Niシリサイド電極形成にともなう 欠陥導入過程の考察

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Niシリサイド電極形成にともなう 欠陥導入過程の考察 日本顕微鏡学会第63回学術講演会  2007年5月20日, 朱鷺メッセ(新潟)  Niシリサイド電極形成にともなう             欠陥導入過程の考察 一色 俊之1,西尾 弘司1,溝部 誠2,中村 勇1, 深田 卓史3,吉本 昌弘1,播磨 弘1 1京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 2京都工芸繊維大学 電子情報工学科 3WaferMasters Inc.

Introduction ① MOSトランジスタの微細化:低消費電力・高速動作・生産性向上 スケーリング則に基づいた,   ゲート(チャネル)長短縮   低電圧化   ゲート絶縁膜の極薄化   etc.... Source Drain Gate MOSFET 低コンタクト抵抗化:シリサイド 低VD化 チャネル長:短 浅い接合 高濃度ドープ 低抵抗電極形成:Niシリサイド ソースドレインの極浅接合(Ultra Shallow Junction)            高キャリア濃度化 素子製造(電極形成)に問題

Introduction ② 目的:断面TEM法によるピラミッド欠陥形成過程の解明 極浅接合(USJ) 高キャリア濃度 Source Drain Gate MOSFET 極浅接合(USJ)   高キャリア濃度 低抵抗電極(Niシリサイド) シリサイド化反応で,電極下に欠陥が生成 (ピラミッド欠陥(スパイク欠陥)) リーク電流の発生  × 消費電力増大,動作不良,素子破壊 リーク電流 pyramid欠陥 Niシリサイド層 目的:断面TEM法によるピラミッド欠陥形成過程の解明

Niシリサイドとピラミッド欠陥 ピラミッド欠陥の構造 NiSi層 ・ Siと同一の結晶格子 ・ Si{111}面を境界,格子のずれ ・ Siと同一の結晶格子 ・  Si{111}面を境界,格子のずれ ・ Siより暗いコントラスト ・ 積層欠陥コントラスト(縞状)が不明瞭 NiSi層 {111} Si {111} Si Si基板  △ 積層欠陥   ダイヤモンド構造の{111}面のすべり多面体  ○ シリサイド相の貫入  Siと整合する結晶格子      ⇒ NiSi2(× 蛍石型高温相  ○ 非蛍石型低温相)

試料作製と熱処理 Annealing systems Ni p-type Si wafer 10nm Hot-plate annealing アクセプタイオン打ち込み Si(001) Si(001) 低キャリア濃度基板(p-) 高キャリア濃度基板(p+) Ni p-type Si wafer 10nm Ni sputtering (R.T) Annealing systems Hot-plate annealing 10 min wafer hot plate Ta = hot plate temperature 473K~723K 10min in N2 Ni-silicide p-type Si wafer

熱処理前のNiスパッタ基板 低キャリア濃度基板(p-) Ni層 無欠陥・結晶性良好 高キャリア濃度基板(p+) Ni層 欠陥コントラスト有・結晶性不良 高濃度イオン打ち込みによる表層欠陥の残留

Niシリサイド形成と欠陥生成 ① 低キャリア濃度基板(p-) 高キャリア濃度基板(p+) 残留欠陥の存在 熱処理前 残留欠陥近傍に格子歪 Niシリサイド形成と欠陥生成 ① 低キャリア濃度基板(p-) 高キャリア濃度基板(p+) 残留欠陥の存在 熱処理前 Ni2Si層の形成 残留欠陥近傍に格子歪 225℃ 275℃ ピラミッド欠陥の発生 NiSi層の形成 300℃

Niシリサイド形成と欠陥生成 ② 高キャリア濃度試料のみピラミッド欠陥発生 300℃付近の熱処理で発生が顕著 低キャリア濃度基板(p-) Not observed ピラミッド欠陥有 325℃ 界面ラフネス大 350℃ 400℃ NiSiの単層化 ピラミッド欠陥なし 450℃ 全温度域でピラミッド欠陥の発生なし 高キャリア濃度試料のみピラミッド欠陥発生 300℃付近の熱処理で発生が顕著

Si-Niシリサイド界面の HRTEM 観察 高キャリア濃度基板(p+) Ni2Si層 NiSi2層 欠陥・格子歪 Ni層 225oC 225oC 残留欠陥 Si基板 NiSi2層 Ni2Si層 Si基板 {111}界面 熱処理前 NiSi層 275oC Si基板

Si-Niシリサイド界面の HRTEM 観察 高キャリア濃度基板(p+) NiSi層 積層欠陥 {111} Si Si基板 Si基板 ピラミッド欠陥の発生初期 Annealing temp. = 573K (300oC)

Si-Niシリサイド界面の HRTEM 観察 高キャリア濃度基板(p+) Ni2Si層 NiSi層 NiSi層 {111} Si {111} Si {111} Si {111} Si Si基板 Si基板 Annealing temp. = 573K (300oC) Annealing temp. = 598K (325oC)

ピラミッド欠陥形成の温度領域 低キャリア濃度試料 高キャリア濃度試料 基板内欠陥(残留欠陥)の存在 全温度域でピラミッド欠陥は観察されず 高キャリア濃度試料   基板内欠陥(残留欠陥)の存在 225℃~275℃  シリサイド化進行と残留欠陥の一部侵食  歪コントラスト 300℃~325℃  ピラミッド欠陥の形成顕著  ← Ni2SiからNiSiへの相変態温度域 350℃~400℃  界面の凹凸大きく,凹部下層に微細なピラミッド欠陥 450℃       ピラミッド欠陥の発生なし  ⇒ ピラミッド欠陥生成温度域を通過  残留欠陥 Ni2Si ⇒ NiSi Ni ⇒ Ni2Si Ni2Siの成長 ⇒ 残留欠陥消滅:不完全 界面応力による歪みコントラスト 残留原因:高濃度注入?         アニール不足? ピラミッド欠陥形成 NiSi ~30nm ~15nm ~20nm 欠陥なし ピラミッド欠陥 界面ラフネス増大 ピラミッド欠陥形成 : 相変態と残存欠陥の関連を示唆

再熱処理とピラミッド欠陥 450℃ 熱処理前 NiSi,ピラミッド欠陥なし 再 460℃ NiSi,ピラミッド欠陥なし 225℃:Ni2Si+残留欠陥・格子歪み NiSi,ピラミッド欠陥なし 再 460℃ 300℃:NiSi(Ni2Si)+ピラミッド欠陥 NiSi,ラフ凹部にピラミッド欠陥残存 相変態温度域の滞留がピラミッド欠陥生成を誘起 一度生成したピラミッド欠陥は再熱処理では消失しない

ま と め ピラミッド欠陥の構造 {111}界面でSiと整合した結晶格子・同一パターン ピラミッド欠陥の生成 ま と め ピラミッド欠陥の構造   {111}界面でSiと整合した結晶格子・同一パターン 貫入シリサイド相(NiSi2 非蛍石型構造)   ピラミッド欠陥の生成    相変態温度(300℃近傍)での滞留 イオン打ち込みの残留欠陥   残留欠陥 ⇒ 応力・歪集中 ⇒積層欠陥形成 ⇒ Ni拡散進行                                 ⇒ ピラミッド欠陥形成  再アニール処理 ピラミッド欠陥のアニール除去は困難     (シリサイド化進行で消失するが界面のラフネス増大) ピラミッド欠陥形成に関与 熱処理温度域の選択・残留欠陥の除去                   ⇒ ピラミッド欠陥形成を抑制