Hakone Shissei Ka-en Tsutomu Takahashi Japan

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Hakone Shissei Ka-en Tsutomu Takahashi Japan HOW TO REBIRTH THE HAKONE BOTANICAL GARDEN OF WETLANDS FROM  ABANDONED  RICE  FIELDS Hakone Shissei Ka-en Tsutomu Takahashi Japan

1.位置と地形 1.位置と地形  箱根は、首都東京から直線で80km、西に富士山、東は相模湾から太平洋に接している。箱根山は約50万年前に誕生しその後、3回の大きな火山活動によって現在の箱根山の形になった。

箱根火山 地質図   (久野1950) 箱根山の一番高い所は中央火口丘の一部である神山で1,438m、外輪山では金時山が一番高く1,213mで1,000m前後の山が連なっている。     一番低い箱根湯本は標高97m。箱根町全体の面積は92k㎡で、東西に11.5km、南北に11.0kmの広がりである。仙石原湿原は標高650m外側を外輪山、東南東に中央火口丘の一部である台ヶ岳(1,045m)がそびえ周囲を山で囲まれた盆地に広がっている。 箱根山は、今から5万年ほど前2度目の火砕流として、大量のマグマを一気に噴出した。その結果山体の中央部が陥没し、クレイター・レイク型でC形のカルデラができ、その後仙石原湖ができたが、今から3千年ほど前の火山活動によって仙石原湖の南側に芦ノ湖が誕生した。 その後、仙石原湖が干上がり、できたのが仙石原湿原である。

2.箱根湿生花園設立の背景及び目的 2.箱根湿生花園設立の背景及び目的  仙石原湿原の面積は180,000㎡であり、日本で低地に残された数少ない貴重な湿原として1934年(S.9)に湿原の一部、9,000㎡が国の天然記念物に指定された。 1960年代(S.35)から自然保護思想が高まり、天然記念物周辺にあった企業庁の寮や公衆便所は、湿原の保護と景観を阻害することから撤去され、この天然記念物を保護するために湿原部分の180,000㎡全体と湿原を潤す地下水源となっている台が岳の裾野170,000㎡が、1975年(S.50)国の特別保護地区に指定されている。

3. 計画から施工まで (1)予定地周辺の状況 上空から見た箱根湿生花園と仙石原湿原 3.計画から施工まで (1)予定地周辺の状況 3. 計画から施工まで (1)予定地周辺の状況 3.計画から施工まで (1)予定地周辺の状況  水田跡地の周辺の景観は、北東から北西にかけ民家が予定地近くまで迫まっているが、東南から南西にかけては視野の中に建造物が無く東南にある中央火口丘の一部である台が岳の裾まで広がっている。                 南西側は、遠くに外輪山の山並みが続き手前には湿原植生の一部であるハンノキ林が見られる。 予定地東側は、台が岳の裾野に古くからあるコンクリートの建物以外は特に景観を阻害するものは無い。 予定地である水田跡地には当時の水路もあり湿原植物を育てるには最適な場所であった。 上空から見た箱根湿生花園と仙石原湿原

3.-(2) 基礎調査 1973(s.48) 工事前の仙石原湿原見本園(現・箱根湿生花園)予定地 (2)基礎調査 3.-(2) 基礎調査 (2)基礎調査 箱根町は計画段階では名称を「仙石原湿原見本園」として基本計画を進め、予定地である水田跡地の植生を把握するため、1972年(S.47)「箱根の自然学術調査団」に、計画地の植生調査を委託した。その結果、同調査団より「仙石原湿原見本園 基礎調査報告書」(松浦 1973)が提出された。   提出された基礎調査報告書を元に基本計画及び実施計画が立案され、国立公園であるため国へ園地事業計画書を提出し承認を受けた。(1973年) 1973(s.48) 工事前の仙石原湿原見本園(現・箱根湿生花園)予定地

3.-(3) 基本計画及び実施計画 1)観光を兼ねた施設とし、色々な花が長い 期間見られるようにする。 (3)基本計画及び実施計画 3.-(3)  基本計画及び実施計画 1)観光を兼ねた施設とし、色々な花が長い       期間見られるようにする。 (3)基本計画及び実施計画  1)観光を兼ねた施設とし、色々な花が長い期間見られるようにする。    仙石原湿原の植物は暖地に残された湿原としては貴重な湿原であるが、ここ生育する植物相は、日本の代表的な湿原である「尾瀬ヶ原」に見られるニッコウキスゲの大群落ややヒオウギアヤメ、リュウキンカなどの大型ものや華やかな種類はなく、人目を引く湿生植物としてはノハナショウブしかない。しかも花の咲く時期が7月だけで他の植物の開花期間と合わせても9月までの観賞期間しかない。  仙石原湿原の植物はおおよそ250種でそのうち湿原植物は70種である。 観光客を集めたり、湿原とはどの様なものなのか、多くの人に関心と理解を持ってもらうためには、地域の植物ばかりでなく国内のいろいろなタイプの湿原植物を、効果的に見せることによって人々の興味を誘うことが出来る。季節ごとに変わる花々が、一度訪れただけでは見切れないため、観光的にも効果が大きい。などから地元の湿原植物を保存しながら、日本各地の湿原と植物が見られる現在のような湿原の見本園形式にした。

・国立公園にふさわしく、周囲の景観にも溶け 込む施設ということで生態園とした。 3.-(3)  基本計画及び実施計画 2) 園の構成  ・国立公園にふさわしく、周囲の景観にも溶け 込む施設ということで生態園とした。  ・園内を8つの区域に分け、湿原区としては、低層湿原区、ヌマガヤ草原区、高層湿原区、そして地元の仙石原湿原区の4区域。  ・湿原を取り巻く環境として湿生林区、落葉広葉樹林区、ススキ草原区、高山のお花畑区の4区がある。 2) 園の構成   個々の湿原植物を保護するのではなく、仙石原湿原とその植生を保護することが当初からの目的であったので、国立公園にふさわしく、周囲の景観にも溶け込む施設ということで生態園とした。 園内を8つの区域に分け、湿原区としては、低層湿原区、ヌマガヤ草原区、高層湿原区、そして地元の仙石原湿原区の4区域であり、また、湿原を取り巻く環境として湿生林区、落葉広葉樹林区、ススキ草原区、高山のお花畑区の4区がある。 各群落にはその地区を代表する植物で構成、混植している。たとえば、高層湿原区ではミズゴケ群落が設定され、一面ミズゴケの中にヒメシャクナゲ、ツルコケモモ、トキソウなどを自然に模して散在させ。また、ミズゴケ湿原に隣接する池にはヒツジグサやジュンサイを植え、周辺の林は針葉樹林とするなど景観作りにも配慮がされている。また各群落を川や林で区切って大まかな群落の目安とした。 園路は選択性の無い一方通行で順路に従って歩くと八区域を一巡して最初の地点に戻るようになっている。乾いた場所から湿地へ、低地から高山へ、低層湿原から高層湿原へと順序だてて地区を回るように園路が配慮されている。しかし、地形の起伏が乏しいこともありそのことはなかなか理解されえないようである。園路は一周約1km,所要時間はそれぞれの関心にもよるが、一般に一時間ぐらいである。

(3)-3) 各群落の概略 ①落葉広葉樹林区(Deciduous forest Area) (3)-3) 各群落の概略 ①落葉広葉樹林区(Deciduous forest Area) 3)各群落の概略① 落葉広葉樹林区(Deciduous forest Area)   低地から山地にかけて見られるいわゆる雑木林で、コナラやアカシデ、ケヤキ、ヤマボウシ、オオモミジなど箱根に一般的な高木を主体にしている。 低木にヤマツツジ、ヤマブキ、マンサク、ムラサキシキブ、など花や実の目立つ低木。草本層にはカタクリ、エビネ、ヒトリシズカなどの林床植もの150種近くが植栽されている。 ② ススキ草原区(Meadow Area)   林から湿原へ出る途中のススキやシバを主とする草原で、春のタンポポ、スミレにはじまって、オミナエシ、キキョウ、などの秋の七草等、低山地の草地に見られる身近な種類が中心。湿原に花が少なくなる八月頃から花の最盛期に入る。 1976(s.51)開園当時の落葉広葉樹林区                               ・開園20年目の落葉広葉樹林区(1996)        

(3)-3) 各群落の概略 ③ 低層湿原区(Marsh Area) (3)-3) 各群落の概略 ③ 低層湿原区(Marsh Area) ③ 低層湿原区(Marsh Area)   低地の川や湖沼の周辺に見られる湿原植物が中心。サクラソウ、チョウジソウなど河辺に見られる植物のほか、ヒメガマ、ミソハギ、クサレダマなど箱根の自生種も比較的、地味な花が多いので、密度を高く植栽するなど見せ方に工夫を凝らしている。 ④ ヌマガヤ草原区(Fen Area) 低層湿原から高層湿原への途中相であるこの湿原は、ニッコウキスゲ、ヒオウギアヤメ、コバイケイソウなど大型の花が咲き、季節により華やかな景観を見せる湿原である。面積を広く取り、ミズバショウとともに園の主要な地区として力を入れているが、花期が5月から8月までと短いのが弱点である。 1976(s.51)当時の低層湿原区の池 ・ 20年後の低層湿原区の池(1996)

(3)-3) 各群落の概略 ⑤高山のお花畑区 (Alpine garden Area) (3)-3) 各群落の概略 ⑤高山のお花畑区 (Alpine garden Area) ⑤高山のお花畑区  (Alpine garden Area) コマクサなどの乾生な砂礫地、シナノキンバイ等の適潤地、ハクサンコザクラ等の雪田と、3タイプの群落を設定し、日本の高山植物130種を現在までに植栽。 入園者が強い関心を示す地区である。 ⑥ 高層湿原区(Bog Area)   イボミズゴケ、ムラサキミズゴケなどのミズゴケを繁茂させた中にトキソウ、ヒメカイウ、ヒメシャクナゲなど高層湿原の主な植物を植え込みミズゴケ群落を造成したが寒冷地のミズゴケは生育せず、現在は適応範囲の広いオオミズゴケで代用している。 ・1976(s.51)開園当時の高山のお花畑区                         ・1996(H.8)開園20年後の高山のお花畑区

(3)-3) 各群落の概略 ⑦ 仙石原湿原区(Sengokuhara Marsh Area) (3)-3) 各群落の概略 ⑦ 仙石原湿原区(Sengokuhara Marsh Area) 1973年(S.48) 造成前の 箱根湿生花園 俯瞰写真 1976年(S.51) 開園当時の  俯瞰写真 ⑦ 仙石原湿原区(Sengokuhara Marsh Area)    県の湿原保護区に接しているこの地区では、その仙石原湿原の群落の再現を図っている。まず、はじめにノハナショウブの群落作りをしている。 ⑧ 湿生林区(Swamp forest Area)    ハンノキを主とする林。他にカラコギカエデ、ハナノキ、コムラサキなど、湿地の樹種を集めている。ミズバショウの群落を中心にハンカイソウ、アケボノソウなど湿生林の林床植物も植えられている。池の周辺にはカキツバタとサギソウの各群落がある。

4)仙石原湿原植生復元区 Sengokuhara restrational area 4)仙石原湿原植生復元区 Sengokuhara restrational area 4)仙石原湿原植生復元区(Sengokuhara restrational area )  1611年(江戸時代初期)に仙石原に人が住み始めて以来、仙石原湿原では農業や家畜のために火入れや野焼きが行われてきた。 昭和の初期ころは、仙石原湿原一帯がノハナショウブや秋になるとオミナエシやワレモコウなど可憐な花々が咲き乱れる草原であったことから、仙石原湿原は1934年(S.9)国の天然記念物に指定された。 しかし、1955年(S.30)ころからは、火入れも草原維持だけになっていた。 1968年(S.43年)ごろから神奈川県が天然記念物保護のため、天然記念物周辺の民有地を公有地化していった。 一方、公有地や特別保護地区となった仙石原湿原や台ヶ岳の裾野では、1970年(S.45)の3月まで、毎年野焼きが行われていたがその後は行われなくなった。その結果、仙石原湿原は急速に森林化が進んだため、箱根町が湿原に戻すための具体的な実験場として1983年(S.58)箱根湿生花園の東隣り、特別保護地区になった残りの水田跡地20,000㎡で、箱根湿生花園により仙石原湿原植生復元実験区の工事が進められ、翌年の1985年(S.60年)から復元のための実験が始められた。    10年後の1995年(H.7)仙石原湿原が存続した最大の要因は、草原を維持するため毎年行われていた刈り取りや、野焼きが樹木の進入を防ぎ、湿原や草原が続いてきたことを学術的に立証もされたので、実験を一時休止して仙石原湿原植生復元区として現在では、管理のための刈り取りと野焼きが毎年1月か2月に、箱根湿生花園の手で行われている。 ・仙石原湿原植生復元区(Sengokuhara restrational area )と箱根湿生花園                    ・植生復元区に咲くオミナエシ Ominaesi(Patrinia scabiosaefolia)

ノハナショウブNohanashobu(lris ensata) 仙石原湿原区 植生復元区 ノハナショウブNohanashobu(lris ensata)  

(4)施工上注意したことと建設後の管理 1)植物園区域内には外来種を導入しない。 2)土砂を他の地域から搬入しない。 3)建設機械を最小限に控える。 4)富栄養化を抑制する。 5)池や水路を掘るときは垂直に掘らない。 6)導入する樹木は幼木を植える。 (4)施工上注意したことと建設後の管理 1)植物園区域内には外来種を導入しない。  設立目的から湿原群落(園内)には外来種を導入しない。しかし、残念ながら湿原植物だけで開園期間中いつも花が咲いているようには出来ないため湿原や高山にまつわる外国の特徴ある植物や園芸植物を園の入り口近くの一画に設けて補いとしている。 2)土砂を他の地域から搬入しない。  本来、土の中には湿地植物を含め過去に生育していた植物の種子が埋土種子として存在している。そこへまったく別の地域からの土砂を持ち込んで覆ったり攪拌することで、もともと弱い湿地植物が、持ち込まれた土砂の中のさまざまな種子に、負けてしまい枯れたり、発芽できなくなるため湿原植物区域には、他の地域の土砂を搬入させなかった。  そのため各群落を区切る林や地形に変化をつけるための盛土は、すべて池や水路を掘ったときに出る土でまかなった。 3)建設機械を最小限に控える。  湿原の土壌は、ちょうどパンに水を含ませたような状態で、押しつぶされた土壌は永久に元には戻らない。建設機械を導入すると重い重機が何度も通過することで、土壌が押しつぶされその部分だけ不透水層ができ、本来の植生とはまったく異なる植生に変わってしまう。そして変化した植生は保水力と浸透性が戻らない限り元の植生にはならない。箱根湿生花園では、植生を壊さないために土の掘削は人力で行い、掘り取った土の運搬には手押し車やベルトコンベヤーを使用して工事を行った。 4)富栄養化を抑制する。  湿原は酸性、貧栄養の土壌から成立しているため、富栄養化の原因になるコンクリートの使用は、最低限に抑えた。  湿原を維持していく上で水確保が一番重要である。湿生花園を支える水は降雨以外ほとんどが湧水の旧水田用水からで、その量は日量4tである。水質は水源ではpH6と弱酸性で湿生植物にはほぼ使用可能なpHである。  園が出来る前は途中から混入していた一般家庭排水もあったが、現在ではすべて下水道に接続をさせている。  日々流入する、表面水は地下水とともに無くてはならない重要なものであるが、pHが高く富栄養なものであると、貧栄養の環境で生きている湿原植物は富栄養下に育つ植物に負けてしまうため水質は、pHが低くかつ貧栄養な水と土壌がよい。 5)池や水路を掘るときは垂直に掘らない。  自然の河川や沼沢地を見てもわかるように水路を設置しようとするときは、水路や池の縁は垂直に切り取らないで、緩やかな傾斜をつけて河床や池床にすりつける方がより自然で、より多様な植物を見せることが出来る。 6)導入する樹木は幼木を植える。  箱根湿生花園の当初建設計画では、樹高5m、幹回り30cm、葉張り3mというように高木については、5m以上の成木で各樹林を計画したが、野生種では、計画に叶う樹木が手に入らないことが分かり2m以下の幼木を主に植栽することにした。部分的に植えられていた大きな樹木は、湿原の不安定な土壌、秋から冬にかけて乾燥した強風が吹きぬけ、冬季は-15℃にもなる過酷な気象条件のため根が張れず枯れていった。    しかし、2m以下の幼木は大きな支えも無しに確実に根を張り成長した。  時間はかかったが、現在では当初予想した以上の林に成長し、土壌が不安定で環境条件の悪い場所では、幼木を植えることで、確実にしかも早く希望の林を作ることができた。

(4)施工上注意したことと建設後の管理 (4)-7) 水門 (4)施工上注意したことと建設後の管理 (4)-7)  水門 終末の水門 仙石原湿原区の池 7)水門  湿地植物は微妙な水位の変化で、植生が大きく変わる。湿生花園の土地は元水田であるため、高低差がほとんどなかった。そこで水環境を整備するため、各群落の境目に水門を設けて地下水位の調整が行えるようにした。  また、景観作りと水位の調整用に、各群落の主要部分に池や水路を設けた。  工事期間中の約2年間、建設地には水を入れていなかったため、地下水位も下がって水が不足している状態であった。 開園当初は水位が不安定で、水門の調節は日々状況に応じて調整がされていた。 しかし、開園から28年たった今も、水位を日々観察することは非常に重要な作業のひとつである。  また、季節により地下水位を大きく変動させる湿生林では、春先は水門を最上段まで閉じて、雪解けで一時的に増水した河畔や多雪地の湿原に見られる湿生林を再現している。 そして夏季には、通常水位に堰を調節して、冬は、最下まで水位を落とし、地下水位の低い湿生林の環境を作り出している。  これは、ミズバショウを自生地の気温に近づけて花の開花抑制をするために行っている。 低層湿原区に設置した水門

8) 園路 ① 木道(Board Road) 木道の下部構造 (structure of board road) 8) 園路 木道の下部構造 (structure of board road) ① 木道(Board Road) 材質:米松   (Pseudotsuga menziensii) 8)園路 園内の園路は大きく分けて2種類。木道と土の道があり、湿地や池、川を渡るときは木の橋、木道とした。木道と木道をつなぐ中継点には広場を設けて土を固めて土の道とした。そのほかススキ草原区や落葉広葉樹林区などいわゆる乾燥地の植物群落の園路は土道とした。  ① 木道   湿地の上を歩くには、景観的にも木の橋(木道)がもっとも合理的で、湿原植物に影響が少ないこと  から、湿原区内の園路のほとんどがこの木道である。   木道の幅は当初1.6mで大人が2人並んで歩ける幅を基準に設定されたが入園者が増えたいまでは、  1.8mの幅となっている。   構造は、平行に打込んだ一辺15㎝の角柱の上に、長さ2.0mの横木を水平に載せて固定したものを一組  として、2m間隔に設置した。水平の横木の上に長さ3.8m、厚み9㎝、で幅16㎝の木材を10本敷き並べ  て、それぞれの木材の隙間を1.5㎝としたものを釘で固定してものが、連続して作られている。   この木道は、今では箱根湿生花園のシンボルとなっている。 構造材:再生プラスティック (Reclaimed plastic goods)      木道の歩行部分   (Surface of board road)

8) 園路 ② 土道 (Graveled Road ) 園内の土道(graveled road of Fen area) 8) 園路 ② 土道 (Graveled Road ) ② 土道   土道は、土を固めた上に岩石を砕いて作られた道路用の石材を敷き固め、その上に5mm前後の砂利と  石の粉を混ぜ合わせたものをしき固めて作られている。   土を使用すると雨が降ったときに、ドロドロになって歩けなくなるが、砕石を使用すると雨が降って  も適度に浸透して、ドロドロにならないためこの方法を使用している。 園内の土道(graveled road of Fen area) ススキ草原区の土道 (graveled road of Meadow area)

4.観光地としての箱根 * (1)箱根湿生花園の 役割 * (2)湿地の重要性 4.観光地としての箱根     役割 * (2)湿地の重要性 4.観光地としての箱根   箱根は首都東京から80km、車でわずか1時間30分の距離にある。  箱根の人口は西暦2002年で約15,500人、来町する観光客は国内外合わせて年間1,900万人、単純に365日で割ると一日約52,000人が訪れていることになる。東京、京都、博多などと並び、日本でも有数な観光地である。 高低差の大きい複雑な地形は豊富な動植物を育み四季の変化に富んだ景観を呈している。火口原湖「芦ノ湖」があり一年を通じて観光客の絶えないところである。 (1)箱根湿生花園の役割 箱根湿生花園は、面積が30,000㎡、標高650m。年間の平均気温が12℃、年間降水量は約3,000mmである。1976年に開園し、27年が経過した。 現在までに集められた植物種数は、約1,700種である。27年間で、国内外合わせた有料の入園者は、880万人である。年平均32万5千人が来園している。これは、日本国内でも植物園だけの施設での利用者数ではトップクラスである。   開園して以来、数々の皇室を迎え、首都東京から近いこともあり建設当初では、想像も出来ないくらいのお客様を迎えることが出来た。 普通なら何泊もして出かけなくては見られない湿原植物や高山植物も、手軽に見ることが出来るとあって、今では国際観光地箱根のなくてはならない重要な観光スポットになっている。 (2)湿地の重要性   湿原は、人間が地球上で一番深くかかわっている環境のひとつといって良いであろう。 人間ばかりではなく、多くの動植物がその周辺で生活している。たぶん湿原は、地球上で最も多くの生物を育み、人間の心を癒してくれる空間と考える。しかし残念なことに最も多く失われている自然環境であろう。 この生物の多様な環境保全は、観光地の誘客施設としての役割のほか、人間生活回復の心のオアシスとして現代社会に最も重要な環境の一つであり、地球温暖化を含め、環境の変化で失われていく貴重な生物環境の保護・保存施設として、更には環境教育の実践場としての役割がますます重要になっている。

5.ハノンの復元に関する意見、提案 * (1)ハノン湿地復元の重要性 * (2)復元のための湿原植物の確保 * (3)植物群落の維持管理について  5.ハノンの復元に関する意見、提案 (1)ハノン湿地復元の重要性   ハノン湿地の復元は、地球規模で自然景観が失われている現代、過去の遺産も含めて保存修復できる  ならば、未来の地球へのかけがえの財産である。   そして、われわれが行う自然回復の一手法が、今後重要な役割を担うものと思われる。 (2)復元のための湿原植物の確保   湿原植物の多くは栽培されているものがほとんどない。早期に群落を回復させるには種子増殖が種の  保存からももっとも有効な手段である。   そのため、予定地内または、隣接する場所に保存と増殖を兼ねた圃場を設けて随時補充が出来るよう  にしておく必要がある。 (3)植物群落の維持管理について   生態園の維持管理で最も重要な作業の1つに除草作業があげられる。   群落内の植物の種類を多彩にし、安定した植生にすることは植物園としての使命であるが、箱根湿生  花園のように色々なタイプの植物群落を、同じ環境下で人工的に作った場合、自然状態の植物群落とは  大きな違いがある。   人工的に作られた環境下では、当然目的としている植物群落の植物以外に自生の植物が優先してしま  う。多年草はもちろんであるが、少しの余地があれば一二年草雑草が増え、少しでも手を緩めるとたち  まち、群落全体に広がりあたりかまわず多い尽くしてしまう。    水田ならば稲以外の植物をとり除けば済むのだが、生態園ではそうは行かない。群落ごと、季節ごと  に植物の成長が異なり、どの時期にどのような除草の手を入れたらいいのか、またどの植物を残すべき  なのか、生態園の除草作業は生育している植物一本一本、花のない時期でもその植物がなんであるか見  分けられ、その場で判断できる必要がある。除草作業でさえ植物生態の知識と経験が必要である。   また、いろいろなタイプの植物群落を維持管理する場合、本来の植物群落に無いものでも、手を入れ  てさえいれば裸地を埋めることが出来るので、影響のない自生植物は、景観的に重要な役割を持つため、  残すようにするなど生態園を維持管理していく上で専門知識を持った職員の存在は不可欠である。