地球環境変化予測のための 地球システム統合モデルの開発

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地球環境変化予測のための 地球システム統合モデルの開発 松野太郎 地球環境フロンティア研究センター 海洋研究開発機構

共生2ー地球システム統合モデルの開発 4つのサブテーマ 「全球炭素循環モデル開発」 「大気組成・気候変化結合モデル開発」 陸域炭素循環モデル 海洋生物地球化学モデル 陸域生態系変動モデル 「大気組成・気候変化結合モデル開発」 温暖化・大気組成変化相互作用モデル 温暖化-雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価 「寒冷圏モデル開発」 「気候物理コアモデル改良」

「地球システム統合モデル」の構造 成層圏への拡張

共生2ー地球システム統合モデルの開発 4つのサブテーマ 「全球炭素循環モデル開発」 「大気組成・気候変化結合モデル開発」 陸域炭素循環モデル 海洋生物地球化学モデル 陸域生態系変動モデル 「大気組成・気候変化結合モデル開発」 温暖化・大気組成変化相互作用モデル 温暖化-雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価 「寒冷圏モデル開発」 「気候物理コアモデル改良」

大気海洋結合炭素循環モデルによる温暖化実験 CO2濃度将来予測 温暖化と炭素循環の相互作用あり 温暖化と炭素循環の相互作用なし 130ppm 地表面気温→4度上昇 土壌炭素の分解が促進されることによるフィードバック

地表からのCO2フラックス (2100年) [ugC/m2/s] (温暖化と炭素循環との相互作用があるときとないときとの差)

海表面二酸化炭素分圧(2100年) (温暖化と炭素循環との相互作用があるときとないときとの差) 要因別に分解 温度 塩分 全炭酸 アルカリ度 合計

C4MIP参加→IPCCへの貢献 (Coupled Climate - Carbon Cycle Model Intercomparison Project) Bern-CC IPSL-CM4-LOOP IPSL-CM2C Friedlingstein et al. (2005, JC, in press)

プレスリリース

地表気温とCO2の年々変動 Obs. (Keeling et al., 1989) -> time lag: 1yr Model

土地利用変化(LUC)による炭素放出量 放出量多い 全球100年間総量 49.2 Pg C 莫大な量 100年間の積算量(1900-1999)

20世紀における陸域炭素フラックスの変化 ・NPP、HRともに10%程度上昇 NPP ・NEPはほぼ正 →陸域が炭素シンク HR  →陸域が炭素シンク ・LUCを考慮すると、陸域はたびたび炭素ソース    →LUCの影響大 NPP HR 全球炭素フラックス (Pg C yr-1) NEP NEP - LUC efflux year 全球積算 NPP(純一次生産), HR(従属栄養生物呼吸), NEP(生態系純生産) and NEP-LUCefflux(土地利用変化による放出)

Table. 全球炭素収支 (1980-1989; PgC/yr) 大気CO2濃度の年々変化 Table. 全球炭素収支 (1980-1989; PgC/yr) 化石燃料 本研究 Houghton (2003) Total 化石燃料 +5.39 +5.40 海洋 -2.16 -1.70 陸域生態系 -0.53 -2.40 土地利用変化 +0.56 +2.00 Total +3.26 +3.30 実測値 陸域 海洋 ・Totalは実測値によく一致 ・陸域は大気CO2に中立的な振舞 ・しかし、その内訳は文献値と異なる    → 文献値が過大評価の可能性 全球平均大気CO2濃度 (ppmv; 1959-1999)

開発中の DGVMの特長 相観のシミュレーション結果(@熊本県) 木本については個体ベースで扱う 空間的に明示的な林分の中で 木本個体は光を巡り競争を行う これらの特長により、気候変動に伴う植生変動の速度を適切に予測できる。 相観のシミュレーション結果(@熊本県) Preliminary result 1年後 30年後 100年後 温帯性 常緑針葉樹 ・個体ベースモデルのメリット: 1.観測データとの対応がよく、パラメーター推定、およびモデルの検証がより直接的・直感的な作業となる。 2.空間構造を介した個体間相互作用を正確に表現することができ、Gap dyanamics(上の図参照)などが再現可能。 3.個体毎に固有の性質を持たせることができ、大個体と小個体間における葉、幹、根のバイオマス比の違いなどの効果を導入可能。 ・個体ベースモデルのデメリット: 計算処理に時間がかかる ・上の図のシミュレーションでは、1~50年目は定着可能な全ての植物機能型(PFT)を等確率で定着させ、51~100年目は現存バイオマスの高いPFTほど高い確率で定着させた。この場所では、常緑針葉樹も常緑広葉樹も成長することができるものの、これら両者を競争させると、広葉樹が‘勝つ’というシミュレーション結果となった。 温帯性 常緑広葉樹 更地から開始 針広混合林 広葉樹の優占林

モデル出力例1 (現在の気候条件における植生分布) 自然植生 モデル出力例1 (現在の気候条件における植生分布) SEIB-DGVMの出力 主な問題点: (1) 熱帯と温帯では、森林帯が乾燥域にまで分布してしまう (2) 寒帯では、常緑林の分布を過小に評価してしまう

モデル出力例2 (NPPの分布) 17種のモデルの平均値(IGBP) SEIB-DGVMの出力 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 (g C / m2 / year) 他モデルとの比較:全体的な分布パターンは一致するものの、SEIB-DGVMは、寒帯域でより大きな値を、乾燥域ではより小さな値を出力した。

共生2ー地球システム統合モデルの開発 4つのサブテーマ 「全球炭素循環モデル開発」 「大気組成・気候変化結合モデル開発」 陸域炭素循環モデル 海洋生物地球化学モデル 陸域生態系変動モデル 「大気組成・気候変化結合モデル開発」 温暖化・大気組成変化相互作用モデル 温暖化-雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価 「寒冷圏モデル開発」 「気候物理コアモデル改良」

大気化学モデル (CHASER) 取り扱い化学種:53 種 (ozone, NOx, etc.) 高度約 20 km までの化学反応を扱う 成層圏へ拡張予定

化学モデルによるIPCC-AR4実験:モデルアンサンブルの中での位置づけ  対流圏オゾンの放射強制力分布 Gauss et al. [2005]

Future Simulation of O3/ CH4/ Aerosols on ES Temporal Evolution : Ozone Strato./Tropo. Exchange (TgO3/yr) Temporal Evolution : Tropospheric Ozone Burden (TgO3) 上図)成層圏対流圏のネットオゾン流入量の時間発展(A2,A1,B1)。Exp1:エミッション変化(対流圏オゾン増加)のみ、Exp2:+温暖化を考慮、Exp3:+成層圏オゾン変動(オゾン層回復)を考慮。温暖化の場合(Exp2)、大気循環(特に成層圏循環)の強化によりオゾンの下方輸送が強化される。将来のオゾン層回復も考慮すると(Exp3)、対流圏へのオゾン輸送は当然さらに増える。 下図)対流圏オゾン総量(TgO3)の時間発展(A2,A1,B1)。Exp2 と Exp1 ではあまり差がない  温暖化による(1)成層圏からのオゾン輸送の増加と(2)水蒸気増加にともなうオゾン破壊強化が相殺。EXp3 (オゾン層回復)では全球対流圏オゾンは増加する。

+ CHASER 成層圏化学: [T42L80: surface~80km] 統合モデルに組み込み済み   ・光解離定数計算の改良(成層圏対応)   ・ハロゲン系化学の導入(ClOx and BrOx)      based on the CCSR/NIES stratospheric chemistry GCM:      HCl, ClONO2, HOCl, Cl2, ClNO2, CCl4, CFC11, CFC12, CFC113, HCFC22, CH3CCl3, CH3Cl     : (ex., Cl-species)     ・オゾンホール化学の導入      PSCs上での不均一反応                  [Nagashima et al, 2001/ Sessler et al, 1996]   ・大気球面効果の取り扱い [Kurokawa et al., 2005]   ・非地形性重力派 (FRCGC ES-model development) : parameterization with high resolution simulations (T213L250)             ・成層圏エアロゾルの導入 [Takigawa et al., 2003] 統合モデルに組み込み済み

共生2ー地球システム統合モデルの開発 4つのサブテーマ 「全球炭素循環モデル開発」 「大気組成・気候変化結合モデル開発」 陸域炭素循環モデル 海洋生物地球化学モデル 陸域生態系変動モデル 「大気組成・気候変化結合モデル開発」 温暖化・大気組成変化相互作用モデル 温暖化-雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価 「寒冷圏モデル開発」 「気候物理コアモデル改良」

モデル上端の拡張 -帯状平均東西風- 12月-2月 6月-8月 観測 モデル

赤道上の帯状平均東西風 4年間で反転が3回 周期が短すぎる 引き続き チューニングが必要

計算の高速化 大気の分割を、緯度方向のMPI並列に加えて、鉛直方向にノード内並列を併用(鉛直80層÷8)。 1ヶ月の積分にかかる時間を比較した。 成層圏化学過程を含まない現時点では、合計10ノードを使用するのが、もっとも効率がよい。 大気 海洋 実行時間 比 MPI並列 4 2 2870 sec 100% Hybrid並列 8 1688 sec 58% 16 1191 sec 41%

共生2ー地球システム統合モデルの開発 4つのサブテーマ 「全球炭素循環モデル開発」 「大気組成・気候変化結合モデル開発」 陸域炭素循環モデル 海洋生物地球化学モデル 陸域生態系変動モデル 「大気組成・気候変化結合モデル開発」 温暖化・大気組成変化相互作用モデル 温暖化-雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価 「寒冷圏モデル開発」 「気候物理コアモデル改良」

観測標高や面積など よく再現している 観測標高分布 氷床モデル再現

1990 年からの標高差   at 3000

MIROC mid → IcIES 20km (off line) グリーンランド温暖化実験 MIROC mid → IcIES 20km (off line) IPCC AR4 run の結果を氷床モデルに入力→海水準上昇への寄与 実験設定 体積変化時系列 現在再現 グリーンランド氷床上の夏平均気温 定常解氷床分布 A1B Tfix A1B Sfix

氷床気候双方向結合に向けて オンライン結合モデルによる温暖化実験 百年、数百年スケールの海水準上昇への氷床の効果をより詳細に検討する オフライン実験で考慮していない効果 アルベド低下→体積変化加速 融解水の変化→海洋への淡水供給の変化→? オンライン結合モデルによる温暖化実験 倍増、4倍増、各シナリオ実験 温暖化安定化後の氷床の振る舞い 百年、数百年スケールの海水準上昇への氷床の効果をより詳細に検討する

共生2ー地球システム統合モデルの開発 4つのサブテーマ 「全球炭素循環モデル開発」 「大気組成・気候変化結合モデル開発」 陸域炭素循環モデル 海洋生物地球化学モデル 陸域生態系変動モデル 「大気組成・気候変化結合モデル開発」 温暖化・大気組成変化相互作用モデル 温暖化-雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価 「寒冷圏モデル開発」 「気候物理コアモデル改良」

温暖化-雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価 雲の反射率 増加? 温暖化 H2O増加 精密評価 粒径変化 数密度変化 上昇流変化

次世代大気大循環モデル 世界初の雲解像大気大循環モデル(NICAM)の開発に協力 水惑星条件での実験 3.5 km モデル ひまわり6号画像

熱帯のスコールライン実験 地球の半径の軽減 水平方向にストレッチ格子の使用 e.g. R=6400km  640km  熱帯のスコールライン実験 地球の半径の軽減 e.g. R=6400km  640km 水平方向にストレッチ格子の使用 興味ある領域に格子を集める Schmidt 変換 等方性を保証する変換 全球12km格子  局所的1.2km格子

Preliminary Results wind shear 北緯3度での断面 青色:雲水量、赤色:雨水量 現在、デバッグの最終段階 計算コスト低減のためにビン数を減らしてテスト中 今後、ビン数をさらに増やして実験の予定

今年度成果のまとめ(1) 大気化学モデル 動的植生モデル 炭素循環モデル 現実的な成層圏循環の再現成功 コード高速化作業完了 成層圏への拡張 大気化学モデル IPCC 向けプロジェクトに参加→モデル相互比較解析に貢献 成層圏化学過程の導入:着実に進行 動的植生モデル 全球スケールでの実験完了→論文投稿 炭素循環モデル 温暖化実験完了→有意な正のフィードバック(C4MIP、IPCCへの貢献) 土地利用変化も含めた、20世紀中の炭素収支計算→論文準備中

今年度成果のまとめ(2) 大気海洋-氷床結合モデルコード完成 温暖化による氷床融解に伴う海面上昇評価→従来の評価と同程度 全球雲解像モデルへ詳細雲物理モデル導入中 ワークショップ開催などを通じた広報、IPCC・LA会議参加援助などの活動

来年度計画 オゾンホール形成の化学過程導入 生態系-大気化学相互作用導入 全球統合モデルのパラメータ調整→20世紀再現・温暖化実験 SEIB-DGVM改良、大気モデルへの組み込み 気候-氷床結合モデルによる長期積分(300年以上) NICAMへの雲微物理導入、現実地形での+2K実験