LHCの現状 と CERNの将来計画 2008.11.7 KEK素核研 金茶会 近藤敬比古
T=1.9K P=10-10 torr P∼10-9 torr T=2.725 LHC First Beamの時の冷却状態 月の大気圧は変動するらしいが... P∼10-9 torr LHC First Beamの時の冷却状態
CMS LHC加速器の概要 4 6 7 8 point 1 5 3 2 8つのARCと8つの直線部(約528m)からなる。 Point 1: ATLAS, low b Point 2: ALICE beam injection Point 3: beam collimators Point 4: RF system Point 5: CMS, low b Point 6: beam dump Point 7: beam collimators Point 8: LHCb, beam injection ALICE LHCb ATLAS LHC Lattice, 1 cell 分の構造 quadrupole dipole
First beam in the LHC ・BBCによる世界同時中継のもとで50分で時計回りの450GeVビーム一周に成功した。 ・CERNウエブサイトは世界中から1億以上のアクセスがあった。 ・「素粒子物理学が未だかつてこれほど注目を集めたことはなかった。」(エマール所長)
2008.9.10 10h19 アトラス測定器で捕えた初めてのビームイベント ビームを使ったタイミングの調整も進んでいる。 夜も寝ないで前線で頑張っている奴もいる。 両端に3ステーションずつあるTGCでのhits。ビーム上流側(A-side)にも下流側(C-side)にも赤線で示した多数のヒットがある。 2*109個の陽子が140m上流の閉じたコリメーターにダンプされた時にカロリメタートリガーで得られたもの。
Beam 2 first beam – D-Day 450 GeV陽子ビーム周回の進展の様子 : ビーム軌道は直ちに補正されることが見える。
Beam on turns 1 and 2 時計まわりで初めて1周したときのビーム Courtesy R. Bailey
Few 100 turns RF captureなしでも数百回の周回に成功した。 Courtesy R. Bailey
Fast BCT
Dump dilution sweep
No RF, debunching in ~ 25*10 turns, i.e. roughly 25 mS Courtesy E. Ciapala
First attempt at capture, at exactly the wrong injection phase… Courtesy E. Ciapala
Capture with corrected injection phasing Courtesy E. Ciapala
Capture with optimum injection phasing, correct reference Courtesy E. Ciapala
LHC longitudinal bunch profile Beam 2 Synchrotron dumpingによるcoolingがないのでハドロン加速器はRFのノイズが criticalな問題になる。このプロットをみて加速器屋は初めて成功を実感した(Lyn Evans)。
Integer tunes フーリエ解析によるtune shiftの測定(整数部分) Courtesy R. Bailey
Tune measurements Courtesy R. Bailey
Fractional tune spectrum H & V (Beam2) – closest Q approach ~ 0 Fractional tune spectrum H & V (Beam2) – closest Q approach ~ 0.06 due to coupling
Corrected closed orbit on B2. Energy offset of ~ -0 Corrected closed orbit on B2. Energy offset of ~ -0.9 permill due to the capture frequency. Closed orbitの例:この場合はビームエネルギーが-0.9ppmずれている。 Courtesy J. Wenninger
H wire scan ワイヤースキャンによるビーム形状の測定
Kick response compared with theoretical optics ビームにキックを与えたときの振る舞いは理論通りであった。
Beam 1 H dispersion on first turn Injection to beam dump 直線部 少しだけ高いエネルギーのビームを入射したときのdispersionも計算通りだった。 「まるで旧友に久しぶりに出会ったような感じがした」(Lyn Evansプロジェクトリーダー) Courtesy J. Wenninger
大量のヘリウム漏れ事故について 9月20日 Press Release PR09 大量のヘリウム漏れ事故について 9月20日 Press Release PR09.08 Incident in LHC sector 3-4 9月23日 Press Release PR10.08 LHC re-start scheduled for 2009 10月16日 Press Release PR14.08 CERN releases analysis of LHC incident Investigations have shown that a faulty electrical connection between two magnets (shown in red) was the cause of the incident in sector 3-4 of the LHC on 19 September. 10月15日 Document EDMS 973073 Interim Summary Report on the Analysis of the 19 September Incident at the LHC https://edms.cern.ch/file/973073/1/Report_on_080919_incident_at_LHC__2_.pdf
LHC超伝導ダイポールの断面図と写真 LHC main dipole/quad の超伝導バスバーの接続部分 両側からの超伝導ケーブルが長方形の安定化銅に挟まれて電磁誘導で ハンダ付けされる。ジョイントあたりの発熱を100mW以下に抑えるため、 この接続部の抵抗は 0.5 nΩ 以下であることが要求される。
QRL(cryogenic distribution line) 圧力 He4の状態図 He I 液体ヘリウム 1気圧 He II 超流動状態 温度(K) 1.8K,0.013bar Heat Exchanger Tubeを真空引きして温度を下げ、Tubeの壁を通しての熱交換によって1.9K,1気圧の状態を実現する。 C 1.9K,1 bar B D D ・HeIIの熱伝導率特性は1.9Kが最大。 ・1.9Kでは超伝導ケーブルの比熱は4.5Kの半分でよりクエンチし易い。 C F QRL(cryogenic distribution line)
真空バリアーの位置 He分配管(QRL) Jumper配管 真空容器 cold mass LHC Lattice, 1 cell 分の構造
QRL 超伝導マグネット Heat exchanger tube LHCアーク部のヘリウム冷却システム
2008年9月19日に、セクター34でパワーテスト中に故障が発生し、機械 的な破損と冷えたヘリウムの漏れが起こった。 中間報告書 1 2008年9月19日に、セクター34でパワーテスト中に故障が発生し、機械 的な破損と冷えたヘリウムの漏れが起こった。 他の7つのセクターは5.3 TeV相当の電流までテストされていた。セク ター34のみ7 kA(4.1TeV相当) までしかテストされてなかった。 8.7kAで、dipole C24とquad Q24間の電流バスの中で抵抗領域が発達し、 300mVが検出された。0.39 秒後に抵抗電圧は1Vになり、電源が0.46秒 でトリップしslow dumpモードに入った。0.86 秒後に回路にダンプ抵抗が 入ってfast dumpが始まった。 1秒後に電気アークが発生しヘリウム容器に穴が開き、真空容器へヘリ ウムが漏れ出し、圧力が0.13 MPa 以上になった。 3秒後にビームパイプ1が4秒後にビームパイプ2の真空が劣化した。 同時に19と20のサブセクターの断熱真空も悪化した。数秒の間にfast dumpのためにサブセクター23-25のクエンチがトリガーされた。20秒内 に他のマグネットでクエンチが起こり、20 秒目で27-29の隣のサブセク ターでも断熱真空の劣化した。各ヘリウム容器に設置された1.7 MPaの 自動解放弁が作動して2.0 MPa以下の圧力に保たれた。サブセクター 19-21では最高値の2.1 MPa に達した。
中間報告書 2 真空容器の圧力が1気圧以上になった時にスプリング型安全弁から開き ヘリウムがトンネル内に漏れ出した。サブセクター23-25では圧力を0.15 MPa以下に保つことができず、隣のサブセクターと区別している真空隔 壁に大きな力がかかりたぶん破壊された。 その力でダイポールが動き、coldサポートからずれてクオッドを入れてい る短い直線部のクライオスタットと真空隔壁を押して、Q23, Q27, Q31で 外部の支持ジャッキからずれて、一部ではコンクリート床のアンカーが破 壊された。 短い直線部のクライオスタットが動いたためにクライオ分配管のジャン パー接続が破壊された。しかしそのジャンパー部分の真空隔壁は破れな かったので、クライオ分配管の断熱真空は劣化しなかった。 サブセクター19-21,23-25,27-29のマグネットのcold-mass内にあった約 2トンのヘリウムは速い速度でトンネル内に漏れ出して雲を作り、トンネ ル内に設置された酸欠検出器が動作して緊急停止が働き、セクター34 の全ての電源が停止された。電源が回復するまでに、ヘリウム漏れは続 き、さらに4トンのヘリウムが失われた。そのセクターの15トンのヘリウム のうち合計で6トンが失われた。
点検が完了した時点で正確な修理必要なマグネット数がわかる。損傷し たマグネットを取り換えるに十分な種類と数のマグネット支持部品はある。 中間報告書 3 サブセクター23-25からマグネット間の接続部を開く作業に取り掛かった。 電気アークの場所が確認された。隣の接続部には電気的かつ機械的な 損傷は見当たらなかった。「すす状の塵」が広がっているのが判明した。 この塵はビームパイプのなかにもある長さにわたり広がっていた。 またクライオスタットのスーパーインシュレーション層にも損傷があること がわかった。修理が必要なマグネットは多くてquad 5台とdipole 24台で あるが、洗浄とスーパーインシュレーションの交換のため、おそらくもっと 多くがトンネルから引き上げられることになろう。 点検が完了した時点で正確な修理必要なマグネット数がわかる。損傷し たマグネットを取り換えるに十分な種類と数のマグネット支持部品はある。 ビームパイプがどれだけ汚れたかはまだ完全にはわからないが、その場 で洗浄できる方法を検討している。 セクター34の修理の計画は立てている。冬の点検保守の期間と合わる ことにした。マンパワーは確保されている。
中間報告書 4 当面の方針 (1)似たような故障が他でも起こらないようにするため、セクター34の故障 の兆があるかデーターを精査している。ー>兆候はあるようだ。 (2)クエンチ検出システムの改善を行い、マグネット、バスバー、接続部にわ たって早目の警告とインターロック信号を出するようにする。より高い電 流でのLHCを動作させる前にそれらを備え付ける。 (3)真空容器の解放安全弁の数と流量を増やして、電気的なアークが生じ ても圧力が0.15 MPa以下になるようにする。 (4)真空隔壁がある所の真空容器の支持を強化する。 (5)電源オン時のアクセスのルールを再検討し、加速器トンネルのみならず 近くの地下実験室と地下準備室もそれに含める。 「超伝導マグネットに蓄えられたエネルギーは非常に大きく、LHC加速器の 運転は常にリスクを伴う。今回の修理とより向上した安全対策により、将来 はより安全な運転ができると確信する。」
LHCビームの全エネルギー LHC ビームの持つ全エネルギー 2003.7.24 LHCビームの全エネルギー LHC ビームの持つ全エネルギー イギリスの空母 インビンシブル(重量 20,000 トン)がビームと同じエネルギーをもつ速度は 12ノットで走る空母インビンシブル その他:LHCはBlackholeを作り出し 地球が消滅するとの提訴があったりした:http://jp.youtube.com/watch?v=M3iMX8xzofc&feature=related 事故が起こったら。。。。
LHC dipoleの re-training問題 全てのdipole magnetは地上でテストされ、0-2回ほどのtraining quenchで11850A=8.33Tesla(7 TeV相当)を越えた。 Thermal cycleを経るとtrainingで得た上昇分の一部は失われてquench点が低くなるものがある。セクター45で3台、セクター56で>29台あった。 問題のmagnetの殆どは 3製造会社のうちNoell 社製造のものである。 1セクターでは1回のtraining quenchに半日かかる。当面は 5 TeV で運転を開始し、冬の休止中にtrainingを行うことになった。しかし今回の事故と安全対策で延期された。2009年は5+5 TeV運転だろう。
CERNの将来計画 粒子物理学における欧州未来戦略 CERN理事会で承認された追加予算 (2006年7月14日特別理事会で承認) 粒子物理学における欧州未来戦略 (2006年7月14日特別理事会で承認) Scientific activities 1. LHC物理の最大限に引き出すため、 SLHCに向けて組織化すること。 2. 加速器R&D(CLIC, 高磁場、ν) 3. LCの準備と2010頃の評価 4. ニュートリノ物理 5. 非加速器実験 6. フレーバー物理 7. 原子核物理 8. 理論物理 Organizational issues ・ CERNが欧州粒子物理の責任をもつ。 ・ グローバル規模の協力。 ・ CERN非加盟国による関わりの検討。 CERN理事会で承認された追加予算 (2007年6月理事会で承認) 第1テ-マ(最優先): ・実験装置を最大性能に完成する。 ・入射加速器などの緊急改善。 第2テ-マ(優先): ・LINAC4(160MeV)を建設。 ・新陽子加速器PS2(50 GeV)の設計。 第3テ-マ: ・LHCアップグレ-ドの技術開発。 ・高強度ニュ-トリノとCLICの設計。 ・超伝導マグネットの技術開発。 ・LHC冷却とビーム機器の強化。 ・検出器技術の開発。 ・CLICのための技術開発。 加盟国による240MCHFの追加予算を承認。
CERNを利用するユーザーの国別分布(2008年2月現在) メンバー国から 65 %、オブザーバー国から 28 %(日本は 2 %)、他から 7%
LHC などのアップグレード Phase I upgrade:(2013年まで) 1. ATLAS とCMSのlow beta opticsを改善する。 2. Nb-Ti ケーブルを使った広い口径のquadrupoles で置き換える。 Phase II upgrade:(2016年まで) Stop of PSB and PSを廃棄する。 LPSPL + PS2を建設する。 Phase II’upgrade: 1. LPSPLをSPL (multi- MW at 2-5 GeV)にする。 2. EURISOL や Neutrino factory に応用する SPS PS2 SPL PS Linac4
Upgrade components Linac2 Linac4 PSB LPSPL PS PS2 SPS SPS+ LHC / SLHC Proton flux / Beam power PSB SPS SPS+ Linac4 LPSPL PS LHC / SLHC DLHC Output energy 160 MeV 1.4 GeV 4 GeV 26 GeV 50 GeV 450 GeV 1 TeV 7 TeV ~ 14 TeV Linac2 50 MeV PS2 LPSPL: Low Power Superconducting Proton Linac (4 GeV) PS2: High Energy PS (~ 5 to 50 GeV – 0.3 Hz) SPS+: Superconducting SPS (50 to1000 GeV) SLHC: “Superluminosity” LHC (up to 1035 cm-2s-1) DLHC: “Double energy” LHC (1 to ~14 TeV) 38
CLIC開発の進展状況 (2008.10.3のAymar所長のtalkより)
CLIC開発の進展状況 (2008.10.3のAymar所長のtalkより)
CLIC開発の進展状況 (2008.10.3のAymar所長のtalkより)
2012年 – 2016年の間のCERNの活動 LHCの物理結果とR&Dの進展を基に2010-2011年に決める。以下のようになると予想される(Aymar所長)。 ・ LHCの Luminosity 増強のため新しい入射加速器(SPL+PS2)を建設する。必要なresource:1000-1200 MCHF(6年の合計)+200-300人/年 ・ LHC upgradeが終わる2016年にCLIC建設を決定するための技術提案書 を用意する(ILCの状況にも依存する)。必要なresource:250 MCHF+1000-1200人/年。 ・ インフラ増強に30MCHF+40人/年。 上記のプログラムが認められれば、CERNが他の大規模計画(ILCやν)などに参加するに十分な資源はない。上記のプログラムの一つも認められないとか、大幅な追加支援がある場合は、この情勢は完全に変わるかも知れない。