東京大学理学系研究科 天文センター M2 江草 芙実

Slides:



Advertisements
Similar presentations
2004 年新潟県中越地震と スマトラ沖巨大地震の 震源で何が起こったのか? 八木勇治 (建築研究所・国際地震工学セン ター)
Advertisements

1 銀河系力学構造の 構築について 上田晴彦 ( 秋田大学 ) 郷田直輝, 矢野太平 ( 国立天文台 ) 竹原理論物理学研究会 2011年6月7日 ホテル大広苑.
Determining Optical Flow. はじめに オプティカルフローとは画像内の明る さのパターンの動きの見かけの速さの 分布 オプティカルフローは物体の動きの よって変化するため、オプティカルフ ローより速度に関する情報を得ること ができる.
YohkohからSolar-Bに向けての粒子加速
・力のモーメント ・角運動量 ・力のモーメントと角運動量の関係
W31A領域に付随する 水蒸気メーザーによる3次元的速度構造
先端論文紹介ゼミ Tracking control for nonholonomic mobile robots: Integrating the analog neural network into the backstepping technique 非ホロノミック移動ロボットのための追従制御:
X線による超新星残骸の観測の現状 平賀純子(ISAS) SN1006 CasA Tycho RXJ1713 子Vela Vela SNR.
衝撃波によって星形成が誘発される場合に 原始星の進化が受ける影響
Collision tomography: physical properties of possible progenitors for
VERAのプロジェクト観測とその成果 本間 希樹 国立天文台 水沢VERA観測所.
Non-Spherical Mass Models for Dwarf Satellites
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
東京工業大学    ○ 青木 康平 正 大西 有希 正 天谷 賢治 株式会社アールテック      清水 利恭 小杉 隆司 名古屋大学      礒田 治夫
銀河物理学特論 I: 講義3-3:光度関数の進化 分光探査サンプルによる Lilly et al. 1995, ApJ, 455, 108
重力レンズ効果を想定した回転する ブラックホールの周りの粒子の軌道
本間 希樹 Mareki Honma (水沢VLBI観測所)
NGC4151(活動銀河核)の ブラックホールの観測
M33の巨大HII領域 NGC604における、GMCごとの物理状態の違い
みさと8m電波望遠鏡の 性能評価 富田ゼミ 宮﨑 恵.
大規模数値計算による原始銀河団領域に関する研究
銀河物理学特論 I: 講義1-1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 Kauffmann et al
ステッピングモータを用いた 移動ロボットの制御
すばる望遠鏡を用いた 太陽系外惑星系の観測的研究
東京大学天文学教育研究センター 博士課程3年 中西 裕之
Virgo Survey: Single Peak Galaxies
神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義6 特別編 観測装置の将来計画
Taurus-Auriga association
統計的震源モデルと 半無限平行成層グリーン関数 による高振動数強震動の計算法
星間物理学 講義3資料: 星間ガスの力学的安定性 星間ガスの力学的な安定性・不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。
Virgo CO Survey of Molecular Nuclei Yoshiaki Sofue Dept. Phys
ブラックホール周辺の 磁場構造について 大阪市立大学 孝森 洋介 共同研究者 石原秀樹,木村匡志,中尾憲一(阪市大),柳哲文(京大基研)
「すざく」が NGC 4945 銀河中 に見付けた ブラックホール候補天体
アストロメトリデータによる力学構造の構築方法
SFN 282 No 担当 内山.
銀河風による矮小銀河からの質量流出とダークマターハロー中心質量密度分布
COSMOSプロジェクト: z ~ 1.2 における星生成の環境依存性 急激な変化が起こっていると考えられる z ~1 に着目し、
村岡和幸 (大阪府立大学) & ASTE 近傍銀河 プロジェクトチーム
メンバー 梶川知宏 加藤直人 ロッケンバッハ怜 指導教員 藤田俊明
銀河・銀河系天文学 星間物理学 鹿児島大学宇宙コース 祖父江義明 .
アーカイブデータを用いた超新星の再調査 ―精測位置と天体の真偽― 九州大学大学院 理学府物理学専攻宇宙物理理論
棒渦巻銀河の分子ガス観測 45m+干渉計の成果から 久野成夫(NRO).
Environmental Effect on Gaseous Disks of the Virgo Spirals
星形成時間の観測的測定 東大天文センター M2 江草芙実 第4回 銀河shop 2004/10/19.
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
東邦大学理学部物理学科 宇宙・素粒子教室 上村 洸太
天の川銀河研究会 天の川銀河研究会 議論の種 半田利弘(鹿児島大学).
銀河 galaxy 現在までの認識.
銀河物理学特論 I: 講義2-1:銀河中心の巨大ブラックホールと活動銀河中心核
M33高密度分子ガス観測にむけて Dense Cloud Formation & Global Star Formation in M33
銀河物理学特論 I: 講義3-5:銀河の力学構造の進化 Vogt et al
Fourier 変換 Mellin変換 演習課題
クエーサーの内部構造はどうなっているのか? マグナム望遠鏡の威力
バリオン音響振動で探る ダークエネルギー ~非線形成長と赤方偏移歪みの影響~
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
統計的震源モデルと 半無限平行成層グリーン関数 による高振動数強震動の計算法
Spiral銀河における星形成史について
九州大学 猿渡元彬 共同研究者 橋本正章 (九州大学)、江里口良治(東京大学)、固武慶 (国立 天文台)、山田章一(早稲田理工)
星間物理学 講義1の図など資料: 空間スケールを把握する。 太陽系近傍から 銀河系全体への概観、 観測事実に基づいて太陽系の周りの様子、銀河系全体の様子を概観する。それぞれの観測事実についての理解はこれ以降の講義で深める。 2010/10/05.
The Baryonic Tully-Fisher Relation
1:Weak lensing 2:shear 3:高次展開 4:利点 5:問題点
竜巻状渦を伴う準定常的なスーパーセルの再現に成功
格子ゲージ理論によるダークマターの研究 ダークマター(DM)とは ダークマターの正体を探れ!
パターン認識 ークラスタリングとEMアルゴリズムー 担当:和田 俊和 部屋 A513
定常剛体回転する宇宙ひもからの 重力波放射
大規模シミュレーションで見る宇宙初期から現在に至る星形成史の変遷
pixel 読み出し型 μ-PIC による X線偏光検出器の開発
10/19 GMCゼミ.
すばる /HDSによる系外惑星 HD209458bの精密分光観測
Fourier 変換 Mellin変換 演習課題
Presentation transcript:

東京大学理学系研究科 天文センター M2 江草 芙実

Spiral Galaxies きれいなspiral模様を作るには? 差動回転 →短時間(数回転程度)で形が崩れてしまう×  →短時間(数回転程度)で形が崩れてしまう× 密度波理論:物質波ではなく、物質の粗密が波となって伝わり、定常な形(パターン)を作る。 パターン速度:ΩP [km/s/kpc] パターンの回転する角速度 ポテンシャルと密度・腕の話

Pattern Speed パターン速度がわかると? 銀河面でのcorotationやLindblad resonanceの位置が計算できる。 観測結果と比較する事で、resonanceにおいてどのような現象が起きているかを知る事ができる。 しかし、パターン速度は実際に物質が運動している速さではないので、観測から直接は求められない。

Previous Method Tremaine-Weinberg method Canzian test Canzian 1993 その他 連続の式を使い、パターン速度を求める。 Canzian test Canzian 1993 速度場の非軸対称成分を使い、corotationの位置を求める。 その他 Armの形状からresonanceを決める。 星形成効率のarm/interarm比からcorotationを決める。 Simulationとの比較を行う。

Arm-offset Method (0) 渦巻腕に付随する星形成領域と分子雲の位置のずれを用いる。 仮定 純粋な円運動 剛体のパターン   (ΩP=定数)

Arm-offset Method (1) 観測されるずれ d=VG×Δt-VP×Δt [km] 分子雲の腕 VG×Δt VP×Δt 星形成領域 t=0 t=Δt VG=ガスの回転速度 [km/s] VP=パターンの回転速度 [km/s] Δt=星形成のタイムスケール [s] 観測されるずれ d=VG×Δt-VP×Δt [km]

Arm-offset Method (2) ずれを角度で表すと、 θ=(ΩG-ΩP)×Δt Δt:一定と仮定すれば、 観測量:θ・ΩG 定数:Δt・ΩP   →θはΩGの一次関数   →fittingによって、Δtと   ΩPを同時に求められる。 Δt ΩP

Arm-offset Method (3) 特徴 仮定がシンプルである。 モデルによらない。 パターン速度と星形成時間を同時に決定できる。 誤差の評価が行える。

M51 (NGC5194) 分子雲データ:CO (Helfer et al. 2003) 星形成領域データ:DSSのB-band パラメータ 距離 9.6 Mpc P.A.=22 deg inc.=20 deg CO on DSS B-band

Phase diagram

θ-R relation

Rotation Curve Sofue et al. (1999)より、

θ-ΩG relation

Results パターン速度    ΩP=26+6-4 km/s/kpc 星形成時間    ΔtSF=4.1±0.6×106 年

Previous Results M51のパターン速度 ΩP= 38 Elmegreen et al. (1989) Armの形状・amplitudeによるcorotationの決定 ΩP= 40 Vogel et al. (1993) 速度場の非軸対称成分によるcorotationの決定 ΩP= 16 Oey et al. (2003) HII regionのモデル計算との比較によるcorotationの決定 ΩP= 38±7 Zimmer et al. (2004) COに対してTremaine-Weinberg法を適用 ΩP= 26+6-4 This work

Corotation Radius This work Elmegreen et al. (1989)

Other Galaxies: NGC4254 NMAによるCOとHα画像にarm-offset法を適用 結果 ΩP=26 +10 -6 km/s/kpc Δt=4.8±1.2 106年

Other Galaxies: NGC4321 BIMA SONGによるCOとdssのBバンドデータにarm-offset法を適用 結果 ΩP=37 +7 -6 km/s/kpc Δt=7.8±1.2 106年

Summary Arm-offset Method 3つの渦巻銀河について、それぞれのパターン速度を精度良く決定できた。 ↑ 今まで桁の見積もりしかされていなかった、  星形成時間を初めて観測的に決定した。

ALMAに向けて Arm-offset method Offsetの誤差の最大の原因は、分子雲データ(CO)の分解能(約6秒) ↓ ALMAにより高分解能が達成されれば、更に精度良くパターン速度・星形成時間を決定できる。 M51で分解能が1/10になったとすると、 ΩP=26+2-1 km/s/kpc ΔtSF=4.09±0.06×106 年 高分解能→データ点の増加 「パターン速度と星形成時間一定」の仮定について更なる議論が可能に。

END

これまでの結果 銀河名 パターン速度 方法 Kent (1987) NGC936 104 T-W Cepa & Beckman (1990) NGC3992 (M109) NGC628 (M74) 32 56 SFEのarm-interarm比 Merrifield & Kuijken (1995) 60 ± 14 Sempere et al. (1995) NGC4321 (M100) 20 Canzian + s Canzian et al. (1997) 31 Canzian Wada et al. (1998) 65 simulation Kranz et al. (2001) NGC4254 (M99) Debattista et al. (2002) Milky Way 59 ± 5

結果 NGC4321 NGC5194 NGC4254 Δt=9.7±1.9 106年 ΩP=39 +24 -16 km/s/kpc Δt=9.7±1.9 106年 ΩP=39 +24 -16 km/s/kpc NGC5194 Δt=3.9±0.9 106年 ΩP=23 +35 -22 km/s/kpc NGC4254 Δt=4.8±1.2 106年 ΩP=26 +10 -6 km/s/kpc

まとめ θ‐ΩG relation 結果として妥当な値が得られたので、 この方法の有用性が示された。 以前のNGC4254に加え、今回の2銀河(NGC4321とNGC5194)でも、直線状の分布を確認できた。 Fittingにより、それぞれの銀河においてΔtとΩPの値を同時に決定できた。 ↓ 結果として妥当な値が得られたので、 この方法の有用性が示された。

今後の課題 ずれの求め方 誤差の評価 ↓ 結果として得られるΔt、ΩPの値の 信頼性を高める。 客観的で、自動的に計算できる手法を確立する。 ずれと回転速度の誤差を正しく評価したうえで、fittingを行う。 ↓ 結果として得られるΔt、ΩPの値の 信頼性を高める。