1. 利点   COは銀河中心部の構造を探る良いトレーサー    (I)銀河中心部に分布、(II) 視線速度の情報有 2. 現状   80年代以降、全天サーベイが次々とアーカイヴ化   例:コロンビア サーベイ(Dame et al. 2001) ただし COマップは 1例のみ  Clemens, Sanders, & Scoville(1988) 天の川銀河全体の3次元COマップ → 初の試み

COで見る天の川銀河 DATA: コロンビアサーベイ Dame et al. (2001) 手法: HIと同様 分子ガスマップ DATA: コロンビアサーベイ       Dame et al. (2001) 手法:  HIと同様 ・第一象限にはClemensの  5 kpc ring、Perseus arm  が確認できる ・第4象限の分子ガス分布が  初めて明らかになった ・5 kpc ringは第4象限まで  つながっていないようである

COで見る天の川銀河 Midplane-displacementが見られる

COで見る天の川銀河:まとめ 初めて天の川銀河全体の分子ガス分布を 調べた 5kpc ring、Perseus armをトレース  調べた 5kpc ring、Perseus armをトレース 5kpc ringは第4象限まで伸びてはいない CO diskでもMidplane-displacementが見られた

ALMAでの観測提案

近傍Edge-on銀河の観測 ・目的 ・ガスディスクの鉛直方向の構造解明  ・ガスディスクの鉛直方向の構造解明  ・tilted disk, scale-heightの変化は渦巻き銀河に一般的か ・その起源を解明 (磁場強度との相関等) ・背景  ・inner diskの傾きの振幅、scale-heightは100 pc程度   ⇒系外銀河では観測が難しかった  (2” (NMAの分解能)~100pc @10Mpc)  ・天の川銀河では距離の決定にモデルが介在

近傍Edge-on銀河の観測 ・観測ターゲット 近傍edge-on銀河 name 距離(Mpc) 赤緯(°) N55 1.3 -39  例: 近傍NGC銀河トップ5

近傍Edge-on銀河の観測 ・ Scoville et al. (1993)のNGC891の観測と  同等のrms (0.4 K)を達成するには  ・周波数: 115GHz  ・速度分解能:10km/s ・角度分解能: 0.2” (10 pc @10Mpc) の時、1視野あたり6時間積分が必要。 5-10視野で 30-60時間を要求。

まとめ ・HI・COサーベイデータを用いて天の川銀河の3次元的構造を調べた ・銀河面と垂直方向の構造が興味深い ( Midplane-displacement、scale-height) ・渦巻き銀河の一般的な垂直構造を明らかにする上で近傍edge-on銀河の網羅的CO観測が面白い ・5銀河を0.2”分解能で観測するために30-60時間が必要

天の川銀河の構造について これまでの研究 1. HIサーベイによる研究 Oort et al. 1958 2. HII領域 Kerr et al. 1973 Burton & te Lintel 1985 2. HII領域   Georgelin & Georgelin 1976 3. 408MHz continuum Beuermann et al. 1985 4. COサーベイ   Clemens et al 1985 5. COBE(NIR,FIR) Drimmel & Spergel 2001

Scale-height ・静水圧平衡の場合scale-heightは と書ける。 arm-interarm間で最大3倍 以上違う。            と書ける。 arm-interarm間で最大3倍 以上違う。 → arm-interarm間でディス   クでの質量密度が9倍 以上も違うのは不自然。 → 静水圧平衡(重力、圧力のみ)で   説明するのは難しそう。